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■--奇跡、真実、未来(第4章)
++ クォーツ (オリカ王)…179回          

キャラは登場した後、追々投下していくとして。
第4章の始まりです。
いよいよクライマックスの月光神羅。タイトル通り、すんごい出来事のオンパレード。…を目指してます(ぇ
どんな出来になるかは相変わらず分からん私ですが、どうぞ最後までお楽しみください。
では、どうぞ!

辺境世界で後ほど"大異変"と呼ばれる事件が起きているとはつゆ知らず、月光世界の民達は疲れ切ったその体をつかの間の休息に浸らせていた。
セイガら部族王達でさえ、例外ではない。だが、戦いによって傷ついたのは体だけではなかった。
4人がそれぞれ、心にも大きな傷を負っている。愛する友を亡くした者、はたまたその友と敵同士になって殺さざるをえなかった者。
セイガはセイナを、グレンドルはヴォルクを、レオンはサイエンスを、シンフォニーはギルドを。
それぞれがそれぞれの事情で亡くしている。そして、それによって刻まれた心の傷は、深く、消えない。

だが、それがもたらすものは後悔や闇月族への憎しみではなかった。それぞれが、覚悟を決めたのだ。
それまでは足りなかった、"命を賭す覚悟"を。仲間を守る為に最も必要な、大事な覚悟。
もう1つ、彼らに使命感をもたらした。月光世界を侵略せんとする闇月族を倒すという使命。
ただの侵略者でしかない闇月族には欠片もないであろう使命感。これが更なる武器になることは間違いない。

だが、その"命を賭す覚悟"を決めている者達は他にもいた。辺境族である。
ネヴィアの策略によって、辺境世界は消滅してしまうかもしれない。いや、たとえ消滅は避けられたとしても、月光世界との融合は避けられない。
つまり、自分達の帰る場所そのものがなくなろうとしているのだ。誰もが、これに対し大きな何かを抱いた。
そして、つい先程まで戦闘していた月光世界の民達とは違い、戦闘準備は整っている。
2つの世界を隔てる次元の壁が完全になくなり、世界が融合したその瞬間、凶暴化したモンスター達がいわれなき被害をもたらす前にこれを鎮圧する。
それが、政治三幹部を中心に練られた反攻作戦の第1段階である。無論、第2段階は闇月族への攻撃だ。

だがその前に、月光世界にも、世界の融合をもたらさんとするあの異変が現れ始めていた。
(122.30.10.204).. 2008年12月26日 07:25   No.220001

++ クォーツ (オリカ王)…180回       
昨日ブログで言った通り、今日は超連続更新を実行に移します。遂に…って感じで。
取り敢えず、闇月族サイド多め…かも。闇月族サイドは文字色を赤にするのでヨロシクです。

月光世界の海や大地に、怪しげな光が灯っているのだ。それは、水平線まで達しそうである。
これを今から辺境世界と往復してきた者が見たなら気づいたであろう。辺境世界の上空を覆い尽くす次元ゲートと同じものであると。
ネヴィアが画策した月光世界と辺境世界の融合。それが遂に始まろうとしていたのだ。

「ククク…遂に始まる。我ら闇月族の最終作戦の第1段階がな…」
そう言うと、後ろを見やる。そこには、フードで全身を包んでいる4人組の姿があった。
身長差はあまりないようだが、若干一名はかなりゴツイ巨漢だ。よって、1人浮いている。
「さて…生み出されてから間もないところ悪いのだが、お前達には例の任務に向かってもらう」
ネヴィアの言葉に、全員がひざまずく。その内の1人が、ネヴィアに問う。
「ネヴィア様、我々には他の誰よりも経験がありません。我々に遂行できるのでしょうか?」
この問いに、もう1人も反応する。
「我々のターゲットは、これまでの戦いで経験を積んでいる筈。経験の差で押し切られる可能性も十分に考えられます」
だが、ネヴィアは「それがどうした」とでもいうようにこう言った。
「確かに、お前達には経験が無さ過ぎる。だが、それを補って余りある能力を与えているではないか。それに、今回は総力戦だ。撤退して回復する隙などいくらでもある」
この言葉に、沈黙を保つ巨漢ともう1人は顔を見合わせた。さしずめ「そうだろうか」とでも確認しあっているかのように。
その光景を見つつ、ネヴィアは心の内で考えていた。巨漢と顔を見合わせた1人に対して。

「ソイルは音程王を。スピアは時空王を、バグレンは気功王を。そしてスエン、お前は流星王を叩け。特にスピアは注意してかかれ。時空王には一時的に時を止める力があると発覚したからな。
それと、スエン。お前は迷うな。お前にとっての最大の敵は、気の迷いだからな」
翌日の早朝、ネヴィアは例の4人を招集して告げた。彼らは、セイガら4人へ差し向ける刺客として生み出されたのだ。だが、スエンだけは他の3人とは違う特性があるようだ。ネヴィアはその詳細を知っているらしい。
「では、"合図の瞬き"と共に各方面へ散れ」
『ハッ!』
ネヴィアの言う"合図の瞬き"とは何か―それはすぐに明らかとなった。

(122.30.10.204).. 2008年12月26日 09:57   No.220002
++ クォーツ (オリカ王)…181回       
夜明けと共に、月光世界の大地と海、辺境世界の空を覆い尽くす次元ゲートが同時に輝いた。その光は妙に妖しげで、まるでこれから悪夢でも始まるかのような光景であった。
輝き始めたと思った次の瞬間、月光世界も辺境世界も、次元ゲートの中心部から渦を巻き始めた。空も海も大地も、その渦に巻き込まれていく。その渦は徐々に広がっていき、同じく水平線まで達することは容易に予測できた。
当然、この光景は全ての民が見つめていた。例外など存在せず、全てがやがてはあの渦の先へと吸い込まれていく。誰でも理解できた。

「何なの…この渦は…」
シンフォニーは唖然としていた。いつ闇月族からの襲撃がきてもいいように戦闘態勢は整えているが、それとは別の問題が現在進行形で世界を覆い尽くしている。勿論、これまでに似たようなケースと遭遇したことは一度たりともない。
「事態の中心部は、月光守護塔のようね…」
遠くを見つめるミズーリは、その中心部をいち早く発見した。そう、現在闇月族が拠点としている月光守護塔…の真下である。
既に中央大陸は渦の中心に消えている。そこから徐々に、四方に存在する大陸へと渦の端が迫りつつある。そう遠くない内に、4大陸も渦に巻かれて消えるだろう。

「もうっ、何なのコレ!?」
「まるで流砂だな…直接見たことはないが」
その頃、音程族の領域の南側で観測を行っていたヴァーチェとヴォーチェは、この謎の渦の弊害ともいえる現象に立ち会っていた。
南側、即ち最も中央大陸寄りのエリアの最南端部分から少しずつ、大地が土砂崩れ状態になっているのだ。ヴォーチェが例えたように、その光景はまるで巨大な流砂である。
「我々ではどうすることもできないんだ、とにかくシンフォニー様に連絡しよう」
「りょ、りょーかいっ!」
危うく足を取られかけながらも、ヴォーチェの助けを借りて離脱できたヴァーチェは宮殿へと向かっていった。巨大流砂現象は、じわじわと大陸を蝕んでいった。

『シンフォニー様!』
「こちらの大陸も、崩壊が始まってるのね」
一方で、当のシンフォニーは既に状況を把握していた。何故なら、他の3部族から連絡が入っていたからだ。大陸が少しずつ崩壊していると。
いずれも共通しているのが、最も中央大陸に近いエリアから崩壊しているという点だ。
渦が迫りつつあることの現れだろう。だが、かといって渦に対して何が出来るわけでもなかった。
以前から変調が現れていた辺境族と全くといっていい程に同じだった。

(122.30.10.204).. 2008年12月26日 10:29   No.220003
++ クォーツ (オリカ王)…182回       
そう、4部族の全てがそうだった。渦に対して、為す術など何もなかった。

時空族領域――
「落ち着け!こちらからはどうすることもできないんだ、きっと来るであろう闇月族の襲撃に備えろ!…とはいっても、完全に落ち着かせるのは無理かしらね…」
突然かつ空前絶後の事態に隊員達も戸惑う中、リグレットはなんとか落ち着かせようとする。だが自身でボヤいたように、この状況下で隊員達が落ち着く筈もなかった。何しろ、自分も落ち着かないのだから。
一方で、レオンは胸騒ぎが止まらず、そわそわしていた。いつになく大変なことが起こる、そういう危機感による胸騒ぎだ。
「…これが、君の望んでいたことだったのかい?サイエンス…」
先の戦闘で、己の剣でトドメを刺した相手・サイエンス。研究の完成というエサに釣られて闇月族に身も心も売った、いつからか行方知れずだった旧友。果たして、このような事態が彼の望んでいたことだったのか?その答えは、永久に闇の中である。胸騒ぎの要員の1つとなりながら。

気功族領域――
「大変ダス、今まででいっちばん大変ダス!」
「うるせー!んなこと、言われなくたって分かってるっつーの!」
ある意味で相変わらずというべきか、こんな状況下でもガンタスとグレンドルの兄弟喧嘩っぽいやりとりは起きていた。
辺境世界のように災害が起きているわけではないが、最終的な被害は文字通りの天変地異であることは間違いない。
無論、こちらも戦闘態勢は整えてある。だが、どうすることもできない。しつこく言うが、どうすることもできないのだ。どの部族も。
「だがどうする、このままではいずれこの宮殿も渦に飲まれてしまうぞ…」
ゼロの言うことももっともだ。たとえ今から闇月族と戦闘に入って、これを撃破できたとしても、この現象を止めることはできないだろう。
働きかけこそ闇月族にあるとは分かるが、止め方は誰から聞き出せばいいのか。真っ先に候補に挙がるのはネヴィアだが、そのネヴィアは、いや闇月族自体、どこにいるのか分からない。
「闇月族が来るのが先か、俺達があの渦に飲まれるのが先か…ってか。上等だ、こっちもこうなりゃ腹くくるしかねぇぜ。いっそのことどっしりと構えて待ってやろうじゃんよ!」
グレンドルの打ち出した提案には、正気沙汰とは思えない者も多かっただろう。だが、他に策が出るわけでもない。腰を据えて、事態の推移を見守っていくしか選択肢はなかったのだった。

(122.30.10.204).. 2008年12月26日 11:28   No.220004
++ クォーツ (オリカ王)…183回       
流星族領域――
「これも…闇月族の仕業なのか…?」
渦に対してどうすることもできない中、セイガは率直な疑問を呟いていた。同時に許せないとも思った。命を弄び、世界そのものをも揺るがすようなことを平気で行うネヴィアを。
そんなセイガの後ろ姿に不安を感じたのだろうか、プライヤーズが電子音で話しかけてきた。
「…すまないな、不安にしてしまったか?」
そう言うとセイガは、初対面の時と同じように彼らの頭をなでてやった。だが、ふとセイガは思い出した。彼らプライヤーズには、戦闘よりももっと重要視された特別な力があると。

セイガは、宮殿に招いていたダイボウケンを呼んだ。プライヤーズを授けた彼なら、より詳しいことを知っている筈だから。
「プライヤーズの真の合体形態、ディメンジョンプライヤー。それは、破損した空間の修復と補正を行う為に存在すると資料にある」
「破損した空間…?」
「もし、その記述が本当なら、今こそディメンジョンプライヤーを使う時だろう」
ダイボウケンは、更に詳しく、ディメンジョンプライヤーについてセイガに話した。
プライヤーズは、先の戦いで見せた直列合体によるスパナ形態だけでなく、空間の修復及び補正を行う為のペンチ形態、即ちディメンジョンプライヤーへと合体することもできるという。
観測データからすると、この渦は空間の破損によって生じているものらしい。つまり、たとえその場しのぎ程度でしかなくても、ディメンジョンプライヤーで渦を止められるかもしれないのだ。
話を聞き終えたセイガは、決断した。正直、テストもしていない故に一か八かの賭けではあるが、やれることはやろうと心に決めていた。
「よし、ダイボウケン。あの渦のど真ん中にディメンジョンプライヤーを使うぞ…!」

ディメンジョンプライヤー使用の報は、瞬く間に4部族全体に行き渡った。試験運用なしのぶっつけ本番な"賭け"に対し、誰もが僅かながらも希望を抱いた。一か八かやってみよう、戦うことを決めた誰もがそう決断したのである。
かくして、4部族共同バックアップのもと、ダイボウケンを筆頭としたディメンジョンプライヤー特攻作戦が開始されることになった。

(122.30.10.204).. 2008年12月26日 12:24   No.220005
++ クォーツ (オリカ王)…184回       
「…む?」
観測員の報告よりも早く、ネヴィアは気づいた。4部族が四方から中央部へと接近しつつあることに。渦の中心へ真っ直ぐ向かっていることから、部隊は全員飛べるようになっていると思われる。
おそらく、辺境世界からの流れ者が技術支援でもしたのだろう―理由はすぐに分かった。だが、問題はそこではない。何故、今になって渦の中心部に向かっているのか、ということだ。

「東方面の部隊から独立して動く存在がおります。他の方面からは突出する存在はありません」
「東から…?流星族側か。この動きは流星族が筆頭と見て間違いなさそうだな…」
観測員から、部隊の動きが知らされてくる。ネヴィアはすぐに気づいた。この同時進行は、流星族の働きかけによるものだと。
だが、次に観測員からもたらされた情報は、ネヴィアをもってしても悩ましきことだった。
「しかし、突出した存在の反応は人間のものではありません」
「何…?では、何だその突出した存在は?」
「分析したところ、辺境世界に住む生命体の1つである機獣であると分かりました」
「機獣…だと?この世界に機獣が来ていたとでもいうのか?」
「おそらくは」
本来、月光世界に機獣はいなかった筈である。おまけに辺境世界の機獣ともなれば、尚更だ。だが、それがいる。渦の中心部に向かっている。
「(…そういえば、流星族に派遣した部隊の報告に『機械仕掛けの妙な存在がいた』とあったな…。なるほど、そういうことか)」
一斉派兵の前にまぎれていた、辺境世界からの流れ者。その一部に機獣がいたとしても、別に不思議なことではなかった。
だが、一時的にとはいえそれが盲点になっていたことを、ネヴィアは少しだけ恥じた。指揮を執る者として、あらゆる可能性を考えていかねばならないのだから。
「(だが、あの渦への対抗策を持っているとでもいうのか?いかに辺境世界といえど、この渦には為す術もない筈なのだが…)」
ネヴィアの疑問は、観測員の告げた"突出した存在"によって晴れることになった。

ネヴィアも含めて闇月族の全てが戸惑う中、"突出した存在"ことダイボウケンが、プライヤーズを引き連れて渦の中心部に辿り着いた。

(122.30.10.204).. 2008年12月26日 13:07   No.220006
++ クォーツ (オリカ王)…185回       
何故、最も危険だと思われる筈の渦の中心部に単独でやってきたのか―闇月族の者達はみんなしてそう思っていた。だが、ダイボウケンからいわせればただの愚問だった。
「(ディメンジョンプライヤーの作用は味方も巻き込みかねないからな…こうして単独で来た方がやりやすい)」
戸惑う闇月族部隊が渦の上空から見やる中、ダイボウケンは行動を開始した。プライヤーズが彼より少し上の方へと飛び出した。

「ディメンジョン、プライヤー!!」
ダイボウケンのコールに呼応し、プライヤーズが上空で3体同時に変形を始めた。
DP-C1は足を引っ込めてつま先を収納、腕も上に向けてから引っ込める。DP-R2は両腕を肩に収納して腰を90度回転、肩と両足を内側に畳んで頭部を収納。DP-L3は両腕を肩に収納して足→肩の順に胴体の方に畳み込み、頭部を収納して両側のレーダーパーツを正面に向ける。
続いて、DP-C1の右腕に当たる部分にDP-R2が、同じく左腕に当たる部分にDP-L3が同時に合体し、巨大なペンチの姿となる。
流星族領域での戦いで見せた直列合体によるスパナ形態は、あくまで合体機構による副産物的な存在である。このペンチ型の状態こそ、辺境世界の古代遺跡にて眠っていた「ディメンジョンプライヤー」の真の姿なのだ。
「ツール、コネクト!」
合体完了後のコールによって、DP-R2とDP-L3の頭部に当たる部分にあるコネクト部とダイボウケンの右腕と左腕がドッキングする。大きさの比率は、大体ダイボウケンの3分の2程度。人が使うにしては巨大であることが理解できるだろう。
ドッキング完了と共に、コネクト部から中心部へと光のラインが走る。エネルギーが中心部に伝達されている証拠だ。やがて、中心部の六角形のパーツが輝きを放ち、DP-C1の足に当たる先端部が輝きながらゆっくりと開き始める。

DP-R2とDP-L3がエネルギーを伝達する役、DP-C1がそのエネルギーを増幅・制御して空間湾曲を引き起こす役。モチーフがペンチである通り、プライヤー周辺の空間はねじ切られ、別な存在となる。これをどこかに放り出して撤去する。それが、"湾曲空間補正ツール"ディメンジョンプライヤーの、太古より与えられた使命である。

開ききった先端部を中心に、衝撃波のようなものが出た。俗に言う"空間湾曲"が始まったのだ。渦の回転方向とは逆方向に空間をねじ曲げ、回転がなくなったところで先端部を閉じて掴む。そして大きく振り上げ、振り回し、先端部を開いてねじ切った空間を上空へと放り出す!

眩い閃光が起こり、次の瞬間には渦で見えなかった中央大陸が姿を現していた。どうやら、渦に巻かれても消滅したりすることはないらしい。
飛行用のバーニアが耐熱限界を超えかけていたので、一旦着陸する。見回してみるが、やはり崩壊したりといった形跡は見られない。

「あとは、残っている外周の分を処分すればなんとかなるか…」
バーニアの回復を待って、再び空間湾曲を開始しようとダイボウケンが飛び立ったその時だった。大陸の大地が、外周の渦だった湾曲空間が、ダイボウケンの目の前でいきなり波打った。

(122.30.10.204).. 2008年12月26日 13:56   No.220007
++ クォーツ (オリカ王)…186回       
その波打ちはすぐに4部族の統治領域まで及び、そして一気に水平線まで達した。やがて空まで波打ち始め、ディメンジョンプライヤーに内蔵された特殊センサーがこの現象の正体を突き止めた。
その正体に、ダイボウケンは驚愕した。
「馬鹿な…。世界を丸ごと歪める程の空間湾曲なんて聞いたことないぞ!」

プライヤーの内蔵センサーは、"空間の状態"を分析できるというかなり特殊なものだ。簡単にいえば、今いる空間が歪んでいるかいないかを知ることができるというもので、それが警報を鳴らしている。つまり、かなり酷い状態なのだ。
ましてや、今のように世界全体が歪む程の湾曲ともなれば、いかにディメンジョンプライヤーといえども対処不可能である。
さっき除去したばかりの渦の中心部でさえ、中央大陸をすっぽりと覆い隠していた程に規模が大きかったというのに、世界全体ともなるとあまりにも規模が大きすぎた。

ディメンジョンプライヤーをもってしても、この湾曲現象にはお手上げだった。ダイボウケンが思わず叫ぶ。
「誰だ、バカみたいに湾曲させたヤツは!!」

その犯人は、ひっそりと笑っていた。月光守護塔の自分の部屋で。そう、ネヴィアだ。
元はと言えば、湾曲空間の渦もネヴィアによるものだ。だが、いきなり世界を丸ごと湾曲させるというのは、ネヴィアにしても大仕事だった。
空間を歪めるという暴挙には、膨大なエネルギーを使う。本来、空間は不可侵の存在だ。それにわざわざ干渉してねじ曲げるのだから、伴う代価も高くつくのが当然だ。ディメンジョンプライヤーとて、使用者から送られたエネルギーを何倍にも増幅して湾曲させるのだから。
「まさか、"空間を制する者"を連れていたとは予想外だったが…。いかにディメンジョンプライヤーといえども、これほどまでに規模の大きい空間湾曲には対処できまい」
ディメンジョンプライヤー使用の報が部下から寄せられ、急遽実行したのが世界全体の湾曲。それによる消耗も凄まじい筈だ。だが、ネヴィアは表情1つ変えずにモニターを見ていた。
「ようやくだ、ようやく最終作戦は次のステップへと進む…。今度こそ、その息の根を止めてくれようぞ。私に仇なす全ての者よ…」
そして再び、ネヴィアはひっそりと笑った。モニターには、映像が荒いながらも波打ちが止まらない世界の姿が映し出されていた。

「月光の軍の動きが止まった。攻め込むぞ」
「良いのかスエン?せめて、変化が収まってからでも遅くはないのでは…」
「いや、バグレン。事態の豹変ぶりに対応しきれていない今こそ最大のチャンスなんだ。スピア、ソイル、お前達も用意はいいな?」
「うん、別に問題はないけど」
「行くんなら、とっとと行こうぜ」
スエンからの問いに、スピアとソイルが順に答える。バグレンも、無言で頷いた。
「では、それぞれの健闘を…」
「おい、なんか様子が変だぜ?」
スエンがシメのセリフを言いかけたところで、ソイルが気づいた。波打つ速度が異様に速まり、空間が再び渦を巻き始めた。しかも、渦の速度も先程までのそれより数段速い。
「更なる異変が、始まりおったか…!」
「……」
バグレンが呟く中、スエンは無言である一点を睨みつけていた。それは、今空にいる自分達の真下にあるであろう、再び巻き始めた渦の中心部に覆われた中央大陸のど真ん中だった。

(122.30.10.204).. 2008年12月26日 14:50   No.220008
++ クォーツ (オリカ王)…187回       
一方で、突然の急変は辺境世界でも察知できた。とはいえ、辺境世界全体のほぼ全てのシステムが機能停止に陥っている為、上空に広がる次元ゲートを目視して…ではあるが。

次元ゲートが渦を巻くという現象が月光世界で起こっていたが、辺境世界でも全く同じ現象が同時に起こっていた。今も渦は止まらない。それどころか、もう空全体が渦を巻いている状態だ。
辺境世界の人々は、戦闘態勢を維持しつつ、それをただただ見つめていた。空間湾曲が可能なメカもあったにはあったが、モンスター襲撃の騒動で壊れてしまっている。
ほぼ完全に機能停止に陥ったこの状態では、その修理も開発もできなかった。
結局、何もできぬまま事態の推移を見つめるしかできないのであった。そんな無念としか感想の抱けない状態が、約5時間は続いていた。
モンスター達は相変わらず凶暴化したまま暴れ回っているが、その場所が人のいないところに変わったようなので人的被害は途絶えている。

だが、やがて大きな変化が起きた。空も海も大地も、揃って波打ち始めたのだ。そう、月光世界で起こっていることと全く同じ現象だ。
もはや月光世界と辺境世界を隔て、その存在を維持する次元の壁は完全に消失してしまった。これにより、遂に2つの世界が融合を開始したのである。あまりにも巨大な空間湾曲によって、2つの世界は今、完全に1つになろうとしていた。

「ももも、もしや、世界の終わり〜!?」
「まさしく天変地異だな、これは…」
辺境世界全体の完全な機能停止から約5時間、さすがに目が暗闇に慣れたのか、ぶつかることなく慌てて走り回るクラスタを正確に押さえつけながら、シュルツがうめく。
「けど、私達には、いや、2つの世界の誰にも、これを止めることはできない。ただ、事態に巻き込まれていくしかないのよね…」
その傍らで、レジストが空を見つめながら呆然と呟いた。事実なのだから否定のしようもないが、それでもシュルツは諦める気はなかった。
「だが、できるだけの準備はしてきた。あとは、この事態の果てにある"新世界"という名の戦場で、闇月族を、ネヴィアを潰すだけだ」
この大異変という事態の原因である闇月族のリーダー、ネヴィア。彼を倒すことこそ、この事態の唯一の解決策であると信じるシュルツ。
もしかしたら、2つの世界には戻らないかもしれない。それでも、その原因となったネヴィアを倒さないことには、生きた心地がしない。それが、辺境族全員の共通した気持ちだった。

やがて、波打ちながら世界が"ある一点"へと凝縮されながら吸い込まれ始めた。
その"ある一点"の位置は、正確には分からないが、おそらくは次元ゲートの中心点だった場所である。空間ごと全てを吸い込むその穴は、さしずめブラックホールのようであった。
その疑似ブラックホールの中へ、空も海も大地も同じように凝縮され、吸い込まれていった。世界の中心点からねじ曲げられながら。

同じ現象が、月光世界でも起こっていた。

(122.30.10.204).. 2008年12月26日 15:39   No.220009
++ クォーツ (オリカ王)…189回       
「……馬鹿な…こんなことが起こるとは…」
ダイボウケンは、バーニアで滞空しつつ、今起こっている現象に対して唖然としていた。
先程まで恐ろしい程に波打っていた世界が、中央大陸のど真ん中と思われる場所に空いた大きな穴に吸い込まれている。
空も海も大地も、まるで同じように凝縮され、渦を巻きながら穴に吸い込まれていく。その穴は、文字通り全てを飲み込んでいく。見境なく、際限なく、止まることなく、飲み込んでいく。

この巨大な黒い穴の正体は、次元の隔絶を保てなくなった為に空いてしまった、次元の穴とでもいうべき大変なものであった。
月光世界と辺境世界、この2つの世界が2つの世界であり続けるのは、次元の壁という境目によって隔たれている為である。
その隔たりがなくなった今、1つの巨大な穴に世界は吸い込まれ、その中で1つとなった新たな世界が構築される運命にあった。
さしずめ、宇宙で新たな誕生を告げるビッグバンやスーパーノバでも起こるかのように。

そんな中、ムーンライトはただ1人、渦巻く大地に立っていた。何故に不安定な大地に立っていられるのかは不思議であり疑問だが、この際それは放っておくのが賢い選択である。
大地と共に次元の穴へと近づきながら、その穴を睨みつけていた。ただただ黒く、ブラックホールさながらに全てを飲み込んでいく巨大な穴を。
「世界の融合…か。それが成された後も生きた心地は、正直しないだろうな…」
ぽつりと呟いた。それは、今まさに融合という形で消滅しようとしている世界の民の多くに出てくるであろう本音かもしれない。
誰にも、この事態を止める術はない。なら、できることは何だろうか。唯一のできることは、心のままに言葉を並べることぐらいであった。
「まさか、分断災害によって分かれてしまった大陸を元に戻す為の戦いが、こんなにも大袈裟なことになってしまうとはな」
次元を越えることとはまた違う。月光世界と辺境世界を何度か往復しているムーンライトですら、この事態には呆然としてしまう。越える存在であった次元そのものが2つの世界と共に融合してしまう。それが、この事態の結末なのだから。
「新世界とやらが、我々にとってどんな存在となるかは、これから次第か…」
誕生した新世界で最初に起こるのは、争いか、それとも別な何かか。予測することなど不可能の天変地異、大異変。その果てに待つものを知る者など、いる筈もなかった。

やがて、2つの世界は1つの穴へと完全に飲み込まれた。穴は1つの大きな球体になったかと思うと、数秒後に大爆発を起こした。

(122.30.10.204).. 2008年12月26日 17:10   No.220010
++ クォーツ (オリカ王)…189回       
まず、ここでお詫びしておきます。当初の計画では最終決戦は月光世界で行う予定でしたが、新世界という予定外の場所になっちゃいました…。ウェリスさん、申し訳ないです。
とはいえ、やってしまったものはしょうがないので、このまま通しちゃいます。まぁ、ある意味で辺境世界でもあり月光世界でもあるような場所ですんで。すんません。
新世界編、闇月族サイドを書いて今日は更新を終わります。…長かった…。
さて、ついに誕生してしまった"新世界"。
月光世界と辺境世界が混ざり合って生まれたこの地で、闇月族との、ネヴィアとの最後の戦いが始まります。その果てにあるのは…?

