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■--裏切りと死(グレンドル偏)
++ ウェリス (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…94回          

テストも終わったので、やっとグレンドル編開始です!
PCが壊れてからwordが使えなくなったので仕方なくメモ帳で書いてます;
誤字だとか変な部分があったら報告していただけると有難いです。


「いいな?この作戦は成功させるべきだ。」
ネヴィアが目の前に跪いている少年に言った。
少年は顔を上げると、頷いた。
「分かりました。必ず成功させてみせます。」
よく通る声で返し、立ち上がるとローブを翻した。
そして少年は闇へと消えた―

「はあっ!てやっ!」
グレンドルは一心不乱に拳を振るい続けている。
木に掠れるだけでも深く削れ、弾き飛ばしていった。
目の前に落ちる木の葉も、彼の拳によって裂かれ、粉となっていた。
暫く拳を振るった後、彼は海岸沿いにやって来た。
潮風が頬に当たっている感覚が心地よい。
目の前に広がる青き海を見ていたが、その青に何かが浮かんでいるのが見えた。
「なんだあれ?」
波につられて踊るように布が浮いている。
「服?誰かが溺れているのか!?」
グレンドルは衝動的に海に飛び込むと、沈んでいた少年を海岸まで引き戻した。
幸い息はしているようだった。
「このまま放っておいても危険だからな。」
グレンドルは少年を負ぶってやると、そのまま家に戻っていった。
(220.213.99.56).. 2008年03月04日 00:10   No.196001

++ クォーツ (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…84回       
了解でございますです。
まぁ、かくいう私が今日から6日までテストなんですがね(ぁ

月光世界へ飛んでからは、アドベンチャーチームは分割状態。東はダイボウケンが担当。
この西はドリラーとクレーラーのコンビが担当している。今は周辺のパトロール中だ。
「ねぇ、こっちにも刺客、現れるかな?」
「可能性はあるだろ。辺境世界はコンクル倒したからどうにかなるとして、こっちにはまだネヴィアとかいう悪者がいるんだろ?だったら、コンクルと通じているかいないかなんて関係なしに行動するに決まってる」
「そっか、元々セイガ達はネヴィアのせいで辺境世界に飛ばされたんだもんね」
クレーラーの理論にドリラーが納得し、荒野まで来ると、2人はビークルモードに変形。別な区域のパトロールに向かった。

一方、変貌を遂げたコンクルによってあっさり占拠されたセントラルタワー内部。
「…さて、目的には通じぬ故に殺しはしなかったが、こやつらどうしたものか…」
先程自分が1分とかからず全滅させた虹の騎士団メンバーの扱いをどうするか考えていた。
「考えてみれば、我には部下がいないな…」
「……っ…」
「ほう、気がついたか」
どうしようかと考えている内に、ルカイが意識を取り戻した。まだ体はふらついているが。
「お前…我の部下にはならんか?」
「い…いきなり…何を…?」
「貴様の生みの親であるヘイムはもはや死んだ。今度は我の部下として生きる気はないか?もしそうするか、逃げるかするならば、我はお前を追ったりはせぬぞ」
「…………」
ヘイムが死んだことは、状況とそれらしき肉塊を見て理解できた。つまり、今の自分や他の仲間達は主を失ったということだ。更なる主を求めるかこの場から逃げ出すかは、個人の選択の自由となる。ルカイは…
「…ここからは…立ち去らせてもらいます」
「そうか…残念だ」
他に候補は残っている。それ故、ルカイを見逃す方針を曲げることはなかった。
そしてルカイは、ふらつきながら、静かにセントラルタワーから去っていった…。

(122.30.3.93).. 2008年03月04日 05:15   No.196002
++ ウェリス (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…95回       
更新ほうりっ放しでした。
申し訳ないです・・・;
wordも直ったので、多分誤字は見つからない・・・筈ですw


「おっ、目が覚めたみたいだな。」
グレンドルが部屋に入ると、少年の目は開いていた。
少年は少し戸惑っている様子だった。
当たり前だろう。
海に落ちたと思いきや、気づけば知らない場所にいたからだ。
「あれ・・・?ここは?」
グレンドルは微笑み、
「お前、海に流されてたんだよ。んで、偶然俺が見つけて、ここまで連れてきたわけさ。」
と言った。
「んで・・・なんで海に落ちてたんだよ?」
唐突の質問に迷った。
「・・・分からない。」
少年は正直に言った。
グレンドルは小首を傾げた。
「どういう事だ?何かあったのか?」
さらに彼は質問を続けた。
少年は考えていた。
しかし出てきた答えは先程と同じだった。
「僕・・・記憶が無いんだ。昔の事なんて全く・・・。」
つまりだ。
何かがあって少年は記憶を無くし、放置されていた。
そして最近海に投げ捨てられたのだろう。
グレンドルはそう推測した。
「うーん・・・これじゃ親も何も分からないからな・・・よし!俺が責任を持って保護する。どうだ?」
少年は頷いた。
「じゃ、名前だけでも言わないとな。俺はグレンドル。気功族の王さ。」
少年は王と言ったとき、少し驚いたようだ。
だが、息を吸い直し、名乗った。
「僕はヴォルクと言います。とりあえず覚えていることと言ったら・・・流星族と気功族の間の地点で生まれました。それだけです・・・。」
グレンドルも正直驚いた。
流星族と気功族の間―ハーフなんて滅多にいないのだから。
とりあえず何かあった時の為、ヴォルクと共に修行をすることにした。

