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「リレー参加作品『七夕デーⅢ』」作者♪新月
多少は荒っぽかったが、とりあえずマンションへの侵入は成功した。 それまでは良かった。しかし、今からどうするのか思い悩む自分がここにいた。 さて、どうするべきか……。考えるんだ、俺! 「どうしたんですか? 行くなら早く行ってしまいましょう。それとも、ここまで来て怖じ気付いたんですか?」 古泉がニヤケスマイルで話しかけてきた。どうしてこいつの言う事は、いつも嫌味っぽく聞こえてくるのだろうか? やはり見ているだけで殴りたくなる時があるニヤケスマイルが原因だろうか? 「アホか。考えてるんだよ。朝倉と会った時にどう行動を起こすべきなのかをな」 今までの人生、殆ど行き当たりばったりな感じで適当に生きてきた俺は、『計画を立てる』事が大の苦手だった。そのため、さっきから全く良い案が出てこない。 誰だ、俺をこんな適当な人間にした奴は。 「そういえば古泉、お前さっき、朝倉は最初から俺を殺す気なんか持っていなかったとか言ってたよな?」 「ええ、しかし断言はしていません。あくまで可能性があるという話です」 「根拠はあるのか?」 「それはあなたが一番分かっておられるのでは?」 全く、とことん頭にくる奴だ。しかし、古泉の言う通りかもな。朝倉とは同じクラスだった訳で、殺されかけるまで何回も会話をしてきた。SOS団の中では俺と長門が朝倉をよく知っているはずだ。 俺は深呼吸で心を落ち着かせ、冷静に考えてみる。 朝倉がさっき残した『ジョン・スミス』という言葉。もとい、俺の偽名。これは三年前の今日、つまり今この日に会った中学時代のハルヒしか知らない名前のはずだ。俺が朝倉と出会ったのは高校が初めて。朝倉がこの偽名を知っているはずが無いし、お互いに面識も無い状態だ。ん? ということはだ、古泉の言う通り、朝倉は俺に対して殺意を抱いてないはずだ……。 何も迷う事は無かった。殺意を抱いてない可能性が限りなく高くなった事を証明した俺は、古泉と共に急いで『505号室』に向かった。 エレベーターを降り、朝倉の部屋まで走る。 「ここか」 「ええ、間違いありません」 目の前には『505』と書かれたドア。そして、朝倉涼子と書かれた表札。 だが、ここでまた問題が発生した。朝倉は見ず知らずの俺達が名乗った所で、このドアを開けてくれるだろうか? まず無いだろうな。マンション入口のインターホンでもコンタクトを取っていない訳だし。怪しまれる事無くこのドアを開けさせる方法……。 ふと景色を見ると、偶然一台の宅配便のトラックが見えた。 そうだ、これだ! 俺は手元のインターホンを押し、 「シロネコ急便でーす。お荷物をお届けに参りましたー」 という台詞を棒読みで言ってやった。 「ほほう、中々やりますねぇ。これも涼宮さんから得た知識ですか?」 「ばーか。即興だよ」 古泉はやれやれといった表情で肩をすくめた。 すると、ガチャリという音がすぐ傍から聞こえた。まさかと思い、視点を古泉からドアへと移すと、見事に朝倉がドアを開けていた。服装は制服ではなく私服だった。制服姿しか見たことがない俺には違和感がある。 「あら、どちらがお届け物ですか?」 朝倉は満面の笑みで、拍子抜けする言葉を発した。
(&&&もリぞーに続く&&&)
.. 2009年11月09日 23:01 No.548001
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