頭がぼんやりする。目もかすむ。寝ぼけているような状態だ。そういえば、寝ぼけたことなど殆どなかったな―そんなたわいもないことを思い出しながら、ネヴィアは意識を取り戻した。
ゆっくりと顔を上げてみれば、ついさっきまで目の前にあった筈のもの全てが消えている。突然何もない無人島に放り出されたような気分だ。
だが、それによって、今自分が置かれている状況をようやく理解できた。
「そうか…2つの世界が融合したことで、建造物などの"自然から生まれなかったもの"が全て消去されたということか…」

新世界の誕生は、本当にビッグバン(宇宙の誕生)と同じようなものだった。だが、もしこれが1つの惑星の中で起こったというのなら、スーパーノバ(超新星)というべきか。
これまでに築かれてきた建造物や人工生命体などは、元はといえば"自然から生まれなかったもの"である。ビッグバンに伴って、俗に言う人工物であるそれらは全て消去された。
ビッグバンの後も残っているのは、自然から生まれ出たもののみである。人工物も、その原料は自然にあったもの。だが、人の手で加工されたものは人工物であり、自然のものとは呼べない。神様かそれに準ずる存在がそう判断したというなら、この現象も納得せざるをえない。
だが、これらの推察はネヴィアにとってはどうでもよかった。まず確認したいのは、ビッグバンの影響を受けても生き残った部下の数だった。

闇月族の戦力は、半分かそれ以上が人工生命体である。つまり、ビッグバンによる初期化でそれは全て消え去っている筈なのだ。これにより、闇月族の戦力の急低下は明確だった。
壊滅している部隊もあろう。だから心配だった。どれ程の部下が生き残っているのか。そして、生き残っている部下と自分を合わせて、果たして月光世界と辺境世界の民を同時に敵に回しても戦える程の戦力が残っているのか。

幸い、視界は良好だ。というわけで、ある程度上空まで上がって、空から探すことにした。大まかな位置ぐらいは掴める筈だから。
ところが、見回しても木々や草花が生い茂るばかりで、部下の姿はどこにもなかった。
高度が高すぎたのか―そう思って、低空飛行で巡回するように探してみたが、それでも誰1人として見つからなかった。確か、中央大陸には万が一の護衛隊として数百名の部下がいた筈。
だが、いくら探し回っても、見えるのは植物と大地だけだった。彼の部下も、中央大陸の上空を飛んでいた筈のダイボウケンやディメンジョンプライヤーも、何も見つからなかったのである。

今のネヴィアには、周りの植物全てが自分に対して孤独感を煽っているように思えた。

(122.30.10.204).. 2008年12月26日 17:39   No.220011
++ クォーツ (オリカ王)…190回       
ムーンライトのイラストと解説はしばしお待ちください。今日にでも描くんで。
さて、世界版のビッグバンによって誕生した"新世界"にて、困惑するのはネヴィアだけではありませんでした。そう、部族王達も…。

一方で、なんとか意識を取り戻したセイガもまた仲間を探して彷徨っていた。すぐ近くにいた筈のスターリィさえ、消息が掴めない。
「おかしい…周りは全て植物だ。建物などはないのか…?それに、スターリィ達は?」
呼びかけながら、ひたすらに探す。だが、誰の返事も帰ってこない。まるで無人島に放り出されたような感覚であろう。
ところが。
「おい、セイガ!無事か!?」
聞き覚えのある、どこか陽気な声。間違える筈もなく、セイガは声の主の名を叫んだ。
「スターリィ!お前もか!」
「おお、無事だったか!」
スターリィが答え、駆け寄ってくる。彼から聞けた話によると、どうやら何らかの影響で全員散り散りになってしまったらしい。
その原因は、このビッグバンだという。

「くっそー、誰かいねぇのか!?」
仲間を求めて彷徨う者はここにもいた。グレンドルである。気づけば孤立していたのは、セイガやネヴィアと同じであった。
仲間の名を叫びながら彷徨っていると、思いがけぬ歓迎を受けた。モンスターが襲いかかってきたのだ。これを辺境世界の民が見たら一瞬で気づくだろう。このモンスター達は、辺境世界にいた筈のモンスターばかりなのである。
いや、よく見ると月光世界にいたモンスターも混ざっている。どうやら、モンスターに関してはビッグバンによって共存関係になったようだ。
「ちっ、こちとらそれどころじゃねぇってのに…上等だ!片っ端からぶっ潰してやる!」
グレンドルは、拳を握りしめ、構えた。

「いったい、何が起きたと…?」
気がついた瞬間に目にしたものが、レオンには信じられなかった。月光世界には存在しない筈の植物まで混ざり、生い茂っている。
だが、初めて見るものではない。見慣れない植物は全て、辺境世界にあったものだ。
レオンが気づくまでには大分時間を要するが、モンスターだけでなく、植物も月光世界と辺境世界のそれが混ざり合っていたのである。
「ようやくお目覚めか」
「ムーンライト…」
すぐ傍では、ムーンライトがじっと遠くを眺めていた。彼の場合、眺めるとはいっても、腕を組んで仁王立ちしながらではあるが。

「…っ、これは…いったい…?」
「大丈夫?」
シンフォニーは、意識を取り戻した後ミズーリに起こされながら周りを見やる。どう考えても、ここが先程まで自分達がいた場所とは思えない。
多種多様な植物が、自然のままに生い茂っているのだ。流星族や気功族ではあり得るが、時空族や音程族では少し考えにくい光景である。
「他のみんなは?」
「分からない…みんな散り散りになってて、大まかな距離もつかめないし…」
やはりというべきか、この2人も孤立していた。というより、ビッグバンによって誰もが孤立状態に置かれたと見るべきかもしれない。

(122.30.10.204).. 2008年12月28日 05:31   No.220012
++ クォーツ (オリカ王)…191回       
連合軍結成…のちょっと前。
辺境族の新キャラも登場でござんす。

「ブレイドツイスター!!」
無数のモンスターが、青い竜巻によって次々と切り裂かれ、沈黙していく。

ちなみに、ネヴィアはビッグバンによって"自然から生まれなかったもの"は全て消えたと語ったが、正確にはあながちそうでもなかった。
人が持つもの、イテンでいえば剣に限っては、何故か消えていなかったのである。

やがて全てのモンスターが沈黙した後、イテンは深くため息をついた。
「まったくもう…どうなってんの、これ?」
気づけばもうモンスターの大群のど真ん中。おまけに今自分が立っているのは豊かな大地。砂漠など見渡しても見当たらない。
その代わり、"見慣れぬ存在"が――
「…もういいから、出てきたら?」
「あうー、助かったわ…」
モンスターと戦闘を開始してから僅か2分で草葉の陰に隠れてしまった、ダリアだった。よくよく見ると、更にその陰にガンタスもいる。
どうやら、ビッグバンの後でこの3人が偶然鉢合わせし、モンスターに襲われたらしい。
「まさか、こんな幼い女の子に助けてもらうとは…一生の不覚ダス」
「しっかりしなさいよね、男なんだから」
「人のこと言えた義理じゃないよ、貴女…」
イテンという女の子に助けられたのがやや不服だったのか、嘆くガンタス。彼に対してダリアがさも当然のように言い放つが、イテンの言うとおり彼女もまた面目ないことこの上ない。
よりにもよって、3人の中で一番小さいイテンが一番勇敢だったというのはいかがなものか。
「おーい、誰かいねーのかー?」
「!!グレンドル!」
「よかった、近くにいたのね!」
ふと、聞き覚えのある声が聞こえた。グレンドルの声だ。それを聞いたガンタスとダリアがいきなり元気になった。
「グレンドル!こっちダス!」
「ガンタス、おめぇか!」

ガンタスが彼の呼びかけに答え、めでたく合流。そして、"お互いに"当然の疑問が出た。
『誰それ!?』
図らずも、グレンドルとガンタスの2人が同時に叫んだ。そう、グレンドルの傍にも見慣れぬ存在がいたのである。だが。
「あーっ、レミア!」
「イテン、おひさっ!」
グレンドル側には、レミアやローレルを初めとして、オアシスにいたメンバーがいる。
イテンにとっては見知った存在だ。はて、これは偶然か―その疑問は、ローレルが解明した。
「どうやら、この世界はグレンドルらの月光と我々の辺境、2つの世界が混ざり合って誕生したものと見た方がいいだろうね。
地理が似ている2つの世界が重なったということで、こうして鉢合わせしたのかもしれない」
つまり、偶然ではなく出会うべくして出会った組み合わせだった。月光世界の気功族領域と辺境世界の西区域が重なっていた為だったのだ。

「…なるほど、じゃあ、この世界には俺らのような連中もいれば、あんたらのような連中もいるっていうことか」
「こうして辺境族の我々と気功族の君らが同じ大地の上に立っているんだ、間違いない」
改めて互いに自己紹介を終え、グレンドルはローレルの協力を得て状況整理をしていた。
このような事態にも冷静に対処できるようになったのは、王として成長したということか。
この世界は月光でも辺境でもなく、また月光でも辺境でもあるということ。そして月光世界の種族と辺境族が、時代を越えて再び同じ世界に存在するようになったこと。
このような事実が浮き彫りになった。

(122.30.10.204).. 2008年12月30日 04:49   No.220013
++ クォーツ (オリカ王)…192回       
前回の投稿では出せなかった新キャラ、ここで登場ッス。面倒になるから記事の修正はせず(オイ
取り敢えず、前回の西方面だけでなく、残り3方面でも合流エピソードを予定。
今回は北。
というわけで、新年初投稿、どうぞ。

「いったい、どこに飛ばされたのかしら…」
「きっと、誰もが同じ気持ちで仲間を捜しているでしょうね…。多分、みんな孤立してるから」
生まれたばかりの世界だから、地図などあるわけもない。ミズーリが己の優れた感覚で水の音を聞き取り、ひとまずそれを頼りに進んでいる。
歩き始めてからそう時間は経っていないが、地面の起伏がやや激しい為に難航している。
水の音から川を見つけ、そこから上流へと進んでいるのが原因なのか、それとも、元々この世界は険しい道が多いのか。
その答えは、息をきらしつつ上り詰めた頂上から伺うことができた。

「うそ…。これが今の世界なの?」
「そう認めるしかないわね」
かなり高いところに位置しているのだろう、見渡すとかなり遠くの方まで見える。そしてその景色は、まさに緑一色というべきだろうか。
機械化が進む前、いや、文明化が進む前の、自然のありのままの姿に見えるのだ。勿論、そこまで時代を遡るなら、当事者など無きに等しいが。
磁石も何もないのだから、方角は分からない。だが、うっすらとではあるが、融合前の月光世界の特徴が残っている面もあった。

機械化が進んでいた時空族や音程族では伺えないが、そうではない流星族や気功族は分かりやすかった。前者は緑の色が濃く、後者はやや薄い。
元々、自然が最もそのままの姿を保ちつつあったのは流星族。それ故、色の濃い方をその領域だったエリアと断定した。
と同時に、その反対方向にあるエリアを気功族領域だったエリアだと断定。
本当かどうかは、ミズーリの探知能力とでもいうべき超感覚が示してくれた。
「…色の薄いエリアから、魔力とは違う、気とでもいうべきエネルギーを感じるわね」
「じゃあ、やはりあの方角には気功族が…」
本人達が確認する術はなかったが、その推測は見事に当たっていた。気功族領域だったと断定したそのエリアに、グレンドル一行がいたのだ。

(122.30.10.204).. 2009年01月05日 08:15   No.220014
++ クォーツ (オリカ王)…193回       
長くなったので2分割。
新キャラがやっと登場であーる。

方角が掴めたところで、今度は川の下流へ歩く。自分達と同じことを考えている仲間もいるかもしれないが、じっとしていても仕方ないので自ら打って出ることにした。
今のところは中流だろうか―そんなところで、ミズーリが何かを感じ取った。
「…ちょっと待って。なんか、向こうから電気の流れを感じるんだけど…」
「電気?構造物なんて殆どないこの世界で、電気反応だなんて…」
スルーしても良かったが、せっかくなのでその反応の正体を突き止めることにした。歩くこと数分で、"それ"は見つかった。
「ボルテックウェイブ!!」
「キギャアアアッ」
凄まじい放電で、モンスターが次々と沈黙していく。見渡せば、同じようにして倒されたと思われるモンスターの山がところどころにある。
「…あれね」
「こ、子供…?」

そう、シンフォニーが言うとおり、彼は小柄な子供だ。だが、その放電レベルは、兵器として扱える程に強い。シンフォニーが声をかけてみる。
「あの、あなたは?」
「誰!?もしかして、闇月族!?」
少年はとっさに身構える。どうやら彼も孤立しているようだ。そこを考えると、当然の反応。それに対して、今度はミズーリが語りかける。
「違うわよ。私はミズーリ、こっちはシンフォニー。あなた、最近生まれた辺境族の子でしょ。私も辺境族だけど…。親とかはいないの?」
少なくとも片方は同じ種族で、危害を加えるつもりはないと知って安心したのか、少年は構えを解いた上で話した。
「親はいない。身寄りはいたけど、地震とかモンスターの襲撃とかでみんな死んじゃった…」
「孤児…ね。あと、地震もモンスターも、多分闇月族の働きかけが原因ね…」
「だから、闇月族は許さない。闇月族に会ったら、ギッタンギッタンにしてやるんだ」
そうミズーリに答える彼の眼差しには、闇月族への確かな怒りと消えない憎しみがあった。
ビッグバンのその前、大異変と称される出来事により、彼は身寄りも全て亡くしたのだ。大切なものを奪われたことが、彼に怒りと憎しみを覚えさせた。無論、その矛先は闇月族だ。

「ヴォーテクスはどこか分からない?」
「分かんない」
「まぁ、当たり前よね…」
経緯はどうあれ、同じく打倒闇月族を誓う者同士ということで意気投合。電気や電子を使いこなす能力を持つ彼・アドルを加え、探索を続行。
アドルはビッグバンの直前、北区域にいたとのこと。そして自分達は月光世界の北に位置する大地にいた。辺境世界の北区域と重なる大地なら、最も近くにいるリーダーはヴォーテクスの筈。
そう思ったシンフォニーはアドルに尋ねてみた。だが、ミズーリが言うように、当然ながら彼にも分からなかった。

とにかく、大陸を越えて移動する者はそうそういまい―そう信じつつ、3人は仲間達を探す…。

(122.30.10.204).. 2009年01月05日 08:37   No.220015
++ クォーツ (オリカ王)…194回       
今度は時空族編。
ここでも新キャラ登場ッス。つっても、既に登録してあるもう片方なんですけどね。

「弱ったな…方角すら掴めん」
「手掛かりがあればいいのですが…」
方角が分からず弱っているのはこちらも同じ。ムーンライトすらお手上げ状態の中、レオンはなんとか方角だけでも掴むべく策を巡らす。
そんな中、不自然な音が聞こえた。
「…何か、音がしません?」
「……下の方からのようだ」
ムーンライトが示すのは地下。地下から何やら物音がするようなのだ。
レオンも下の方を見て、それから結論を出す。実にシンプルではあるが。
「…どうやら、何者かが地下を掘り進んでいるようですね。こちらに向かって」
「偶然か、はたまた我々を探してか。…圧倒的に前者だろうがな…」
もしも後者だったら、それこそとんでもないことだ。ただでさえ、地下と地上とでは探知が遮断されるのが常識ともいうべき理屈だから。
そして、その物音の主は姿を現した。

「はーっ、やっと出られた!」
「…………」
「あの…どちら様で?」
出てきたのは、頭のバンダナと大きなつるはしが特徴的な青年。洞窟探検でもしていたのか。
レオンからの問いに、青年は堂々と答えた。
「俺はモルト。辺境世界で考古学者をやっている者だ。ついでに、こっちは相棒のピック」
「つるはしが相棒なのか…」
辺境世界"で"と言ったことには何かしらの意味でもあるのだろうか。それよか、ムーンライトはモルトが"相棒"と言ったピックを眺め、呟いた。
「…今、辺境世界"で"って言いましたよね?ということは、状況が分かっているのですか?」
「こちとら考古学歴300年、それくらい分かってるさ。空間そのものが異常になって、それが原因で辺境と月光が融合してしまったのだろう?」
「確かに、理解しているようだ」
レオンからの問いにアッサリと答えるモルト。学歴300年という言葉には、以前辺境世界に飛ばされた際にフィリーから教えてもらった辺境族の特性を考慮した結果、驚くことはなかった。
「凄い地震が起きたかと思いきや、眩しい光が差して、それからまた地下特有の暗さになった。それで何事かと掘り進んでみたら、今の世界の状況が目に飛び込んで、推理したってわけだ」
「果たして考古学でそういう事情が調べられるか否かは疑問だが、理解が早いのはいいな」

モルトの理解の早さは、彼自身からの説明ですぐ判明した。お互い自己紹介も終えて、さてどうしようと考えていると、モルトが提案してきた。
「こちとら、どっかの誰かさんのイタズラで故郷そのものがないがしろにされたんだ。いっそ、その誰かさんをやっつけてしまわないか?」
「誰かさん?もったいぶらずに言えばどうだ」
「んじゃ、単刀直入に。ネヴィアっておバカをやっつけるってのはどうよ」
「ネヴィアを!?」
その提案には、まずレオンが腰を抜かす程に驚いた。戦闘員でもないのに打倒ネヴィアを掲げるということを、視野に入れていなかったからだ。
「まず、仲間を捜さないとな。きっと、散り散りになって彷徨ってる筈だ」

かくして、いきなりのモルト参入を経て、レオンとムーンライトは仲間を捜すことに。

(122.30.10.204).. 2009年01月06日 07:56   No.220016
++ クォーツ (オリカ王)…195回       
来週には学校なので、そろそろ更新ペースが落ちてくると思います。
本日も1本で。

スターリィを始め、流星族の仲間達と少しずつではあるが合流しているセイガ。早く残りの仲間と合流し、体勢を立て直さなければならない。
このビッグバンは世界全体に及んでいるのだからネヴィアも似たような状況になっているであろうことを願いつつ、歩を進める。

やがて、セイガにとっては見覚えのあるシルエット2つを見つけた。向こうは気づいていないようなので、声をかけてみる。
「おーい!」
「あれ、その声は…セイガ?」
「そうだ、セイガだ!フィリー!」
そう、以前辺境世界に飛ばされた際、大雑把ながら世界の説明をしてくれた上に、道案内の手はずまで整えてくれたフィリーだ。その傍にいるのはランストル。こちらを向き、会釈する。
久々の再開ということで握手しようとしたセイガだが、それは突然阻まれた。
「おい貴様!議長閣下とどういう関係だ!?」
「迂闊に触れることは許さんぞ!」
「え、あ、おい!?」
思わず気圧されるセイガ。彼に刃を突き立てるのは、稀身族の兵士辺りであろうか。変な発言は彼らを刺激しかねない。よって、返答に困った。
「こらこら!彼は僕の知り合い。あと、議長閣下っていうのは慣れないからやめて」
『申し訳ありません、議長』
兵士2人は声を揃えてフィリーに謝罪し、セイガに対しても申し訳なさそうに刃を収めてくれた。

「なんだ?議長って、そんなにエラいのか?」
「まぁ、今の辺境世界では最もエラい…かな。最高権力者とかいうヤツだね」
「いったい、いつの間にそんな身分に…」
ひとまず、互いに事情説明。
セイガは、フィリーに対して当然の疑問を投げかけた。セイガ他部族王組が辺境世界に来た頃は、コンクル・シオンが統治していた筈である。
しかも、あの頃は議長という階級はなかった筈なのに、いつの間にできたのか。

「……とまぁ、そういうわけで、辺境世界の政治体制は根本から見直された。それで新たにできたのが、月光世界と似た統治システム。
4区域のリーダーと中央の議長が連携して取り組んで、カバーしきれないところは政治三幹部の出番ってわけ。彼らは裏方に近いね」
セイガの疑問に、フィリーは丁寧に説明してくれた。綿密に説明してくれたものだから、回答に30分弱を要したのは内緒の話。
「なーんだ、パクリか」
「いやいや、今でこそ"月光世界と似た"って言えるけど、それは今ここでシステムを知ったからだよ?設立当時は知らなかったんだ」
「分かってるって…。目がマジだぞ?」
「お前が悪いと思うが…」
つい癖が出てしまい、冗談と取りづらい冗談でフィリーのひんしゅくを買ってしまったスターリィ。セイガの言うとおり、自業自得である。
「新しい統治システムはね、僕が考案したんだ。それがどういう引き金になったのか、僕が議長になって、おまけにランストルが書記。さすがに議論は呼んだけどね」
「だよなぁ。お前さんのようなガキんちょが世界の統治だなんて、考えづらいからな」
「むっ…」
「スターリィ、また…」
「あ、スマン」
またもひんしゅくを買うスターリィ…。そろそろこの茶目っ気を直さなければいけないのでは―そう危惧するセイガであった。

(122.30.10.204).. 2009年01月08日 05:31   No.220017
++ クォーツ (オリカ王)…196回       
えー、めっちゃ長らく休止してました。
不幸な事故でしばらく動けなかったんです。
まともに動けるようになったので、更新再開していきますですハイ。
辺境族の面々と合流してゆくセイガ達。一方、ネヴィアもようやく部下と合流…。

『ネヴィア様!!』
気がつけば夜になっていたが、そんなことも頭に入らぬまま呆然と彷徨っていたところへ、聞き覚えのある声が聞こえてきた。一瞬幻聴かとも思えたが、その考察はすぐに捨て去った。
「ネヴィア様、よくぞご無事で」
「他の連中は?」
「分かりませんねェ」
「俺らも、気がついたら孤立状態だったんで」
バグレンがネヴィアの身を案じ、ネヴィアからの問いにはソイルとスピアが順に答える。一方でスエンは、ただただ空を見ている。

「…どうした、スエン?」
「……月が…赤い」
「月ィ?お前、またそんなモン見てんのかよ。飽きねぇなァ、いっつも…」
ネヴィアからの声に気づき、静かに答えるスエン。どうやら月を見ていたようだが、確かに今の月は赤い。新世界故のものなのか、それとも何かの前兆なのか。
もっとも、彼が月を見るのは毎晩のことなので、ソイルはやや呆れているが。
スエンが、唐突に話し始めた。
「赤き月は、戦いを促す月…。俺に、戦え、戦え、やっつけろと言っている…」
「オイオイ、お前の頭大丈夫か?第3者から見られたらただの変人にしか思えねぇんだけど」
「月の言葉は、月より来たりし者にしか分からないさ…」
「つまりは仲間はずれかよ…つまんねぇの」
付き合いきれないと言わんばかりに、ソイルはスエンに対しそっぽを向いてしまった。ネヴィアも特に深く聞いてはいないようだ。

月と繋がりがあるというスエン。ソイルからすれば"変なヤツ"程度の存在だが、実際にはそんな軽い言葉で片づけられるような存在ではないことに、ネヴィアですら気づいていなかった。

(122.30.10.204).. 2009年02月05日 04:59   No.220018
++ クォーツ (オリカ王)…197回       
合流エピソードばかりというのも芸のない話なのと、いい加減私に残された時間が少ないのとで一気に連合軍結成後までなだれ込みます。
展開が強引ですが、ご了承ください。あと、ここからセイガら部族王組と闇月族の最後の幹部との勝負を描いていきます。後日。
これを投稿した後、最後の幹部組のデータも投稿しておきます。

ビッグバンから3日が過ぎ、各部族共に体制を立て直しつつある。敵味方問わず。
更には辺境族の面々も多くセイガらの勢力に加担し、勢力拡大がなされていた。両者が打ち解けるのに時間はかからず、かつて政治三幹部が心配していた種族間での抗争は起きなかったようだ。

後日、セイガら部族王組は、辺境族の面々と打倒闇月族の名目で完全な同盟を結ぶことになった。
辺境族の面々が総出で交換し合った情報により、新世界に対応した地図もできた。特殊な方位磁石も作られ、方角も分かるようになった。
これらを活かし、合流場所を東側のエリアに設定した後、部族王4人と政治三幹部&フィリーとで同盟の握手が交わされた。他のメンツの間でも特に大したトラブルは起きていない為、満を持して「打倒闇月族同盟」が結ばれたのであった。

かくして、打倒闇月族を果たすべく、ネヴィアらが待ち構えているであろう世界の中央への突入計画の打ち合わせを始めた。
だが、この打ち合わせが意外と難航した。何しろ未経験な地形での戦いになる為、作戦が立てづらいのである。険しい山脈がまるで城壁のように世界の中央を囲んでいる。これでは簡単には突入できそうにない。
かといって、部隊全員が飛べるわけでもない。効率的な突入手段が出てこないまま、時間だけがむなしく過ぎていく。

闇月族は、そこを狙っていた。

ネヴィアの力を使って、4方面にそれぞれ部隊を転送。険しい山脈に立ち往生することなく、迅速な部隊展開をやってのけたのである。
基本的な部隊構成は以前と同じく鬼が中心だが、以前と比べて武装レベルこそ高いものの、数が少ない。以前の3分の1程度であろうか。
一気に戦力を集結させられる前に、方面軍の状態の内に叩いてしまおうというのがネヴィアの戦略である。スエンら4人は、ビッグバンの後も尚生き残っている最後の隊長格である。本来なら指揮系統の確保の為、手放してはならない存在だが、戦闘員である鬼の数もかなり減ってしまっていることから、一気に送り出してしまおうと方針転換したのであった。それ故の進撃計画である。

4方面に散り散りになっているアドベンチャーチームの面々がこれを察知し、急いでそれぞれの方面の部族王に伝えていく。
またもや闇月族に、ネヴィアに先制攻撃された形だが、今回ばかりは体制は整っていた。
最終決戦の前半戦が、始まろうとしていた。

(122.30.10.204).. 2009年02月06日 05:54   No.220019
++ クォーツ (オリカ王)…200回       
さて、今回は音程→時空→気功→流星の順で王VS幹部の話を描いていきます。
セイガの対戦相手であるスエンには、他とは違った秘密があるのでございます。
では、シンフォニーVSソイルのお話を。今日はAパート。決着のBパートは明日に。

「ウォールシュート!」
「ショベルナックル!」
鬼達と音程族の精鋭部隊がぶつかる。先陣を切るのは機動力に優れるミキラーとショベラー。
ミキラーの特殊セメントで複数の鬼の動きを封じ、ショベラーの一撃でまとめて粉砕する。
「ボルテックウェイブ!」
一方、アドルも大暴れ中。自身の電気操作能力をフル活用して、電撃の波を作って襲い掛かる。これまた多数の鬼が倒れていった。
更に、この電撃の波は威力こそ弱まりながらも後続の鬼達にまで被害を与え、より音程族部隊を有利にしていった。
だが、ミズーリには気がかりなことがあった。

「(鬼の数が、少ない?)」
そう、以前の戦いの時よりも、鬼の数が圧倒的に少ないのだ。音程族の精鋭部隊も戦っているが、下手すると自分も含めた辺境世界組だけで勝ってしまいそうなくらいに少ない。
陽動部隊なのか、はたまたネヴィア側で何かしらのトラブルでも起こったのか。それなら、おそらくビッグバンの影響だろう。
闇月族の戦力の大半が人工生命体なら、その可能性も大きいだろう。無論、ミズーリの中では仮設であって、確証はないが。

しかし、その仮設は見事に的中していた。

一方で、ただ1人崖の上に立つソイル。戦場は、起伏の激しい谷間。その崖の下では、鬼達と音程族精鋭部隊がしのぎを削っている。
崖の下も広いようで、これほどの大部隊が展開していてもまだ地面がよく見える。
だが、ソイルの標的は下で戦っている者達ではなかった。標的(ターゲット)は―
「(さァ…パーティーの時間だぜェ…!!)」
愛用の銃を構え、照準を合わせる。その先には、シンフォニーがいた。
そして、引き金を引いた。放たれた閃光は、まっすぐにシンフォニーへと向かっていく。だが…
「爆烈焦(バクレツショウ)!!」
「シャン・トウロン!!」
突如放たれた炎と、舞い上がった水と風の竜によって、閃光はシンフォニーに届く前に止められた。閃光と炎が拮抗し、やがて爆発を起こした。

「なんだよォ、今の一撃はァ!?」
必殺だと確信していた一撃が、どこからともなく飛んできた炎と竜によって潰された。思わず怒って炎と竜の主を探すソイルだが、ご丁寧に主の方からやってきた。
「そこまでだ!」
「やっぱり隠れてたのね、隊長格!」
炎の主ことフォーコと、竜の主ことミズーリがソイルを挟み撃ちにする。
「オイ…そこのアマ…なんで俺の位置が分かったってんだァ…?」
ソイルが、苛立ちもあらわにミズーリに問いかける。だが、即答で一刀両断してくれた。
「戦術的にこーゆーのはよくあることだし、第一アンタは殺気が強すぎるのよ。戦いながらでも簡単に位置を把握できたわ」
「相手が悪かったってこったな」
そう、ソイルからは異様な程に強い殺気が放たれており、それはミズーリのセンサーに簡単に引っ掛かった。そして位置関係から、狙撃するのではないかと推理。
一撃が放たれるその瞬間を見計らって行動開始。それぞれの必殺技で閃光を相殺し、同時に狙撃の主を挟み撃ちにして確保する。
それが、ミズーリの組み立てた戦略であった。

(122.30.10.204).. 2009年02月08日 07:11   No.220020
++ クォーツ (オリカ王)…201回       
昨日は掲示板に入れなかったので、1日ズレて今日がBパート。シンフォニーVSソイル。
長くなったので2分割です。
さて、いきなり企みを暴かれて挟み撃ちにあってしまったソイルですが…?