(220.213.98.201).. 2008年03月23日 23:57   No.196003
++ ウェリス (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…96回       
少し時間差があったけどもういっちょ!(何


「流星族と気功族の間に生まれたハーフ・・・って事は魔術と体術の両方が使えるって事か?」
いつもの修行場に着いて、素朴かもしれない疑問をグレンドルはぶつけた。
ヴォルクは暫く考え、
「多分そうだと思います。実戦経験なんて1度も無いので・・・正しいことは分かりません。」
と、気恥ずかしげに言った。
グレンドルは軽く溜息をついた。
苛々しているわけでもない。ただの溜息を。
「あのよー。俺が保護するって事は俺の家族同然なんだぜ?敬語なんて使わなくったっていいっての。」
吐き捨てるような言葉だったが、声は優しかった。
まるで、本当の兄弟かのような言い方だった。
「はい―じゃなかった。うん・・・。」
敬語ではなくなった瞬間、彼は笑顔になった。
満面の笑みだ。
「よーし、それでこそ家族ってモンだぜ!あー・・・兄弟でも悪くねぇな。」
それを見、ヴォルクも笑った。
「兄弟・・・僕は一人っ子だから兄弟なんて響きは嬉しいな。」
2人は笑いあった。
その光景は、兄弟の間にもよくあるような光景だった。

そして修行は始まった。
確かにハーフと言うこともある。魔術も体術も両方をこなしていた。
2つの力を扱えるということは強力な戦術も生み出せるだろう、そう彼は思った。
小さな体なのにその体のどこにそんな力があるか、グレンドルは修行しながら彼を羨ましく思った。
『あれだけの力があるんだったら戦いもかなり有利になるんだろうな。』
それにかなりの力がある。
ハーフという理由(わけ)でもない。彼の体は見た目によらず強いのだ。
『ホント・・・誰もかも見た目で決め付けちゃいけないよなー。なんだ、それじゃ俺がバカみてぇじゃん。』
自分で考え思ったことに笑ってしまった。
確かに人と言うのは見た目だけで全てが変わるのではない。
勿論力だけでもない。
大事なのはそのもっと深くにある、心の強さである。
心が強ければ体が強くなったりもする。そんな感じなのだ。
そうしてグレンドルはまだ上手く戦いに慣れていないヴォルクに手取り足取り様々な事を教えた。
「スゲェじゃん。今日1日だけでこんなに成長した奴なんて今までいないぜ?これも天性ってヤツか?」
グレンドルは微笑んだ。
「そんな・・・グレンの教え方が良かったんだよ。僕はただそれに従っていただけだよ。」
ヴォルクは苦笑し、だが少し照れて言った。
「やーれやれ。ま、いっか。とりあえず領地に戻るか。疲れただろ?」
グレンドルは軽くヴォルクを撫でて、領地に戻る事にした。

(220.213.98.201).. 2008年03月24日 00:38   No.196004
++ クォーツ (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…85回       
誤字らしきものはありませんよ。
復旧おめでとうございますです。

グレンドルとヴォルク、本当の兄弟のように仲の良い2人の修行を遠くから見る光球が1つ。
「…へー、なかなか凄い連中じゃん。『スキャン対象』はあいつらでいいかな」
2人は気づかなかったが、光球から発せられた光線のようなものが2人をなぞっていた。
「…よし、これでこの空間でも活動できそうだ。さて、これからどうすっかなー」
そう呟くと、光球は気功族統治領域の南東エリアへと向かっていった。

一方、セントラルタワー。コンクルは目覚めた順に騎士団メンバーを勧誘してみたが…。
「ふむ…、若干一名を除きヘイムへの忠誠心は高くない筈。だとすれば…」
そう、結局誰1人としてコンクルの部下にはならなかったのであった。導かれた結論は…。
「平民と変わらぬ暮らしをするか、時を経て敵となって我に向かってくるか…だな」
セントラルタワーを取り戻した以上、部下の数には問題はない。問題は、騎士団の今後。

