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■--旧友と因縁(レオン編)
++ クォーツ (オリカ王)…135回          

さて、やたらと遅くなりましたがレオン編スタート。
扱ったことのないキャラも頑張って出してみますんで、暖かく見守っていただけたらなと思います。
ウェリスさんの投稿も気長にお待ちしてます。
最初はレオンじゃない人が出るんですけどね(ぁ

月光世界の全域を覆い尽くす暗黒雲。その一角、時空族の領域の上空だけは一際黒かった。理由はただ1つ、他の3領域よりも多くの兵(鬼)が配備されているからに他ならない。レオンを始め、時空族の面々は臨戦態勢に入っていた。

そんな中、時空族領域の上空を飛ぶ、月光世界では見慣れないものが。ジェット機型で、翼にはアドベンチャーチームのマークがある。
「やれやれ、こんなに分厚い雲じゃ太陽の光も見えないか。困ったことだ。…チェンジ!」
ジェット機型から稀身族特有の身体が出てくる。更に両翼のビームガンが両手に移動する。そして機首の部分が帽子のように頭にセットされて変形(チェンジ)完了である。機首とビームガン以外は背部ユニットとなる。
「どうやら、先遣隊のお出ましのようだな」
ビームガンを構える。数メートル先には、多数の鬼がひしめく群れが見える。しかし、群れとはいえ規模は大きくない。彼の言うとおり、先遣隊でしかないのだ。
彼に気づいた鬼達が、彼に向けて攻撃する。雨あられの攻撃を華麗に避け、立て続けにビームガンを連射して一気に仕留める。残った半分ほどの鬼達は引いた。
「…次は本隊だろうな…。レオン殿に報告しないとな」
そう呟くと、彼はジェット機にチェンジし、その場を去った。行き先は、時空族の兵隊の基地だった。

「暗証コード確認、入ってよし」
コードが刻まれたメンバーカードを提出し、見張りである下級兵から許可をもらって基地に入る。勿論、この時は人型(?)だ。レオンに直接会うことはできない為、軍士長であるリグレットに報告。リグレットを通してレオンにも知らせるのである。真っ直ぐに隊長室へ向かう…のだが、あまり慣れた場所ではないせいか、邪魔にならないように通路の壁際でいちいち地図を見なければならないという醜態を晒すハメになっていた。
(123.218.1.239).. 2008年08月16日 06:03   No.211001

++ クォーツ (オリカ王)…135回       
遅れてようやく主役登場、すんません。
布石みたいなの書いておきたかったもんで…。

「失礼します」
「えぇ」
副軍士長であるランスの声を聞き、リグレットが答える。ランスと共に、先の稀身族の男も軍士長の部屋に入ってきた。
「時空族防衛隊、特別協力員ジェッター、軍士長殿に会う為ここに来ました」
「用件は?あと、何故ランスと一緒なのかも聞かせてくれると嬉しいのだけど」
ジェッターは短い手で頑張って敬礼、リグレットに挨拶する。彼はアドベンチャーチームの一員なのだが、新しく入ったばかりの新人。チーム中唯一の航空戦力として、最も空戦が予想される時空族のフォローをダイボウケンから命じられたのである。ダイボウケンがレオンに話を通したらしく、現在は防衛隊の特別協力員として迎えられており、現在に至る。
「まずランス殿と一緒にいる件ですが、お恥ずかしながらここまで来る途中で迷ってしまいまして。運良くランス殿と出会えたので、案内してもらった次第です」
「…早めに内部構造を覚えておきなさい…」
「ごもっとも。そして用件の方ですが、先程偵察飛行していたところ、暗黒雲にて敵軍の動きが確認できましたので、軍士長殿からレオン殿にも伝えていただきたいと思いまして」
途端、リグレットの眼差しが変わった。戦いが迫る戦士特有の、緊張感に満ちた眼差しだ。
「そう、報告ご苦労様。私からレオン様には話しておくから、偵察に戻れ。何かあったら、副長に報告してくれればいい」
「了解しました。先遣隊が戻って暫く経ちます。そろそろ心の方も準備しておいた方がいいでしょう。では、これにて」
ジェッターは軽く会釈すると、部屋を後にした。その後、出口に着くまでの間に再び迷いかけたのは彼だけの秘密である。

一方で、リグレットから報告書を受け取ったレオンもまた、緊張感を高めていた。敵がすぐそこまで来ている。それが唯一にして最大の要因だ。
「もうすぐ、戦い…ですか」
「心構えの方はできているか?」
「!?」
突然、背後から謎の声が聞こえた。だが、この声には聞き覚えがある。そして、目の前に姿を現した男には、尚更見覚えがあった。
「ムーンライト…!?」
「覚えてもらえて光栄だな、時空王殿」
振り向いた時に目の前に現れたその姿は、レオンが幼少の頃に見ていたものと全く同じ姿。黒と薄い黄色が特徴的で、鋭角的なフォルム。機械生命体であり、暗殺術に長けた寡黙な男。分断災害前は、時空族と音程族の親善外交大使として影に忍び交流を支えてきた男。名は、ムーンライト。
「聞かせてください、辺境世界でのあの戦いで言っていた、あの話の真意を」
「お前達の敵ではない…そう言った筈だ」
「何故、あの時コンクル・シオンと?」
「術を探す為だ」
「術?」
「そう、辺境世界から月光世界に戻る術だ。コンクルの元で動いていれば、有力な手掛かりが掴めると思い、隠密将軍シャドウと名乗って配下にいたのだ。そして、見つけることができた」
「月光世界と辺境世界を結ぶ、セントラルタワー最上階にある泉を模したゲート!」
「そう。だが、そこはコンクルによって厳重な守りだ。そこで、他にゲートがないかと密かに捜索し、もう1つのゲートを発見した」
「他にあったんですか、ゲートが…」
「うむ。それもまた泉を模していた。それを通り、拙者はこうして月光世界に戻ってきた」
辺境世界の地下にあった特殊な泉には触れず、この姿に戻った理由は「偽装していた」とごまかしたムーンライト。外交官らしい、世界を越えたトラブルを避ける為の判断と嘘であった。

(123.218.1.239).. 2008年08月16日 05:55   No.211002
++ クォーツ (オリカ王)…133回       
今回は辺境世界。1本です。
全てを調査し終えたと思った遺跡に変化が…。