「なめんなよ…」
今まさにシンフォニーとフォーコによる同時攻撃が行われようとしたその時、ソイルは呟く。
「なめんなよ…!」
攻撃が迫る中、彼から出てくるその呟きは次第に強く、大きくなっていく。
「なめんなよォォォォ!!」
『!?』
そして爆発した。彼の怒りが。経験が浅いとはいえ、自分とて闇月族の幹部の1人だ。こんな簡単に、しかも一般兵クラスの相手に倒されては笑い者にしかならない。無様でしかない。
そんなことは、彼自身が許さなかった。魔力を爆発的に開放し、彼の周囲を爆破したのだ。その爆発にモロに巻き込まれたミズーリとフォーコは痛手を受けてしまう。だが、ソイルは攻撃してきた。
「お前らみたいなヤツら相手じゃ、死んでも死にきれないんだよォォ!!」
そう叫ぶやいなや、1丁だった筈の彼の銃が2丁になった。実は2丁存在していて、普段は片方を隠しているのだ。敵の意表をつく為に。
「だからァ……ぶっ飛べェ!!」
その2丁の銃を、ミズーリとフォーコの腹に突きつけた。それと同時。備えられていたクローが作動、突きつけた対象を捕まえ、逃がさない。
「いつもは1丁でやってるけどなァ…お前らはムカついたから特別だァ!」
「ちょっ、何コレ!?」
「逃げられない…!?」
もがく2人をクローが容赦なく捕まえている中、ソイルは引き金を引いた。
「ストライク、アウト!!!」
その瞬間、2人を強烈な閃光が襲った。

その頃、シンフォニーは他の仲間達と共に鬼の討伐をほぼ完了。隠れている鬼がいないか、念を入れて捜索しているところだった。
「鬼は…もういないかしらね」
「鬼はいなくても…敵ならいるぜェ!!」
「!?」
鬼はいなかった。だが、その鬼を率いていた者、即ちシンフォニーらにとっての敵はいたのだ。今回の闇月族部隊の隊長ソイルだ。
「こんなヤツら相手に、今回の隊長であるこの俺が負けるとでも思ってたのかよォ?」
そう言うと、両手に持っていた何かをシンフォニーの目の前に放り出した。
「フォーコ!?ミズーリ!?」
そう、2人は結局、ソイルの必殺技「ストライクアウト」によって戦闘不能になっていた。ゼロ距離で放たれる彼の射撃に耐えられる者はそうそういない。ソイルは得意げである。
「で、今度こそ音程王を、お前を撃つぜェ!」
言うやいなや、2丁の内の片方の銃をシンフォニーに突きつける。ところが。
「……アレ?」
どうしたことだろう。突きつけた銃の砲身が消えている。どうしたことだろうと見回してみると、ソイルの顔から血の気が引いた。

(122.30.10.204).. 2009年02月10日 07:03   No.220021
++ クォーツ (オリカ王)…202回       
Bパートその2。次回からは時空族編です。

「……なんじゃ、こりゃァァァァ!?」
無数の光の剣が、彼を取り囲んでいるのだ。更に彼の前方斜め上には、巨大な剣が浮いている。切っ先が傾いたら、真っ二つにされそうだ。
「あなた、私の仲間を傷つけておいて、無事で済むなんて思わないでちょうだい…」
「こ、こんなの、ははは、ハッタリだぜ!!」
静かに、そして強く告げるシンフォニーにビビりながらも、残った銃を最大出力で撃つ。
しかし、放たれた閃光がシンフォニーに届くことはなかった。何故なら、巨大な剣が動き、盾の役割を果たしたからだ。再びその切っ先をソイルに向け、シンフォニーが告げた。
「考えてみれば、隊長格がコソコソとしているのが妙な話だったわね。まぁ、時空族の方に以前来たヤツはそうだったみたいだけど。
もう一度言うわ。私の仲間を傷つけておいて、無事で済むなんて思わないでちょうだい。
…裁きの譜歌(ジャッジメント・ソング)!!」
シンフォニーが叫んだ瞬間、光り輝く巨大な剣がソイルに振り下ろされた。
「ノオォォォォォォォォ!!」
振り下ろされた剣は彼を頭から真っ二つにし、シェードを倒した時と同じく大爆発を起こした。

「大丈夫?」
「な、なんとか…ね」
「ひどい目にあった…」
ソイルは消滅し、残っていた鬼達も他の仲間達が始末してくれた。というわけでミズーリとフォーコの回復をしていたシンフォニー。
彼女の頑張りもあって目を覚ました2人は、取り敢えず大丈夫そうだ。特にミズーリは、そういう体質なのだろうか、回復が早い。
「あんな長い砲身でゼロ距離射撃するとは…。完全に盲点でしたよ」
「寧ろ、ああいう砲身だから警戒するべきだったかもしれないわね」
自分達が受けたソイルの必殺技「ストライクアウト」は、長い砲身を活かしたゼロ距離射撃。2丁の内片方を隠していたことといい、ソイルは相手の意表をつくことを得意としていたようだ。
もっとも、シンフォニーと対峙した時には逆に意表をつかれて敗れたわけだが。

被害こそ少なかったとはいえ、それでも体勢を立て直す必要がある。だが、当然ながら襲撃を受けたのは音程族だけではなく…。

(122.30.10.204).. 2009年02月10日 07:24   No.220022
++ クォーツ (オリカ王)…203回       
さて、今日は時空族編Aパート。
音程族編と同じく、AパートとBパートの構成でお送りいたします。
レオンの活躍はBパートにおあずけ。Aパートでは、辺境世界編で"あの"ルナ族に会いたがっていた赤のルナ族が登場です。

「雑魚は我々で倒す!1匹たりとも、レオン様の下へはいかせるな!」
『了解!!』
鬼達が襲来し、攻撃をしかけてくる。それに対し、リグレットを中心とした防衛部隊が防衛ラインを形成し、反撃する。
いつにない数の少なさは大いに助かるところなのだが、それをカバーするかの如く、鬼達1体ずつの武装レベルは向上している。
おかげで苦戦する者も少なくない。
「さっさとやっつけて…うわっ!?」
調子よく攻撃していたスカイだが、ボーッとしていることがアダになって背後から普通に攻撃された。軽傷で済んだのは、運がよかったからか。
だが、まともに地に伏してしまった格好なので、次の一撃をまともにくらえば無事ではすまない。パートナーのアースも、救援は難しそうだ。

だが、その一撃がスカイに届くことはなかった。何故なら、いきなり落とし穴に落ちたから。

「大丈夫かい?」
「あ、あぁ」
時空族関連で落とし穴という芸当をなす者は1人しかいない。そう、以前防衛用に仕掛けた筈の罠で仲間に迷惑をかけてしまったリライである。
「今回はちゃんと事前予告してたし、目印もつけてたから分かってただろう?」
「え…」
確かに"罠を設置する"と予告されてはいたが、目印までは気付かなかった。だが、よく見ると罠と思しき場所には小さく×印がついている。
そして、仕掛けられた罠に鬼達はことごとく落ちていったのであった。

「さて、こっちはこっちで、狩るとしますか」
事前通知していただけあって、今回はさすがに見方が罠にかかることはない。ちゃんと×印に気付いてくれているようで、リライは安心した。
そして、自分自身も愛用の弓"ムーンティアー"で鬼を仕留めようとしたその時だった。
「うぉりゃああああああっ!!」
『ギャギイイィィィィ!』
リライにとっては聞き覚えのある声と一撃が、彼に迫らんとした鬼達をまとめて粉砕した。
「遂に再会できたね…リライ!」
「レイル!どうして!?」
声と一撃の主は、かつて辺境世界から旅立つリライを見届けたレイルである。だが、リライは知らない。レイルがレミアと彼女に導かれたイテンの助けによって封印カプセルから目覚めたことを。
「分かってないわねー。アタイのアナタへの愛!それが奇跡の会合を実現させてくれたのよ!」
「世界が大混乱するような事態でも愛を語るんだ…。君、立派だよ…(嫌な意味で)」
合流に至るまで、即ちリライが知りたかった背景事情の説明は思いっきりはしょってくれた。
正直、はしょるにも程がある。というより、殆ど説明になってない。と、そこへまた鬼が数匹。
「アタイとリライの愛を邪魔しないでよね!必殺、ルナティックダンス!!」
ヌンチャクがモチーフである彼女の武器"ソウセツ"を振るい、あっという間に一掃。
「…仕方ない、詳しい話は後でしてもらうよ」
「オッケー」
そしてルナ族カップルは、敵陣に突撃していった。それが鬼にとっては大惨事だったというのは言うまでもあるまい。

だが、今回の幹部であるスピアは別行動。ターゲットであるレオンをピンポイントで仕留める為である。対決の時は、案外いきなりやってきた。

(122.30.10.204).. 2009年02月11日 07:30   No.220023
++ クォーツ (オリカ王)…204回       
さて、VS闇月族部隊の時空族編Bパート。やはり長くなったので、2分割でございます。
いきなりのレオンとスピアの決闘です。
そして遂に、謎の多かったムーンライトの行動方針が白日の下に晒されます。
スピアの紹介は、ブログで述べた通り、次回の月光神羅の記事にて行いますのでお待ちを。

「…来たか」
何かを察し、暗闇の中で顔をあげるムーンライト。ここがどこなのかは、彼しか知らない。
「何者にも邪魔はさせん。今こそ果たそう、先代の王達より託された、我が使命を…!」
そう呟いたムーンライトの目は一瞬強く輝き、そしてこの暗闇より姿を消した。

一方、次第に数で勝る時空族部隊が鬼達を押していく中、王と隊長格の決闘が突然始まっていた。生い茂る林を利用し、悟られない内にスピアがレオンに白兵戦を仕掛けてきたのである。
スピアもソイルと同様、ピンポイントで王を潰してしまおうと考えたようだ。ただし、狙撃ではなく、王が孤立している上での白兵戦で。
「オラオラオラオラ、逃げ回ってばかりなのは腰抜けだからなのかぁっ!?」
「(駄目だ、狙い自体は闇雲だけど、かえって隙を伺えない!助けも呼べないし…)」
レオンは実質上、1人で戦うしかなかった。援軍を呼ぼうにも、スピアのヨーヨー型武器「シャマシュ」による変幻自在かつ積極的な攻撃によってその暇がまるでない。
スピアからすれば、呼ばせるつもりなど毛頭ない。援軍が来れば、戦力面で劣っている自分にはかなり不利になるからだ。

鬼達もいつになく粘り強い抵抗を続け、戦闘が始まったのは昼間だった筈が、いつの間にか夕方になっていた。鬼達に細工でもされているのか、倒しても倒しても立ち上がってくる。
時空族部隊の面々は、まるでゾンビを相手にしているかのような錯覚に襲われた。
その一方で、レオンとスピアの決闘もこう着状態に陥り、お互いひどく消耗していた。

「なかなか、やりますね…この僕に、反撃の隙を伺わせないとは…」
「そっちこそ…そんなことを言ってる割に、キッチリとカウンター仕掛けてるじゃんか…」
スピアの怒濤の攻撃も、レオンの必死のカウンターも、かすりはしてもクリーンヒットには至らない。お互い決定打を与えられないまま、時間だけがむなしく過ぎていた。
だが、スピアが唐突に踏み込んできた。とっさに身構えるレオンだったが、そんな彼に容赦なく炎の刃が襲い掛かってきた。
「フレイムガジェッター!」
シャマシュの4枚の刃。これに魔力の炎をまとわせ切れ味を増し、目標を切り裂く。これがスピアの必殺技「フレイムガジェッター」である。
至近距離からのこの一撃は、レオンにトラベリング・ブレードを使わせる暇をなくした。レオンの胸に炎の刃を回転させながらシャマシュが迫る。
だが、それは"乱入者"によって止められた。

果たしてスピアは知っていたのだろうか――シャマシュの刃を完全に止めた"乱入者"を目にした瞬間、顔から血の気が引いていた。
「…我が使命を果たす障害となりし者は……誰であろうと全て切り捨てる」
「…おおお、お、お前は…」
「な…っ」
どういうことか、シャマシュが全く動かない。状況が飲み込めず、レオンも立ち尽くすが、"乱入者"はかまわず動いた。
「隠密親善外交大使、ムーンライトが奥義…」
ブレードでシャマシュを払いのけ、たたらを踏むスピアに一瞬で肉薄する。そして…
「暗転月光切り(あんてんげっこうぎり)」
両腕のブレードを閃かせ、スピアをシャマシュごと×の字に切り裂いた。

(122.30.10.204).. 2009年02月12日 14:44   No.220024
++ クォーツ (オリカ王)…205回       
Bパートその2。次回からは気功族編。
いきなりスピアに一撃を見舞ったムーンライト。
果たして、彼の真意とは?

「が…っ!!」
シャマシュは砕け、スピア自身の体にも大きな×の字の傷ができている。
その光景は、レオンには信じがたかった。それどころか、今自分達を照らしている夕焼けのアクセントが少し怖かった。
スピアをあっという間に切り捨てたムーンライトのシルエットが、悪魔か何かに見えたから。
「こ、この…」
辛うじて死には至らなかったか、立ち上がろうとするスピア。だが―
「……」
「がはっ!」
ムーンライトは、まるで機械のようにブレードを振りかざし、スピアをもう一度切り捨てた。3本の傷を受けたスピアは、今度こそ沈黙した。
彼らしからぬ光景に、レオンは呆然と立ち尽くす。
「…どうした、時空王」
「…え、あ、いえ…ありがとうございます」
だが、口調は今までと同じく淡々としている。取り敢えず時空族の味方であることに変わりはないようだ―レオンはそう思い、ひとまずスピアを倒してくれたことに対する謝礼をした。

「(…しかし、サイエンスとの戦いではこんなことはしなかった…。相手がスピアという赤の他人だったから?それとも、何か事情が…?)
それにしても珍しいですね、貴方自ら敵を倒しにくるなんて」
ムーンライトの真意が知りたかった。何故、今回は有無を言わさず介入してきたのか。
すると、今回は以外にもすんなりと説明してくれた。しかも、かなり明確にだ。
「貴君と接するようになる少し前、先代の部族王4人から言われたことがある」
「先代から…?」
「そうだ。この時既に老いていた先代の部族王達は、私に自分達の願いを託していた。
『どうか、未来の王達を守ってほしい』と」
唐突とも思えるくらいすんなりと、ムーンライトは自らが抱える背景事情を語り始めた。
「その後、分断災害で辺境世界に落ちていた間、私はこの務めを果たせないのではないかという絶望感と戦いながら日々を過ごした。
しかし、お前達まで辺境世界に落ちてしまったと知った時、私は先代の王達から与えられた使命を果たすと決めた」
ムーンライトがシャドウと名乗り、レオンらの前に立ちふさがった際、何故かレオンにメッセージを伝えただけで去ってしまった理由。
それは、先代の王達から託された願い「未来の王達の存続」を叶えるという使命を果たす為だったのだ。
もっとも、あの時は他3人の番人もいた為、レオンしか戦闘から逸らすことはできなかったようだが。
「それから月光世界と辺境世界を繋ぐゲートを見つけ出し、2つの世界を行き来できるようになった。お前達が月光世界に戻ると同時、私も月光世界に帰還し、お前と合流したのだ」
ムーンライトいわく、他3人の方には幸運にもアドベンチャーチームの面々が配置されていた為、レオンの護衛に専念できたらしい。
「では、今後も…」
「お前と共にゆく。闇月族を倒した後は、再び親善外交大使として世界を駆けるとしよう」
そう言ったムーンライトは、いつの間にか姿を消していた。だが、戦いには必ず駆けつけてくれるだろう。レオンはそう確信していた。

その頃には、時空族部隊も鬼達の討伐を完了していた。もう生きている鬼は1匹もいない。
ゾンビの如く立ち上がってきた鬼達も、スピアが倒れると同時、その覇気を失っていったようだ。次々と時空族部隊に蹴散らされたのである。

闇月族を、ネヴィアを倒した先に何があるのか。そんなことに思いを馳せつつ、レオンは夕日に染まってゆく世界の中心を見ていた。

(122.30.10.204).. 2009年02月12日 15:50   No.220025
++ クォーツ (オリカ王)…206回       
VS闇月族部隊の気功族編Aパート。
…そういえば、暗殺乱具とか謎の欠片とか、私からすれば謎な設定がありますな。
まぁ、そこらへんはウェリスさんにフォローしてもらいましょうかね。

「いくら武装を変えても、こっちからすりゃ無意味ダスよ!」
ガンタスが威勢よくハンマーを振るう。受け止めようとした鬼は、耐え切れず潰される。
避けた鬼には別な追撃がくる。逃げる気が両者に全くない為、凄い消耗戦になっている。
とはいえ、数で圧倒的に劣る鬼達の方が劣勢に立たされているのは言うまでもなく、次第に押され始めていた。だが、"異変"が起きた。
「…な、なんだ、これは…力が…抜ける…!?」
「下に用はない、失せろ」
そう言うやいなや、鬼達を従える巨漢はその逞しい腕でゼロを殴り飛ばした。近くにあった岩に吹っ飛ばされたゼロは、沈黙した。

「ゼロ!?大丈夫か!?」
これには思わず飛び出てきたグレンドル。とっさにゼロのダメージを確認するが、どうやら失神に留まったようだ。思わず安堵のため息をつく。
「見つけたぞ、気功族の王よ」
「…おわっとぉ!?」
いきなり飛び掛ってきた巨漢。グレンドルはとっさに避けたが、巨漢の拳が先程までグレンドルのいた地面に大きな穴を開けた。
まず、パワーに優れていると分かった。
「俺のことを知ってるみたいだな。てめぇ、何者だ?」
「我が名はバグレン。闇月族の幹部の1人だ。お前を倒すようにと、ネヴィア様より命を受けた」
「つまりは、俺の敵ってか!」
突如グレンドルめがけて飛び掛ってきた巨漢、バグレン。この分だと、パワーだけでなくジャンプ力或いは脚力にも優れていそうだ。
そして何より、オーラが違う。アマノジャクのような狂った感じのそれではなく、戦うことに対して真剣に、命がけで臨んでくる。
まさしく、優れた武人だけが放つオーラだった。ネヴィアしか知らないが、彼は最後の幹部の中で最も早く生まれ、実戦を繰り返してきた。それ故に武人として目覚め、強くなったらしい。

「待て待て待て待て待て待て待て待てぇっ!」
「王様に挑むんだったら、ちゃんと護衛を戦いで突破しなきゃ!」
そういって勇み出たのは、西側にいるアドベンチャーチームのクレーラーとドリラーだ。
だが、とてもではないが幹部クラスを相手にできるだけの戦闘力はない筈だ。それでも勇み出てくる彼らに、バグレンは敬意を表した。
「大したものだ。相手がいかに強大な存在であろうと恐れず立ち向かう。それがお前達の言う、冒険者魂とかいうやつか」
「話が早いね」
「じゃあ、先手必勝といかせてもらうぜ!」
てっきり、あざ笑われるかと思いきや、逆にほめられた。若干拍子抜けしつつも、クレーラーが先制攻撃に乗り出した。
「ワイヤーフックパンチ!」
クレーンアームの先端部、フックの部分がジェット噴射でバグレンに飛び、その右腕を捕まえた。
「むん!」
「ぅおおっ!?」
バグレンは右腕を思い切りスイングさせ、クレーラーを投げ飛ばそうとする。だが、クレーラーは近場にあった岩にしがみついて抵抗する。
「残念だな、お前さんと力比べする気はさらさらねぇんだよ!今だ、ドリラー!」
「マキシマムペネトレイト!」
「…むぅん!!」
ところが、クレーラーの先制攻撃はあくまで布石だった。ドリラーが改名した必殺技「マキシマムペネトレイト」でバグレンに迫る!

(122.30.10.204).. 2009年02月13日 06:35   No.220026
++ クォーツ (オリカ王)…207回       
欠片だのなんだのはパーフェクトお任せしますw
で、今回は気功族編Bパート。もはや恒例じみてる可能性もありますが、2分割。
すんなり終わるわけないんです、ええ(何

「…むぅん!!」
ドリラーの必殺技「マキシマムペネトレイト」がバグレンを貫かんとする。だが、バグレンはよりいっそう大きな力でクレーラーを引っ張る。
「うわぁっ!?」
「えええ!?」
今度は踏ん張りが利かず、思いっきり振り回されたクレーラー。バグレンはそのままクレーラーをドリラーに叩きつける。
「てめぇ!!」
「ふん!!」
グレンドルが仕返しとばかりに拳を繰り出すが、バグレンはいとも簡単に止めてしまう。それどころか、バグレンの両手には紫の炎が灯り始めていた。
「うわっち!」
思わずバグレンから離れるグレンドル。だが、紫の炎とはどういうことか。
「…我が奥義、受けるがよい。
獄焔連衰陣(ごくえんれんすいじん)!!」
そう叫ぶと同時、拳から炎が飛んだ。落ちた場所から炎が伸び、バグレンを中心とした大きな円を描く。更に炎が伸び、星を描く。
「こ、これって…魔方陣?」
「……なんだ、だんだん、力が抜けてくるぞ…?」
「俺もだ…どうなってんだよ、こりゃ!」
ドリラーの言うとおり、炎が描いているのは魔方陣である。そしてバグレンの発する炎には、相手の気力を低下させるという恐るべき特性がある。
よって、この魔方陣の中にいる限り、バグレン以外の誰一人として気力を保つことはできないのである。クレーラーはもちろん、グレンドルですら耐えられないだろう。
「相手の気力を絶つ炎の陣、これぞ我が必殺技
『獄焔連衰陣(ごくえんれんすいじん)』だ」
魔方陣の中央では、バグレンが余裕の表情でグレンドル達を見やっている。
「くそ…変な真似しやがって…っ!」
「終わりだ…気功族の王よ!」
思わず奥歯を噛みしめるグレンドルに対し、バグレンは動いた。グレンドルにトドメを刺すつもりだ。だが、グレンドルは満足に動けない。
終わるのか―グレンドルがそう覚悟した時だった。

バグレンとグレンドルの間に割り込むように、けたたましいサイレン音が聞こえてきた。音は2種類。消防車のものと、パトカーや救急車のもの。
思わず動きを止め、バグレンもグレンドルも音のする方を見る。ドリラーやクレーラーも同じだったが、この2人にとっては聞き覚えのある音らしい。
「おーい!ビルダー!こっちこっちー!」
「遅かったじゃねぇか」
ドリラーが思わず立ち上がり、音のする方に向けて手を振る。クレーラーも音のする方を向き、安堵のため息をつく。「やっと来たか」と言わんばかりに。
彼らの見据える方向から、大きな赤いビークルが姿を現した。サイレンをつけていることも含め、形状は消防車がモチーフか。
続いて、その両脇から2台の白いビークルが飛び出してきた。こちらから見て右側は救急車、左側はパトカーがモチーフだろうか。

(122.30.10.204).. 2009年02月14日 07:33   No.220027
++ クォーツ (オリカ王)…208回       
Bパートその2。次回からは流星族編。
大変お待たせしました、遂にサイレンビルダーの登場です。

「エイダー、ポリス、アタック!」
消防車ビークルから声が聞こえた。その声を受け、救急車型の「エイダー」とパトカー型の「ポリス」が飛翔。バグレンを攻撃し、後退させる。
「そんじゃ、消火作業といくぜ!」
「頼むぜ、ファイヤーの消火能力ならこれぐらいあっという間だろうからな」
「ファイヤー」と呼ばれた消防車型ビークルは、車体の左右から固定用のアンカーを展開し、車体上部にあるアームが動き出す。
そして、ファイヤーが叫ぶ。
「ダブルウォーターシュート!」
その言葉と同時、噴射器から勢い良く水が放出された。瞬く間に魔方陣の炎が消えていく。
「消火完了!助太刀するぜ!」
そう言うと、ファイヤーは2機を呼び寄せた。

「エイダー、ポリス、合体!!」
3台のビークルが光に包まれ、ファイヤーを中心にエイダーが左に、ポリスが右に繋がる。そして、赤と白の機獣が姿を現した。
「サイレンビルダー、合体完了!!」

「出たー!アドベンチャーチームの心強い味方、サイレンビルダー!」
「待たせたな!真打ち登場だぜ!」
「合流が遅すぎなんだよ」
「すまなかったな。一気にいかせてもらうぜ!」
ドリラーの歓声とクレーラーの苦言に答え、身構えるバグレンを見やる。構えつつ、グレンドルに自己紹介する。
「よっ、気功王殿。俺はサイレンビルダー。ドリラーのご紹介通り、心強い味方だぜ!」
告げると同時、駆けだした。しかも、グレンドルですら目を見張る程に早く。
たじろぐバグレン。かまわず、パンチ4発と豪快な回し蹴りを見舞う。バグレンからの反撃はしゃがんでかわし、強烈なアッパーをかます。
回転しながら吹っ飛ぶバグレン。
「オイオイ、俺の出番を奪うなってんだ!」
「おっと、そいつは悪い。んじゃ、俺達で一斉攻撃といこうぜ」
並び立つドリラーとクレーラー。まずこの2人が仕掛ける。
「ワイヤーフックパンチ!」
クレーラーがフックでバグレンをとらえ、転ばせる。そのまま放り投げ…
「マキシマムペネトレイト!」
ドリラーが畳み掛ける。左わき腹をドリルで思い切りえぐり…
「トリプルリキッドボンバー!」
サイレンビルダーがメット部の1本とアームの2本、計3本の噴射器から強烈な水流弾を連射してバグレンを吹っ飛ばし…
「炎龍爆連舞(えんりゅうばくれんぶ)!!」
締めはグレンドル。まさに"舞"である連撃をバグレンに的確に叩き込み、大地に叩き落す!
バグレンは右手を空に向けて伸ばし、何かを呟いていたが、力尽きた。
伸ばした右手も下がり、動くことは二度となかった。

「助かったぜ、サイレンビルダー」
「いいってことよ」
改めて互いに自己紹介を終え、握手を交わすグレンドルとサイレンビルダー。
彼は今後愛称として『ビルダー』と呼ばれるようになった。
「しっかし、鬼の数がやたら少なかったのだけが気がかりだったな」
「何かの罠か、それとも…」
一方で、疑問に顔をしかめるクレーラー。やはり鬼の数が疑問に残るらしい。ビルダーも可能性をあげてみる。
「…ビッグバンの後で、レプリカが全部消滅しているとしたら…?」
以前、アマノジャクから闇月族について聞いていたグレンドルが結論を導き出した。

そう、ビッグバンによって人工物であるレプリカは全て消えうせ、闇月族は急激な戦力低下に見舞われたのだった。

(122.30.10.204).. 2009年02月14日 08:26   No.220028
++ クォーツ (オリカ王)…209回       
VS闇月族部隊、流星族編Aパート。
ブログでスエンの紹介をいつやろうかと迷いつつ物語は進めていきます。
2月も半ばですからね…。

他の部族が割と順調に攻略できたのに対し、流星族部隊は難航していた。
理由は、今回のセイガへの刺客であるスエンが従える、3体の獣達だった。
銀色の狼、緑色のワニ、紫色のシュモクザメ。この3体が鬼よりも酷く大暴れしているのである。
狼と戦えば素早さでズタズタにされ、ワニと戦えば大柄な図体と大あごで粉砕され、シュモクザメと戦えばハンマーのような頭で吹っ飛ばされる。
鬼はあらかた倒したが、この3体だけはうまくいきそうにない。特にワニは屈強で、ちょっとやそっとの攻撃ではビクともしない。
だが、やはり猛者に対しては力不足な面も見えた。3体が押され始めてきたのだ。
「くらいやがれ!バケモノめ!
 浄魔滅殺陣(じょうまめっさつじん)!!」
「3体だけで勝てる程、甘いわけではありませんわよ!光波瞬連斬(こうはしゅんれんざん)!!」
「お嬢様、突出しすぎです!
 疾風黒星迅(しっぷうこくせいじん)!!」
スターリィ、アスタリカ、レスターの3人が、それぞれに必殺技で迎え撃つ。
他の面々も必殺技を放ち、怒涛の必殺技ラッシュで3体を追い詰めていく。

スエン本人は、まだセイガの元へは辿り着けていなかった。何故なら、彼の前にはフウセイがいたから。どうやら、風が彼を導いたらしい。
「セイガの元へいく気か?それは無理だ」
「お前が阻むからか?風と共に」
しばし睨み合う2人。それぞれが武器を構える。そして、風が吹き、両者が駆けた。
互いの剣がぶつかり合う。だが、拮抗するかと思われたそれは、すんなりと勝負が決まってしまった。ぶつかり合いを制したのは…
「こ、こいつ…っ!?」
「雑魚は…どけ…っ!!」
制したのはスエン。しかも、圧倒的な差で。フウセイの剣を叩き切ると、今度はフウセイ自身を袈裟斬りにした。闇の魔力で。

「フウセイ!!」
「来たか」
なすすべもなく倒されたフウセイ。必死に呼びかけるが返事はない。スエンを睨むセイガ。
「安心しろ、峰打ちだ」
「何!?」
峰打ちで仕留めたというのか。だとすれば、スエンの剣に宿る漆黒のオーラがフウセイの意識を刈り取ったのか。スエンは淡々と告げる。
「雑魚に用はない…問題はお前だけだ、セイガ」
「貴様…何者だ!?」
「俺の名はスエン…。それと、お前の部下達が戦っている獣は、ルナウルフ、ルナリゲーター、ルナハンマーヘッド。俺の従える精霊獣だ」
呼ばれた順に、狼が、ワニが、シュモクザメが雄叫びを上げる。更にスエンは続ける。
「ネヴィアには疑念を抱いているが、お前の持つ信念、試させてもらうぞ」
「(ネヴィアに疑念を…!?)」
ひっかかる発言が混ざっていたが、それを考察する暇を与えずにスエンは挑みかかってきた。

(122.30.10.204).. 2009年02月15日 06:30   No.220029
++ クォーツ (オリカ王)…210回       
流星族編Bパート。2分割で。
他の幹部達とは違った考え方を持つスエン。
セイガの持つ信念を見極めようとする中、相対する力を持つ彼の瞳には何が映る…?