「討伐完了です。暫くはモンスター達も出てこないでしょう。トラップも仕掛けましたし」
「いつもすまねぇな、ここら辺のモンスター達はやんちゃなのが取り柄であって問題なんだ」
「いえいえ、あのモンスター達は普通に食べられるんで、食料が増えていいんですけどね」
「こいつぁ一本取られた」
辺境世界南部、とある農村。暴れ回っていたモンスターは既に全滅、解体されている。
実のことを言うと、辺境世界に存在するモンスターの多くは食用にも耐えられる。
今回暴れ回っていたモンスター、プアゾンも、攻撃こそ毒ではあるが焼けば問題ない。
そういうことで、ちゃっかり食料もゲットできたと喜ぶ少年と、農村の主とで談笑していた。
「んじゃ、こいつぁ依頼の報酬だ。遠慮せず、がっつり食ってくれ」
「ありがとうございます。わー、こりゃ数日は苦労しなくていいかも」
「また何かあったときは頼むぞ、フィン。お前さんはこの農村じゃヒーローだからな」
「ヒーローだなんて大袈裟な…。では、今日はこの辺で失礼しますね」
フィンと呼ばれたこの少年、辺境世界を股にかけたモンスターハンターである。
巧みな武器裁きと行動予測で、数々のモンスターを倒してきたやり手のハンター。
それを活かしての依頼稼業で日々の生計を立てているのだ、5つの大陸を回りながら。

(122.30.3.93).. 2008年03月24日 06:40   No.196005
++ クォーツ (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…86回       
予定タイミングを大いに早めてフィン登場。
また、先程の光球の正体も後ほど。
本日は新参者紹介の巻き(ぇ

「さて、今日はまだ時間があるし、何か依頼残ってたっけかな?」
取り敢えず数日分の生計は立った。だが、依頼の報酬は様々である為、確認はこまめである。
フィンは中央区域へ来ていた。セントラルタワーのロビーには、彼を初めとする仕事人達が欠かさずチェックしている依頼掲示板があるのだ。
先程の農村の件も、この依頼掲示板から情報を得て赴いたのである。
「えーっと…」
「よう、兄弟!」
「あ、テュール!」
依頼の確認中に声をかけた少年、その名はテュール。頭のバンダナがトレードマークだ。
「どうしたの?月光世界へ上がったって聞いたけどなぁ、何故ここにいるのかなぁ?」
「つれねーなぁ。オイラが月光世界に上がったのは、おニューのボディを手に入れる為だ。んで、おニューのボディのお披露目に来た」
「おニューになっても、頭のバンダナと短パン姿は相変わらずなのか」
「それはオイラのトレードマークだっ!でなきゃオイラだって分からないだろ?」
「むしろ髪型と一人称が変わったら分からないかもね。今時『オイラ』だなんて…」
「髪型は偶然だ。それと一人称ぐらいどーでもいいだろ。オイラはオイラだぜ」
「理屈が分からないよ。ていうか、わざわざ僕におニューのボディを見せる為だけにここに戻ってきたわけ?出稼ぎとかじゃなくて?」
「お前さんと一緒にすんなよ。オイラは別に仕事人でもモンスターハンターでもないし、第一生計には何一つ困ってないから」
暫く談笑するも、フィンは思い出したように本題へ。このまま話していたら日が暮れそうな気がしないでもなかったからだ。
「そうだ、依頼依頼…と」
「待て。背負ってるデカブツはなんだよ?」
「数日分の食料。依頼の遂行中に手に入れたものと依頼の報酬でもらったもの」
「十分生計立ってるじゃねぇか」
「報酬はお金だったりもするの!しかも早い者勝ちだから、早く見つけないとね」
「へー、仕事人ってのも大変だねぇ。……ん?おい、フィン。これ見て見ろよ」
テュールが取った1枚の紙。それには、『身よりとなってくれる人募集』と書かれていた。
「身より募集って、変なの」
「ま、まぁ、孤児とかそーゆー感じじゃないか?コレの依頼主って。それよりさ、下の方見てみろよ。『報酬:セントラルタワー内部情報』」
「へー、情報屋なのかな?会ってみる価値はあるかもね。ちょっと気になるし」
セントラルタワーといえば、辺境世界の政治の全てを司る最重要拠点だ。その内部の情報ともなれば、関係者でなくとも気になるものなのだ。
「よし、これにしてみよう」
フィンとテュールが依頼主の指定合流エリアへ向かう。その場所は…セントラルタワーの真下に当たる位置に存在するという、古代文明の巣窟という異名を持つ海底遺跡だった。

(122.30.3.93).. 2008年03月24日 07:27   No.196006
++ ウェリス (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…97回       
誤字確認有難う御座います。
復旧してよかったですwこれで安心して小説が書けそうですw(と言いながら放っておきそうで怖い;


