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孟子の思想は民主主義と言ってもよいと思う。今の民主主義とちがうのは君主の役割を重んずることである。こんな話がある。 「王様のご家来のなかに遠く楚の国にゆくので、「留守中なにぶんよろしく頼むといって、自分の妻子の世話を(十分にお金をそえて)親しい友達に頼んでいった者が仮にあるとします。ところが帰ってきて見れば、その妻子をさっぱり世話しないので、飢えかつ凍えていたなら、この友達をどうなさいます。」王はいわれた。「もちろん、そんな者は見捨てて用いない。」孟子は更に言われた。「では(裁判の長官である)士師が無能で、自分の部下の士を取りしまれず、刑罰が乱れたとしたら、どうなさいます。」王はこたえられた。「もちろん、そんな者はやめさせてしまう。」孟子はここぞとばかり言われた。「では、一国の君主として、国内がよく治まらないときには、どうなさいます。」王はハタと返事に困り(聞こえないふりをして)おそばの家来と別な話をしてごまかしてしまわれた。」(岩波文庫「孟子」小林勝人訳) 国君は天の託を受けて万民を養っているのだから、万民をうえ凍えさせるのは友人の妻子をうえ凍えさせるよりひどい、天の命を奉じて万民を治めるのだから、これをじょう乱せしめるのは、士師が士を治めることができないよりひどいとかんがえねばならないと。孟子は上になるほど高い責任を要求している。しかし、今は人情を忘れ、職分を思わない風潮が瀰漫している。
.. 2007年03月14日 21:39 No.56001
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