「どうした、その程度だというのか!?流星族の王たるお前の実力は!?」
「く、くそっ!」
スエンの猛攻に、セイガは防戦一方だった。彼の武器「光闇霊獣剣(こうあんれいじゅうけん)」から発せられる黒いオーラが殆どの攻撃を弾いてしまう。
更にこのオーラは重みにもなり、スエンの斬撃を受け止めようとすると、力任せではあるが一方的に弾かれてしまうのだ。
受け流さなければ、フウセイと同じような末路を辿っているに違いない。スエンの斬撃は、止めるより受け流した方がリスクは少ないのである。
だが、オーラばかりが問題でもない。まずスエンの攻撃そのものが素早く、なかなか反撃の糸口を見出せない。
自分の体ほどもあろうかという大剣を軽々と振り回し、しかし隙も少なく、僅かな隙も斬撃による風圧と刀身のオーラが埋めてくる。
「おっと、足元がお留守だぞ!」
スエンが素早く足払い。思いきり体制を崩され、隙だらけになったセイガに、スエンは迷わず、強烈な追撃を叩き込む。
「光闇霊獣剣が誇る、暗黒の奥義、魔性三日月斬り(ましょうみかづきぎり)!!」
光闇霊獣剣が漆黒のオーラをまとい、巨大な漆黒の袈裟斬りがセイガを襲う!
「簡単にやられてたまるか!!
 剛破光刃(ごうはこうじん)!!」
だが、さすがに防戦一方のままやられるわけにもいかない。セイガは剣に力を込め、魔性三日月斬りにぶつける。魔力が拮抗し、爆発した。
この爆発がスエンに大きな隙を作った。起き上がると同時、セイガはスエンの懐に飛び込み、
「受けよ、聖なる光!ホーリーブレイム!!」
「うおぉっ!?」
セイガお得意の光の魔術が、超至近距離でスエンに炸裂した。光がスエンを飲み込んでいく。
「闇に対して光か…。なら、同じ光が相手になったらどうする?」

「…何!?」
だが、光がスエンを仕留めることはなかった。それどころか、オーラを白いものに変え、ゆらりと立ち上がったのである。
スエンの表情は、引き締まってはいるが余裕が垣間見える。静かに光闇霊獣剣を構えつつ、スエンはセイガに告げる。
「やはり、さすがは流星族の王…。簡単に倒れるわけもなかった。ならば、俺もそれなりに気合を入れてかからなければな」
「何故だ…何故、闇のお前が光に屈しない!?」
ソウルとの戦いからも、光と闇は相対する力で、片方がより大きな力であれば、小さい方は屈することになるとセイガは考えていた。
感覚でいえば、超至近距離から光の魔術を打ち込めば、スエンの闇の魔力は屈すると思っていた。だが、スエンには特に深手を負った様子がない。
「教えてやろう。俺は、お前みたいに光一辺倒なわけでも、かつてお前と戦ったというソウルみたいに闇一辺倒というわけでもない。
光と闇、相対する2つの力を1つの体で同時に使いこなせるのさ。太陽の光の当たり方で新月にも満月にもなる、月と同じようにな…!」

(122.30.10.204).. 2009年02月16日 17:47   No.220030
++ クォーツ (オリカ王)…211回       
Bパートその2。スエンとの戦いが決着。
メインはウェリスさんにバトンタッチ。
今度はウェリスさんがキリキリと書いていく番でございますよ(せかすな)

「光と闇を、同時に…!?…闇と光が共にあるだなんて、俺には信じられない!」
本来、相対するが故に同時に宿すことはできない筈の光と闇の力を、スエンは宿しているというのだ。その事実に、セイガは驚愕した。
スエンを突き放すかのように、彼の特性を否定するセイガ。だが、スエンはあくまで冷静に、構えつつではあるが話を続ける。
「簡単な話だ。影は何故できる?光に照らされた物体が光を遮るからだろう?それと同じこと。光があるから闇もある。
なのに、お前みたいに闇や影を一方的に否定し、消したり封じたりしようとするヤツが多い。何故だ?光があるから闇もあるというのに!」
そう言うと同時、3体の精霊獣がオーラと攻撃を激しくしてきた。まるで、スエンと同じ嘆きをスターリィ達に訴えるかのように。
スエンはこちらから見て時計回りに光闇霊獣剣を振り上げ、三日月を描く。その穴を突くように剣を突き出すと、剣の薄灰色の刀身が回転し始めた。
「光闇霊獣剣が誇る、光の奥義!悪鬼突貫(あっきとっかん)、リボルバーファントム!!」
スエンは剣を突き出してそのまま突撃、セイガの体を打ち砕かんと回転する刃が迫る!
「…そうか、分かったよ」
「っ!?」
だが、それに臆することなく、セイガは構えた。しかもその構えは、必殺のそれで…
「確かに、闇を一方的に否定するのは間違いかもしれない。だが、ネヴィアのように罪もなき者を泣かせる闇もある!俺達はそれを否定し、打ち消す!!
流星・聖牙斬(りゅうせい・せいがざん)!!」
スエンのリボルバーファントムとセイガの流星・聖牙斬がぶつかり合い、光の魔力同士による、今までにない大爆発を起こした。
その数秒後、精霊獣達は急に大人しくなった。

勝負の結果は、引き分けだった。お互いが爆発によるダメージを受け、吹っ飛んでいた。
トドメを刺すまでは終われない、そう思ってセイガは構えなおすが、スエンは刃を収めていた。
「どういうつもりだ?」
「お前の信念、確かめることができた。確固たる信念を持っているようだな」
そう言うと、スエンは左手をかざした。すると、3体の精霊獣は小さな光の玉になって、左手に収まった。よく見ると、宝珠のようだった。
宝珠をポケットにしまうと、スエンは驚くべき言葉をその口から放った。
「お前達には確かな覚悟があると見た。俺も、お前達に協力しよう」
「なんだって!?」
これにはセイガのみならず、流星族の者全てが驚愕した。敵だった筈の存在が、いきなり味方になるとは思ってもいなかったからだ。
「いいのか?俺達に加担し、ネヴィアを裏切れば、お前も消されるかもしれないんだぞ…」
果たして本気なのか。思わず問い詰めるセイガだが、スエンの目と答えは真剣なものだった。
「俺は、懸命に生きる命が好きだ。だが、それを踏みにじり、人形だらけにしようとするネヴィアは許せない。だからお前達と共に行く」
「…そうか」

かくして、流星族にスエンと3体の精霊獣という強力な味方がついた。
だが、今回一度も姿を見せなかったダイボウケンとプライヤーズは、いずこへ…?

(122.30.10.204).. 2009年02月16日 19:39   No.220031
++ クォーツ (オリカ王)…212回       
最後の幹部戦を一通り終えたので、ちょっとネヴィアパートにいってみる(ぇ
暗殺乱具に謎の欠片…ウェリスさんの執筆で詳細が明かされることでしょう。

部族王達がそれぞれで幹部達との戦いを終えて数日後、知らせを聞いたネヴィアは、正直なところ柄でもないが大暴れしてやりたい気分だった。
まさかの全面敗北―スエンに至っては裏切りまでしたというのだ。今までの敗北とはわけが違う。ネヴィアは怒りに震えていた。

その頃、世界の中央の上空には、奇妙な穴が開いていた。いつぞやの次元ゲートと性質が似ていることから、ネヴィアは次元の穴と断定している。その先には、ある意味で予想外の人物がいた。
「…参ったな…目的地は目と鼻の先だというのに、もうエネルギーが残ってないぞ…」
ビッグバンの直前、世界の融合を阻止する為に次元ゲートをディメンジョンプライヤーでねじ切ろうとしたダイボウケンである。
彼はビッグバンの直前、ディメンジョンプライヤーで空間に穴を開け、そこに逃げ込むことで難を逃れていた。よって、人工物ではあるがディメンジョンプライヤーも無事なのである。
しかし、ディメンジョンプライヤーは多くのエネルギーを消費する。その為、ダイボウケンにはもうエネルギーが殆ど残っていなかった。
次元の穴を通過するには空間湾曲ぐらいしかないが、それができない。よって、ダイボウケンは人知れず立ち往生しているのであった。

「スエンめ…まさか、迷いなく裏切るとは…!」
「心中お察しいたします…(「迷うな」とは言ったが、元から迷ってなかったっぽいよな…)」
怒り心頭のネヴィアを気遣う部下だが、内心ではスエンの実態をおさらいしていた。
そう、確かにスエンの心に迷いはなかった。ただし、ネヴィアを裏切るという意味で。
どうやら彼は、元から裏切る気でいたらしい。なんとなくバグレンのことを哀れに思うが―それはひとまず置いといて、部下が告げる。
「ネヴィア様、それよか暗殺乱具と例の欠片がだいぶ集まっております。どちらも、あと1つで全てが揃うことでしょう」
「……そうか。しかし、どちらもビッグバンの後で残っているとはな。正直驚いた…。集めた分は今どこに保管している?」
「臨時の保管庫です。侵入者などありえないでしょうが、念のため警備は厳重にしてあります。ロックもかけてあります故、心配はないかと。」
暗殺乱具、そして謎の欠片―未だ謎に満ちた2種類のアイテム。だが、暗殺乱具についてはアマノジャクから情報がある。
全てが集まった時、持ち主は絶大な力を得るだろうということだけが、今の確定情報だ。
もっとも、ネヴィアはその詳細を知っていると見て間違いないのだろうが。
部下からの報告を聞き、またいつものような余裕の顔を見せたネヴィア。どうやら気持ちを切り替えたらしい。ひとます安心する部下。
おまけにシャハルも控えている―自分達が出れば、簡単に負けることはないだろう。
ネヴィアは、いつもどおり不気味に笑った。

闇月族の脅威は、まだ続きそうだった。

(122.30.10.204).. 2009年02月19日 07:34   No.220032
++ クォーツ (オリカ王)…213回       
ウェリスさんが忙しくてまいっちんぐなようなので、再び投稿。
ファイトーッ!イッパァーツ!(古っ)
懐かしい3人が登場です。

幹部との戦いが終わり、ひとまず精鋭部隊は今後の進撃に備えて待機。英気を養っていた。
しかし、持ち前の機動力と索敵能力を買われて、各方面からアドベンチャーチームの面々が先行偵察隊として出撃。
世界の中心にいるであろう、残りの闇月族部隊の様子を知るべく動いていた。
ただし、サイレンビルダーだけはグレンドルのところで待機。バグレンとの戦いで起きてしまった火災の鎮火を命じられたのであった。

「ねぇ、クレーラー。まだ、うじゃうじゃいるのかな?鬼。いたらちょっと怖いな」
「知るかよ。それを確かめるのが俺達の任務だ。別に全面対決するわけじゃねぇし」
ドリラーからの問いにいつもの調子で答えるクレーラー。彼の言うとおり、今回はあくまで偵察で、別に戦う為に来たわけではない。
敵の数がどうであれ、戦うのは4部族の精鋭部隊と一緒に乗り込んだ時だ。

一方で、ショベラーとミキラーも索敵を開始していた。こちらも、今のところは収穫なし。もっとも、山を越える必要があり、それで時間をくっているだけかもしれないのだが。
「大丈夫ですか?遅れてますよ、ミキラー」
「ショベラーみたいなパワフルなビークルじゃないから、この山道は少しキツイよ」
クレーラーもそうだが、ミキラーのビークル形態はとても険しい山岳地帯を想定しているものではない。何せ、ミキサー車型だから。
「これでは支障が出ますね…そうだ!」
「え、何か…うわぁあっ!?」
「ひとまず峠の1つぐらいは越えます。私も後で追いつきますから、先に行ってください!」
なんと、ショベラーはビークル形態のままミキラーを掴み、振り回し始めた。
「峠1つ超えるって、ショベルスイングで!?」
もうスイングが始まっている以上、投げられることは確定―投げられた後の無事をせめて祈りつつ、たまらず一言。
「チーフに負けず劣らずの無茶っぷりだね」
「放っといてください!!」
その瞬間、見事なコントロールで世界の中心…の上空めがけてミキラーは投げ飛ばされた。

その頃、ジェッターもビークル形態で空から偵察していた。おそらく今回の偵察に最も適しているのは彼の筈だが、細かいツッコミは野暮である。
「…ん?」
ふと、索敵範囲内で妙な光景を目にした。そう、ついさっきショベラーにショベルスイングで投げ飛ばされたミキラーである。
だが、回収には間に合わず、あっという間に中心付近の最後の山に落ちていった。
「…なんだったんだ、あれは」
思わず思考を止めてしまったが、すぐ我に返り、再び世界の中心の上空を目指した。

(122.30.10.204).. 2009年03月10日 06:41   No.220033
++ クォーツ (オリカ王)…214回       
懐かしい3人、いよいよ登場。
考えてみたら、布石が長すぎて肝心の彼らの活躍に入る前に終わってしまうという無様な昨日。
今日は確実に登場です。

ひとまず、真っ先に世界の中心に辿り着いたのはジェッターだった。ちなみに、ドリラーとクレーラーはドリラーが直接山を掘って進んでいるらしい。
ひとまず、空にいてはすぐバレる。そこで、一旦人(?)型にチェンジして着地。岩の陰に隠れつつ、サーチ機能を使って塔の様子を窺う。
すると、稀身族と思しきシルエットが3つ見えた。罠か、仲間か。後者であってほしいと願いつつ、ジェッターはこっそり塔に忍び込んだ。

月光守護塔などと同じように、この世界の中心にも大きな塔がある。何故、ビッグバンの後の世界だというのに塔があるのか?
答えは簡単だ。実は、この塔そのものがズバ抜けて大きな大樹なのである。表面に様々な物質が付着している為か、塔に見えるのだ。
内部はくりぬかれていて、らせん状に階段のようなものまである。明らかに加工されているものだが、ネヴィアがやるとはちょっと考えづらい。
では、誰が─そんなことを推察するのは後回しにした。人の声がしたから。
「そこの赤いアナタ!こっちに来てくれる?」
振り向くと、そこには水色、紫、白の、何故か揃って片足立ちの稀身族トリオがいた。
水色の稀身族が手招きしつつ告げる。
「そこは、ネヴィアの魔力が及んでて少しばかし危険なの。それに、アナタとゆっくり話もしたいから、ひとまず私達と一緒に出ましょう」
「…そうだな、先程からセンサーにも嫌な分析結果が出ている。これも含め話し合おう」
よくよく見てみると、塔に入る直前に見つけたシルエットと彼女らの姿が重なる。おそらく、サーチして見つけたのはこの3人だろう。
稀身族だというのは気配ですぐ分かった。詳しい話をするべく、4人は外に出た。

「まずは自己紹介。私はイルテン。ダイボウケン達と一緒に月光世界に来てたの。まぁ、今は違う世界になっちゃったみたいだけど」
「わしの名はシルテン。まぁ、知恵袋としてぐらいしか役には立てないかもしれんがの」
「拙者はポルテン。以後、お見知りおきを」
「俺はジェッター。アドベンチャーチームの一員だ。もっとも、あんた達が一緒だった頃は別行動中だったがな」
互いに自己紹介を終え、すぐさま情報交換を始める。お互いが持ちうる情報の内、闇月族に関することを中心に情報を照らし合わせる。
「どうやらネヴィアは、シャハルとかいう者と手を組んでいるようなのじゃ」
「シャハル?新月族の頭ともいわれる、あのシャハルがか?ネヴィアと手を組むということは、やはり目的は月光世界の征服だったのか?」
「そう考えるのが妥当でしょうけど、どうにも腑に落ちない部分もあるわ」
「何故、ネヴィアとは違い、映像越しの接触にとどめているのか…。何か準備をしているのか、それともこの世界に直接くる手段がないのか…」
考えてみれば、今までの情報からも、ポルテンが忍び込んで手にした情報からも、シャハルの確かな姿を見たというものは1つもない。
目的を同じくするなら、ネヴィアの近くにいてもいい筈なのに…。ポルテンが出した他にも、もう1つの可能性が考えられる。他よりも少しだけ、根拠の強いものが。ジェッターがそれを語る。
「……シャハルは、ネヴィアを尖兵として利用しているだけかもしれない。もっとも、可能性と推察の域は出ないが…」

(122.30.10.204).. 2009年03月11日 06:21   No.220034
++ クォーツ (オリカ王)…215回       
いよいよ、次回からはネヴィアと真っ向勝負。
僅かに残された鬼達を率いて、ようやくネヴィアも戦線に姿を現します。
さて、その一方で、シャハルはどう出るのか…?
ちょっと短め、ネヴィア&シャハルパート。

「…まともに軍として動くのも厳しいか」
「ハッ、もはや我ら鬼も残りは僅か、数の面では圧倒的に不利です」
改めて現実を部下に問うネヴィア。勿論、部下からの答えは想定の範囲内だ。
これまでに幾度か派兵した部隊は揃いに揃って壊滅状態で帰還している。4部族との戦いによる疲弊の大きさを物語っていた。
どうしたものかと考えていると、突然端末に通信が入ってきた。

「どうだ、そちらの状況は?」
「さすがに厳しい。もはや鬼の数も軍として見なせるほど多くはない」
通信相手はシャハルだった。戦線の状況を確認しようと思ったのだろう。己にとって不利な状況だというのに、割と余裕だ。
「…そうか。だが、遂に暗殺乱具と例の欠片が全て揃った。これで挽回できよう」
「おお、遂に…!」
余裕なのには当然ながら理由があった。かねてより集められていた暗殺乱具と謎の欠片、その全てが揃ったのである。
未だ謎に包まれているこれらのアイテム。果たして、これらが解き放たれた時、戦場にいかなる力をもたらすのであろうか。
それは、集めていたネヴィアやシャハルにすら分からないことだったという。

通信を切り、シャハルは舐め回すかのように目の前に置かれているカプセル達を見やる。その中には、何かの石版のようなものが入っている。
どうやら、これが謎の欠片のようだ。
「忌々しい5大部族どもめ…次の戦いこそ、お前達の命日となる…この、偉大なる力によって」
シャハルは、知らない内に拳を握っていた。

(118.0.128.125).. 2009年03月12日 06:16   No.220035
++ クォーツ (オリカ王)…216回       
ネヴィア及びシャハルのパートは、多分私の執筆としてはアレで最後かと。
肝心の情報がないので書きようがないんです。というわけで、ネヴィア及びシャハルパートはウェリスさんに一任です。さすがに。
で、私はメインパートに戻るわけです。

ひとまず、残りの偵察部隊も合流。流天使トリオも加えた8人は、塔の内部へ踏み込む。見張りの鬼こそいたが、所詮は多勢に無勢。
見張りはあっさり蹴散らし、しばしフロアを調べまわる。隠し通路やら隠しスイッチやらが見つかればしめたものなのだが。
「…?」
「どうしたの?ポルテン」
ある場所で動きを止めたポルテン。何事かとドリラーが歩み寄る。壁に亀裂があるようだ。
「どうせ、外への抜け道じゃねぇのか?」
「確かに、このまま穴を開けても、外にしか…」
「いや」
クレーラーやイルテンは気にも留めようとしないが、ジェッターは違った。ダイボウケンの人格が複製・移植されている彼は、優れた洞察力とカンで亀裂の向こうの『異物』を突き止める。
「この向こうに、何かあるに違いない。ドリラー、試しにこの亀裂を粉砕してくれ」
「りょーかいっ」

自慢のドリルで亀裂ごとその周囲の壁を粉砕。すると、下に続く階段が姿を現した。
「では、ここで一旦別れましょう」
「そうか、このまま探索を続けるチームと、一旦戻って精鋭部隊に報告するチームってわけだね」
ショベラーの意向で、一旦報告に戻るチームとして流天使トリオとジェッターが指定された。この4人はそれぞれの理由で機動力に優れている。
ジェッターはビークル形態で空を飛ぶことができ、イルテンは雲を形成して飛び、ポルテンは忍者じみた身体能力で、シルテンは老人と思えぬ脚力で一気に駆け抜けることができる。
一方、ドリラー達は先行偵察じみたミッションを幾度となくこなしている。つまり、探索続行組としてはうってつけなのであった。
ちなみに、ジェッターは時空族、ポルテンは気功族、シルテンは音程族、そしてイルテンは流星族に偵察結果といきさつを報告することになった。

その翌日、それぞれで報告された情報をまとめ、改めて戦闘準備を整えた5大部族連合軍は、我が物顔で自分達の世界に踏み込んできた侵略者との雌雄を決するべく、中心エリアへと出撃した。

(118.0.128.125).. 2009年03月13日 07:39   No.220036
++ ウェリス (オリカ王子)…123回       
ネヴィア、シャハル側は任せてください^^
って事で、早速ネヴィア&シャハルパートを追加!
※修正しました。
報告有難うございます><
 
「ネヴィアよ、部下はこちらに任せよ。」
シャハルが言うと、4人の元新月族が現れた。
1人は赤黒い髪の青年。
1人は乱雑に縛った黒髪の女性忍者。
1人は左腕が異様に長い青年。
そして最後の1人は体中に刺青をしている女性だった。
それぞれアピアード、シャドウ、クロウ、ジーニアスという名前。
ネヴィアは気に入り、彼等を門番役として配置すると言った。
「まァ、俺等に任しといて下せェ。ぶっ潰してやりますから♪」
間延びした言い方でアピアードが言う。
「ハイハイ。調子に乗ってると痛い目にあうわよ。―ま、各部族をボッコボコにするのは当然だけど。」
ジーニアスが薄ら笑いを浮かべる。
「奴等は様々な戦いを通して格段に力が上がっている。手加減は不要だ。」
と、ネヴィアが言うと4人は頷いた。
「4人の他にも部下は十分にいる。鬼達と混合で戦えば良い数にはなるだろう。」
「うむ。」
ネヴィアとシャハルは頷きあった。
最終決戦はもうすぐそこだ。

空が闇に包まれた―
暗黒雲で分かり難いが、夜が訪れ、全ての者が眠りについたころだった。
誰かがネヴィアのいる筈の王座に入り込んだ。
暗闇で誰かは判断が出来ない。
そして暗殺乱具と謎の欠片の収まっているカプセルにその人影が近づいた。
ロックは―簡単に解くことが出来た。
本当は複雑なのだが、その人影にとっては案外楽な物だったのだろうか?