「あんたが兄貴?あははっ!どんな冗談言ってんの!?」
ダリアに笑われた。
グレンドルが帰ってきてヴォルクの事を言ったらこのような事になってしまった。
「そーダス。グレンが面倒見がよさそうなんて見えないダス!」
次はガンタスに言われた。
「るせー。そう言うガンタスの方が絶対面倒見悪いっての。」
グレンドルも反抗した。
でも聞き入れてないかのように2人はニヤニヤしている。
2人こそ兄弟でも何でもないのに、このような時だけは同意見なのである。
「俺は悪くないと思うな。新たな戦略も生み出せそうだ。」
グレイブだけがまともな事を言ってくれた事にグレンドルは感謝した。
「へー。流石は気功族一の頭脳の持ち主さん。」
「かっこいいダスねー。」
ダリアとガンタスが皮肉気に言った。
だがグレイブは鼻で笑い、
「貴様らが馬鹿なだけだ。ヒヨッ子が。」
と言い放った。
「まぁまぁ、そこら辺にして下さいよ・・・」
少し言い難そうにヴォルクが言った。
「だとさ、グレイブのおっさん。」
「黙れ。ヒヨッ子。」
ダリアとグレイブの言い合いは止まりそうに無かった。
「お前等全員黙れぇっ!!」
わざとでもいう様な程声を張ってグレンドルが一喝した。
空気が死んだ。
「―あ・・・えーっと・・・まぁアレだ、ヴォルクと仲良くしてやってくれよ?なんかしたら殴るぞ。うん。」
なんとも説得力が無かった。
「出た、兄貴―モゴモゴ」
『兄貴面』と言おうとしたガンタスの口はグレイブによって止められた。
「馬鹿か。ヴォルクに何かした以上の殴りが帰ってくるぞ?」
「ぶへあっ!?―あー分かったダス!」
よろしいとでも言うようにグレイブは彼から離れた。
「ガンダス。そんなに殴られてぇか?あぁ?」
グレンドルの指がボキリ、また一つボキリと音を上げた。
「あっ!じょ、冗談ダスよ!?殴らないでーッ!」
外へ飛び出したガンタスを、彼はどこまでも、どこまでも追っていった。

(220.213.101.36).. 2008年03月25日 23:52   No.196007
++ ウェリス (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…98回       

「んだよ。相変わらずの馬鹿ばかりじゃねぇか。」
グレンドルはそう言うと指を鳴らした。
ガンタスはどうやら辺境族でスピード、パワー共に格段に成長した彼に見事捕まり、殴られてしまったようだ。
グレイブは呆れ、ダリアは唖然とした様子でその様を見ていたらしい。
「馬鹿と言う程じゃないよ。面白いと僕は思うけど。―多分。」
半ば苦笑しながらヴォルクは言った。
確かに面白みもあるかもしれない。
真面目な奴もいる。
そこもまた面白い。そんな気がした。
「ま、そうかもな。あはは、俺がバカじゃん。」
彼は笑い、頭を掻いた。
「グレンドル様。―っと?この子は一体?」
ダリア達と話した時に姿を見せていなかったゼロが帰ってきた。
彼はヴォルクの事を全く知らないのであった。
「ん?ああ、ヴォルクだぜ。」
軽く自己紹介をした彼の事を、グレンドルは詳しく話した。
海に流れ此処に着いたこと、記憶が無い事―
ダリア達にも言った筈だったが、どうも上の空だったようだ。
だがゼロは違った。
寧ろ同意感を持つようだった。
ゼロは記憶こそはあったが、人を殺めた罪により海へ投げ出され、気付いた時にはグレンドルが目の前にいたのだ。
「そうでしたか、私と同じような者が他にも・・・」
彼はヴォルクの目を見、同じ者がいた事を悲しく思った。
「罪も無いのにこのような事を・・・それは私より遥かに悲しき事だ。」
ゼロは手錠を付けていて上手く出来なかったが、そっと彼の頭を撫でた。
「大丈夫だ。グレンドル様だけでは無い。私だって誰だって君を守ってくれる。」
そう言って、優しく微笑んだ。
彼が滅多に見せる事の無い微笑みだった。
「そうだ、だから心配すんな。なんかあったら俺に―いいや、俺達に頼んでもいいんだ。」
そう優しく言ってやると、
「うん。有難う。」
と、嬉しそうにヴォルクは言った。

(220.213.101.36).. 2008年03月26日 00:04   No.196008
++ クォーツ (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…87回       
誤字なし。私は下書きナシの一発本番なので、寧ろ私の方に誤字があるかもです(苦笑