3つ目の部屋は、壁に古代文字が羅列されている以外には特に何もない。イテンはそう思っていた。しかし、レミアには何やら心当たりがあるのか、中央付近の床を調べ始めた。
「…ねぇ、どうしたの?」
「この部屋には、確かシェルターを兼ねてる隠し部屋へのエレベーターがある筈なんだ。で、それを呼び出すスイッチが床に偽装してあるから…」
確かに、床に紛れ込ませているなら床を調べるしかない。だが、どこにあるかまでは覚えていないようだ。ひとまずイテンもスイッチを探す。
探し始めてから数分後、イテンが気づいた。
「ねぇ、ここ少しへこんでない?」
「どれどれ…あっ、これだよこれ!」
レミアも確認し、これがスイッチだと発覚する。位置は、入り口から見て南西の隅っこ。分かりやすいといえば分かりやすいが、知らない人、忘れた人にとっては分からないことに変わりはない。
「このスイッチを…踏んでっと!」
レミアが両足で思いっきりスイッチを踏む。すると、部屋の奥の方の床の一部がせり上がり、エレベーターらしきものが出現した。
「もしかして、これも…?」
試しにプロゥブストーンを扉に当てると、扉の上の宝石が発光し、扉が開いた。やはり、このエレベーターもプロゥブストーンが必要らしい。
「よぉし、それじゃあレッツゴー!」
景気よく移動ボタンを押したのはレミアだ。探検が楽しいのか、元々こんな性格なのか。そんなイテンの些細な疑問をスルーするかのように、エレベーターは順調に降りていった。
そしてエレベーターは目的の場所に到着し、再び扉を開いた。まずイテンが出てきて、驚いた。
「うっそ〜、何コレ」
「どうしたの?」
続いてレミアも出てきて、イテンが驚いた理由を尋ねる。イテンは無言で前方をゆびさしており、その方向にあるものを見て納得した。
「あー、コレ、ルナ族の村にはちょこちょこ来ていたツキグモ……の化石か何かだね」
ツキグモとは、辺境世界では西区域にのみ存在していた固有種の蜘蛛。しかし「大いなる災い」が起こった後は個体数が激減、絶滅寸前になっており、西区域でさえも滅多に見かけなくなった蜘蛛である。腹部に月を思わせる色の模様があることからツキグモと命名された。
「…この細い棒みたいなのって…」
「多分、乾燥しきって風化してる糸だね」
風化しているとはいえ、蜘蛛の糸に触るというのには少し拒否感がある。そんなわけで、イテンはトレントブレードで風化した糸を切っていた。一方のレミアは、平然と素手で壊していた。
「……別に風化してるんだからさ、触れたって砂っぽさしか残らないって…」
「で、でも…研究施設にたまたま紛れ込んでいた蜘蛛に体這いずり回られてからというもの、蜘蛛とか蜘蛛の糸とかはかなり苦手なんだよぉ…」
相当なトラウマなのだろう、若干ため息混じりで声をかけるレミアに対するイテンの声は涙混じりだ。乙女はデリケート…というのとは違うのだろうか?レミアはそんなことを思っていた。

(123.218.1.239).. 2008年08月13日 05:43   No.211003
++ クォーツ (オリカ王)…134回       
前回の続きです。1本。
メインとそうじゃないのとで文字の色分けした方がいいのかなーと思案中。

風化した糸を壊していく内、段々ツキグモの死骸を多く見るようになってきた。妙なことに、いくつかの死骸には何かに食べられたような痕跡がある。しかも、風化している糸に絡まっている。
「…や、やっぱり気味悪いよぉ…」
「うーん…共食いされた連中かな…」
「余計気味悪いよぉ!」
この部屋に来てからというもの、イテンの声は常に涙混じりだ。しかも、この乾燥死骸が恐怖に更に拍車をかけてくれるものだから、どうしようもないなとレミアは既に諦めている。レミアは周辺に転がっている欠けた死骸が共食いの犠牲者のものであると推理。進路上に転がっているものはどけつつ更に奥へ進む。

やがて辿り着いたのは、かなりこぢんまりとした感じの扉だった。プロゥブストーンで開き、中に入った2人はとんでもないものを見た。
「ひゃ〜、これじゃまるで蜘蛛の根城だね」
「いやああああああああああああ!!」
レミアはあっけにとられるだけだったが、イテンはもう完全に泣いた。何しろ、ここには2メートルはあろうかという巨大なツキグモが堂々と構えている上に、その周りには通常サイズのツキグモがこれでもかというくらいに密集してバリケードを作っているのだから。ところが、よく見るとバリケードを成しているツキグモの一部が現在進行形で共食いしているのが見える。
「…何やってるんだか…アレ?……あーっ!」
「何?…ぐすっ、どうしたの?…ぐすっ」
未だに泣きやまないが、それでも話すぐらいにまでは回復したようだ。イテンがレミアに尋ねる。涙混じりで。
「巨大ツキグモが…培養カプセルの上にぃ!」
「えーっ!?」
これには思わず涙も吹っ飛んだ。イテンも恐怖を堪えつつ改めて確認し…。
「ホントだ、カプセルとその周辺を完全に占拠しちゃってるよ。ひっどーい…」
「ねぇ、カプセルの子は助けるんでしょ?」
「それは、そうだけど…」
「なら、遂にクレセンの出番だね!」
「え?」
次の瞬間には、レミアの手元に三日月型の何か=クレセンが飛んできた。クレセンには何やら特殊な技術が使われているのだろう、レミアの手にくっつくような感じで彼女の手に収まった。

(123.218.1.239).. 2008年08月14日 05:19   No.211004
++ クォーツ (オリカ王)…135回       
メイン(月光世界側)ストーリーの方は色を変えることにしました。前の分も後で変えておきます。今回も1本。

「コンクル・シオンに忠誠を誓っていないというのなら、お願いがあります」
「うん?」
「一緒に戦ってほしいのです。貴方にも、この世界を守る大切な戦力になっていただきたい」
レオンからの頼みは、現状ではある意味で当然のことだった。ジェッターからの偵察データから察するに、闇月族と戦うには相当な戦力が必要だろう。人手は多い方がいいに決まっている。辺境世界に飛ばされていた時の戦いから、彼の腕は十分戦場でエースと呼ばれる程のものであると分かっている。だからこそレオンは彼に頼んだ。
「…………」
「…………」
しばしの沈黙。まるで、ムーンライトが根比べを挑んでいるかのようだった。沈黙の時間は、およそ30秒弱。そして、ようやくムーンライトが(実際にはマスク越しだが)口を開いた。
「…良かろう。お前の…いや、貴君の覚悟はうかがい知ることが出来た。協力しよう」
「ありが…」
「ただし。1つだけ条件がある」
レオンがお礼を言おうとしたまさにその瞬間に、ムーンライトは突きつけるように付け加えた。思わずのけぞるレオン。
「条件…?」
「そうだ。今すぐとはいわないが、その陰険な発言を早めに直してもらうことだ。些細な揉め事が原因で連携に支障が出ては困る」
当のレオンには、その条件の根拠がまるで分からなかったが、ムーンライトの突きつけた証拠音声を聞いた瞬間、納得せざるをえなかった。
以前、フィリーが仲裁に入ったからこそ事なきを得た揉め事があった。目の前にいる者全てが味方などと誰が言った、そんな感じの揉め事。珍しく、というより初めて、シンフォニーが怒りをあらわにした場面でもあった。それだけ、レオンの発言には反感を買ったのだろう。
彼らが辺境世界に飛ばされてからずっと監視していたムーンライトからすれば、親善外交大使であること以前に「なんとかしなければ」と思ったのであった。証拠音声を録音しておいたのも、レオンに確実に直してもらう為だ。
「…いいでしょう、努力はしてみます」
「うむ…了解した(珍しく怒りをあらわにしたシンフォニーの前で平然としていたからな…所詮はこの程度の回答しかないか…)」
レオンが条件をのむことを表明、それを了解したムーンライトはどこかへ消えた。しかしその声には、半分だけ諦めの感情がこもっていたことを、レオンは知るよしもなかった。

(123.218.1.239).. 2008年08月16日 05:45   No.211005
++ クォーツ (オリカ王)…136回       
対決はまだなれど、名前だけバラすパターン。
なんかこうしないと落ち着かないもんで…。
ジョーク好きな黒歴史(何ソレ)も登場。

一際濃い暗黒雲の中、じっくりと攻める時を待つ2人。1人は、白衣を着た落ち着いた性格の青年・固塊液サイエンス。もう1人は、猫の耳や尻尾を持ち独特な喋り方をする少女・乱猫鬼キャルツ。ネヴィアによって時空族領域へと派遣された2人であるが、攻めるタイミングを掴み損ねていた。原因は2つある。まず1つは、ジェッターが周辺を偵察飛行しているから。