「これが・・・暗殺乱具と欠片・・・。―正確には『暗殺乱具』、『封魔の石版』だがな。」
薄ら笑いを浮かべ、暗殺乱具と石版に手を触れる。
すると何やら数字の書いてある光の帯が人影の手から伸びた。
それは2つを包み込むと、強い光を放った。
光が収まると、カプセルを閉じ、王座を後にした。

カプセルにはちゃんと暗殺乱具と封魔の石版があった。
―だが。
部屋を出た者の手にもあったのだ。
― 暗 殺 乱 具 と 封 魔 の 石 版 が 。

(220.213.115.4).. 2009年03月15日 17:56   No.220037
++ クォーツ (オリカ王)…217回       
ウェリスさん、最後の「物」→「者」かと。
とはいえ、遂に最終決戦に突入。
まずは前菜…じゃなくて序章といきます。

とびきり酷い暗黒雲のせいでやっぱり分かりづらいが、夜が明けた。
そして、この夜明けは突撃の合図となった。四方から、各部族王の号令によって連合軍の精鋭部隊が中心エリアへ突撃していく。

まず先陣を切ったのは、巨大な精霊獣を従えるスエン。改めての宣戦布告という意味もあるが、下っ端程度なら精霊獣だけでも随分と倒せる。
「…見慣れない奴らもいるが…おそらくは新月族の連中か。ようやくシャハルも本気になったか」
精霊獣達に的確に指示を出しつつ、自身も複数の鬼や下っ端を切り倒していく。
ただ1つ、シャハルが手配した部下が待ち構えているのではという懸念を抱きながら。

西側からはサイレンビルダーも特攻をしかけ、エース級の戦力による挟み撃ちをかける。合体と分離を繰り返し、戦線をかく乱していく。
「どうせ、後には『大物』が控えてるだろうしな。俺らが頑張って『お膳立て』しなきゃな!」
そう言うと、再び分離。3台のビークルによるレーザー攻撃であっという間に10体程の鬼が吹っ飛び、倒れていった。

そう、スエンもビルダーも、というより彼らを筆頭とした辺境族部隊は、精鋭部隊の疲弊を少しでも防ぎ、余力を残させる為に戦っている。
特にセイガら部族王組には殆ど疲弊なしの状態で『大物』に挑んでもらわなければならない。鬼や下っ端との戦闘は無駄なのである。
精鋭部隊にも、彼らのバックアップの為にもなるべく多くの戦力を残してもらいたい。
作戦立案担当の三幹部の内、参謀役のクラスタが答えを出した。自分達が先制攻撃をかけることで敵の注意を無理矢理にでもそらす。
そうすることで、4部族に余力を残させようということだった。これはすぐに決まった。

そして案の定、辺境族部隊の活躍によってセイガ達は大した妨害も受けず、多くの部下を引き連れて中央の塔まで辿り着いたのだが…。
スエンやビルダーの予想通り、『大物』が4人、4部族王らの前に立ちはだかったのだった。

(118.0.128.125).. 2009年03月14日 06:56   No.220038
++ クォーツ (オリカ王)…218回       
誤字の修正確認。
あと、アピアード、シャドウ、クロウ、ジーニアスのデータを投稿スレによろしくです。
でないと、書こうにも書けないので…。
ウェリスさんが部族王VSアピアード達の戦いを書くというなら話は別なんですが。
様子見を兼ねて、今回はジェッター達5人が遂に元ネタと同じことをしでかす話。

セイガ達の前に立ちはだかった4人の『大物』、それはずばり、シャハルが送り込んだ部下達だった。
アピアード、シャドウ、クロウ、ジーニアス。彼らこそ、シャハルが送り込んだ部下達である。おそらく、部族王とも互角に渡り合えるだろう。
だが、彼らの後ろから、更に下っ端達が飛び出してきた。どうやら控えていた部隊のようだ。

だが、その半数は出てきた直後に退場となった。何故なら、更に後ろから出てきた者達に完全な不意打ちをくらったからだ。
「どいてどいてー!」
「ほらほら、邪魔だ邪魔だ!」
ドリルマシン型ビークル形態のドリラーとクレーン車型ビークル形態のクレーラーがド派手に突っ込んできたのである。
更に、それぞれビークル形態でショベラーとミキラーも続く。ショベルアームと車体前面に供えられたビーム砲で下っ端達を撃退する。
「まったく、強引なんだから」
「しかし、結果的に敵のかく乱になったようです」
確かに、これは少々強引。思わず言葉にしてしまうミキラーだが、ショベラーの言うこともごもっともだ。突然すぎてかく乱になったようだ。

「お前達!大丈夫だったか?」
そこへ、ビークル形態のジェッターが飛んできた。いくら優秀な仲間とはいえ、さすがに敵の本拠地に4人だけというのは心配だったらしい。
「へっ!俺達を何だと思ってやがる」
「あたし達だって、立派なアドベンチャーチームの一員だよ♪」
「ご心配には、及びません」
「チーフに鍛えられてるからね」
「…それも、そうだな」
クレーラー、ドリラー、ショベラー、ミキラーの順に健在であることをアピール。ジェッターも、無事であることを再認識したようだ。
その時、通常の3倍程の身長はあろうかという大きな下っ端が現れた。さすがに下っ端といえど、体格差がありすぎる。

「お前達、合体するぞ!」
『了解!』
すると、ジェッターを中心に4人もビークル形態のまま飛んだ。ジェッターの左側にドリラーとミキラー、右側にショベラーとクレーラーが並ぶ。
続いてジェッターが両翼を畳み、ジョイントが露出。左側のジョイントにドリラーが、左側のジョイントにショベラーが腕として合体。
更にジェット噴射機だった部分もジョイントとして機能し、左側にミキラーが、右側にクレーラーが脚部として変形合体。
最後に機首の装甲の一部が展開し、人の顔が現れる。そして1体のロボとなったそれは、堂々と敵の眼前に舞い降りた。
『ダイタンケン!合体完了!!』
合体機構の関係上、飛行能力は犠牲になっているものの、それを気にさせない程の戦闘力を秘めた合体機獣、それがダイタンケンである。
みなぎるパワーを全身に駆け巡らせ、ダイタンケンは巨大下っ端へと突撃していった。

(118.0.128.125).. 2009年03月17日 06:15   No.220039
++ クォーツ (オリカ王)…219回       
さて、そろそろウェリスさんにもメインを書いていただく頃合が近づいております。
取り敢えず、最終決戦ぐらいはウェリスさんに書いていただきたいと思っております。
今回は、セイガ達部族王4人が塔に乗り込むまでの話。ダイタンケン大暴れ。

「お前達雑魚に、用はない!」
果敢に飛び出していったダイタンケンは、右腕のドリルと左腕のショベルで次々と下っ端達を蹴散らしていく。大きさ問わずでだ。
「こんにゃろっ!!」
「おっと!」
突然振るわれた一撃をショベルで掴んで防御。その一撃の主はアピアード。そこから暫く拮抗していたことから、パワーは互角のようだ。
「てんめぇ、さっきからこっちをのけ者にしやがって…!まず名乗り出たのは俺らだぞ!」
「で、少しぐらい注意を向けろと?大量の雑魚を送り込んだヤツに言われる筋合いはないな」
そう言うと、ダイタンケンは右足のミキサーを展開した。実は、合体して右足になっても、ミキサーによるウォールシュートは可能なのである。
「おわっと!」
ウォールシュートを回避し、仲間のそばまで後退。再び下っ端達が襲い掛かるが、
「雑魚は引っ込め!ボウケンフラッシュ!!」
ドリル、ショベル、ミキサー、クレーンから4色のビームを放出。瞬く間に下っ端達は消し飛んだ。残りも連合軍の精鋭部隊が相手をしている。
つまり、現時点でセイガ、グレンドル、レオン、シンフォニーの4人は手が空いているのだった。
さて、自分達が戦うかと思い始めていた頃、その役を買って出た4人の戦士がいた。
魔剣士嬢アスタリカ、気功師ゼロ、放電波サンダー、黒騒音ヴィートである。

にらみ合う8人の猛者。その隙を利用しない手などない。セイガが叫ぶ。
「誰でもいい!あの壁を破壊し、突破口を開いてくれ!俺達は塔に乗り込む!」
「その役目、このダイタンケンに任せてもらおう。ボウケンフラッシュ!!」
セイガの声に答えたダイタンケンは、塔の一角に向けてボウケンフラッシュを放つ。射程範囲にいた下っ端達を巻き込みつつ、見事に壁を粉砕。
ダイタンケンの一撃によって開かれた突破口を抜け、セイガ達4人は塔の中へと入っていった。
その先で、塔の上で待つであろうネヴィアとの、最後の戦いに挑む為に。

(118.0.128.125).. 2009年03月21日 06:31   No.220040
++ クォーツ (オリカ王)…221回       
さて、私が我が家を離れるのが今月の31日と確定しておりまして、それ過ぎるとネットができなくなる可能性が高いのであります。
というわけで、書ききれなかった分(ひとまずネヴィアやシャハルとの決戦は確定かも)はウェリスさんに一任することになります。
で、今回は遂にあの男が帰ってくる話。長くなったので2分割で。

その一方で、ダイタンケンは空を見上げていた。
ひっそりとダイタンケンに合流してきたランサーとズバーン。そのランサーが持つ武器「サーチランス」の索敵機能が、次元の穴の向こうのダイボウケンの存在をキャッチしたからである。
「でもよ、反応からするとディメンジョンプライヤーも一緒だぜ?なんで脱出してこねぇんだ」
「確か、例の超巨大な湾曲現象の件で出撃してから補給は受けていない筈。エネルギー切れで動けないのだろう。こっちから送ってやりたいが…」
ランサーの疑問ももっともだが、ダイボウケンにはエネルギーが残っておらず、ディメンジョンプライヤーによる脱出ができないのである。
「だが、送るとしても空間を越えなきゃならねぇんだろ?どうやって次元の穴に突入するんだ」
「……ズバーン、力を貸してくれ」
「ズン、ズバ」
ディメンジョンプライヤー以外に、空間を越える術など知らない。だが、ランサーの疑問はまたもその場で解決することになった。
「ズバーンを使うのか?」
「あぁ、そうだ。ズバーンの聖剣(せいけん)としての力なら、次元の穴をも切り裂けるかもしれない。試す価値ぐらいはあるだろう?」
「…まぁ、他に方法もねぇしな」
ランサーも納得した上で、ダイタンケンは改めてズバーンに指示を出した。聖剣形態に変形し、力を解き放つようにと。

ズバーンが変形を開始する。胸部のユニットを90度回転させ、頭部を収納。続いてつま先を収納してから両足を90度回転させて合わせ、両腕を収納して胴の部分を下げる。
これで、聖剣形態への変形は完了である。
左手にそれを握り締めたダイタンケンは、エネルギーをズバーンに集中させ、大ジャンプ。金色の斬撃を次元の穴に向けて飛ばす。
すると、次元の穴の奥にダイボウケンの姿が見えた。すかさず、エネルギー補給用のカプセルを投げ入れる。その直後、再び見えなくなった。

(118.0.128.125).. 2009年03月28日 08:30   No.220041
++ クォーツ (オリカ王)…222回       
あの男が帰ってくる話パート2。
帰ってきて早々、アドベンチャーチーム最後の大どんでん返し(究極合体)を披露しちゃいます。
究極合体についてはキャラ投稿スレにデータを投下してありますのでそちらも参照。

待つこと数分、次元の穴の中心に光が見えた。その光の奥から、ダイボウケンが姿を現した。ディメンジョンプライヤーで空間湾曲したのだ。
「待っていたぞ、チーフ」
「遅いんだよ」
「すまなかった。お前達のおかげで助かった。状況は把握している」
ダイタンケンとランサーがそれぞれで声をかけ、早くも次の行動に移る気満々なダイボウケン。
「究極合体、いくぞ」
『究極轟轟合体(きゅうきょくごーごーがったい)!!』

その言葉と同時、ダイタンケンは分離。まずジェッターを除く4体がダイボウケンとスーパーダイボウケンへと合体。
更にジェッターがパーツとして分離。
本体がジャイロユニットを外した背中に合体、下部のユニットが胸部装甲としてジャイロユニットと共に合体、そして機首の部分はヘッドパーツとしてクレーンのフックパーツと入れ替わる。
大空へと飛翔し、高らかに声を上げる。
「アルティメットダイボウケン、合体完了!」

「おっ、遂にやりやがったか。俺様も負けてられねぇな!オラオラオラオラオラ!」
その光景を見て、サイレンビルダーも更にやる気を出す。真っ向から混合部隊に突っ込み、凄まじい勢いで蹴散らしていく。

一方、アルティメットダイボウケンも混合部隊相手に圧倒的な強さを発揮していた。空からのビーム攻撃、更に地上での格闘戦。そのどちらにおいても、大きな戦果を挙げていた。
「チーフ、後方に武装を強化した大型が!」
「よし、もう一度空から攻撃をかける」
ショベラーからの警告どおり、後ろから強力な武装を持つ巨大下っ端が迫り来る。だが、これを垂直上昇でかわし、空からビーム攻撃。そして…
「無駄に巨大なだけのヤツめ、周辺の連中共々くらえ!アルティメットブラスター!!」
胸部に全ビークルのエンジンのエネルギーを集め、鳥のような炎を撃ち放つ。その炎は鳥のように舞い踊り、そして巨大下っ端他数体を巻き込んで大爆発を巻き起こした。

混合部隊の数も徐々に減っていく中、一旦着陸したアルティメットダイボウケンはふと塔の方を見やる。セイガ達が突入していった塔の方を。
「こちらはなんとかなるだろうが…向こうは大丈夫だろうか…。相手が相手だからな…」
未だに明確な戦力情報のないネヴィアとシャハルを相手に、セイガ達は勝てるのか。そんなことを思ったが、すぐ考え直した。

彼らなら勝てる、と…。

(118.0.128.125).. 2009年03月28日 08:53   No.220042
++ ウェリス (オリカ王子)…129回       
一方、アスタリカ、ゼロ、サンダー、ヴィートはそれぞれ戦闘隊形に入っていた。

アスタリカはアピアードと向き合っていた。
「お譲ちゃーん、俺と戦っても生きて帰れるか分からないぜェ?」
「女だからといって、甘く見ないで下さいまし!そちらこそ生きて帰れませんわよ?」
そう言い剣を抜いた。
刀身が白く輝く。
美しい光を放つ曲刀―魔剣を構える。
アピアードも背負っていた巨大剣を構えた。
先に動いたのはアピアードだった。
巨大剣を操っている割には・・・早い!
「吹き飛べ!」
前方に降られた剣をふわりと飛び、かわした。
「光波衝(コウハショウ)!」
「剛斬破(ゴウザンハ)!」
魔剣から放たれた光と巨大剣から放たれた衝撃波がぶつかる!
2つが相殺した時、2人はその場にいなかった。
2人がいたのは―上空だった!
「行きますわ!旋翔裂閃(センショウレッセン)!」
「ぶっ飛べェ!裂破空牙(レッパクウガ)!」
強い光を放った魔剣が踊る!
それに伴い、巨大剣が舞う!
強い閃光が飛び交う。
「あれれー、俺の技でぶっ飛んだのかァ?」
閃光に視界を奪われ着地したアピアードが周囲を見回す。
アスタリカが消えた。
「つまんねェの!もっと強い奴はいねぇのか!?」
余裕の表情で巨大剣を担ぐ。

隙が出来た。

「そう簡単にやられるとでも思いまして?」
背後からの声。
「なッ!?」
振り向くとアスタリカが構えていた。
「勝負では最後まで隙を見せない、それを頭に入れておきなさい!―光波瞬連斬(コウハシュンレンザン)!!」
強い光の衝撃波を放ち、敵を上空に打ち上げる。
そして上空でさらに追い討ちをかける様に切り裂いた!
「う・・・嘘だぁぁ・・・」
アピアードが崩れ落ちるのを確認し、アスタリカはレスター達の所へ向かって行った。

(220.213.115.92).. 2009年04月29日 17:45   No.220043
++ ウェリス (オリカ王)…130回       
地面に何かが落ちた。
がしゃんと音を立て、地面が凹む。
―ゼロが手械を外したのだ。
「貴様には悪いが…本気を出させてもらおう。」
そう言った瞬間、彼の体から異様なまでに強力な気が放たれた。
それを見、シャドウの目がすっと細められた。
そして、鞘から刀を引き抜いた。
途端、彼女の体からも、異様な殺気が放たれる。
―気と殺気が混ざり合う…

風が吹いた瞬間、2人の姿は無かった。
一瞬にして間合いが零になる!
「岩砕破(ガンサイハ)!」
「霊月閃(レイゲツセン)…!」
気が大地を砕く。
刀が弧月描く。
吹き飛んだ岩を引き裂く金属音が鳴り響いた。
そして2人はまたも疾風となる。
気と刀が鬩ぎ合う。
光と闇がぶつかり、消える。
背後に気配を感じても、それ弾き、消え失せる。
一瞬の隙で結果は分かる―
しかしどちらも隙が出来ない。
出来たとしてもほんの僅かだった。

どれだけぶつかり合っただろうか。
2人も分からないほどに斬り、叩き込んでいた。
しかし先程とは状況が違う。
―ゼロが優勢だ。
僅かだがシャドウのスピードが遅くなっている。
移動した瞬間、ゼロがシャドウの着地点を見計らい、気を地面に放った!
崩れた地面に足を取られた彼女の動きが止まる。
『…今だ!!』
ゼロが瞬間的に間合いを詰める。
そしてがら空きになったシャドウの体に彼の一撃を叩き込んだ!
「奥義!殺牙龍爆撃(サツガリュウバクゲキ)!!」
気を込めて殴り一撃。
そして蹴り、気を放つ。
次々と叩き込まれる連撃がシャドウを襲う!
フィニッシュの弧月蹴りが決まると、彼女は吹き飛んだ。
どさりという音と、刀が転がり落ちる音を背に、ゼロは仲間の方へ向うことにした。

(220.213.110.140).. 2009年06月06日 00:37   No.220044
++ ウェリス (オリカ王)…131回       
今回はセイガ達の状況を…


長く、暗い螺旋階段を上り続ける。
頂上にはきっと奴がいるはずだ―

セイガ達は塔の内部にいた。
幸い敵はおらず、延々と続く廊下を走り、螺旋階段を上っていた。
以前と変わりは無かった。
変わった所といえば、壁に走っている傷、舞い飛んだ血飛沫、トラップの跡があるという所。
内部の構造は全く変わっておらず、道なりに進むだけだった。
「あの時は外から内部に入っていったよな。」
走りながらセイガは問いかける。
グレンドルが頷くと、
「でも、どちらにしても階段はぶっ壊されちまったし、中からしか入る手段は無かったけどな。」
と、苦笑混じりに行った。
ビックバンの影響で殆どの物が消えた。
しかし、塔はあの時と同じまま残っていたというわけだ。
―壊された階段も、トラップも。

螺旋階段を上り終えると、広い場所に出た。
あの時と同じ魔方陣―ワープホールだ。
「これに乗って、起動させれば…」
全員が乗ったのを確認し、セイガは魔方陣を起動させた。
目の前が真っ白に塗り潰されていった―

気づくと目の前には空間が広がっていた。
そして、巨大な魔方陣と大きな扉があった。
「…以前扉なんてありましたか?」
ふと、疑問に気づいたレオンが言った。
そう。
以前こんな場所に来た覚えは無かった。
「これは…罠、という事?」
シンフォニーは首を傾げている。
いやいや、とグレンドルは首を振った。
「だってこんなデカイ扉があるなら向こうにいますよ、って言ってるようなもんじゃね?」
うーん、とセイガは考えた。
だが、戻る道が一つも無い。
しかも分かれ道も無かったのだ。
…ならば、此処は正しいはずだ。
そう説明すると、皆頷いた。
「よし!皆行こう!!」
「あぁ!」
そう言い、扉へ向かった瞬間、足元にあった巨大な魔方陣が輝きだした―

(220.213.111.137).. 2009年06月09日 01:07   No.220045
++ ウェリス (オリカ王)…132回       
「なっ、一体何が!?」
突然足元で輝き出した魔方陣に戸惑うセイガ達。
―やはり罠だったのだろうか…
視界が光に包まれていった―

気づくと光の空間に4人はいた。
立っているような、浮いているような不思議な感覚だった。
「…ここは一体?」
シンフォニーが尋ねたが、誰1人として分かる者はいない。
その時、目の前の空間が歪み、さらに強い光が溢れてきた。
「うわっ!」
目潰しのように強い光は、やがて人の形をとった。
そして―
『よくぞここまで来たな―』
落ち着いた、低くも高くも無い声。
目の前にいたのは輝く4枚翼を持った男だった。
「お、お前は…?」
恐る恐る、グレンドルは尋ねた。
『我が名はデウス。この守護塔の守護神である―』
デウス…塔の守護神…。
「確か…守護神って封印されたんじゃなかったのか?」
セイガが聞くと、デウスは頷いた。
『封印され、今は心正しき者のみ見える姿となっている。―いわば、幻影だ。』
彼はかつての戦争で、塔が破壊されたと共に封印されたのだ。
そして今ではこうして幻影となって心正しき者の前に現れるそうだ。
「つまり…私達は心正しき者、という事でしょうか?」
『いかにも。』
レオンの問いかけに、彼は頷いた。
そして言った。
『お前達はネヴィアを倒しに来たのだろう?』
「え、えぇ。そうだけど…。」
デウスは微笑んだ。
そして、手を掲げるとその手に杖が握られた。
『どうか彼を倒して欲しい。そうすれば、私の封印も解かれる。そして…この世界をあるべき姿に戻す事が出来る。』
「本当か!?」
彼は頷いた。
「約束する。ネヴィアを倒して、封印を解放するって。」
『了解した。』
デウスは微笑むと、杖を掲げた。
4人の体が光に包まれた―

(220.213.111.137).. 2009年06月09日 01:26   No.220046
++ ウェリス (オリカ王)…133回       
今日はここでストップかな^^


光が収まると、デウスの方を見た。
『心正しき者のみが扱える、真なる力。これでネヴィアと戦うのだ。』
手を見、全身を見た。
服装が、武器が変わっている。
黄金の鎧に身を包み、真の力を解放したのだ!
「…これは?」
セイガは流星剣とは違う、もう一つの剣を見た。
月の飾りではない、星の飾りがついた剣を。
『それは月光剣というものだ。かつてこの世界に伝わっていた伝説の武器だ。』
試しに月光剣を引き抜いた。
それは短い曲刀で、美しい光を放っていた。
レオンも自分の剣を抜いた。
彼の剣もまた、美しい光を放っている。
これもまた伝説の武器であった。
それぞれが伝説の武器を手にしていた。
不意に、全体の空間が歪みだす。
『残された希望はお前達だけだ。…頼んだぞ―』
そういい残し、デウスは消え、空間も消え失せた。

気づくと目の前は暗闇だった。
そして…扉があった。
先程の事は現実、とでも言うかのように、力が湧き上がってくる。
セイガが扉に手をかけた。
「絶対に勝つんだ。そしてデウスを解放し―世界を救う。」
「真の力、ネヴィアの奴に見せてやろうぜ!」
「だからといって油断は禁物よ?分かっているわね。」
「当然ですよ。―行きましょう。」
その手に力を込めた。
ぎりぎりと音を立て、扉がゆっくりと開く。
その先の空間が以前と違えど、心は変わらない。
― ネ ヴ ィ ア を 倒 す 。

(220.213.111.137).. 2009年06月09日 01:46   No.220047
++ ウェリス (オリカ王)…134回       
また放置するなんて・・・
なんてこったorz
とりあえずサンダーVSクロウを・・・

バチバチという音が響く。
それはサンダーのスタンガンからだった。
「おい、スタンガンで戦う気か?・・・お前は俺を馬鹿にしてんのか・・・?」
クロウがふっと笑った。
スタンガンから放たれる電気が強くなる。
「スタンガンでもちょいといじれば面白い事になるんだぜ?まずはソイツを見てからにしなっ!」
サンダーが跳んだ。
クロウも跳ぶ。
「面白い!じゃあ見せてもらおうか!」
異様に伸びた左腕が風を裂き、唸る。
鋭い爪が目の前に迫る!
「―見せてやるよ!・・・ぶっ飛べっっ!!」
ぱぁん!という音と共に白い光が飛び散る。
スタンガンの威力は想像以上だった。
「っ!・・・なめるなぁっ!」
クロウが怒りの声と共に腕に魔力を込めた。
爪の先が燃え上がる。
雷と炎が鬩ぎ合う!
膨張した光は破裂し、2人を後方に吹き飛ばした。
「くっ!」
上手く体勢を整え、着地する。
「中々面白いな・・・。スタンガンでもここまでいけるのか・・・だが・・・!」
クロウの口元が歪む。
「お前は死ぬんだよ!スパイクフレア!!」
突然魔方陣が彼の足元に広がり、魔術が発動した。
真っ直ぐに炎が襲い掛かる!
しかし、サンダーは動こうとしなかった。

突然サンダーのテンションがやたら高くなる。
「・・・きたきたーっ!出力全開っっ!!」
彼は満面の笑みで地面にスタンガンを押し当てた。
次の瞬間だった。

―スパンッッ!!

「・・・な・・・何!?」
スタンガンから放たれた雷は地面を貫き、噴火するように吹き上がったのだ!
雷は盾のように炎を掻き消した。

雷が消えうせた時、クロウの前にはすでにサンダーが構えていた。
「ほらな?それなりに面白かっただろ?・・・ボルトブラスト!」
返事は要らない。
そう言うかのようにスタンガンの光はクロウを吹き飛ばした。

(220.213.110.4).. 2009年07月16日 17:49   No.220048
++ ウェリス (オリカ王)…135回       
ちょい遅くなったけど更新!
宿題も大分やっておきましたし、頑張りますか!
・・・って、音程のキャラ、まだ2体考えてなかったorz

「チューニングは・・・っと。・・・ざっとこんなモンだろ。」
ヴィートがギターを弾き鳴らすと、周りの空気もビリビリと震えた。
「おにーさん、そんな余裕かましてるヒマ、言っておくけど無いわよ?」
器用に手中でロッドを回すジーニアス。
口元には余裕の笑みがあった。
「余裕?チューニング合わせぐらい、ったりめー前の事だろ?」
呆れながらヴィートがため息を吐くと、彼女はぷっと吹き出した。
「アンタってやつは・・・面白いじゃない!実力、見せてもらうよ!」
杖を振り、ジーニアスが構える。
「そう来ねぇとな!」
ヴィートもギターを構えた。

先に動いたのはジーニアスだった。
魔方陣を展開し、術を発動する。
「深淵より出でし闇よ、彼の者を捕らえよ!―ダークスパイド!」
ヴィートの足元に黒い蜘蛛の巣が発生した。
蜘蛛の巣から闇が吹き出、彼を捉える!
「そんなモンが効くかよ!―クラッシュサウンド!」
ギターを掻き鳴らすと爆音が響き、地面を砕いた。
蜘蛛の巣も同時に吹き飛ぶ!
「ストレートビィト!」
さらにギターから溢れた音波で瓦礫を吹き飛ばす。
瓦礫は真っ直ぐジーニアスに襲い掛かる!
「させないよ!―出でよ、ボティス!」
彼女の杖から闇が溢れ、悪魔を呼び出した。
ボティスと呼ばれた悪魔が手を翳すと黒い火の玉が出現、そのまま瓦礫にぶつかった。
黒い炎を上げて、瓦礫が粉々になる。
「鮮血の波に飲まれな!―ブラッディ・ウェーブ!」
粉砕した瓦礫の粉に紛れながら詠唱をし、魔術を放つ!
真っ赤な波がヴィートに襲い掛かってきた。
「やれやれだぜ・・・」
防御の構えもすることなく、ヴィートは波に飲まれた―

(220.213.96.92).. 2009年08月12日 00:09   No.220049
++ ウェリス (オリカ王)…136回       
「全く・・・言ったでしょーに。」
鮮血を撒き散らしたような地面を見、ジーニアスはふっと笑う。
「余裕かましてるヒマなんて無いって言ったのにさぁ・・・」
彼女が背中を向けたとき、何か音が聞こえた。

・・・え?

「まだ終わってねーだろ。」
波に飲まれたはずのヴィートが・・・
無傷で生きている・・・!?
「・・・な、何故!?」
ジーニアスは動揺を隠せなかった。
確かに波に飲まれたはずなのだ。
「お蔭さまで結構良かったシールドが台無しだぜ・・・。」
シールド・・・ギターとアンプを繋ぐためのコードの事だ。
彼はそのシールドに音波を注ぐ事により、術をガードしていたのだ!
「まぁ・・・それよりも良い予備があるから良いとしますかねぇ・・・!」
そう言って別のシールドを出し、繋いだ。
掻き鳴らした音は・・・先ほど以上の音波だった。
「とっておきは温存しとくって事よ!・・・頭ン中入れときな!」
爆音が響き渡った。
時空族の兵を倒した時に使ったトラップ、術、悪魔の召喚・・・
そう、彼女の攻撃法は全て分かったのだ。
「ぐっ・・・まだ終わらせないよ!―ダークプリズン!」
「爆音、響き渡れ!―豪音閃光(ゴウオンセンコウ)!!」
闇の結晶が槍のように飛び交い、音色が閃光のように突き進む!
互いにぶつかり、相殺し合うかと思われた瞬間―
「俺の音を・・・なめるなぁっ!!」
ヴィートが咆哮し、共鳴したかのように閃光がさらに強い光を放った!