「古代文明の巣窟」と呼ばれ、更には正体不明の怪物がはびこっているという噂から誰も近寄らない海底遺跡。そこに、依頼主がいた。
「…この紙の依頼に従ってここに来た。もしや、あなたがこれの依頼主か?」
「はい…よく来てくれました…」
「あん?お前、ルカイじゃねぇか?」
テュールは依頼主=ルカイとは顔見知りのようである。フィンは置いてかれた気分で…。
「何?知り合い?」
「随分と昔の同僚さ。ま、主様の人使いの荒さに耐えきれなくて、オイラは逃げたけど」
「僕も似たようなものです。で、実はその主様についてなんですが…」
「うらめしや〜」
『なあぁぁぁぁああっ!?』
ルカイが本題を打ち出そうとした時、彼の背後からヘイム…の幽霊が現れた。いきなりのことだったので、フィンもテュールも大慌て。
「実はヘイム様は、数日前にセントラルタワーに乗り込んできたコンクル・シオンとかいう奴に殺され…今幽霊としてここにいるわけです」
「な、なんか凄まじい未練の集合体だな、コイツはよ…。放っといたらヤバそうだ」
「成仏させる方法とか知らないよ、僕達…」
「成仏させるとか言うなぁっ!!」
『ひいいいいいいっ!!』
どうやらまだまだこの世に、というかコンクルに対して相当な未練があるようで、いきなり成仏云々の話になったテュールやフィンに怨念攻撃をしかける。精神的ダメージは大きい。
「と、取り敢えず、僕もヘイム様ももはや追われる身…。取り敢えずかぎつかれるそうにないこの海底遺跡で暮らしたいのですが、どうもここにいるモンスターはやたらと強くて…」
「それはどーでもいいけどさ、まず幽霊ヘイムをどーにかしようぜ?でないと、その内自縛霊かなんかになっちまって大変だ」
「誰が幽霊かーっ!」
『アンタだよアンタ!!』
フィンとテュールは、ほぼ同時にツッコんだ。

一方、気功族統治領域のドリラーとクレーラー。彼女らもまた、ヴォルクについては一通り報告を受けた。現在は再び巡回中。
「あのヴォルクって奴、海から流れてきたってのが気になるな」
「でも、そういうのはゼロさんがいるから、どうでもいいんじゃないの?それよりも、私は記憶がないっていうのが気になる」
「確かにそっちも大事だな…。素性が分からなきゃ、対処も何もないからな」
2人がいるのは、グレンドルがヴォルクを助けたという海岸。何か他に収穫がないかと、巡回のついでに見に来たのである。
「取り敢えず、ここら辺に大したものはない。さっさと巡回ルートに戻るぞ」
クレーラーがそう言うと、2人は海岸を後にして巡回に戻った。

(124.84.55.245).. 2008年03月26日 06:54   No.196009
++ クォーツ (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…88回       
海底遺跡では、当面の問題として幽霊となったヘイムをどうするかという話題で持ちきりとなっていたのだった。
「だぁかぁらぁっ!あたしは幽霊になっただなんて万に一つとして認めないからねっ!」
「いい加減諦めろよ…お前さん死んだんだし」
「幽霊になった人って、自分が死んだことすら分からないのかな…」
「ある意味、未練があの人をこの世につなぎ止めているんでしょうね」
「口々に変なこと言うなぁっ!」
あらゆる意味で(?)あきらめの悪いヘイムは、未だに自分が幽霊であることすら認めていなかった。死んだことすらも否定しているのか。
「まぁ、なんだ。取り敢えず憑依させても大丈夫そうなの探そうぜ。遺跡だからいろんなものが眠ってそうだしさ」
「賛成。このまま幽霊であることを認めない幽霊に騒がれるのもイヤだしね」
「第一、幽霊のままで上に上がったら、それだけで大騒ぎですからね」
幽霊にあちらこちらに行かれてはたまったものではない。ひとまず憑依させるものを探すことで意見が一致した3人。当面の目的は、ヘイムの体探しということになった。
「なんかいろいろ言われてるけど、まずは体探しからね。このままじゃ存在感薄れそう」
『(いや、騒ぎまくってるから薄れることはないと思うんだけどなぁ)』
フィン達3人は全く同じことを胸中で呟いた。

海底遺跡を探索して数十分。とある通路にさしかかると、何やらおぞましき雄叫びが聞こえた。
「グギャルオォォーン…」
「何々!?今の声!?」
更に聞こえる。しかも、近づいているようだ。
「グギャルオォォォォーン!」
「な、なんだコイツは!?」
4人の目の前に現れたのは、首3つ、腕6本、足4本という異形のモンスターだった。その頭は、それぞれ狼、龍、熊を連想させる。
「こ、これって…ツヴァイアドライ!?」
「ツ、ツヴァイアドライって、あの伝説の!?」
ツヴァイアドライ、それは、辺境世界では伝説とされている恐ろしく強く、そして凶暴なモンスターである。狼は獰猛さ、龍は雄々しさ、熊は力強さの象徴とされている。6本の腕と4本の足は、進化の過程で虫型モンスターを大量に食ってきた結果だという説があるが、真相は不明。詳細データは少ないが、ただ1つ分かっていることは、ツヴァイアドライに遭遇した者は誰1人として生きて帰ってこないということである。
「ど…どうするよ?噂のモンスターって、コイツのことだろ?よりにもよって…」
「誰1人帰ってこないのに、よく噂なんて流れたよね…。嘘から出た真じゃあるまいし」
「いや、そういうことは生きて帰って来れたら話すべきではないかと…」
「いいじゃない…」
『は?』
3人は聞き返した。当然だ。幽霊であるとはいえ、いくらなんでもコレは憑依するにはヤバそうな代物だ。思わず漏れる、疑問の声。
「は?じゃないわよ。それだけ強いモンスターなら、あのコンクルだって一網打尽にできるに違いないわ!この際見た目は二の次!まずは確実に復讐を成し遂げられる体になるのよ!」
『アンタの未練は復讐だけかいっ!!!』
ヘイムが幽霊としてこの世に繋ぎ止められた理由である未練、その全てがコンクルへの復讐だったらしい。謀らずも同時にツッコんだ3人。
「さぁ、覚悟なさいツヴァイアドライ!!」
ヘイムがツヴァイアドライに突っ込み…!?