そしてもう1つは、いつからか時空族領域に住み着いている彼・リライの行動であった。何かを仕掛けているように見えなくもないが、暗黒雲の向こうからでは詳しくは見えない。
「…ふ〜っ、これでよし。これでいつでも迎撃可能だな!うんうん、いい仕事した」
かなり満足げな顔でその場を去るリライ。サイエンス達は知るよしもないが、実は彼もルナ族。しかし「大いなる災い」以前から月光世界へ転移していた為、巻き込まれることなく時を過ごしていたらしい。人間年齢150歳はあろうかという長生きさんだ。ちなみに、転移したのは100年前。
「何やってたんだろう?」
「さぁ…。迎撃準備とかいっていたから、多分罠か何かじゃないかな?」
キャルツの疑問に、サイエンスは的確な回答を下す。そう、リライは罠を仕掛けていたのだが…。
「なああああっ!?」
事もあろうに、なんとスカイが落ちた。勿論、何気なく歩いていただけ。落ちた原因は…。
「底なし沼?…一体何故…」
「考えてないで助けてくれよ〜」
スカイを目の前にして考え込むのは、彼のパートナーであるアース。考え込む内に別な方向で犠牲者発生。かかったのはウェザーだ。
「なっなっなっ、何コレー!?」
下から強烈な水流が押し上げてくる罠のようだ。ウェザーはそのまま吹っ飛ばされ、絶妙な距離と角度で先程の底なし沼に落ちた。
「…何なんですか、これは…」
そこにレオンがやってきた。帰る途中だったのである。慎重に歩を進めるが、そこへ。
「何やってるんだよ、もー」
「リライ?」
罠を仕掛けた張本人がやってきた。異変を察知して戻ってきたらしい。
「せっかく、闇月族迎撃の為の罠を配備しておいたというのに」
「じゃあ、これ全部リライが!?」
レオンが驚くのも無理はない。リライがこのような罠を作れることなど知らなかったからだ。
「僕は底なし沼を初めとする水関連の罠を作るのも得意なのだ。いつ闇月族が攻めてくるか分からないからね、迎撃の時間稼ぎにでもと思って罠を配備しておいたんだ」
「大丈夫なんですか?」
「モチのロン、絶対安心。猫の子一匹通さないからね!」
「なら、先程までここにいなかったエアーがいるのはなんででしょうか?」
「…え?」
ウェザーの助手をしているというエアー。確かに先程まではいなかった筈。
「…なああああ!?君、どこからやって来た!」
「どこって、空から」
「へ?」
「ちょっと風の魔術を応用して」
「…しまったぁ!空からの襲撃を忘れてた!!」
ウェザーがご丁寧に解説してくれた。リライが配備した罠には、空からの襲撃を阻めるものは何一つなかったのであった。

(123.218.1.239).. 2008年08月19日 05:56   No.211006
++ クォーツ (オリカ王)…137回       
本日リライのイラスト投下予定です。
辺境世界編。遂にレミアの実力が明らかに。

「さっさとそこをどいてもらおうかな!」
クレセンを手に、ツキグモのバリケードに突っ込んでいくレミア。当然のようにツキグモが糸を吐いて応戦してくるが、レミアには通じない。
「いっけぇ!ムーンライトソニック!」
クレセンを何度か振るう。振るう度に三日月型の衝撃波がツキグモ達を薙ぎ倒していった。倒されたツキグモはもれなく真っ二つで、ポンポンと女王ツキグモの方へ飛び散っていく。
「むむ〜っ、負けてられないもん!」
そんな戦いぶりを見て、イテンの対抗心に火がついた。蜘蛛恐怖症ということを忘れていつものようにツキグモを切り倒す。
「吹っ飛ばしてやる、ブレイドツイスター!」
トレントブレードを持って両腕を広げ、そのまま高速回転。青と黄色の竜巻となってツキグモの群れに突撃し、一瞬で何十匹ものツキグモを切り裂いた。目の前には、女王ツキグモがいた。
女王ツキグモは臨戦態勢だ。子供であるツキグモ達を蹴散らされたのだから当然ではあるのだが。
「キシャアアアアアアア!」
子供を蹴散らされたことに対する怒りを込めて糸を吐く。女王だけあって糸も太い。2人はとっさに避け、女王を挟み撃ちにする。トレントブレードの射撃とムーンライトソニックで同時に攻撃するが、女王が回転しながら放った糸が壁になって届かない。それどころか、その糸によってイテンが床に貼り付けられてしまった。
「あっ、イテン!」
「しまった…!これじゃ動けない…!」
なんとか振り切ろうとするも、女王の糸はかなり固く、とてもではないが自力での脱出は不可能。レミアにも同じ末路を辿らせようと女王はレミアの方を向く。今にも糸を吐き出しそうだ。
「(どうしよう…このままじゃあたしもヤバイけど、イテンは動けない分もっとヤバイ!この状況を打破できるとしたら…そうだ!)
切り倒せ、クレセントムーン!!」
レミアはハンマー投げの要領でクレセンを投げ飛ばした。高速回転しつつ飛翔するクレセンは、女王の頭部を3回切り、更にイテンの自由を奪っている糸を切断してレミアの元に戻った。レミアは華麗にキャッチしつつ女王に接近し、クレセンで十字切りをお見舞いした。

(123.218.1.239).. 2008年08月21日 04:56   No.211007
++ クォーツ (オリカ王)…138回       
休みの日こそ稼がねば。
そんな考えの人の心境が身にしみて分かり始めてきた私。社会人の悲しき性なのか?
VS女王ツキグモ戦、決着。そして…?

クレセントムーンによる斬撃が3回ともクリーンヒットし、倒れ込む女王。
イテンも自由に動けるようになり、形勢逆転。だが、女王は諦める様子はないらしい。
渾身の力を込めて、2本の前足を薙ぎ払うように振ってきた。直撃は避けたが、風圧だけでも十分な威力があった。踏ん張るだけで精一杯だ。
「…っ、さすがに簡単にはやられないか!」
「なら、これをくらっても耐えられる!?」
今度はイテンが走る。素早く女王の懐に飛び込み必殺の一撃を放つ。
「ブレイドツイスター!!」
女王が糸を吐くが、トレントブレードによって引き裂かれる。そして小型ブースターで勢いを増した斬撃で、女王を壁に叩きつけた。
「どうだ!」
今度こそ、女王ツキグモは沈黙。壁からずるずると崩れ落ちたまま動かなくなった。

「…ふしゅ〜…。怖かった…」
「頑張ったよ、十分に」
ようやく戦士から少女に戻ったイテンは、やっぱりツキグモへの恐怖でへたり込んだ。レミアは彼女を立ち上がらせながら、さっきまで女王が占拠していたカプセルを見る。かつて自分が入っていたカプセルと同型のものだと分かった。
すると、勝手にカプセルのハッチが開いた。中にいる者は既に起きていたようだ。ハッチから出てきた者は、2人には信じられない人物だった。レミアだけが生き残りである筈の、ルナ族だ。
「あの怪物をどけてくれたのはあなた達ね?どうもありがとう!」
「…へ?」
イテンは考え込むし、レミアは間の抜けた声が出てしまう。思わず尋ねる。
「えっと…ルナ族…だよね?」
「そうよ?アタイはルナ族のレイル。でも、リライはいないの?」
『リライって、誰?』
レミアのものと同型のカプセルから出てきたルナ族・レイル。レミアとは違った事情でカプセルに入っていたというのだが…?