相殺ではない。
闇の結晶は粉々に砕け、閃光はジーニアスの体を包んだ。

「そ、そんな・・・」
がくりと膝を付き、彼女は倒れた。
「切り札を取っておく、それも戦略なんだぜ・・・」
ヴィートは踵を返し、そう呟いた。

(220.213.98.73).. 2009年08月12日 00:29   No.220050
++ クォーツ (オリカ王)…223回       
さてさて、めっちゃくちゃ久しぶりに執筆。
ウェリスさんにも頑張ってもらいたい次第です。
実は未だにまともな活躍ができていなかった皆さんがあちらこちらで頑張る話。数回に分けて書いていきますです。
今回は東区域リーダーが活躍。

さて、大きな戦果を上げているのは当然ながらアドベンチャーチームだけではない。
東西南北の4方面ではそれぞれの区域リーダーを筆頭に力強い援護が行われている。
その援護の模様をお伝えするとしよう…。

―東方面―
混合部隊のメンツが数を頼りに連合軍を押しつぶさんと攻めてくる。
勿論、スターリィなどが中心となって跳ね返すべく奮闘しているが、それをより有利にさせているのはこんな現象だった。

鬼の一部がスターリィの背中めがけて武器をかざし、一撃を加える!
ところが、いざ見てみればスターリィと思われたそれは下っ端で…
「どこを見ている!」
鬼はスターリィによって切り捨てられていた。
このような現象が東方面の各所で起こっている。その原因は、東区域リーダーのヘシオだった。
「しっかし、まさかここまで敵さんをハメられるなんてな。大したもんだ」
「もっとも、最初に御札を貼らないといけないのが難点なんですけどね」
スターリィから賛辞の言葉が述べられるが、当のヘシオは欠点付きであることを自ら皮肉った。
「グォォォッ!」
「…爆」
「ギャアアッ!!」
鬼がヘシオの背後から襲いかかるが、彼の言葉1つでいきなり鬼の顔が爆発した。
いつの間にか御札を貼られ、彼の魔力操作でいきなり爆発物にされたのである。

これらの現象の正体こそ、ヘシオの必殺技「チェインフラウド」である。
この技、「連鎖するまやかし」という別名がある通り、御札を貼り付けておけばそれをヘシオの任意によって別な何かに見えるようにしてしまう。
御札さえ貼ってあれば、何体でも同様の効果が発揮できる上に、これを応用して先程のように同士討ちさせたり隙だらけにさせたりできる。
この別名の由来は、そこにあった。
更に、ヘシオが見せたように、お札自体を爆発物として扱うことで爆破も可能。
実は禁じ手にされているのだが、世界の融合という前人未到の非常事態ということで使用許可は下りている。ヘシオ自身は使いたくなかったようだが…。

「出でよ、我が精霊獣たちよ!」
そう言うと、ヘシオは懐から取り出した色違いの御札4枚を空へと投げた。
すると御札は光を放ち、次の瞬間には、それらは青龍、白虎、朱雀、玄武へと姿を変えていた。
ヘシオの魔法によって、御札に封じられていた精霊獣が実体化したのである。
「物量作戦なんてできなくなるくらいには、数を減らさせていただきます!」
ヘシオの号令と同時、精霊獣たちが攻撃開始。流星族精鋭部隊にはありがたい支援砲撃となった。

(114.48.14.135).. 2009年11月15日 21:09   No.220051
++ クォーツ (オリカ王)…223回       
さて、前の投稿から年すらまたいでしまいましたが。ようやっと続きです。すんません。
さて、今回は西方面。シルクハットのアノ人が活躍するお話です。

―西方面―
一方で、西方面の戦闘区域は、まんべんなく、すっぽりと濃霧に包まれていた。
その中では、連合軍による熾烈を極める奇襲攻撃の嵐が吹き荒れていた。
「くらうダス!」
「とっとと倒れなさいよね!」
霧の向こうから、突然ガンタスとダリアが飛び出し、鬼や下っ端が打ち倒される。
だが、相手に奇襲をかけられる、というのは闇月族軍にとっても同じこと。
仕返しとばかりに奇襲をかけようと数体の下っ端がガンタスたちを狙うが…沈黙した。
まるでガンタスたちを守るかのように飛翔するクレセンによって。レミアの仕業だ。
本人が直接接近する必要はないので、奇襲効果はより高くなっているといえる。
舞い戻ってきたクレセンをキャッチしつつ、レミアがガンタスたちに合流してきた。
「しっかし、この霧はスゴイわね。派手に暴れてもらってるのに、全然消えないもの」
「ヘタするとこっちが迷いそうでちょっと怖いってワケじゃ、全然ないダスよ」
「もっとも、ただの霧じゃないんだから当然かもだけど」
霧に対して関心するダリア。同意しつつさり気なく本音が漏れるガンタスは無視しつつ、レミアはとある方向を見やる。その先には、この霧の発生源とでもいうべき存在がいた。

この霧は、レミアが言った通り、ただの霧ではない。魔力による、半人工的な特殊な霧だ。
では、いったい誰がそんな霧を生み出し、広範囲に展開させているというのか。
その答えは、辺境世界西区域リーダー・コトヌシ。辺境世界随一の紳士と名高い男。
ジェントルマン気質で、かつ戦いには積極的ではない。シルクハットを被り、紳士的に振舞う。
あまり戦いは似合わない彼であるが、見かけによらず身のこなしが軽快で、格闘技にも精通している。
だが彼の場合、本領は格闘技にあらず。纏っているマントを媒介として魔力を変換、霧として周囲に放出する「デアボリックミスト」にあり。
この霧、範囲内にいる相手の神経を麻痺させ、かつあらゆる探知を遮断する特性を持っており、そのことからか別名「魔性の霧」とも呼ばれている。
ガンタスたちはピンピンしているが、魔法によってコトヌシが効果対象を鬼と下っ端に限定しているからこそのことである、と補足しておこう。

「この霧、あなた方に攻略できますか?」
そう呟き、範囲内にいる闇月族軍の面々を見やるコトヌシ。おもむろに右腕を水平に上げながら右回転する。と同時、何かイヤな音がした。
「……それ、完璧にイッてしまっているよ…」
目撃したローレルが思わずうめくのも無理は無い。何故なら、腕が止まっていると思しき部分には、その首がイヤな角度で曲がってしまったまま硬直している鬼の姿があったから。
コトヌシがこちらに気づき、鬼を振り払うのを見やり、ローレルは気を取り直して告げた。
「とにかく、早めに蹴散らしてしまった方がいいだろう。さすがに向こうも少しは慣れてくる」
「そうですね」
そして2人は、飛び掛ってきた鬼と下っ端数体に、華麗かつ強烈な回し蹴りをお見舞いした。

(114.48.176.80).. 2010年01月24日 20:48   No.220052
++ クォーツ (オリカ王)…224回       
いやはや、またまた間があいてしまいまして。
あと、前回の投稿で自分の名前間違ってたんで、慌てて訂正してきましたよ。なんてこったい。
さて、今回は南。リーダーの紅一点が頑張ります。

―南方面―
精鋭部隊の周りを包囲するかのように、無数の鬼と下っ端の混合部隊が立ちふさがる。
だが、その攻撃の全てが連合軍の元へ届くことはないだろう。
何故なら、鬼や下っ端の約半数がダミーだから。
それと、連合軍の一部を除くメンバーにとっては信じがたい出来事が起こっている。

「くっ…」
たった一人で多数の鬼と下っ端をなぎ倒してきたリグレットだが、さすがに多勢に無勢か。
次第に数で押され、部下達から引き離され、隔離するかのように追い詰められているのだ。
鬼の1体が、リグレットにトドメをさそうと武器を手に襲い掛かる!
「(これまでか…。……!?)」
一瞬、心の隅に絶望がよぎる。だが、その絶望は疑念へと変わる。何故なら…
「(どういうことだ?何故、敵同士で!?)」
リグレットの目の前で、鬼に鬼が、下っ端に下っ端が、それぞれ攻撃していたのだから。

だが、それもまた、仕組まれたことだった。今一度言おう、鬼や下っ端の約半数はダミーだと。
そのダミーは誰の差し金か?普通ならネヴィアやシャハルと考えるだろうが、違う。
「……どうやら、上手くいってるみたい…」
現場からやや離れた林の中で、1人の少女は呟く。その手には、魔力によって輝く1冊の本。
「いやー、お見事。さすがはラエルさんだ。あんなたくさんのダミーを作って、遠隔攻撃まで」
「ホントよねー。アタイは勿論、リライにだって真似できないもんね」
「そ、そんな、私よりも上手な人だっていっぱいいるよ。コトヌシさんとか…」
ラエルと呼ばれた少女に賛辞を送るのは、南側に加勢しているリライとレイル。
だが、当のラエルには「優れた魔法使い」という自覚はないようで、ご謙遜。
ここでコトヌシが挙げられた根拠は、「デアボリックミスト」の制御の腕から推して知るべし。

いい加減種明かしといこう。このダミーたちは、ラエルの魔法によって作られたものだ。
攻撃についても同様、ラエルの魔法によって擬似的に再現されているに過ぎない。
ラエルの技「トリックサテライト」によるものである。
大量のダミーや攻撃を生み出すには莫大な魔力と確かなコントロールが必要であり、並大抵の術者には決して真似できない高度な技なのだ。
だが、ラエルだけはそれができる。可能にするだけの魔力、そして技量を持っているから。

「そろそろ、あなた達もお願い」
「オーケー。お任せあれ」
「一発、暴れちゃおうかしらね!」
戦況は、ダミーたちのおかげで連合軍側が有利。だが、相手が相手なだけに、手を抜く気はない。
辺境世界・南区域のリーダーであるラエルは、リライとレイルに護衛を頼んでいた。
「トリックサテライト」の安定には時間を要する為である。だが、既に安定した。
ならば、あとは攻め込むだけ。そう考えたラエルは、リライとレイルにも攻撃を命じた。
そんな彼女の後ろには、予め用意されていた魔力弾で打ち倒された鬼と下っ端が転がっていた。

(111.188.103.124).. 2010年01月24日 22:17   No.220053
++ ウェリス (オリカ王)…137回       
放置してばっかり・・・申し訳ないです;
いい加減進めていかないと・・・
・・・と言いつつ今日は1つだけですが^^;

重い音を立てて扉が開く。
目の前にいたのは―
「ネヴィア・・・!」
「久しぶりだな。諸君。」
彼は口元を歪ませた。
あの時とは何ら変わりは無い。
容姿も、殺気も・・・

セイガは2本の剣に手をかけた。
「俺達はあの時とは違う!俺達は・・・絶対に負けない!」
「それはどうだろうな。」
今にも飛び掛ろうとするセイガを冷淡な目で見下す。
その瞳には余裕があった。

そして・・・
彼は背を向けた。

「何のつもりだ・・・?」
グレンドルが焦りつつもネヴィアに問う。
しかし彼は何も答えず、その先にあったケースに触れた。
瞬間、どす黒いオーラがネヴィアを包み込んだ。

黒い靄の中で、彼の笑い声が響く。

「素晴らしい・・・素晴らしいぞ!力が漲る・・・!ふふ―はははっ!!!」
彼の体に靄が流れ込んでいく―
「い、一体何が起きてるの・・・!?」
目の前の光景に4人は唖然とするしかなかった。

オーラが消えた時、目の前にいたのはさっきとは違う『彼』だった。
漆黒の鎧、龍の様な角と尾。
背中には悪魔を想像させるような翼があった。
そして彼は笑う。
「くくっ・・・私はお前達に助けられてばかりだな・・・」
「なっ・・・どういうことだ!?」
だが、彼の目線の先はセイガでは無かった。
彼の目線の先にいたのは―

(220.213.96.44).. 2010年01月28日 23:20   No.220054
++ クォーツ (オリカ王)…225回       
もう2月ですね。1ヶ月って早いなぁ。
お外では相変わらず団体戦。今回は第2章でもちょっと出ていたお坊ちゃんが活躍。

―北方面―
音程族精鋭部隊が、辺境族部隊の援護を受けつつ自慢の音攻撃で進撃していく。
だが、さすがに情報が入って対策もできたのだろう、混合部隊側も広域型の魔法攻撃で迎え撃つ。
音と魔力がぶつかり合い、周辺の空間が歪むかのような衝撃波があちこちで飛んでいる。

そんな中でも、一際大きな衝撃波の発生源となっている者が若干1名。
「よくも…よくも俺の大事なメンバーを殺してくれやがったな!全員まとめてブッ飛ばす!!」
かつてはギルドと共にライブ活動をしていた男・ティノール。だが、彼の相棒は、もういない。
シンフォニーを守る為に、半ば暴走していたシェードの攻撃を受けて死亡したのだ。
そのことによる闇月族に対する怒りが、今の彼を突き動かしていた。まるで、復讐鬼の如く。
「パンキッシュ・メロディー!!」
彼の怒りに呼応するかのように、強烈な音波が鬼や下っ端をなぎ払う。否、消し飛ばしていく。
だが、怒りに任せた攻撃は精度を欠くもの。難を逃れた敵が、彼の死角から迫る!

「やれやれ、困ったもんだね。でも、もし彼と同じ立場だったら、僕もあんな風になるのかな…」
結論から言おう。ティノールに迫る敵が、彼をとらえることはなかった。
何故なら、それを察知したヴォーテクスとアドルによって、全員落とされたからだ。
「お前ら、みぃーんなくたばっちゃえ!
 ボルテックウェイブ!!」
特攻気味なヤツを増やしただけか?などとヴォーテクスが内心頭を抱える一方、アドルは突撃。
ボルテックウェイブによる電撃で、次々と鬼や下っ端を沈黙させていく。

とはいえ、混合部隊側もそれなりに数を残している。ヴォーテクスも状況打破の為、動いた。
「さぁて、こちらも始めるかな。
 フィニッシング・パニック!!」
愛用の槍を天高くかざす。すると、乱雲が彼の頭上に集まり、嵐を起こし始めた。
嵐が、乱雲から落ちる雷撃が、次々と混合部隊のメンツを撃墜していく。
生まれ持ったその力は、時に天変地異にも発展しかねない恐るべきもの。
それ故に、普段は封印され、今のような本当に必要な時にしか、使うことは許されない。
ヴォーテクスの、辺境世界・北区域のリーダーの家系の一子相伝とされている奥義。
それこそが、ヴォーテクスの必殺技でもある「フィニッシング・パニック」なのである。

混合部隊の半数は沈黙しただろうか。しかし、未だその嵐は、吹きすさんでいた。

(114.48.125.106).. 2010年02月09日 21:48   No.220055
++ クォーツ (オリカ王)…226回       
本日の投稿2発目。
今度は中央区域内部においてこっそり活躍しておられる方々の状況を。
分割して、何名かにスポットを当てつつ描いていきます。
今回は、先程出たとあることと関連していたりします。

その超能力と誤解されてもいいような優れた感覚が、遠くで巻き起こっている憎しみすら捉える。
同時に本能が告げている。その憎しみは、決して自分が知らない動機によるものではないと。
そしてその憎しみを、闇月族を全て倒すこと以外に抑える方法はないと。
ティノールやアドルが、闇月族に対するそれぞれの憎しみのままに暴れまわっているのが分かる。
「……そんなことで戦ったって、死んだ人が戻ってくるわけじゃないのに…」
憎しみのままに動くことを、感じ取っていたミズーリはどこか悲しく思っていた。
もう1つ、更に考えていることもある。

もし自分が大切な人を誰かに殺されたりしたら?

もしかしたら、自分もティノールやアドルのように復讐鬼じみたことをするかもしれない。
仮にそれを抑えられたとしても、やり場を失った怒りをどうすればいいというのか。
人間も精霊も、モンスターすらも関係ない。感情を持つ生命体全てにいえることだ。
そう、感情さえ持っていれば、誰にでも…。

「(……『復讐は更なる復讐を生むだけ』か…)」
ふと、ミズーリは思い出した。かつて、自分の道徳教育を担当した人物から言われたことを。
よほどの事情でもない限り、人は必ず他の誰かと繋がっている。そういうものだ。
それは自分だけでなく、相手にだっていえる筈だ。
自分の大切なものを失い、その原因となったから相手を倒す。即ち「復讐」。
「敵討ち」などといえば聞こえはいいが、とどのつまりは「復讐」ではないだろうか。
そして、その「復讐」によって倒された相手と繋がっていた人物は、自分を憎むだろう。
自分が倒れれば、今度は自分と繋がっていた人物がその人物を憎むだろう。
「憎しみ」という感情が連鎖し、「復讐」もまた連鎖する。「憎しみ」が途切れない限り。
だからこそ、1人の知的生命体として教えられた。
決して、相手に「憎しみ」を抱かれるようなことをしてはならないし、逆に相手を憎んでもいけない。
それこそが、「復讐」を生まない唯一の方法なのだと。

「(……侵略なんて…戦争なんてあるから…!)」
知らない内に、ミズーリはハリセンを握る手に力を込めていた。そして、周囲を睨みつけていた。
彼女は新世界の中央に潜入している。今は塔の地下で、ひっそりと「チャンス」を窺っている。
その「チャンス」をものにする為にも、自分を取り囲む者達を見過ごすわけにはいかない。

シェードが攻め込んできた際、自分の目の前で起きた悲劇。本来は防げたかもしれない。
だが、あの時シェードを射程圏内に捉えられていた筈なのに、何も出来なかった。
死ななくて良かった筈のギルドを、守れなかった。
それが今でも悔しくて、自然と力が入る。
「……全員、覚悟はいいわね!?」
全ての悲劇の元凶を叩く為、彼女は敵へと襲い掛かった。

(114.48.125.106).. 2010年02月09日 22:21   No.220056
++ クォーツ (オリカ王)…227回       
こっそり活躍している人その2。
今回、下っ端もセリフを喋ってますが、理由については本文に記載するので参照あれ。

人知れぬ暗闇の中、誰かが誰かに指示する声や慌ただしい足音が辺り一面に響き渡る。
どうやら厳重に管理されている場所のようだが、外部から悟られにくくする為だろう、内部の電源は殆どカットされている状態にある。
しかし、悟った者がいるようだ。現在は何者かがこの中に侵入し、行動を起こしている。

「えぇい、まだみつからないのか!」
「それが、どうにも…」
「照明の電源を復旧しろ!早く!」
1つ補足しておこう。この特別な場所にいる下っ端達は、特別に知能レベルが上げられている。
他よりもコミュニケーション能力を高めることで、厳重な警備の継続を狙ったシャハルの計らいだ。
どうやらこの場所は24時間体制で管理・警備する場所のようで、より確かな連携が必要なようだ。
コミュニケーション能力の向上によって、ここにいる下っ端達はこうして会話ができる。
本来、会話のできない連中よりも確実な、迅速な対応ができるはずであった。だが…。

「た、助けてくれぇ!」
下っ端の1人の叫びが聞こえた。慌てて他の数名が叫びのした方へと向かうが…
「ぎゃあああああ」
「ど、どこから…っあああああああああ」
これとほぼ同様の叫びや悲鳴が、向かった人数分こだました。1人も戻ってこない。
「あっちは確か、電源を操作するパネルが設置されている場所だな…」
「まさか、敵はパネルにとりついて……っ!?」
1人だけ色違いの、隊長格と思しき者の傍にいた筈の下っ端は、次の瞬間には崩れ落ちていた。
グロテスクな話だが、体を縦に真っ二つにされて。
「た、たいt」
「なにg」
駆け寄ってきた2名も、言葉を言い切る間もなく同様に真っ二つにされて崩れ落ちた。
だが、その犯人は見当たらない。
「(暗闇にまぎれるには、黒を基調とした色使いのヤツだろう…照らせばモロバレだ!)」
自分が把握している限りでは、部下である下っ端はもう全滅している。無残な姿にされて。
いずれは自分もそうなりかねない。状況を打破するには、明かりを灯す他にない。
そう思い立って電源パネルへ向かおうとした隊長格だったが、結局は真っ二つにされ沈黙した。

「……そこらの連中では太刀打ちできない護衛がいるなどと聞いていたが、この程度か…」
警備に当たっていた者全てが沈黙したことを確認すると、ようやく「何者か」が姿を現した。
シンフォニーから離れて行動中のミズーリと同様、レオンから離れて行動中のムーンライトだ。
現在彼らは、精鋭部隊より先行して破壊活動を行う特務隊として行動している。
「チャンス」を掴み取る為に、敵陣のど真ん中どころか懐にまで飛び込み、手を打つ為だ。

「この世界を、貴様らの好きにはさせん…」
そう呟くと、パネルを開き…粉みじんに切り刻んだ。

(114.48.159.92).. 2010年02月11日 08:24   No.220057
++ クォーツ (オリカ王)…228回       
精鋭部隊より先行して決戦の場となっている塔内部の破壊活動を行う、一部の辺境世界メンバー。
勿論、彼らも目的あってのことなのですが…全てにケリがつく時までは詳細を語れません。
明日が休みだからってタカをくくる、ワケではないですが、夜更かしして連続更新。
まず1本目。ある意味で意外な人たちが破壊活動に加勢しちゃってます。

「上は大水、下は大火事。さて、これがどういうことか分かる人はいますかね?まぁ、いたとしたらそれはそれで厄介なんですけどね…」
あからさまな調子でそう言うやいなや、少年は赤と水色の二振りの剣を交互に振るう。
すると、警備に当たっていたと思われる下っ端達は次々と大波や業火に飲まれていった。

「ハァーハハハハ!暴れがいがあるぜ!言われた通り、やりたい放題だし!」
水色と赤の小さな稀身族が目まぐるしく駆け回りながら下っ端を次々と行動不能にさせる。
刺されると激痛を伴う、その特別な針で。
その動きはかなり早く、高速戦闘など経験したことのない下っ端では到底追いつけなかった。

「オラオラオラオラ!お前ら全員、頭おかしくしてやるぜ!いっとくが逃がさねぇからな!」
黒と灰色の稀身族が、上空(屋内なので、表現としては違うかもしれないが)から襲い来る。
彼から投下される爆弾をくらった下っ端は、その言葉通り頭が狂ってしまったような行動をとる。
同士討ちや自滅など、当たり前のように起きた。

「…思っていたよりも早く片付きましたね。チックやボマーも滞りなく勝利したようですし」
剣を持つ少年が、辺りを見回してから呟く。
「ま、奇襲成功っていう補正つきだけどなー」
水色の稀身族=チックがそう答える。そう、これは彼らによる奇襲だったのだ。
「雑魚ばっかってのも、なんかつまんねーけど」
一方で、黒の稀身族=ボマーは退屈そうに付け加える。実際、彼らが倒したのは下っ端ばかりだ。
「んで、ルカイの方はどうなのさ。アイツらから言われた『探し物』は見つかったのか?」
「こちらも問題なしです。既に発見し、『すべきこと』もしておきましたし」
ルカイと呼ばれた少年は、そうチックに返す。彼らのいう『探し物』とは…
「しっかし、こんなん壊してどうなるってんだ?」
「全てにケリをつける為に必要になる、そう言われただけで詳しくは僕にも分かりませんけどね」
そうルカイから返答された後、「あっそ」と言いながらボマーは手に持っていたそれを投げ捨てた。
これこそが、彼らの言う『探し物』だったらしい。どうやら破壊対象のようだが…。

偶然か否か、その『探し物』は、同時刻ムーンライトが切り刻んだものと全く同じものだった。

(114.48.241.209).. 2010年02月12日 23:15   No.220058
++ クォーツ (オリカ王)…229回       
2本目。彼女は別名「オアシス特攻隊長」と呼ばれているとかいないとか(ぇ

1人、また1人、次々と下っ端が切り刻まれていく。切り刻むものは青い竜巻。
この竜巻が通り過ぎた場に居合わせた者は、あわれスライスされてしまうのだ。
いったい、何人の下っ端がスライスされていったことだろうか。ふと、竜巻は勢いを止めた。
竜巻の正体は、小柄な少女だった。周りに敵がいないことを確認すると、ふぅ、と息をつく。
「危ない危ない。危うく私が目を回しちゃうとこだった。使いすぎ厳禁…かな?」
そう呟くと、イテンは改めて周囲を調べ始めた。どうやら彼女も『探し物』目当てらしい。

「…あった!アレを壊せばいいんだよね」
足を止めて、目の前にあるそれをじっくりと見た上で確信する。『探し物』だったようだ。
これまた、ムーンライトやルカイが破壊したものと完全に一致する。いくつも存在するようだ。
「さぁーて、さっさと壊して、こんな薄暗いところとはオサラバし…」
そう言いかけて、イテンは突然その場から飛びのいた。その直後、そこから刃が飛び出した。
イテンに対する奇襲攻撃だ。刃が出てきたところと同じところから、新たな下っ端が現れた。
どうやらこのエリアには、こうした待ち伏せ型の奇襲攻撃員が控えていたようだ。
先程の刃を合図に、いたるところから同様の下っ端が飛び出し、イテンを包囲した。
「ナニナニ?私にまだケンカ売るっての?やめといた方が身のためだよ?……死ぬよ?」
『死ぬよ?』の部分が気に食わなかったのか、下っ端達が一斉にイテンに襲い掛かってきた。
「ねー、『死ぬ』とかって言われて襲い掛かるのって死亡フラグなんだけど、……知らないか。
 カリーシュダイブ!!」
対するイテンはあくまで余裕だ。無機物に『潜り込む』得意技『カリーシュダイブ』で攻撃を回避。
更に余波のように飛び出したかまいたちが下っ端を切り裂き、沈黙させていく。
「ほらほら!そんなんじゃ一生私は捕まんないよ!」
飛び出てきた時にもかまいたち。これで更に下っ端を沈めていく。そして再び潜り込む。
潜っては出て、潜っては出て…。それを繰り返すだけで、下っ端はかまいたちの餌食になった。
やがて全ての下っ端がかまいたちによって切り刻まれたところで、イテンは初めて立ち止まった。
「そこに隠れてても、分かってるんだからねっ!」
左右に張り出すように構えたトレントブレードの内臓ブースターで急加速し、そのまま一閃。
岩の影に隠れていた下っ端達は、その岩ごと横に真っ二つになって崩れ落ちていた。

「さて、今度こそ全滅した…よね」
自分が奇襲されることは正直想定外だったが、まぁ結局は全滅させたので結果オーライということか。
何事もなかったように、イテンは再び『探し物』を睨みつけた。カプセルに守られているようだ。
「んじゃ、今度こそここからオサラバしようか」
そう言いながら、トレントブレードをかざし、一閃。カプセルに、1本の白い筋が入った。
「……そこに隠れてるストーカーとも、ね」
きびすを返し、立ち去るイテンの後ろで、何かがどさり、と崩れ落ちていた。

カプセルごしに斬られた下っ端と、中に収められていた『探し物』が、真っ二つになって。

(114.48.241.209).. 2010年02月13日 00:01   No.220059
++ クォーツ (オリカ王)…230回       
3本目。いよいよ漫才トリオ(違)の活躍です。

さて、閑話休題、というわけでもないが、ここで1つ、話しておくとしよう。
ビッグバンの後も尚、建造物なのに何故か残っている月光守護塔。今は超巨大な大樹だが…。
その内部に突入したセイガ達は、デウスに出会うまでに一度も敵と遭遇していない。
勿論、闇月族の主力が殆ど外に出払っているところを侵入できた、というのもあるのだが。
もう1つ、理由がある。彼らが突入する少し前、先行して侵入し、敵の数を減らした者がいる。
その数、3。特務隊よりも更に早く先行し、破壊工作を続けているのである。