(124.84.55.245).. 2008年03月26日 07:30   No.196010
++ ウェリス (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…99回       
更新スペースが遅すぎますね;スンマセンorz
こっからまた受験勉強やら変な物が混ざってくるのでどんどん更新が遅れそうな気配アリです・・・
ってかクォーツさん一発書きですか!?
ミスなんて見当たらないんですけど(´ω`)
見習いたいですねww


修行に帰ってきてからまず1発殴られた。
「ちょっとグレン!ガンタス君に何したの!?」
サニルが食いかかる様に問い詰めた。
「あ?―おいおい・・・1発殴っただけだぞ!?なんかあったのかよ?」
当たり前と言うかのように彼女は顔を近づける。
「あったに決まってるでしょ!あんな酷い痣つけて!」
驚くしかなかった。
確かに強くは殴ったかもしれない。
痣まで出来るなんて思っていなかった。
サニルはどんどん顔を近づける。
「だーっ!近いっての!ほら、離れろ離れろっ!!」
グレンドルは彼女の額をぐいと押さえ、離れさせた。
「きゃ!?」
彼女は派手に転倒した。
「ちょっと、力強すぎない?手加減しなさいよー。」
「え?これでも軽くやった筈だけど・・・。」
グレンドルは自分の手を見た。
前と違い大分強張っている。
「一体何をしたの・・・?」
サニルも彼の手を見た。
「きっと辺境族の戦いだろうな。これって怖いモン無しってヤツか?」
にやにやと笑いながらグレンドルは拳を握った。
が、サニルはそんな彼を睨みつけた。
「そうやって調子に乗っているから駄目なのよ。そんな状態だったら絶対すぐ負けるわね。」
「悪い。冗談だっての。俺はいつでも気を引き締めねぇと駄目だからな。」
彼はネヴィアの時の敗戦を思い出し、表情を引き締めた。
「それでよーし。ま、いつだって気を付けないといけないのはこっちも同じだけどね。」
サニルが笑顔で言うと、扉がノックされた。
「誰だ?入れよ。」
そう言って一人の少女が入ってきた。
「あ、サニアさん、ここにいたんですね。聖女様がお呼びですよ。」
少女―クリアスは盲目であり、地獄耳である。
そのため足音と声でサニアがいると判断し、此処まで来たようだ。
ヴォルクも一緒だった。
どうやら彼がクリアスの手を取って案内したのだろう。
サニアは立ち上がり、
「じゃ、色々と気を付けなさいよ。後、ガンタス君に謝ること。」
「分かってるよ。ったく・・・」
彼が溜息を付いている横で、
「ヴォルク君でしたよね?先程は有難う御座いました。」
「いいんですよ。お仕事頑張って下さいね。」
と、軽く会話をし、笑顔でいた。

(220.213.97.179).. 2008年04月20日 17:28   No.196011
++ ウェリス (オリカ王子)…101回       
誤字を修正しました。
クォーツさん報告有難う御座います!


一方、気功族の近くで何かが動いた。
「あ、あれじゃねぇか?今回のターゲットはよォ・・・!」
がたりと肩などに沢山持っていた武器を降ろした小年が言う。
「おそらくそうだろな。ま、大した奴がいれば良いもんだが・・・。」
巨大な鎌を肩に担いだ青年が続ける。
少年が悪戯のような笑みを浮かべた。
「なぁ、アイツ上手くやってると思うか?」
青年は少し考えた。
やがて出た答えは曖昧過ぎた。
「知るか。もし裏切ったとしたらどうすんだ?」
少年は「あ〜?」と、言い、
「質問を質問で返すんじゃねェよ、納得いかねーっての。」
そう言って、降ろした武器に指を滑らせる。
「あー・・・でもよ、仮に裏切ったとしたらか・・・」
暫く考えた。
そしてまた笑みを浮かべる。
しかしそれは先程とは違い、残虐な物だった。
「そんときゃブチ飛ばせば良いんじゃね?ま、どっちにせよ誰かぶっ飛ばしてぇ気分なんだけどな!ハハ!」
「もう少し静かにしろ。なんかあったら如何してくれる。」
五月蝿く笑う少年の頭を軽く殴る。
「はっ!なんかあったらだと?ぶっ飛ばす!それの一言に限るぜ!」
そう言って、拳を手のひらにぶつける。
ぱしり、と音が鳴る。
「とにかくだ。そんなにウズウズしてるんだったらとっとと突っ込むぞ。」
「わぁってるっての。ってかその指示は俺の役目だろ。―オラ!テメェら全員行くぞ!」
肩に沢山の武器を乗せた少年の背中を見、青年は思う。
『ったく、五月蝿いのにも程があるぜ・・・。まあいいか。』
気功族が戦場になる日は時間の問題だった。