(123.218.1.239).. 2008年08月24日 10:55   No.211008
++ クォーツ (オリカ王)…139回       
本日も1本投下。
更新ペースが遅いのはご愛敬です。

「……まったく、リライときたら…」
敵よりも味方の方が被害を被ると判断し、罠は全て撤去させることに。その風景はまるで大掃除である。状況を見物しながら、レオンはため息混じりに呟いていたのであった。
「…しかし、我々には防衛設備というものがないのだから…」
だが、リライの行動はある意味で当然だ。闇月族という名の敵が目前に迫っている以上、防衛策は多い方がいいに決まっている。
あながち否定できるものでもなかった。

一方で、サイエンスとキャルツは、進撃準備を整え、今まさに攻撃に移ろうとしていた。
「さぁて、そろそろいくよ…」
「にゃははっ!みんな引き裂いてやるからね!」
キャルツの叫びに鬼達も反応、今にも飛び出していきそうな勢いを見せる。それを確認したかのように、サイエンスが動く。
「総員、進撃開始!」
「りょーかいっ!」
キャルツが、そして無数の鬼達がサイエンスの指令に答え、彼を筆頭に時空族領域へと本格的な進撃を開始したのであった。

(123.218.1.239).. 2008年08月31日 05:07   No.211009
++ クォーツ (オリカ王)…140回       
遂に進撃を開始したサイエンス達。
レオン編もようやっと折り返し地点です。
本日も1本。

暗黒雲からのエネルギーが強くなる。闇月族が動き出した証拠だ。それと同時に、多数の鬼が徒党を組んで襲撃してきた。
「総員出撃!絶対に中心部へは進ませるな!」
軍士長リグレットの指令のもと、次々と防衛軍が出撃していく。己の故郷そのものを守る戦い故か兵士達の士気は高い。慌ただしく兵士達が出撃していく光景をなんとなく見つめている男が1人。
「…なんか、騒がしいな…。鬼達が来たのか?」
先程やっと罠の撤去を終えたばかりのリライである。闇月族の進撃開始を察知すると、彼もまた動き出した。左手に三日月型の何かを持って。

「いったい何事ですか?」
慌ただしくなっていたのは軍だけではない。時空族の王たるレオンもまた、闇月族襲撃の報告を受けて足取りを速めていた。口調はいつもと変わらない冷静さを保っているが、足取りは彼の内心にある焦りを露呈させていた。
王として、民を守らなければならない。その自覚があってこそだった。

軍の出撃開始から数分後、鬼達と兵士達がぶつかり合った。鬼達の棍棒と兵士達の短剣や斧が金属音を立てながらぶつかり合い、時折火花を散らす。まさにしのぎを削る戦いとなっていた。

特別参入ではあるものの、唯一の航空戦力であるジェッターは上空からの援護射撃に回っていた。
2つのビームガンで西部劇に出てくるガンマンさながらの早撃ちを披露し、鬼達を沈めていく。当然、鬼達からの反撃がくるが、高い飛行能力を生かして余裕の回避。回避しては1匹、また1匹と鬼を沈めていくジェッターは、大戦果を上げていたのであった。
「ん?あれは…人型?本命ってヤツか!」
鬼達を沈めていく中、密かに別な進行ルートをとっていたサイエンスとキャルツを発見。上空という全方位からの攻撃にさらされる位置にいる自分を攻撃しないことから、ジェッターは2人が別働隊として動いていることを見抜いた。
「何が目的だ?アイツら…」
しかし、鬼の数がまだまだ多く、兵士達が数の面で押され始めている為、ジェッターがサイエンス達を追跡することはできなかった。

(123.218.1.239).. 2008年09月06日 03:45   No.211010
++ ウェリス (オリカ王子)…113回       
何とか来れました。。。
クォーツさん、本当にスミマセン;
ちょっとずつ更新できるよう頑張りたいです^^
あ、私も揃えて青文字に設定しますーw
 
鋼と鋼がぶつかり合う音が大きく響く。
そう、自分もこの中で戦わなければならない。
―王として・・・。
レオンは机にあった剣を腰に刺すと、外へ出ようとした。
が・・・
『そういえば、もしもの事があったと考えると・・・』
レオンは来た道を引き返した。
『そうだ!あれを盗られてしまってはまずい!』
彼は急いだ―

先程の鋼の音は聞こえない。
レオンは何か機会に触れていた。
音を立て、機械が作動する。
彼は文字盤に触れ、何かをしていた。
そう。盗られてしまわないよう、鍵をかけていた。
文字盤に触れる指が早くなる。
モニターに大量の文字が叩き込まれる。
この大量の文字こそがパスワード。
一切分かりはしない。
「これで大丈夫な筈。後は・・・ここをバレないようにしなくては・・・。」
ここは隠し部屋で分かりにくいのだが、相手の事。
大量に兵士を連れ、探し当ててくるはずだ。
仮に部屋を当てたとしても、パスワードさえ打っておけば・・・
そう思ったがやはり不安はある。
しかし、秘密は秘密。これ以上隠す方法は無いのだ。
『こうなれば・・・二重ロックをかければ・・・。』
そう考え隠し入り口に鍵、そして先程行った機械の鍵の二重ロックを行った。
これで安心できるわけではないが・・・かけるしかない。
「どうか・・・盗られないように・・・。それだけ祈るしかありませんか・・・。」
レオンは隠し部屋を後にした。

足音が次第に大きくなる。
大規模な戦いの始まりを告げる鐘のように、大きく。
レオンは駆け出した―!

(220.213.115.241).. 2008年09月18日 22:27   No.211011
++ クォーツ (オリカ王)…141回       
少々遅くなりましたが、ウェリスさん投稿ありがとうです。レオンが隠した秘密…。
それはさておき、一旦辺境世界編。
あと、文字色合わせてくださってありがとうございますです、助かります。

「…ってことは、リライっていう彼氏がいつ戻ってきてもいいように、カプセルに入ってたってわけ?」
「そういうこと」
リライとは誰か、何故カプセルにいたか、洗いざらいレイルから説明を受けたイテンとレミア。
話によると、レイルとリライは恋仲らしく、リライが単身で月光世界に行くのを止めなかった。その後『大いなる災い』の話を聞き、辛うじて無事だったカプセルの1つに入って眠ることで、滅びを逃れ、リライを待ち続けることにしたという。
3人は知るよしもないが、当のリライは今も月光世界にのうのうと滞在中である。
だが、レイルはそれを心で感じ取っていたというのだ。相当彼のことが好きなのだと分かる。

「アタイも月光世界に出ることにしたわ」
「出る方法なんて、あるの?」
「ええ、この世界の地下に、月光世界へと通じるゲートらしきものがあるって聞いたことがあるの。リライはそれを探し当てたみたいだし、多分残ってる筈」
イテンは当然のようなことを聞いてしまう。だが自分が知らない以上は疑問でしかないことだ。
しかし、リライが月光世界へ飛んだのは随分と昔のことだ。変化があったなら、それによってゲートが無くなったとも考えられる。
それでも、レイルはゲートの存在を信じた。月光世界へ行き、リライと再開することを諦めてはいないようだ。
「…地下世界っていっても、当てはあるの?」
レミアの言うことはもっともだ。地下世界という情報だけでは、まだ広すぎる。もう少し限定的になるような手掛かりが必要なのである。
「あるわよ、少しくらい」
その目は自信たっぷりといった感じだった。

(123.218.1.239).. 2008年09月23日 05:47   No.211012
++ クォーツ (オリカ王)…142回       
冬休み辺りに、1日丸々使って超連続更新しようかなー?とか計画中。
どこまでいくかは分かりませんけど。あと、本当にやるかも分かりませんけど。