下っ端たちが、導入されたての銃で魔力による弾丸を放つ。だが、目標の女には当たらない。
かわされ、弾かれ、女はあっという間に下っ端達のど真ん中に飛び込んできた。
「まったく、いくら導入されてから間がないとはいえ、いくらなんでも扱いが下手すぎよ。
 スパイラルローター!!」
女は先程まで左腕のユニットに装着していたプロペラ状のパーツを高速回転させ、放った。
プロペラは高速回転を維持しつつ、周辺の下っ端をまとめてなぎ倒していき――破壊した。
女性に対して壁を作るように下っ端たちが群れを成して守っていた、『探し物』と全く同じ装置を。
「まぁ、こんなものかしらね」
そう呟くと、レジストは次のエリアへ移動を始めた。

「えらい数だなー。でも、数だけいたってな!」
1人で相手をするにはつらいぐらいの数はいるか。鬼達もまた、群れを成して青年に襲い来る。
だが、鬼はことごとく叩き潰されていた。青年が豪快に振るう、特徴的な形をした大槌によって。
「さて、とっとと終わらせるか。
 ハンマースパーク!!」
大槌に力を込め、青年は豪快にそれを振り下ろした。叩きつけられた箇所から、一筋の光が走る!
光は一直線に駆け抜け、鬼の群れをなぎ払っていく。更に余波で残りを吹き飛ばす。
それでも迫る鬼も少しはいた。だが、結局は大槌で叩き潰され、鬼は全滅していた。
「よーし、一丁あがり!」
きびすを返したクラスタの後ろ、先程の光が伸びた先には、光によって壊れた『探し物』があった。

銃を持った下っ端からの援護射撃を受け、鬼が目の前の青年に向けて突撃する。
「動きが単調な上に、遅い!」
だが、青年は魔力による弾丸も、鬼の突撃も小刻みなステップで回避し、カウンターを見舞う。
突撃してきた鬼を右腕の、援護射撃していた下っ端を左腕の魔力式の電磁レール砲で打ち落とす。
「それと、奇襲のパターンもありきたりだ!」
上から迫ってきた2体は、レール砲の砲身を利用してトンファーの要領で叩き伏せる。
「まったく、こんな連中にアレの警備を任せるとは、闇月族は慢性的な人手不足と見える!
 インタラプトバスター!!」
ある方向に向き直り、背後からの敵を見事なバック宙返りでやり過ごし、両腕を突き出す。
レール砲の砲身と砲身の間にエネルギーが走り、そこから強烈なビームが放たれる!
ビームは射線上の敵を消し飛ばしながら一直線に飛んでいき――爆発を起こした。
「……よし、次だ」
シュルツはそう呟いて移動を開始。場に残っていたのは、破壊された『探し物』だけだった。

辺境世界では政治三幹部とも呼ばれる、シュルツ・クラスタ・レジストの3人。
彼らは、誰よりも先に塔の内部に侵入し、破壊工作によって敵の数を減らしていたのであった。

(114.48.241.209).. 2010年02月13日 01:14   No.220060
++ クォーツ (オリカ王)…231回       
とっとといきます、4本目。
今宵はこれで一区切り。何やらトンデモナイものをとある人物が掘り当ててしまいます。

塔内部のとある場所に、人が入れるくらいの穴が開いていた。相当深く続いているようだ。
辿ってみれば、いたるところに『探し物』の同型が多数、スクラップになって転がっている。
しかも、奥に行けば行くほどその数は多くなり、しまいには一列にスクラップが並んでいる。

「いったい何個仕込まれてるんだ、コレ…」
心底面倒くさそうにそうぼやきながら、モルトは愛用のつるはし『ピック』で穴を掘り進めていた。
彼もまた、特務隊の一員としてスカウトされ、破壊工作に奔走しているのだが…。
穴掘りに対して何故か気合が入ってしまい、こうして独走した挙句1人寂しく行動中なワケだ。
まぁ道具なのだから仕方ないのだが、ピックは文句1つ言わずに彼に使われている。
こんな時に、話し相手さえいたらまだ良かったのになー、などと少し後悔するも、時既に遅し。
仕方ないので、掘り進めることにした。いずれ穴を見つけて、後続も来ると踏んでのことだ。

自業自得とはいえ、1人むなしく掘り進めて、どれほどの時間が経過しただろうか。
気がつけば、モルトはどこかしらの空間へと出ていた。おそらくは、塔の地下室か。
実は、モルトはピックが探知した『探し物』の位置に向けて真っ直ぐに掘り進めていた。
『探し物』に辿り着いたら、破壊してもう1つの『探し物』へ向けて一直線に掘り進める…。
そうすることで、なるべく最短距離で『探し物』を多く見つけ出し、破壊しようという作戦だ。
本来ならもう2〜3人ほどと組んでの行動だったのだが、前述の通りの有様である。
話を戻すが、モルトは気づいた。ピックは『探し物』の位置を特定できていない。
それはつまり、2つの可能性を示している。
まず1つは、他の仲間達の活躍もあって『探し物』は全て破壊されたか。
もう1つは、ピックでは探知できないようなところにまだ存在しているか。
どちらにせよ、直接先へ進んで確かめる以外にない。そう考え、モルトは室内へ侵入した。

「お邪魔しまーす。誰かいませんかー?」
いや、この場でいるとしたら敵と考えるのが妥当なんだからマズイだろ、とか思いつつ、進む。
慎重に歩きながら、周囲を見回してみる。周辺が怪しげに光っていることがまず気になった。
彼の考古学者としてのカンが告げている。『ここには絶対、何かがある』と。
自分のカンを信じ、念のためピックをかまえつつ、更に歩を進める。自分の足音だけが響く。

―ゴトッ
何か、物が落ちたか、何者かがどこかにぶつけたか、そんな感じの音がした。
「そこかぁっ!」
高まる緊張のあまり、音がした方へ一気に振り向き、壁をピックですかさず粉砕した。
「……っ!?」
そして、大きく開かれた穴の奥にあったものを見た瞬間、モルトは思わず己が目を疑った。

本能的に『禍々しい』と思ってしまうようなオーラをまとったシャハルが、そこにいたから。

(114.48.241.209).. 2010年02月13日 02:05   No.220061
++ 放浪人テンクウ (オリカ初心者)…2回       
もう何ヶ月放置してたやら…。
ウェリスさんの(オンライン的)消息がつかめないのが気がかりですが、書きます。
いや寧ろ、気がかりだからこそ書きます。
……どうしているんだろうなぁ…。

正直、今すぐにでも逃げ出したい。いや、逃げ出さないと命がない気さえする。
でも、体が動かない。逃げようと思っても、体が思うように動いてくれない。
あぁそうか、これがプレッシャーでビビッてる状態ってやつか。
モルトがそんなことを思い始めていたのは、目の前にいるシャハルのオーラのせいである。

「(何なんだアイツは…。もう本能で分かる、アイツはヤバイ!関わったらヤバイ!)」
あまりにも『禍々しい』と思ってしまう、漆黒のオーラを纏っているシャハル。
モルトの動きを封じているプレッシャーは、そのオーラによるものか。それとも、別なものか。
正直、そういうことの詮索は後回しにしたかった。命の危機すら感じているのだから。
だが、ゆっくりと近づく、有無を言わさぬプレッシャーがそれを許してはくれなかった。
プレッシャーを伴ったままシャハルはモルトに接近し、その手を彼の襟首に当てた。

「(……っ)」
プレッシャーのあまり、声を発することすらできない。ただ、されるがままだ。
まるで舐め回すかのような手つきでモルトの襟首から頬の辺りを触るシャハル。
何かを探っているようにも思えてきたが、こんなことで何を探るというのか。
「……(特に大したことはないか…)」
ふと、その手を止めた。シャハルは自分の疑問に自分で結論を出し、ようやく口を開いた。

「どうやら貴様、この周辺で破壊工作をしているようだが…何を壊した?」
「さ、さぁてね…?」
どうやら、セイガ達を迎え撃つ為に準備を進めているネヴィアとは別に、遊撃に出てきたようだ。
遊撃ということでターゲットにしたのは、周辺で騒ぎを起こしている工作員だ。
工作員、即ち「探し物」を壊して回っている者たち。モルトがその一員であることは分かったようだ。
分かった理由があるとすれば、この部屋まで来たことや、ピックでカベを粉砕したことだろうか。
得体の知れないプレッシャーに屈しそうになるが、それでも張るべき意地は張った。
モルトは視線をそらしつつ、シャハルに適当な答えを返した。敵に目的を語るワケにはいかない。

ただ、気配を感じた時点で部屋から出なかったことを、彼は死ぬほど後悔することになる。

「そうか…では…正直な答えを返せるように、少しばかりオシオキするとしようか…」
「ひ…っ!?」
何故なら、オーラをより強大なものに、そしてプレッシャーを殺気に変えたシャハルが、
その持ちうる力をもって、モルトに徹底的なまでの攻撃を加え始めたからである。

(114.51.15.115).. 2010年06月27日 22:04   No.220062
++ ウェリス (オリカ王)…138回       
久々過ぎる投稿ごめんです_ノ乙(、ン、)_
文章力が落ちちゃったかもなぁ(´;ω;`)←
これからまた頑張っていきまする。

「ぐあっ・・・!」
されるがままに切り裂かれてゆくモルト。
それを残虐な笑みで続けてゆくシャハル。

お仕置きなんてレベルじゃない。

「どうだ?いい加減答えを吐き出さないと貴様の体がもたんぞ?」
「・・・ぐっ!」
目的を語りたくはない。
だが、ここで死にたくはない。
「言わないのか。・・・なら仕方ないな。」
静かに言い、右手に力を収束させる。
(殺られるッ―)
モルトはきつく目を閉じた。

その瞬間―

「・・・なっ!?」
地が揺れた。
一瞬だが激しい揺れ。
それは上からで、セイガ達が戦っていると言う事をすぐに悟った。
「始まったか・・・。」
右手の力を収めると、彼は背を向けた。
(何・・・?)
「私にはやるべき事がある。・・・運が良かったな。」
そう言うとシャハルの姿は溶けて消えた。
「あ・・・ま、待てっ!!」
モルトは手を伸ばしたが、傷ついた手は虚空を薙いだ。

『やるべき事』とは何なのか?
しかし何故か胸騒ぎがする。
「皆に・・・知らせない・・・と・・・」
モルトの意識はそこで途切れた―

(220.213.118.197).. 2010年08月18日 23:36   No.220063
++ ウェリス (オリカ王)…139回       
時は遡り、ネヴィアとセイガ達が対峙する。
ネヴィアの見つめる先はレオンであった。
レオンは伏せていた顔を上げる。
「やはり・・・あなたがそうでしたか。」
彼の口から放たれた意味深な言葉。
どういう意味なのか、全く分からない。

沈黙を破ったのはネヴィアだった。
「覚えていてくれたとは光栄だな。」
「覚えていた・・・?レオン、どういうことだよ!?」
レオンは動じず、冷静に答えた。
「隠していてすみませんでした。ネヴィアは・・・私の親戚にあたる存在なんです。」
「え・・・!?」
驚くしかなかった。
王として称えられてきたレオンが、世界を征服しようとしているネヴィアの親戚だったとは。
「驚いただろう?」
そう言ってネヴィアは笑っていた。
しかしセイガ達は気付いた。
その笑いが―乾いていたことが。

ネヴィアが笑い終えると、その目は悲しみや苦しみを帯びた目になった。
「レオンの父―ラインは私の兄だった。それも、優秀な兄だった・・・私と違ってな。」
彼は俯いて唇を噛んだ。
「そんな兄は才能に惹かれ時空族の王になった。私はただの落ちぶれ者になった!!」
「もういい!ネヴィア!!」
ネヴィアが怒りを吐き出したと同時に、レオンが叫ぶ。
普段見たことのない彼を見た気がして、セイガの方は震えた。

「・・・優秀でなくても私は貴方を尊敬していますよ。」
レオンの瞳は優しかった。
だが―
「たとえこの腐った世界を滅ぼそうとしていてもか?」
「っ・・・!」
ネヴィアの目には怒りが滲んでいた。

(220.213.118.197).. 2010年08月19日 00:09   No.220064
++ ウェリス (オリカ王)…140回       
「どうして・・・分かってくれないんですか・・・?」
レオンがネヴィアを見る。
「分かってくれない・・・?ラインと同じように優秀な貴様に何が分かる!!!」
そう吐き捨てると、ネヴィアは何か思いついたようにふっと笑った。
そしてセイガ達の方へ目線を向ける。
「面白い事を教えてやろう。貴様等を苦しめたレプリカ、それを開発したのはレオンなんだ!」
「ネヴィア!貴様!!」
レオンが怒りを露にしてネヴィアを見る。
だがネヴィアはただ笑うだけ。
「落ちぶれた私を気遣ったのも有難いが、こんな素晴らしい物を作ったとは本当にお前は素晴らしい奴だ・・・。」
唇を噛み締めて下を向くレオン。
言い返す言葉が無い。
「なぁ・・・レオン、ホントなのか・・・?」
聞いてはいけないとは分かっていた。
でも知りたかった。

「・・・ごめん・・・なさい。」
レオンは下を向いたまま謝った。
顔には悔しさが滲んでいた。

「どうだ?貴様等を苦しめたこいつと共に戦えるか?嫌ならいいぞ。その時はレオンをこちらに渡してもらおうか。・・・まだまだ使える奴なのでね・・・!」
セイガはシンフォニーとグレンドルの方を見た。
2人共自分と同じ意見だったようだ。
「そんな事でレオンを渡すと思ってるの?」
「レプリカ作っただろーと何だろうと、レオンは俺たちの仲間だ!!ふざけた事言うと捻り潰すぜ?」
安心した。
無論自分もレオンを渡すつもりは無い!
「レオン、確かにレプリカと戦って苦しかった。でも、俺たちは同じ王であるお前を捨てたりしない!」
そう言って双剣を抜く。
その剣はいつも以上に輝いていた気がした。
「皆・・・有難う・・・。」
レオンはそう言って剣を抜いた。
「ネヴィア、有難う。でも私は貴方と戦う!世界を守ると誓ったからには!!」
ネヴィアをきつく睨むと、彼の舌打ちが聞こえた。
彼の目は魔物そのものだった。
「ならば仕方あるまい。貴様等全員ここで朽ち果ててしまえ!!」
翼を広げ、彼は殺気と共に舞い上がった。
「皆行くぜ!あの時との違いを見せてやるんだ!」
光と闇がぶつかり始めた―

(220.213.118.197).. 2010年08月19日 00:35   No.220065
++ クォーツ (オリカ王)…232回       
さて、大分たってますが続き。
……モルトのフルボッコタイムは既に描写されておったぁぁ!?
ウェリスさん、執筆ありがとうございます(陳謝)

てなわけで、フルボッコになったまま放置というのもアレなので回収エピソード(マテ)

セイガ達とネヴィアが本格的に戦闘へ突入したその頃。
塔の地下にある誰も知らない一角で、光が溢れていた。
青白い、どこか淡くもある光。独特な色合いで、言葉ではなかなか表現しづらいものだ。
その光の中から、少女のような姿をした別な光が上に向かって飛び出していった。
もしもルナ族の者がこの光を見ていたなら、瞬時に理解できただろう。

光の正体が、月光世界でも殆ど見られなくなったムーンストーンの光だということを。

「う…」
シャハルに徹底的なまでに打ちのめされたモルト。倒れてからどれほどの時間が過ぎたか。
3分、いや、2分ほどか。長いような短いような時間の間、モルトは気を失ったままだった。
意識が戻ったとはいえ、受けたダメージは殆ど回復できていない。痛みも酷い。
とりあえずピックは無事だったようだ。シャハルの攻撃で飛ばされ、数メートル先に突き刺さっている。
回収したいところだが、体中に激痛が走り思うように動けない。更には、鬼までうろついてきた。
何かしらの理由ではぐれてきたのだろうか。まず分かるのは、モルトが襲われることだった。

ところが、襲い掛かった鬼たちは正体不明の敵を相手にして「狩られる」ことになる。
まず、モルトと鬼達の間を突っ切るように少女らしき人影が駆け抜けた。
すかさず反応する鬼だが、人影の位置が把握できない。人影の移動速度が速すぎるのだ。
更には、いつの間にか無数の光弾が鬼たちを包囲していた。
不規則な弾道を描く光弾に、対処することもできずに1匹、また1匹と倒されていくのだった。
全ての鬼が(といっても3匹しかいなかったが)倒れた後、人影はやっと止まった。
「えっと…誰?」
それが、モルトの正直な感想だった。

(114.51.54.17).. 2010年09月30日 19:35   No.220066
++ クォーツ (オリカ王)…233回       
「私はシアン。あなたは?」
「モルト」
「ふぅん…。でもあなた、月光世界の人ってワケじゃないよね?辺境世界の人?」
「まぁね。かれこれ300年は考古学者やってる」
「えっ…」
まずは名乗りあう。誰かを理解するなら、まずは名前から。誰かがそんなこと言ってた気がする。

シアンと名乗った少女は、黒一色で半そで短パン型のボディスーツに身を包んでいる。
腰にクリーム色のフードをつけ、胸には同じくクリーム色の大きなリボン。
前と後ろに特徴的なまでに長いアホ毛がついているが、まぁ細かくツッコまないのが筋であろう。
左手には、おそらく手をはめ込んで装着しているのであろう、アーチェリー型の武器。
先端部に光弾と同じ淡い光が残っていることから、おそらくこれで光弾を放っていたのだろう。
小柄な体ではあるが、体格や口調だけで年齢を割り出せる相手じゃないことはモルトには分かった。

「300年って…。もうそんなに?長生きさんだねー」
「そういう君は?雰囲気からすると、辺境世界の人のようにも思えるけれど」
「ぶっぶー。私は生まれも育ちも月光世界」
「でも、人間ってワケではない…違う?」
「…っ!」
「残念ながら、長年考古学者やってたせいか、なんとなくわかっちゃうんだよね」
シアンは正直驚いていた。詳しく素性を語ったワケではないのに、人間ではないと見抜かれた。
多分、この人にはあまり多くを隠せそうにない。そう思う。
だから、明かしたところであまり差し支えない程度に素性を語ることにした。

「…そう、確かに私は月光世界の人たちみたいな人間とかじゃないよ。寧ろ、辺境世界の人たちのように、精霊の一員なの。
でも、辺境世界で生まれたってワケでもないの」
「月光世界にだって、精霊の1人や2人ぐらいいるだろうさ。不思議じゃないよ。
それに、そもそも辺境世界の住人も元はといえば月光世界の住人だったんだし」
「私は長い歴史の中で、月光守護塔が作られて、そこから人々を見守る為に眠りについた」
「……そういえば、君の姿は古い書物にあった『月女神(つきめがみ)』を髣髴とさせる。月光守護塔の完成と、『月女神』及び『守護神』の封印がほぼ同時期ということを考えると…」
「ズバリ、私はその『月女神』…じゃなくて、その末裔って感じ。本物というかご先祖様から力を授かって、来るべき時を待つって感じで…」
「眠りについていた、と」

ここまでで得られた情報をまとめると、シアンは月光守護塔に伝わる『月女神』の末裔。
『月女神』とは、月光守護塔に伝わる神々の内の1人。もう1人は、モルトが挙げた『守護神』。
この『守護神』とは即ち、セイガたちに力を与えたデウスのことである、と付け加えておこう。
オリジナルの『月女神』から力を授かり、おそらく今まで眠りについていた。
ビッグバンの影響を受けた後も、月光守護塔そのものは変質しているものの、
れっきとした精霊である彼女の存在自体は変わることなく残っているのだろう。

尚、モルトの「300年」という言葉に反応したのは、目覚めた直後のレミアと似たようなもの。
つまり、眠りについてからどれほどの時間が過ぎていたのかが把握できていなかったのである。
「もうそんなに?」といっていたことから、シアンにとっては遅かった目覚めかもしない。

(114.51.54.17).. 2010年09月30日 20:29   No.220067
++ クォーツ (オリカ王)…234回       
ここにきて新キャラ・シアンが登場。
ブログの方には既に情報を載せてあるので、興味があれば参照くださいませ。

「そうだ、早くみんなのところへ…っ!」
「ちょっ、大丈夫!?」
情報交換もいいのだが、いかんせんここは敵地のど真ん中。長居するわけにもいかない。
ひとまず味方のいる安全圏までは移動したいのだが、シャハルから受けたダメージは未だ深刻だ。
今は立つのがやっとで、まともに歩くのも難しいくらいなのだ。
「待ってて、イイモノ持って来るから!」
そう言うと、シアンはどこかへ行ってしまった。それから数分後、戻ってきた。
その手には、淡く青白い光を放つ結晶体が握られていた。大きさは手のひらに納まるぐらい。
「それは…」
「いいから。もうちょっとだけガマンしてて」
疑問の声をあげるモルトをよそに、結晶体を両手で握りしめる。すると、光が増幅した。
増幅した光はモルトの全身を照らし出し…少しではあるがその傷を癒していった。
「完全に、ってワケじゃないけど、立って歩く程度は大丈夫なくらいには回復したと思うよ」
「あ、ありがとう…」
シアンは敢えてその結晶体の正体には触れなかったが、モルトには理解できた。
今は輝きを失っているものの、その結晶体は紛れもなくムーンストーンであったということを。
ただ、不可解なこともある。
ムーンストーンに多少の治癒効果があることは古い文献から得られた情報で知っている。
だが、ムーンストーンはその特性が故にルナ族にしか扱えない筈。
シアンが『月女神』の末裔であることは分かったが、ルナ族であるかは疑わしい。

モルトはまだ知らない。『月女神』は確かにルナ族ではないが、それと同等の性質を持つことを。
その末裔であるシアンもまた、ルナ族と同等の月光の力を持っているということを。

ひとまず、ピックで掘り進んできたルートを逆行することで地上に出ることにした。
迷い込んできた鬼からの襲撃こそあったものの、これはシアンが余すことなく撃退してくれた。
もっとも、モルトはまだ戦闘できるほどのコンディションではないからなのだが。
穴の入口まで辿り着き、出てみると、外は現在も戦闘継続中。大乱戦になっていた。
安全圏までモルトを送り届けると、医療メンバーへの挨拶もそこそこに、シアンは飛び出した。
向かう先は戦場。『月女神』の名の下に、月光守護塔を開放するべく、戦いに身を投じる。

日本神話において、月の女神は弓矢の扱いを得意とする狩りの女神でもある。
必要とあらば、その巧みな弓術をもって仇なす者を討ち取っていったという。
あくまでも流麗に、そして確実に仕留める。

『月女神』の末裔であるシアンの戦いぶりは、月の女神のそれと重なるかのようだった。

(114.51.9.20).. 2010年10月02日 05:29   No.220068
++ クォーツ (オリカ王)…236回       
久々なせいか、それとも週末だからか割と好調。
ホイホイといきますよ。
今回もシアンが中心のお話。長き眠りから覚めたばかりなのに、世界は大異変で様変わり。
持ち前の機動力と元気っぷりを活かして世界を駆け巡り、彼女が思うこととは…。

「(変わってる…何もかも)」
鬼を光弾で蹴散らし、下っ端をアーチェリー型固有武装「アーバレスト」の先端部で切り倒す。
無数の光弾を瞬時に生み出し、巧みなコントロールで敵にぶつける。
その軌道は変幻自在。魔法に優れる流星族や時空族でも難しいことを、彼女はやってのける。

必殺技「月女神之裁(つきめがみのさばき)」

そうして無数の敵の群れを突っ切りながら、シアンは改めて感じていた。世界の違いを。

彼女が眠りにつく前(少なくとも300年よりは前の筈である)とは、明らかに違うのだ。
シアンはまだ断片的な情報提供しか受けていないが、世界はビッグバン(大異変)を経ている。
月光守護塔のある月光世界と、その地下世界ともいうべき辺境世界が融合しているのだから。
2つの世界の融合により、それぞれの世界での一部を除く人工物はリセット(=消滅)。
生態系についても、それぞれの世界で独立していたものが共存関係となり、融和している。
月光守護塔については、人工物ではあるがリセットは免れている。ただし、超巨大な大樹として。
大樹そのものが巨大な塔のようにも見えるのは、当然ながら元が月光守護塔だからである。
その証拠に、内部構造は月光守護塔だった頃と殆ど変わっていないといえる。
変わっているところといえば、ところどころが緑色に変色していることぐらいであろうか。
その原因は、いうまでもなく周辺の植物やらコケやらが繁殖しているからなのだが。
尚、世界全体が大自然そのものとなっており、地形すらも変化していることも改めて述べておく。

「(ビッグバン…だっけ。元々は月光世界と辺境世界とで別々だったのが、今は融和してる…)」
辺境世界の民の大半もそうだが、シアンも精霊。寿命も老化もなく、活動場所を選ばない。
だから、地上を駆け抜け、空中に舞い踊り、時には水中に飛び込んだりもした。
その行く先々全てで、ビッグバンによるものと思しき世界の姿の一部が確認できた。
特に今のこの世界は、大自然の姿そのものが世界の姿といっても過言ではない。

「(目覚めた時には何もかもが変わった、新しい世界でこんにちわ。それはそれでいいかもしれないけど…私はちょっとスッキリしないなぁ。
もう一度ちゃんと、月光守護塔の中にあるあの石碑を目に焼き付けておくまでは…ね)」
全てが変わった。変わらぬものといえば、空と、海と、月の輝きぐらいであろうか。
シアンは目指す。今まさに光と闇の決戦が繰り広げられている月光守護塔へ。
目的は、塔のどこかにある石碑。その石碑には、『守護神』と『月女神』が描かれているという。
リセットの影響を受けていない保障などないが、確かめないと気がすみそうにない。

だから目指す。残っているのかいないのか、それだけはハッキリとさせておきたいから…。

(114.51.129.5).. 2010年10月02日 23:20   No.220069
++ クォーツ (オリカ王)…237回       
久しぶりです&あけましておめでとうございます。
新年1発目は、今一度後方支援組を。
その後方支援組の代表格…というか、直接指揮を担当している4区域リーダーズ。
今回は彼らが同じ話の中で共演します。

長くなったので2分割です。

セイガたちがネヴィアと改めて激突し始めていたその頃、当然外でも動きはある。
その「動き」にいち早く気付いたのは、ヴォーテクスだった。
《こちらは南区域リーダー、ラエルです。どなたか、応答してください》
「…こちら、北区域リーダーのヴォーテクス。これはいったい、何事だい?」
そう、どういうわけか、ラエルから通信…否、念話がつながっているのだ。
本来、ヴォーテクスにはそのような能力は無かった筈なのだが…。
《よかった、つながった…。これは、私の魔導書を使っての特殊な念話なの。
こうやって、各区域のリーダーたちと通信できるようになれば、お互い迅速な情報収集ができるだろうと思って、やってみたのだけど…》
「なるほど、魔導書の力を仲介することで、念話によるネットワークを作った。
そのネットワークを使うことで、本来は念話が使えない者もこうして話せるってワケだ」

指揮をとる者として、情報は多いに越したことはない。もちろん、度が過ぎない程度に、だが。
とはいえ、相手にはまだ未知の要素がないとも限らないし、戦況はリアルタイムで知るべきだ。
そこで、ラエルは独自に魔導書を仲介する形で念話ネットワークを作り上げ、テストしていたのだ。

結果は、ヴォーテクスに通じたということから見ても大成功だ。少しだけ安心するラエル。
「ということは、コトヌシやヘシオとも話せるようになるのかい?」
《もうちょっとだけ待って。そう、もうちょっとだけ、時間がほしいの…》

だが、ラエル自身も予想できないほど迅速に、この念話ネットワークは機能することになった。
《お見事です、ラエル嬢。まさか、この短期間でこれほどまでに精密で強力な念話ネットワークの基礎を築き上げてしまうとは》
《これは、東区域リーダーとして、ちょっと悔しいけれど…でも、嬉しくもある。これがあれば、もっと多くの仲間とだって話せるよ》
「え…その声…コトヌシさんにヘシオさん!?」
突然、コトヌシとヘシオがそれぞれで彼女の念話ネットワークに入ってきたのだ。
本来、まだ確実につなげたわけではないのに…。
《私達も手伝います。そうすれば、もっと素晴らしいものへと発展できる筈です》
《僕達だって、貴女といい勝負ができる存在であるということ、忘れないでほしいな》
二人とも、ラエルに技術面でまんまと出し抜かれたとかそういうライバル意識というよりも、
自分たちもその技術の輪に加わりたいという意識の方が大きいらしい。やる気満々だ。
《決まりだね》
ヴォーテクスが切り出した。

(222.144.48.99).. 2011年01月08日 22:07   No.220070
++ クォーツ (オリカ王)…238回       
分割その2。
今年こそは完結…できたらいいなぁ(マテ)

《僕ら4人で、君の築き上げたネットワークを拡大させるんだ。そして、より多くの仲間たちと連絡を取り合えるようにする》
そこで一旦間をおいて、今度はラエルに向けての言葉が放たれた。

《リーダー同士として合流する前の君のことは、僕達は知らない。でも、僕達のことだって君はよく知らないだろう?同じだよ。
僕達は、お互いに力を合わせて生きるってことを生まれた時から知ってる。
それと同じように、もっとこう、なんていうか、いろいろ話したりとかしようよ》

《僕達、もう『戦友(とも)』なんだからさ》

その言葉に、ラエルは勇気づけられた。
正直、念話ネットワークが共同作業で作れる分野ではないと思っていた。
だが、ヘシオやコトヌシは自力で介入してきたし、ヴォーテクスも素人ではないらしい。
現にテスト発信していた念話に真っ先に対応できたのも、何かしら理由があるからだろう。
念話とは、決してただの偶然で傍受できたりするものではないことを、ラエルは知っている。
きっと、コトヌシもヘシオも、ヴォーテクスも。

そして何より、自分のような未熟者に、熟練者であり先輩でもある彼らが、率先して手を差し伸べてくれる。
未熟だから。彼らはそんな曖昧な理由で手を差し伸べてはくれないことは既に知っている。
だからこそ、嬉しかった。『力を貸そう』と、手を差し伸べてもらえること。
それは、既に彼らが、自分を『戦友(とも)』として認めてくれている証だったから。

「…うん、ありがとう!」

知らない内に涙目になりながらも、笑顔でそうヴォーテクス達に答えたラエル。
彼らは、彼女という『戦友(とも)』を持てたことを、誇りに思っていた。

そして、基礎を築き上げたラエルを筆頭に、連合軍の内通念話ネットワークは急速に発展した。
最初はリーダー4人だけだったものが、彼らを中継する形でまず辺境族部隊に。
更に辺境族部隊を中継して連合軍全体へと広まり始めていったのである。しかも、ものの数分で。
セイガたちや工作部隊とはつながらないが、何かしらジャミングでもかかっているのだろう。
だが、彼らの身を案じる者はいなかった。


必ず勝利と共に戻ってくると、信じているから。

(222.144.48.99).. 2011年01月08日 22:24   No.220071
++ ウェリス (オリカ王)…142回       
「そら、耐え切れるか?」
ネヴィアの手が漆黒の闇に覆われ、一気に放出する。
漆黒の気は雷のような音を立てこちらに迫ってくる!
「言った筈だ!あの時の俺達とは違うってな!」
流星剣と月光剣を構え、同時に上段から振り下ろす!
「いっけえ!双流星波(ソウリュウセイハ)!!」
技としては流星光剣を同時に放った物と何ら変わりはない。
しかし今のセイガの力だ、あの頃の比ではない!