(220.213.105.167).. 2008年04月24日 00:40   No.196012
++ ウェリス (オリカ王子)…101回       

「うーん・・・」
グレンドルはふと空を見上げる。
青なんて無い、ドス黒い空だった。
『ネヴィアを倒さない限りこの状況なんだよな・・・。』
溜息が漏れる。
そんな彼の様子をヴォルクは横目で見ていた。
また溜息。
「如何したの?グレン?」
気になってヴォルクは聞いてみる。
「あ?」
グレンドルがこちらを見た。
「えっと・・その・・・何かあったの?」
ヴォルクが聞いたら彼は笑った。
「あー。ちょっとな。アレの事だよ。」
グレンドルは空を指す。
さらに続けた。
「この暗黒雲を出したネヴィアって奴の事をちょっと思い出してな・・・。」
そう彼が言った時、ヴォルクの表情に戸惑いのような物が浮かんだ。
「ん?どうかしたか?」
「―ううん。何でもないよ。」
すぐに察したグレンドルは言ったが、彼が答えると、「そうか。」と言った。
「そのネヴィアって奴と1度戦ったけどボロ負けでさ・・・、でもやっぱリベンジはしたいじゃん。」
苦笑していた彼は、真剣な顔になり、
「奴と戦った後、色々あったんだ。力も上がった気がする。出来るかどうか分からねぇけど・・・今までの物を全部ぶつけたいんだ。」
そう言った。
ヴォルクには昔の彼なんて全く分からない。
だが1つだけ分かる事がある。
彼の強い力と心。
短時間の修行だけでもすぐに分かる程だった。
「出来るよ。グレンなら。」
そんな言葉が口から出た。
「大丈夫、グレンには僕や皆が付いている。だから、絶対に負けはしないさ!」
笑顔を浮かべ、ヴォルクが言う。偽りの無い、そんな瞳だった。
「ありがとよ。そうさ。皆の為、俺の為・・・絶対負けねぇ!」
そう言った途端、大地が揺れ動いた。
「何だ!?」
バランスを崩したヴォルクを抱き止め、グレンドルが言う。
外が、紅蓮の炎に包まれていた。

(220.213.97.179).. 2008年04月20日 17:57   No.196013
++ クォーツ (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…89回       
誤字発見。
支持→指示
私は基本一発書きですが、投稿後に見直して誤字があったら訂正するってパターンです。

「グギャルオォォーン!!」
幽霊ヘイムがツヴァイアドライに溶け込んだかと思うと、突如変調が始まった。
体の色が七色になり、元々頭部だった狼、龍、熊の頭は胸部に。腕は人間のものになり、足は4本から2本に減っている。これも人間型だ。
更に新しく包帯だらけの頭部が出現し、目と思われる部分が赤く光る。
「…やったわ…憑依成功よ…!」
「ま、マジかよ…」
「ここまで変化を遂げるなんて…」
「…まるでどっかの神話の神様みたいですね」
ただただ、唖然とするしかない。その姿はまさしく異形だし、常識の沙汰ではないからだ。
「神話の神様ねぇ…。それじゃ、これからはシヴァと名乗らせてもらおうかしらね」
「インドって国の神話の、破壊と創造を司る神ですか」
ヘイムとツヴァイアドライの融合体、シヴァ。一体どのような力が秘められているのだろうか。
「ともかくさ、体探しは完了したんだし、とっとと遺跡から出ようぜ」
「賛成。ここ薄気味悪いしね」
テュールの提案により、一同は海底遺跡から出ることにした。ツヴァイアドライと融合したせいかいかんせん体が大きいシヴァは通るのに苦労していたようだが。
時間をかけ、ようやく遺跡から出た先は、セントラルタワーの間近であった。
「そういえば、海底遺跡って中央区域の真下だったっけ…」
「でもどうするよ?もう夜みたいだし、とっとと帰った方がいいんじゃねぇか?」
「否!もうコンクル・シオンは目と鼻の先!速攻でこのタワーの最上階まで!」
辺境世界のモンスターは、夜になると凶暴性が増す傾向にあるらしい。その為、危険が迫らない内に退散した方がいいと考えたテュールであった…が、それをシヴァは見事に粉砕してくれた。復讐心に勝るものなしといったところか。
「ただのバカだろ、アイツ…」
「まぁまぁ。それに、モンスター達もこのセントラルタワーの壁を破るのは無理でしょうし、隠れるならいっそのことここの方がいいのではないでしょうか」
「確かに、見た感じ大分夜が更けてる。今の時点で危険と考えて、今日はタワーで寝るか」
真っ先に突っ込んでいったシヴァを見て愚痴るテュールであったが、ルカイの言う通り、セントラルタワーで朝を待った方が遙かに安全だ。ルカイのススメで、フィンとテュールはセントラルタワーで夜を過ごすことにした。