「この辺境世界の地下世界には、東西南北の区域にそれぞれ1つずつ、更に中央区域に1つ、合計5つのゲートがあるって聞いたことがあるの」
レイルは『当て』について話した。地下世界には5ヶ所にゲートがあり、そのどれを使っても月光世界へ飛べるのだという。
5ヶ所もあれば、その内1ヶ所ぐらいは健在なゲートもあるだろう、とイテンもレミアも納得していた。『当て』とするには十分だったからだ。

「でも、1人で大丈夫?」
「地下には地上よりも危険なモンスターもいるって話だし、あたし達も…」
「ノープロブレム」
イテンやレミアの心配を、レイルはあっさり一刀両断してくれた。腕には自身があるようだ。
「こう見えても、アタイは辺境世界トップクラスの格闘家なの。それに、ソウセツもあるし」
ソウセツ、それはレイルの専用武器である。ヌンチャクをモチーフとしており、六角棒に当たる部分が三日月型になっているのが特徴。レイルの話によれば、魔力を念力のように使うことで、変幻自在の動きを見せるという。
おあつらえ向きとはこのことか、生き残っていた1匹のツキグモがイテンに飛びかかってきた。だが、ツキグモがイテンに触れることはなかった。レイルが恐るべき素早さでソウセツを操り、ツキグモを叩き潰したからである。
『すっご〜…』
これにはイテンは勿論、レミアも驚いた。レイルの実力の高さがすぐに分かった。それと同時に、レイルなら地下世界でも大丈夫だろう、モンスターの方が逃げるだろうと思ったのだった。

「久々の外が砂漠だなんてね…」
レイルはやや自嘲気味な感じで呟いた。何年もの間カプセルの中で時を過ごし、いざ出てみれば里は滅びていた。「大いなる災い」に対して、自分が何も出来なかった、しなかったことへの気持ちの表れでもあった。
暫く歩いて、イテンの案内でローレルのオアシスへとやってきたレミアとレイル。イテンと同じようなお出迎えを受け、今後の方針を確認する。
イテンは、引き続きプロゥブストーンに反応する遺跡を探す旅へ。最初はレミアにも来てもらおうかと思ったが、別にルナ族の遺跡が他にあるわけでもないので自分で却下。
レミアは、ローレルからの誘いでオアシスに住むことに。もう遺跡には用はなく、身を寄せられる場所もなかったのが理由だ。
そしてレイルは、地下世界でゲートを探し、月光世界へ転移することで固まっている。帰る里がなくなったのだから、いっそのことこちらからリライに会いに行こうということらしい。

それぞれがそれぞれの方針を固めた頃には、砂漠は夜になっていた。夜空には、ルナ族の名残を示すかのように三日月が浮かんでいた。

(123.218.1.239).. 2008年09月27日 04:44   No.211013
++ クォーツ (オリカ王)…144回       
さて、レオンが隠した秘密とやらが気になる今日この頃。必然的にストーリーに絡むもんで。
闇月族が欲しがる謎のアイテムとは…?
そことは距離を置いて、1本。
…と思ったけど、書いてる内に長くなったんで今日は2本にしときやす。

戦闘開始は夕刻、いつの間にか夜になっていた。いつになく綺麗な三日月だったが、それを気にする者は殆どいなかった。若干1名を除いて。
数では鬼達の方が上。次第に押され始める兵士。押され始めると共に、正面以外への警戒心が薄れていく。"横"への気が配れなくなる。
そこを、サイエンスとキャルツは上手く利用していた。鬼達の進行ルートの少し東、茂みになっているエリアを自分達のルートとしているのだ。

だが、それさえも気づいていた者がいた。追撃には回れなかったが、ジェッターもその1人。しかし、ここでサイエンスとキャルツに一泡吹かせたのは、意外な人物であった。
「おっ、変なところには変なのがいるもんだ」
『!?』
サイエンスもキャルツも、突如聞こえてきた声の主を探す。しかし、見回しても姿は見えない。異変はそれだけではない。徐々に自分達が沈んでいくような感覚を2人は感じていた。この異変について、ご丁寧に謎の声が告げる。
「あぁ、それ底なし沼。僕が作ったんだ。早く抜けないとどうなっても知らないよ?」
「ちょっ、罠は全部撤去したんじゃなかったのかにゃ!?これ卑怯にゃ!」
淡々と告げる謎の声に対し、キャルツが不満を言い散らす。が、謎の声はまるで相手にしていないかの如く淡々としたままだ。
「文句言ってる暇あったら、自分の身の心配したら?これから君達、"狩られる"んだからさ」
そう謎の声が告げた瞬間、黒くて長い何かがキャルツに向けて飛んできた。底なし沼に嵌っているせいで身動きがとりにくいのだが、キャルツはなんとか黒い何かを弾いた。弾かれて底なし沼に落ちたそれは、大きな矢だと分かった。
矢の飛んできた方向から、放った主の位置を割り出したサイエンス。服に忍ばせていた薬品ビンの1つを取り出すと、矢が飛んできた方向に思いっきり投げた。割れる音と爆発する音がした。どうやら爆薬を詰め込んだものらしい。
「ふー、危ない危ない。物騒なもん持ってるね、まったく。おちおち構えてもいられやしない」
「いい加減、姿を見せたらどうだい?」
「いいよ、丁度綺麗な三日月というライトもあるし、登場シーンとしては見栄えがいいかな」
サイエンスの問いにそう答えると、声の主がその姿を見せた。後ろに細く束ねた長髪と両腕にある袖を延長したような衣装が特徴的だ。左手には2つの三日月が重なったような弓形の武器『ムーンティアー』、右手には先程放ったものと同一の漆黒の矢を持っている。月明かりがスポットライトの如くその姿を照らす。そして、口を開いた。
「お約束通り、姿を見せたよ」
「…子供…?」
「なんか変な衣装!にゃははっ!」
やっと底なし沼から抜け出し、泥だらけの体でそれぞれにリアクションを見せる2人。が、キャルツの発言が嫌な引き金となった。

(123.218.1.239).. 2008年10月04日 06:32   No.211014
++ クォーツ (オリカ王)…155回       
「ひにゃっ!?」
突然、キャルツの腹のど真ん中に向けて声の主が矢を放った。思わず飛び退くキャルツに対し、声の主が怒りを込めた声で告げた。
「口の利き方に気をつけろ。これは僕の一族の民族衣装なんだ。民族衣装を小馬鹿にすることはタブーだと教育されてないのか?」
ムーンティアーを構え、一瞬で右手に漆黒の矢を形成し、怒りの眼差しでキャルツを睨む声の主。"民族衣装"という言葉が気になり、サイエンスが尋ねた。
「君…どこの種族?」
「誰かに素性を尋ねるなら、自己紹介ぐらいはするのが流儀だろう?」
確かにそうだ。道案内ぐらいならどうでもいいことだが、素性を聞くなら名前ぐらいは知っておきたいのが言葉を持つ者の性。サイエンスは冷静に対処した。
「あぁ、そうだね。僕は固塊液サイエンス。こっちは乱猫鬼キャルツ。闇月族の刺客さ」
「僕はリライ。この世界の下の世界、辺境世界に住むルナ族の一員だ」
「(ルナ族…?いや、どうでもいいか)」
サイエンスはルナ族について知っているようだったが、それを口にすることはなかった。今そのルナ族であるリライは、自分達を"狩る"気満々だ。特にキャルツに対しては敵意剥き出しのようだが、衣装にケンカを売られたのが原因だろう。なのでキャルツには悪いがスルー。
「参ったな…これから時空族の王に用があるっていうのに、思わぬ邪魔が入ったからね」
「思わぬ邪魔で悪かったね」
キャルツに殺気を放ちつつ、ムーンティアーをサイエンスに向けるリライ。リライとサイエンスの間のしばしの沈黙、それをキャルツが破った。
「さっさと突破するまでにゃ!」
「あ、こら、よせ!」
サイエンスの制止も聞かず、キャルツがリライに飛びかかった。が、そこから一撃が見舞われることはなかった。何故なら、彼女に向けて銃弾が飛んできたのだから。

