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「リレー小説参加作品『願い』」作者☆静真
「どうかしましたか?」 古泉が話しかけてくるがそんなものは耳に入らなかった。幽霊などという実際にいるはずのない、ハルヒが望むはずのないモノまでも容易に生み出してしまえる存在、朝倉涼子と関わりのある存在、そして・・・機関さえも手玉にとってしまえるような存在。 「長門、もしかしてこの事件はお前がすべて演出したものなんかじゃないよな?」 すでにいろいろなことがあって、認めたくはないがこの非日常に慣れていたつもりであった。だが今回の事件はあまりにもおかしすぎて、そして古泉に裏切られかけてしまったせいか俺は、思いつきのまったく根拠のない結論を無意識に口に出してしまっていた。 「・・・・・・」 長門は何かを言おうとしたのか口を開きかけた瞬間、なにやら人の足音のような、そんな感じの音がした。俺は長門から目をそらし、反射的に足音のした方向に顔を向けてしまう。 「お久しぶりですね、キョンくんも長門さんも古泉くんも。あ、久しぶりっていうのは私から見ての久しぶりなんですけどね」 その人は艶やかな笑みを浮かべてこちらを見ている。魅惑のグラマー女教師、朝比奈さん(大)の姿がそこにはあった。この状況で彼女が来てくれたのはそれはもう、天からの救いの手だったが、俺はイマイチ喜べなかった。 「朝比奈さん、それは・・・」 朝比奈さん(大)の体は透けていた。朝倉の部屋の壁がうっすらと見えるくらいに。 「私が消えかけている理由はほかでもありません。このまま行くと私たちの未来が消えてしまうからです」 「な・・・」 「本当は今回の事件は起こらなかったハズなんです。いつも通りだったんです。キョンくんは古泉くんとボードゲームをして、私はみんなにお茶を入れて、長門さんはいつもの場所で読書をしていて、涼宮さんも・・・そう、不思議なもの・・・心霊写真を撮るなんて言い出さなかったハズなんです」 でも、長門は最初に言ったはずだ。『涼宮ハルヒによる世界の改変が行われた』と。長門がわざわざ嘘をつくとは思えないが・・・ 「はい、私たちもはじめはそう思いました。とても小さなものでしたがこれは涼宮さんがもたらしたものだと。ですが、とある理由からそれは涼宮さんではないことがわかったんです。禁則なので言えませんが」 話が一区切りついたところで朝比奈さんの体を見て気付く。さっきよりもだいぶ消えてきていた。朝比奈さんもそれに気付いたのか 「では、本題に入りますね。涼宮さんが写真を撮ろうと言い出したのにはきっと理由があります。意図的なものなのか、ただの偶然なのかは私たちにはわかりません。ですから涼宮さんが写真を撮ろうと言い出した前の日に戻ってその原因を探ってほしいのです。そして未然に防いでほしいのです。そうすればこの事件は起こらなかったことになるはずです。そうすれば、この世界からだってぬけだせるはず」 「その時間まで行くのにはどうすれば・・・」 「それはこの子がやってくれると思います」 朝比奈さん(大)が指をさした先には眠っている朝比奈さん(小)がいた。 「もうじき目を覚ますころだと思いますから目が覚めたら出発してください。・・・もう限界なようですね」 そういうと朝比奈さん(大)は体をひるがえして、マンションの出口の方に向かう。 「さようなら、またね」 そういうとドアを開け、軽くウインクをしてからドアを閉めた。
(★★千歳に続く★★)
.. 2009年12月09日 20:44 No.580001
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