光と闇が鬩ぎ合い、地面が吹き飛ぶ。
力は相殺し、煙だけがもうもうと上がる。
「な、何っ!?」
こちらの力が勝っていると思っていたのか、ネヴィアの目が見開かれる。
「おらおら!驚いてる場合じゃねーぞ!裂鋼爪弾(レッコウソウダン)っ!」
煙を突っ切って、グレンドルがネヴィアに肉薄した。
強く握った拳が輝き、光は爪となり彼に襲い掛かる!
スピードも並ではない。
ネヴィアの反応は完全に遅れ、守りの構えしか出来なかった。
「うおらぁっ!」
振り下ろされた爪は装甲を易々と裂いた。
「ぐっ!」
素早く後ろに飛び、着地する。
途端に裂かれた篭手のような物がばらばらと崩れる音がした。
「そんな馬鹿なっ・・・!?・・・この力を上回るなどありえんのだああっ!!」
困惑する彼にレオンが肉薄し、シンフォニーが魔方陣を展開する。
「力だけが全てじゃない!仲間こそが私達の力よ!―プリズムレイン!!」
シンフォニーの放った光の粒子が雨のように降り注ぐ!
それは刺さるように、縫い付けるようにネヴィアに降りかかった。
「ぐっ・・・あぁっ!!」
そんな彼の目前まで来たレオンが、剣を構える。
そしてその剣をネヴィアの首筋にぴたりと当てた。
「まだ遅くはありません。・・・今ならあなたを許せる。」
親戚にあたる存在だ。
こうなってしまうのも仕方ない。
しかし、レオンの行動を止める者は誰一人としていなかった。
―寧ろそれを望んでいた。

(220.213.101.45).. 2011年03月16日 23:02   No.220072
++ ウェリス (オリカ王)…143回       
先程書くのを忘れていましたが、とりあえず今年中には完結させるぞ・・・!

それと、地震の被害は大丈夫でしょうか・・・?
自分は今のところ大丈夫です。
月光神羅を見てくださっている方、クォーツさんが無事であることを祈ってます...


「何故そこまで私を信用する?・・・私が許せないのだろう?」
首筋に剣が当てられているのにも構わず、すっと顔を上げレオンを見つめる。
レオンは剣を下ろし、鞘に収めた。
「あなたは変われると信じているからですよ。」
彼は優しく微笑んだ。
きっとあの頃と同じ笑顔なのだろう。
「・・・っ!」
ネヴィアは俯いた。
彼の瞳から涙が零れ、地面を打つのが見えた。
「私だってレプリカ技術を生み出してしまったという罪がある。共に・・・罪を償おう。」
レオンが手を差し伸べるとネヴィアはゆっくりと顔を上げた。
涙の跡は気にせずに。
「レオン・・・暫く会わないうちに成長したな。」
初めてネヴィアの優しい笑顔を見た。
きっとあの頃と同じ・・・いや、その時よりも優しい笑顔なのかもしれない。
レオンの嬉しそうな顔がそれを教えてくれた。

ネヴィアが差し伸べられた手に自分の手を伸ばした。
その手が―

―触れることは無かった。
「!!」
不意にレオンは自分の体が突き飛ばされるのを感じた。
くらりと傾く視界の中で、目の前の地面が吹き飛ぶのが見えた。
懐かしい笑顔が消えてゆくのが見えた。

「ね・・・ネヴィアッ!!」
すぐに起き上がって目の前の惨状を見る。
一瞬にして吹き飛んだ地面に、彼が伏せているのが分かった。
そしてその彼の目の前にもう一つの影があった。
彼を見下すようにして立つ、もう一つの影。

「落ちたものだな。見損なったぞ、ネヴィア・・・。」
煙の間から見えた、さらりと伸びた銀髪。
一体何がどうなっているのか、4人は把握しきれなかった。
分かるとしたら一つ。
―彼こそが本当の黒幕だということだった。

(220.213.101.45).. 2011年03月16日 23:33   No.220073
++ クォーツ (オリカ王)…239回       
またもやご無沙汰です。のんきに生きてます(オイ)

むむ…ウェリスさんの投稿から半月近く経ってるとはねぇ…いやはや。
自分は滞在地の関係で震災の被害は一切なく、実家も停電だけで済みました。
(その辺の話は、「home」部分のリンクから飛べる我がブログの3/14の記事も参照のこと)

塔の内部で繰り広げられる最終決戦は、ネヴィアをお払い箱にしてラスボスが遂に介入開始。
一方で、別なところでは…?
今日は1本。

「……あった!」
上の方でセイガ達が戦っていると思われる、激しい音が響く。だが今、彼女は地下階層にいる。
シアンは、工作部隊の中でもモルトぐらいしか突入していないような地下深くに来ていた。
潜入しつつ記憶をたぐりよせた結果、彼女の目当てである石碑は最下層にあると思い出せた。
そこで、しらみつぶしに探すにせよ、脱出しやすいように、最下層から探すことにしたのだ。
そして案の定、石碑は最下層侵入後、ほどなく発見することができた。

……だが、問題がないわけでもなかった。石碑であることまではわかるが、損傷と劣化が酷い。
特に劣化が激しく、衝撃などには非常に弱くなっていることが見て取れた。
つまり、うかつに触れないのだ。更に厄介なことに、石碑はツルのようなものでびっしり。
ビッグバンの影響で急激に活性化した植物が、石碑のヒビから飛び出してしまったのだろう。
「う〜、どうしよ…」
この時点で半分あきらめてもいい気もするが、完全に崩落したワケでもない。
ツルをどうにかして除去できれば、石碑の絵は見れる筈である。
だが、劣化が激しい為、何かしらの衝撃で石碑が崩れてしまう可能性も高い。
それに、ツルを取り除こうにも、根本が石碑のあちこちにあるヒビだ。衝撃は避けられない。
「これじゃあ、どうしようも……って!?」
不意に、彼女の周囲で爆発が起きた。

「あ…」
今の爆発が、致命的かつ決定的なダメージになってしまったのは明らかだった。
雪崩の如く瞬く間に石碑は崩れ去っていく。完全に粉々になった為、修復はもう無理だろう。
「せっかく…見つけられたのに…」
失意というか、嘆きというか、そういう感情が自然とこもってしまう。
だが、そこまで気にする心理的余裕はシアンにはなく、悲しみの目のまま爆発の元凶を探す。
ほどなく見つかった。この戦乱の中、かろうじて逃げ延びたと思われるネヴィア軍の残存部隊だ。
だが、いくら原因が彼らであろうと、憎むつもりはない。憎めば、それはまた悲劇の種になる。
「月女神」の末裔として、本能レベルで刷り込まれた潜在意識がそうさせる。
他者を憎むのではなく、思い知らせる。相手にとってどれほど酷いことをしたのか。

「形あるもの、いずれは滅するなり」

生まれて間もない頃から眠りに至るまでの間、誰かにそう教えられてきた。
「月女神」その人からも教育は受けてきたが、それとはまた違う人だった気がする。
「(そうだよね…石碑だって、時間が過ぎれば古くなって壊れちゃう。それだけだよね…)」

彼女が向き合ったそれは、1つの真実。いかなる存在であれ、形あるものに永遠はない。
ただ、滅するまでの間が長いか短いか。それだけの話でしかないのである。

(58.88.244.252).. 2011年04月06日 23:12   No.220074
++ クォーツ (オリカ王)…240回       
どうも、2か月もご無沙汰です。
ウェリスさんも随分とご無沙汰、もう既に6月になって…って、ヤバい。
今年中に完結できるかっ!?(マテ)

ひとまず、シアンのエピソードの続き。
お目当ての石碑がパーにされ、シアンが静かにマジギレ。攻撃の殺傷力が激増です。
というワケで、グロ表現注意。

「(コイツらを憎んだって、別に石碑が直るワケでもないんだし…。でも…)」
瞬時に装着したアーバレストには、既に無数の光弾を放つだけのエネルギーがあった。
「(思い知らせる…。問答無用で攻撃したなら、問答無用で攻撃されたって文句の1つもいえないんだってことを…!)」
アーバレストを天井めがけて掲げる。その時、彼女の目は俗にいう「狩人の目」であった。

今一度いうが、月の女神とは狩りの女神でもある。
神々のことを取り上げた文献などでも詳細が語られることは意外と少ないが、敵とみなした者には容赦しない女神であったことは間違いない。
そんな月の女神と関連性の深い「月女神」、その末裔であるシアン。
彼女もまた、ひとたび「敵」と見なした者には、一切の情けも容赦もなくなる。

そう、たとえば…有無を言わさず攻撃してきた鬼たちへの対応のように。

アーバレストから放たれた無数の光弾が、四方八方から鬼たちを「貫く」。
今までは「当たる」程度の扱いではあったが、今回だけは違う。その方が痛みも酷いだからだ。
容赦なく体のあちこちを貫かれ、痛みにもだえる鬼たち。それを冷徹な目で見下ろすシアン。
鬼たちの内の何体かが逃走を図る。だが、シアンはアーバレストを向け、光弾で貫いていく。

逃げ惑う鬼と、それを仕留めていくシアン。
その一方的すぎる戦闘の光景はまさしく、狩る者と狩られる者の構図であった。

やがて、石碑への未練がなくなったこともあり、連合軍の勢力圏に戻るべくシアンは離脱。
彼女が最下層を脱出したあとには、例外なく全身穴だらけで血の海に沈む鬼の姿しかなかった。

(220.107.90.168).. 2011年06月21日 21:22   No.220075
++ ウェリス (オリカ王)…144回       
お久しぶり過ぎてもう何が何だか/(^o^)\←
いやもう考えたの自分なのに本当に申し訳ないorz
これホントに今年中に終わるのか・・・?(((

あ、大学決まったので今の所フリーダムです←
この勢いで1日1個でも良いから更新するぞ・・・!!


煙が完全に晴れると、そこには見かけぬ男が一人いた。
ローブで顔は見えない。
「お前は・・・誰だ!」
セイガは吠え、剣を握りなおした。
それと同時に3人も構えた。
ネヴィアは顔だけを上げその男を睨み、こう言った。
「シャハル・・・貴様・・・!」
シャハルと呼ばれた男はフード越しににやりと笑う。
僅かに見えた緑の瞳は笑ってはいない。
「失望したぞ、ネヴィア。・・・いや、始めから貴様と組むつもりなど無かったがな!」
そう言うとフードを掴み、放り投げた。
そこにあった姿は、ある伝説を思い出させる姿。
「ダークエルフ・・・!?」
そう、褐色の肌に流星族のように尖った耳。
伝説上封印されたと言われていた禁忌の種族だった。
「嘘だろ!?あれは伝説だし、仮にも封印されてたって・・・」
シンフォニーが呟いた言葉に、グレンドルが驚く。
無理も無い。
伝説でのみ語られた存在なのだから。
「ほう、伝説・・・か。―いかにも、私はダークエルフだ。この世界の裏側で封印されていた・・・。」
自信を哀れむように彼は笑う。
「だが封印の結界は緩み、私は復活する事に成功した。そして同じく封印されていた同士も復活し、共に誓った。」
そして緑の瞳が憎しみを露にしたかのように鈍く光る。
彼は吠えた。
「我々を封印した愚かな月光世界の民を許すまいと!!」
彼の全身から殺気が溢れ出す。
だが、ネヴィアは動かぬ体で反論した。
「それは無理だろう・・・。貴様では彼等には勝てん。この力を使ったとしても・・・な。」
そう言って砕け散り、地面に転がった鎧の破片を見た。
恐ろしい力をこの4人は撃破したのだ。
封印された力とはいえ、この4人なら勝てるとネヴィアは確信を持っていた。
「無理・・・だと?・・・笑わせるな!」
シャハルは笑うと、虚空に手を伸ばした。
その手に纏わり付くようにどす黒いオーラが収束した。
―ネヴィアの時と同じような、どす黒いオーラが。

(220.213.104.114).. 2011年12月17日 21:48   No.220076
++ ウェリス (オリカ王)…145回       
そういやフロンティア(オンラインのやつ)やってる人っていますかね?(・ω・)
ちょっと気になったのでぼそーり言ってみたり((


「あの力は・・・シャハル・・・まさか!」
ネヴィアの目が見開かれた。
4人も同じだ。
あのオーラはネヴィアのものと同じ―いや、それ以上のものだった。
「残念だったなネヴィア・・・。貴様が何故こんな奴等に負けたのか分かっただろう!?」
オーラがシャハルの全身を包む。
彼の殺気が増す。
「レプリカ技術を使った・・・のか!?」
レオンは驚愕した。
自分が生み出した技術がこのようなケースで利用され、大事な人を殺すような形になろうとは。
「そうだ!ご名答だよ、時空族の王よ!!」
靄が消えるとそこには姿の変わったシャハルがいた。
見た目はネヴィアの時とそう変わりは無い。
だが殺気が、力が、ネヴィアのものよりも遥かに上回っていた。
「ネヴィアよ、お前は本当に素晴らしい力を手に入れたな。礼を言おう。」
「き・・・貴様ッ・・・!」
荒い息でシャハルを睨む。
だがそれを嘲笑うように彼は見下す。
そして自分の得た力を見た。
「はは・・・素晴らしい・・・!これで私の望んだ世界―ダークエルフのみが存在する世界が出来る!!」
「シャハルーッ!」
レオンが剣を構え、一気にシャハルに振り翳した。
しかしシャハルが腕を一振りした途端、結界のようなものが現れ、剣を弾いた。
「今度はこちらが貴様等を封印する番だ。・・・まずは貴様が消えろ。」
手に収束した闇が、一直線にネヴィアに向かって飛ぶ。
それを防ぐことも出来ず、波動はネヴィアを襲った。
「ネヴィアッ!!」
「いやあああっ!!」
叫んだグレンドルの声と、シンフォニーの絶叫が木霊する。
濛々と上がった煙が消えた時、そこには目を見開いたネヴィアがいた。
―ぴくりとも動かない、彼が。
「・・・てめぇ・・・!!」
セイガは怒り、両手の剣をこれまでに無いほど強く握った。
レオンも同じだった。
いや、グレンドルも。シンフォニーも。
「許さない・・・!絶対に貴方を許さない!!」
レオンの魔法剣が強く輝いた。
「戦うのか・・・?この私と?・・・良いだろう、次は貴様等を封印してやる!!」
シャハルが腕を広げると、全身から恐ろしいオーラが溢れ出した。
「皆!世界の為にも・・・ネヴィアの為にも戦うぞ!」
セイガ達は走り出した。

(220.213.104.114).. 2011年12月17日 22:11   No.220077
++ ウェリス (オリカ王)…146回       
塔の外の話も。
新しい敵の登場なのです←


シャハルの力は塔の外に異常をもたらした。
「何だあれ!?」
上空を見上げ、セルネが叫ぶ。
「瘴気・・・か?強い邪気を感じる・・・」
アースが静かに、だが警戒するように言った。
その瞬間だった。
「キィアァァァ!!」
鬼の叫びが聞こえた。
攻撃する時の奇声ではない。
―断末魔が。
「な・・・何っ!?」
スターリィが見た光景は異様なものだった。
瘴気が原因なのだろうか、謎の兵士が突如現れ、剣で鬼達を引き裂いたのだ。
「何なんだよこいつら!!」
ジーニアスを倒し終えたヴィートが今の光景を見て驚く。
だが、兵士から放たれる殺気で分かる。
「どうやら俺達の仲間じゃないみたいだな・・・。」
ファルティアが薙刀を構え、一気に突撃する。
それに習い、他のメンバーも増えては鬼を切り裂いていく兵士に向かった。
「・・・ターゲット変更。排除シマス。」
こちらに気付いた兵士からそんな声が聞こえたかと思うと、今度はこちらに剣を向けてきた。
どうやら敵を発見したら無差別に攻撃を仕掛けるようだった。
「遅い!スタードライヴ!!」
スターリィが剣を地面に叩きつけると、溢れ出した光が衝撃波となって一直線に進む!
衝撃波が兵士にぶつかると、勢い良く兵士は吹き飛んだ。
がこん、と音を立てて兵士が倒れると、鎧ごと黒い煙となって消える。
―あの瘴気と同じようだ。
「やっぱり・・・瘴気が原因か!」

次々と兵士を切り裂き、殴り飛ばし、煙となって消えてゆく。
時々混じって襲い掛かる鬼も同じように、切り裂いていく。
しかし、数が多い。
「師匠直伝の技!光波裂翔(コウハレッショウ)!!」
セイショウはスターリィから学んだ技で次々と兵士を蹴散らしてゆく。
その手には真剣が握られていた。
「逃がすもんか!絶破(ゼッパ)!」
そのセイショウの隣でキュウセイが矢を放つ。
矢は真っ直ぐ兵士に突き刺さったかと思うと、突然光を放ち爆発した。
―敵の数は確かに多い。
だが、こちらには実力者が多くいる。
次々と兵士は煙を上げ消えていった。

(220.213.104.114).. 2011年12月19日 23:21   No.220078
++ クォーツ (オリカ王)…241回       
ご無沙汰すぎますが、年内に再度更新できたことをまず喜ぶ私。

こちらも更新せねばばば。



セイガたちがシャハルとの連戦に移った頃、突如発生した瘴気による兵士たち。
その情報は瞬く間に連合軍全体へいきわたり、残っている鬼と合わせて応戦していた。
体勢を立て直す時間こそ必要だったものの、念話ネットワークを駆使することでその時間を短縮。
今は数多くいる実力者たちによって兵士たちも徐々に数を減らしていく。問題は別だ。

そもそも、何故瘴気の塊ともいうべき兵士が大量に出現したのか。発生源はどこか。

後方で情報管制と戦況分析を担当しているメンバーは、その情報の収集で手をこまねいていた。
ネットワークの基部を作ったこともあって、そのメンバーの中心にあるリーダーズも苦戦中だ。

「あの兵士たちに関する情報が…少なすぎる」

ラエルがつぶやく。どこから増援があるかなどわからないものだが、いくらなんでも異常だ。

「塔の中心部を調べてみて。
 多分、この事態の原因は、そこにあるから」
『了解!』

部下たちや同士たちに指示し、自分も透視魔法などを駆使して探りを入れる。
その一方で、先行工作部隊として場を離れているシュルツたち3人との通信試験も継続。
念話ネットワークの構築はほとんど完了しているが、最前線、つまり塔内部はまだ無理だ。

「何か強力なジャミングをかけられてる…?
 それとも、ただ瘴気とかが強すぎるだけ…?」
《瘴気兵士はあまり問題にならないだろうけど、その瘴気の発生源はほぼ間違いなくあの塔だ》
《だろうね、どの方向へ探りを入れても、最終的に塔の方へ集まっていくから》

ラエルの声に、ヴォーテクスとヘシオが返す。向こうも有力な手がかりは掴めていないようだ。

《敵の大将であるネヴィアか、或いは…》
「或いは…?」
《殆ど情報のない、シャハルのせいかもしれませんね。正体不明、としかいえませんから》

ラエルからの声に、コトヌシがそう返す。連合軍全体を使っての情報収集能力。
それをもってしても、未だにシャハルのことについては殆どわかっていないのだ。
ネヴィアも確かに脅威だ。それも最大級の。だが、情報がないことはそれを更に上回る脅威だ。
命のやり取りをする戦場において、情報がないことは圧倒的不利と身の危険に直結する。

だが、外の者たちは誰も知らない。

現在進行形で、その正体不明の存在であったシャハルが、セイガたちと戦っていることを…。

(118.9.219.219).. 2011年12月26日 17:07   No.220079
++ ウェリス (オリカ王)…149回       
「誰だよ、1日1回更新するって言った野郎は。」
はい、私です。←

って事でまたまたお久しぶりです・・・;
あー、更新するスキルが欲しいぜ...(((



近づくだけでも恐ろしい殺気と力を感じる。
ぴりぴりと電撃のように迸る。
だが―
「流星波(リュウセイハ)!」
剣を横薙ぎに振るう。
眩い光が衝撃波となってシャハルに向かう!
「無駄だ!デス・ハウリング!」
彼が手を翳すと瘴気が壁となって衝撃波と鬩ぎ合う。
一瞬光が飛び散ったかと思うと、瘴気は靄となって消えた。
「後ろ!がら空きだぜ!」
シャハルの真後ろに立ったグレンドルが拳を振り上げる。
それを舞ってかわすと、今度は斜め上からレオンが剣を構えて飛び掛る!
「時空裂斬(ジクウレツザン)!」
淡く輝いた魔剣が振り下ろされる。
しかし。
「そんな技がこの力に効くと思ったか!」
シャハルは腕一本でその技を受け止めた。
刃と鎧がぎりぎりと音を立てる。
腕を払うと鈍い音を立てて、剣は弾かれる。
「ちぃっ!」
セイガは翼目掛けて剣を思いっきり振るった。
僅かに、裂いたような感触が手に伝わった。

筈だった。

「なっ・・・!?」
そう、裂いたものは翼ではなかった。
目の前に広がる黒の世界―異空間のようなものがあった。
「空間を操っただと!?そんな馬鹿な・・・!」
レオンの言った通り、シャハルは空間を歪め、自分へのダメージを無効化していたのだ。
「空間や時空を操れるのは、時空族のみの筈じゃ・・・!?」
シンフォニーは驚愕した。
それぞれの族には特有の能力があるのは分かるだろう。
勿論その能力を扱うことが出来るのはその族の者のみ。
あるいは混血―ハーフの者ぐらいだ。
「何でシャハルはそれを扱えるっていうんだ!」
グレンドルが気を放ちつつ問う。
それと同じように、同じような構えでどす黒い気を放ったシャハルは笑う。
「分からないのか?この力は万物を統べる力!そう―全ての力を扱える神に相応しい物なのだよ!!」
シャハルが両手を広げると、背中に魔方陣が広がる。
それが目を眩ますように輝いたかと思うと、光の槍―流星を操る魔術が放たれた!
「うわあああっ!」
降り注いだ光は4人を襲った。

(220.213.107.160).. 2012年02月25日 21:05   No.220080
++ ウェリス (オリカ王)…150回       
コクセイさんのお話。
実は彼の戦闘描写を書いてて楽しかったとかそんな事ないんだからねっ!(((


大量の兵士が雪崩れ込んで来る。
標的はそれだ。
「アルカナ・ジャッジメント!」
コクセイは足元に魔方陣を広げ、両手を広げる。
広げた手の中心から光が弾けたと思うと、大量の紙―タロットのカードがばらばらと舞い、彼を囲む。
「15の目―出でよ!悪魔(デビル)!」
一枚のカードだけがふっと残ったと思うと、突然輝きだし、悪魔の姿に変貌した。
悪魔は一声笑うと、こちらに向かってくる兵士を次々と槍でなぎ倒した!
さらに―
「17の目―星の力!シューティングスター!!」
背後から忍び寄ってきた兵士に向かって、光の矢を放つ!
紛れていた鬼共々、光の矢は貫いていった。

さらに、上を見ると兵士が剣を振り上げてこちらに飛んでくる。
それを後ろに飛んでかわすと、タロットを一枚取り出す。
「12の目!吊るされた男!」
カードが輝いたかと思うと、目の前に着陸した兵士の体がふわりと舞い、突如ひっくり返る。
逆さになった兵士の足首には太いロープが巻きついていた。
そのがら空きになった兵士に・・・
「小アルカナの導き―」
剣のカードを取り出し、発動しようとした。
その瞬間だった。

不意に黒い影が横切り、兵士をロープ諸共吹き飛ばした。
「なっ―」
一瞬だった。
どさり、と兵士が崩れ落ちた音が聞こえた。
それも目の前の兵士だけではない。
後ろからもだった。
どうやら気づかないうちに挟まれていたようだ。
「ふー、危ない危ない。」
先ほどの黒い影―短い黒髪の女性がこちらを振り向く。
気功族のリアキスだった。
リアキスはふっと笑うと、コクセイに言った。
「ちゃんと周りを見て戦いな、ボウヤ。」
一言告げると彼女は再び兵士に向かって行った。

一人その場に取り残されたコクセイは立ち尽くす。
悔しいからじゃない。
「・・・姉さん?」
彼女は彼の捜していた人に、あまりにもそっくり過ぎたのだ。

(220.213.107.160).. 2012年02月28日 12:02   No.220081


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