慌ててバックステップで避けるキャルツ。今度は何だとばかりに銃弾が飛んできた方向を見やる。これはサイエンスやリライも同様だった。
「別な方向で物音がするからどうしたかと思えば、別働隊がいたとは…」
「これはこれは軍士長殿。自ら偵察に?」
現れた銃撃の主は、軍士長リグレット。どうにか鬼のラインを崩し、ジェッターが彼女に報告を入れていたのだ。別働隊がいると。
その別働隊は、リライによって見事に足止めをくらい、リグレットがその場を部下に任せて偵察に出た。そして、こうなったのだった。
「こうなったら、2人共引き裂いてやるにゃっ!覚悟するのにゃ!」
キャルツが爪を伸ばし、再び飛びかかる。その速さはかなりのもので、思わずリグレットがたじろいだ。が、リライは平然としている。静かにムーンティアーを構え、漆黒の矢をつがえ、放った。2本同時に。
「おっと!?」
その内1本は、キャルツではなくサイエンスに向けられていた。ある意味で予想外の一撃に、思わず飛び退くサイエンス。これにはキャルツも動揺し、それが大きな隙となった。
「隙だらけよ!」
そこにリグレットが追い打ちをかけた。

(122.30.10.204).. 2008年11月02日 06:11   No.211015
++ クォーツ (オリカ王)…145回       
レオンとサイエンスのご対面はもう少し後。ちょっとサイエンスにとってはハンデになってしまうようなことを、今回リライがしちゃいます。
今回は1本で斬ります(字違

「にゃにゃにゃにゃにゃ!?」
「くっ、すばしっこい!」
隙をついたまでは良かったが、キャルツは持ち前の敏捷性で辛うじてリグレットの銃撃を避け続けている。紙一重ではあるが。
先程リライが放った矢は避けている。だが、これも紙一重でのこと。ヘタすれば当たっていた。
「…ただ撃つだけじゃダメね。しかし、どうすればいいものか…」
ほんの少しではあるが、なかなかキャルツに当たらないことにリグレットは焦っていた。
ジェッターからの情報によれば、こちらが闇月族の部隊の中核。仕留め切れなければ、援軍が嫌と言うほど沸いてくる筈なのだから。

一方リライとサイエンスもまた戦闘再開。ここでサイエンスは、思わぬ苦戦を強いられていた。
リライの攻撃と回避のモーションが早いのだ。決して移動速度が特段速いわけではない。サイエンスと互角。だが、モーションの、即ち反射神経の速さはサイエンスを圧倒的に上回っていた。
「速い…こいつ!」
「よっと、これをかわしきれるか!?」
うめくサイエンスから距離をとり、茂みの向こうへと消えるリライ。そして次の瞬間。その茂みから何本もの漆黒の矢が放たれた。その全てが、サイエンスを包囲するかのように迫ってきた。
「こいつ、矢の弾道を、変え…ぐっ!」
うめきながらも回避していたが、1本当たった。左の脇腹に深く傷ができている。痛みから思わず膝を突いた。かすったどころではなく、完全に切り裂かれている。矢の大きさがどれほどのものかを、如実に物語ってしまいそうだ。
「さて、フィニッシュといこうか!?」
茂みから姿を現し、ジャンプ。サイエンスにトドメの一撃を放つ。だが、これも直撃にはならなかった。とっさにサイエンスが回避しようとしたからだ。しかし、これも被弾。今度は右腕に大きな切り傷ができてしまう。
「フィニッシュにはならなかったか…」
だが、2ヶ所に受けた傷はいずれも深い。新たに走る激痛に、サイエンスはうめくしかない。それでも立ち上がっている辺り、さすがは闇月族から送られてきた刺客、ということか。
リライの表情は、未だ緊張感を示していた。

(123.218.1.239).. 2008年10月05日 05:47   No.211016
++ クォーツ (オリカ王)…146回       
ようやっとレオン編のメイン。
即ち、レオンとサイエンスのご対面です。
え?辺境世界編はどうしたかって?ちょっとストーリーのネタ切れで途切れてますorz
今回も1本。

リライに思わぬ苦戦を強いられ、2ヶ所に深い傷を負ったサイエンス。だが、激痛に耐え、リライをキツく睨みつける。
リライはそれに動じない。まるで、獲物を狩る狩人のように。その目は、ジョーク好きな普段の彼とは別人のようだった。いや、実際別人になっている。その目には冷徹さしかなかった。

実はリライには、愛人であるレイルにさえ語ったことのない過去がある。初めてムーンティアーを使っての模擬戦で、ジョーク好きであることから生まれた甘さと隙が原因で大怪我をしたことがあるのだ。その際、ムーンティアーを作った鍛冶屋の男からこう言われた。

『ムーンティアーという"弓矢"を持つお前は、いわば狩人だ。そしてお前の敵は獲物だ。獲物に対して、情けも慈悲も冗談もいらない。そして狩人に必要なのは冷徹さ、それだけだ』

それ以来、リライは戦闘時は冷徹な狩人と化すようになった。そして今、まさにサイエンスが獲物の、リライがそれを狩る狩人の立場に置かれているのだ。ムーンティアーという弓矢によって。
ジョークも何もなしに、リライが至近距離からトドメを刺そうと構えたその時だった。

「待ってください!」
サイエンスにとっては忘れようにも忘れられない声。彼は一瞬で確信した。自分の目の前に、"標的"としてきた"旧友"がやって来たのだと。そして駆け寄ってきた声の主に対し、サイエンスは友と接するかのように声をかけた。
「やぁ。久し振りだね。レオン…」
「サイエンス…やはり、君だったんですね…」
未だ眼光に冷徹さが残るリライを下がらせ、レオンはサイエンスと向かい合った。レオンからすればまず2ヶ所の傷が気になったが、リライと戦闘していたことを考慮して敢えて触れないことにした。その代わりもう1つ気になることを聞いた。
「何故…君が闇月族に…?」
レオンと別れた後のサイエンスの、闇月族に至るまでの動向についてだった。

(122.30.10.204).. 2008年10月11日 05:56   No.211017
++ クォーツ (オリカ王)…147回       
レオン編も他2編と同様に、ストーリーのメインテーマ(レオンとサイエンスの会合)がそのままクライマックスに直結します。
今回は本来ならウェリスさんに任せたいところなのですが、本人がきびし〜い状況下なので私的設定を加えた上で勝手にいっちゃいます。
すんません。

レオンは率直に気になっていた。確かに別れて以来、彼の消息を特に追っていたわけではない。だが、だからこそ知りたい。何故サイエンスが、今自分が敵としている闇月族にいるのかを。
それを察したのか、サイエンスは語った。
「君が時空族の王として道を歩んだように、僕もまた科学者としての道を歩んだ」
服装と懐に忍ばせているものからすれば安易に想定できることではあるが、本人の口から語られれば説得力もある。納得できるわけだ。サイエンスはゆっくりと、更に続ける。
「だが独学で研究を進めるには限界があった。僕は欲しかった、"研究を進める力"が。そしてある日、知ったんだ。闇月族にはその"力"があると」
研究に行き詰まったサイエンスを救ったのが闇月族で、闇月族に協力することで研究を続けることに成功したという。
見方によっては、自分の研究の為だけに侵略者と協力しているともとれる経緯であった。これにはレオンも憤る。静かに、ではあるが。
「では、君は自分の研究が続けられるなら、この世界はどうでもいいと?」
「さすがに滅びるのは勘弁してほしいけど、別に滅びるわけじゃないし、どうでもいいかな」
レオンの怒気のこもった質問に、サイエンスはいつも通りの口調で返す。まるで問題視していないようだ。レオンの心の中の怒りは更に強まる。

一方、リグレットとキャルツの戦いは終わりに近づいていた。キャルツも反撃してきたのだろう、リグレットも負傷している。だが、反撃にも的確に対処し、カウンターをお見舞いした。
よって、キャルツも負傷しているのである。どちらが酷いかというと、実は圧倒的にキャルツの方が重傷だったりするのだが。
両者とも、援軍はこなかった。何故なら、その援軍同士が戦闘中なのだから。また、辛うじて離脱できた鬼は、リライによって片っ端から射抜かれた。その時のリライの目は、やはり冷徹。
結果、いつまで経ってもリグレットとキャルツのタイマン勝負なのであった。
「…そろそろ、終わりにしてあげる。散りなさい、リボルバーキャノン!!」
リグレットが必殺の一撃を放つ。キャルツも必殺技を出そうとしたが、それにより回避という反応が遅れた。襲い来る弾丸が、キャルツを紙切れのように貫き、沈黙させた。

(122.30.10.204).. 2008年10月12日 05:58   No.211018
++ クォーツ (オリカ王)…148回       
今回、遂にレオンとサイエンスの戦いが始まります。友だったからこその因縁、その決着をつける時がやってまいりました。
いつも通り1本。2分割でお送り致しますです。そろそろレオン編も終わり…かな(ぇ

レオンは久々に会えた友に対し、怒りを抱いていた。サイエンスのやっている研究そのものは自分も賛同していたし、消息さえ分かっていれば支援することも考えてはいた。
だが、友は今、闇月族という侵略者に"研究を進める力"というエサで引き込まれ、侵略者の一員となっている。
それがレオンにとって許せない。
「今すぐ、闇月族と手を切ってください。奴らは侵略者なんですよ」
友としてのせめての情け。できれば殺し合いはしたくない。できればこちらに引き込みたい。
だが、サイエンスはそんなレオンの心を突き飛ばすかのように、これを拒否した。
「そうはいかないんだ。あの研究を進めるには、膨大な"力"が必要だ。時空族が誇る機械技術じゃどうにもならない問題なんだ。それを解消する為にも、僕は闇月族から離れる気はない」

しばしの沈黙。
時には言葉よりも確かな沈黙がある。分かりやすく言えば「空気を読む」といったところか。
そういった沈黙に限って、非常に重苦しい。どちらがそれを破り、仕掛けるのか。まるで根比べでもしているかのようだ。
そして数秒後、沈黙は破られた。

両者同時に、攻撃を仕掛けたのだ。

「サイエンス…君のその考え、僕は絶対に認めません!改心させてあげます!」
「心を改めるのはどっちかな…レオン!」
互いに炎を飛ばし合う。サイエンスもまた、炎属性の魔法を得意とするのだ。しかも、彼の魔法はレオンのそれよりも数段強烈だった。
「さぁ、どうしたんだいレオン。僕を改心させるんじゃなかったのかい!?」
威力、範囲、共にレオンより優れるサイエンスの火炎魔法。普通に戦えば厄介きわまりない攻撃ではある。だが、レオンには秘策があった。
「な、なに!?」
突然、サイエンスの火炎魔法が止められた。まるでその場で凍結したかのように止まったのだ。原因は、レオンの秘策にあった。
「…知りませんでしたか?時空族の王たる僕は、限定的ではあるものの時間を操れるんですよ」
言いながら、すれ違い様に一撃を見舞う。直撃ではないが、手応えはあった。更に増える、サイエンスの傷跡。これで3ヶ所になる。

トラベリング・ブレード――剣を中心に半径1メートル以内であれば、対象の時間を一時的にコントロールできる超高度な魔法技。これを用いることで、サイエンスの火炎魔法を止めたのだ。
辺境世界にてコンクル・シオンから受けた時間制御攻撃からヒントを得て修得した、レオンの新たな必殺技である。

(122.30.10.204).. 2008年10月13日 06:15   No.211019
++ クォーツ (オリカ王)…149回       
正直なところ、就職試験に落ちたからって特にバタバタ動くわけではないんです。
まず、個人的に良さそうな企業が見つからない限りはどうしようもないわけで…。
というわけで、今日も書くのです。レオンVSサイエンス、旧友同士の戦いに終止符が打たれます。

「く…っ」
リライから受けた2ヶ所、レオンから受けた1ヶ所、計3ヶ所の傷が一斉に痛む。レオンからのものはリライほどではないが、それでも痛むことに変わりはない。痛みに耐えながら、必至に立ち上がるサイエンスではあったが…。
「これで、チェックメイトです」
「…っ!」
反撃、というものをレオンは許してくれそうにない。自身の剣をサイエンスの胸元に突きつけ、あくまで冷静に言い放つレオン。そう、このままいけば間違いなくトドメの一撃となるのだ。
先程の一撃だって、敢えて直撃は避けた。友を殺すのは忍びない。できれば殺したくないのがレオンの心境だった。だが、闇月族の虜にも近い状態になっていたサイエンスには、もう通じない。

「まだ…終わっていない!」
「っ、サイエンス!!」
懐から素早く薬品ビンを取り出したサイエンスは、それを勢いよくレオンに向けて投げた。避けるより切り捨てた方が早いと判断したか、レオンは薬品ビンを切り捨てる。切り捨てられたことで散らばるように飛散する液体、それに向けてサイエンスは火炎魔法を放った。
「フレイム・マジック!」
必殺技であるフレイム・マジックの威力を、発火性のある薬品で増幅しようという魂胆だったのだ。サイエンス渾身の一撃、それは間違いなくレオンを包み込み―止まった。切り裂かれた。
そう、またしてもトラベリング・ブレードだ。停止した炎の中から姿を現したレオン。だが、彼の服は所々焦げていた。どうやら完全回避にまでは至らなかったらしい。軽傷ではあったが。

「もう、分かったでしょう?君の攻撃は、もはや僕には通じない。戻ってきて下さい」
そう言ったレオンの目には、友への怒りと哀れみの両方がこもっていた。闇月族に引き込まれたということには、怒りも哀れみもあったのだ。
レオンの最後の賭けにも似た通告、それさえも、今のサイエンスには届かなかった。
「……そうはいかない、と言った筈だよ」
正直、レオンは困った。どうすればサイエンスを改心させられるというのか。敵を倒す戦略は沸いても、友を改心させる術は思いつかない。策と心理は違う。それを痛感せざるをえなかった。
そして、困惑しているレオンはサイエンスから見れば隙だらけだった。こっそりと懐から薬品ビンを取り出す。そのビンのラベルには…『最終兵器』とだけ書かれていた。だが、その一文だけでも、その薬品の恐ろしさを伺うには十分だろう。

(122.30.10.204).. 2008年10月18日 05:39   No.211020
++ クォーツ (オリカ王)…150回       
「(悪いね、レオン…僕はどうしてもあの研究を続けたいんでね…。君とはここでお別れだ)」
心の中でそう呟きつつ、取り出した『最終兵器』なる薬品ビンをレオン目掛けて投げ――
薬品ビンは、消えていた。
「どういうことだ!?何故消えた!?」
「サイエンス?」
「隙だらけだったぞ、時空王よ」
どこから現れたのか、レオンから見て左側のそう遠くない位置に、機獣らしき存在がいた。月明かりが、リライの時と同じくそれを照らす。
「…ムーンライト…?」
「お前か、さっきのビンを消したのは!」
「これのことか」
レオンとサイエンス、それぞれがぞれぞれの疑問をぶつける。月明かりに照らされたムーンライトは、薬品ビンを持って腕を組み、仁王立ちしていた。異様なプレッシャーが放たれている。
「研究の為とあらば、旧友さえも殺す…か。実にくだらないな、こんなものまで作りおって」
そういうと同時、ビンを放り出し――両腕から飛び出したブレードで一瞬で細切れにした。その途端大爆発が起きるが―無傷だ。
ムーンライトは静かに、強くレオンに告げた。

「旧友を殺したくない気持ちは分かる。だが、その旧友は今、お前を殺そうとしている。互いにやらねばならぬことがあるというのなら、お前もその意地を貫いてみせろ。時空族の王としてではなく、1人の人間としてだ」

ムーンライトが、過去にどのような経験をしてきたのかは誰も知らない。だが、その言葉には確かな説得力と威圧感があった。それは即ち、彼自身も似たような経験をしたことを意味している。
説得力と威圧感と根拠に満ちたムーンライトの言葉は、レオンにある決心をさせた。それは決して褒められたようなことではないが、旧友とのあらゆる意味での決着をつける為にはせざるをえない決心であった。レオンの心から、迷いが消えた。

「このぉ…フレイム・マジック!!」
「…トラベリング・ブレード」
サイエンスの火炎魔法を、レオンの時を操る剣が切り裂き、サイエンス自身をも切り捨てた。静かに、そして迷い無く、レオンはサイエンスを斬った。レオンの決意とは、サイエンスを倒すこと。永遠の眠りにつかせることだった。
新たに刻まれた、サイエンスの4ヶ所目の傷。今までの中で最も深く、そして致命的だった。

(122.30.10.204).. 2008年10月18日 06:19   No.211021
++ クォーツ (オリカ王)…151回       
長きに渡って続いたレオン編も、遂に完結。
月光神羅の第3章も、残すはシンフォニー編のみとなります。クライマックス近し…。
あくまで可能性の域を出ませんが、ヘタすると冬休み辺りで月光神羅が完結しちゃうかもしれません。遅くても来年2月〜3月には完結見込み。
私の学校、卒業生は翌年の2月から授業ないんです。なので時間は割ととれるかと。
前置きが長くなりましたが、レオン編ラストをどうぞ。怒りと哀れみの果てに待つのは…?

ムーンライトの言葉によって迷いの消えたレオンの一撃は、サイエンスに致命傷を与えた。その一撃には、レオンの怒りと哀れみが存分に込められていた。それは威力の増加に繋がった。
「…終わったな」
レオンとサイエンスの戦いのことなのか、それとも防衛隊と鬼軍団の戦闘のことをいうのか、どちらにせよ、ムーンライトは勝利を確信していた。
「どのみち、もうヤツは助からない。迷いを捨てたのだから、ひと思いにトドメを刺したらどうだ?それとも、言いたいことでもあるか?」
そう、ムーンライトの言うとおり、サイエンスはもう助からない。先の一撃による傷は、かなり深い。そう遠くない内に出血多量で息絶える筈。何かを伝えるなら、まだ息がある今の内だった。

「…レオン…今、やられて…やっと…分かったことがある…。君は僕と似ている…」
「サイエンス…」
「僕は…研究の為に…闇月族に…協力して…君を殺そうと…した…。君は…時空族の…王として…僕を殺す…。似てるんだ…"自分が抱えるもの"の為なら…平気で友を殺せるところが…」
実は、サイエンスもまた悩んでいた。戦闘前、まさか時空族の王が旧友のレオンであるとは知らず、どうしようものかと考えていた。レオンと同じように、なんとか自分の側に引き込めないかと考えた。しかし、戦闘開始直前の会話でレオンよりも早くこの迷いは消え失せ、"自分が抱えるもの"の為にレオンを殺そうとした。
レオンも、ムーンライトからの言葉で迷いは消え失せ、サイエンスを殺すと決めた。
「お別れですね…サイエンス」
「……さよなら…だね…レオン…」
そう言った直後、サイエンスは息を引き取った。

結局のところ、レオンもサイエンスも、"旧友"として共通点を持っていた。
『"自分の抱えるもの"の為なら平気で友も殺せる残虐性』という、否定できない共通点を。
今のレオンの頭から、このことが離れることはなかった。おそらく、今後も離れないだろう…。

キャルツもサイエンスも倒れたことで、完全に指揮系統が混乱した鬼軍団。そこへ統率力の乱れない防衛隊が猛反撃を仕掛ける。ある鬼は逃げ、ある鬼は無謀な戦いをした。
最終的に、時空族領域へと派遣された闇月族の戦力は、戦闘直前の約9割を失う結果となった。対して時空族防衛隊の損害は約3割だった。

闇月族の残存勢力が全面撤退し、時空族領域は静かな夜明けを迎えていた。見渡してみれば、戦いに疲れた戦士達がつかの間の休息を迎えているのが伺える。その中には、リライやジェッターも混じっている。リライも途中から鬼討伐に参加し、ジェッターとの連携で大戦果を挙げていた。
夜明け特有の景色を眺めつつ、レオンはサイエンスの言葉を思い出していた。彼と自分は似ていると。そして、心に刻むように呟いた。
「その言葉…一生忘れませんよ、サイエンス」

―レオン編・完―

(122.30.10.204).. 2008年10月19日 05:18   No.211022
++ ウェリス (オリカ王子)…114回       
レオン編、有難う御座います^^
次はシンフォニー編ですが・・・出来るだけ参加できるよう頑張りたいです!

レオン編のおまけ的(?)ストーリーを1つ・・・
今回はいつもの書き方とちょっと違う部分がありますよw

戦いは長くは無かった。
しかし、部屋に戻るのが凄く久しぶりな気がして止まなかった。
サイエンスを殺したことに迷いも戸惑いも無かった。
自分の道を誤るなんて、そんな事は出来ない。
―それが王だから。
ひとまず隠し部屋に向かった。

「馬鹿な・・・何故このような事に・・・!」
レオンは驚くしかなかった。
隠し部屋に入るための扉が崩壊している。
壁と同じ色、材質のため、分かりにくい筈なのに。
崩壊した扉はもう扉の意味など無いかのよう。
内部がしっかり見えるほどに壊されている。
『でもパスワードはかけている。中の物は取られていない筈です。』
冷静に、だが焦りながらも中に入る。
機会に傷や損傷は無かった。
指を動かし、パスワードを打つ。
「・・・!」
絶句する以外、何も無い。

パ ス ワ ー ド は 解 か れ て い た 。

「そんな・・・そんな筈は!」
データを確認するが・・・
何一つとしてデータは残っていなかった。
データは盗まれたのだ。

「ネヴィア様、これを。」
部下の1人がネヴィアに欠片を手渡した。
「ご苦労であった。」
ネヴィアは欠片を見、満足気に頷いた。
「しかし驚いたものだ―」
欠片をじっくり見つめ、呟いた。
「時空族に欠片があるとはな。クク・・・なるほど、奴がずっと残していたという事か・・・。」
部下が何故長いパスワードを当てたか?
ネヴィアは手に持った資料を見る。
「まさかこれがパスワードになるとはな。私は本当に奴に助けられてばかりだな・・・!」
部下に下がるよう命じると、欠片を横に置いた。
「欠片は残り1つ・・・。そう、これさえあれば良いのだ。これさえあれば・・・!」
ネヴィアの声は静かな部屋に反響した。
決戦は―近い。

(220.213.108.180).. 2008年10月19日 22:27   No.211023


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