続きは後ほど。

(124.84.55.245).. 2008年04月21日 04:46   No.196014
++ クォーツ (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…91回       
ルール度外視ですが、バトンに答えてみました。良ければブログを見ていってくださいな。

夜勤組がいるとはいえ、もうとっくに正規の解放時間は過ぎている。その為、タワー内部の半分近くのエリアは真っ暗だった。
「やれやれ、まさか真夜中のセントラルタワーで朝を待つことになるとはね」
「なんか出てきそうで、おっかないですね」
「元々セントラルタワーで働いてたお前らがんなこと言うなよな…」
コンクル・シオンがタワーを治めるようになってからというもの、何やら不気味な魔力とオーラで内部は埋め尽くされている。
その為、夜勤組として働く者はかなり少ない。内部の約半分が消灯済みなのは、人数不足故だ。
「僕がかつて働いていた頃は、こんな不気味な空間じゃなかったのにな…」
「そんなもんか?」
この中で最も古くセントラルタワーで働いていたフィンは、昔のタワーの雰囲気を知っている。彼いわく、昔は夜中でも活気が感じられたということらしいのだが、今はその面影がない。
テュールの疑問も、当たり前なものだった。
「昔と今とで雰囲気が違うのって、やっぱりコンクル・シオンが来たから?」
「もしかしたらそうかも。まぁ、僕はその数日後に退職したからよく分からないんだけど」
直接遭遇したことのある、ましてや一度命を落とされた身であるシヴァは、コンクルのただならぬオーラを体で覚えているのだろう。最も可能性の高い意見が出てきた。
「で、お前さんはどうするよ?」
「どうするって、何をよ?」
「オイラ達はコンクルと戦う気はねぇし、お前さんの復讐に付き合う気もないしな」
「1人で戦いを挑むか、コンクル・シオンと戦う為の同士を集めるかってことですね」
元々テュールやフィンは、身よりを募集したルカイに会う為に行動してきたのだ。元々シヴァの復讐など関係ないことだし、ましてや相手が得体の知れない存在であっては尚更付き合う気はなかった。
だが、せっかくの縁であるのだし、せめて今後のシヴァの動向だけは耳に入れておきたかったのが本音だ。
「そうねぇ、アイツって大抵のヤツは一撃だし、今更同士を集めてもあまり意味はなさそうだし、今回はタイマン勝負といくわ」
「…随分と強気ですね、シヴァ…様」
「…あのさ、あたしが死んだって時に、アンタはコンクル・シオンと戦わずに去ったじゃないの。あたしは見てたんだからね。そんなヤツに様よばわりされたくないわよ」
「は、はぁ…」
「それと、アンタのことなんて知らないから。これからは勝手に生きていきなさい」
そう言い残すと、いつの間にかシヴァはタワーの最上階へと登っていった。以前コンクルが破壊しながら通っていった、最上階近くへの直通ルートを使って。

(124.84.55.245).. 2008年04月24日 05:07   No.196015
++ ウェリス (オリカ王子)…102回       
2個目の方で、「随分と強き・・・」とありますが、これって「強気」と言う事なんですか?
ちょっと気になったので、書かせて頂きました。

「なんだ!?この状況は!」
炎に包まれ、夢だと言いたい景色を見た。
グレンドルはヴォルクを下がらせ、拳を握る。
不意に殺気を感じた。
そう思った時には遅い。
彼に向かってブーメランらしき物が飛んできた。
「―させるかっ!」
グレンドルは拳で弾き返す。
彼の足元に落ちたのは1本の短剣だった。
何かが動いた。
「そこだな!ストレイト・ブレイカーッ!」
拳に急速に気が溜まると、一気に放出。
炎を引き裂いて、動いた物に当たった筈だ。
炎を取り巻いた煙が消えた時、影が見えた。
「へー。おもしれぇ奴じゃん。よく分かったな!」
影の正体、それは1人の少年だった。
なんとも生意気な口調で話してくる。
「俺の思った通りだな!こりゃ殺りがいがあるぜ!」
指をゴキゴキと鳴らす。
と、少年はヴォルクの方を見た。
「オレは岩砕鬼アマノジャク!ってか、用があんのは・・・まずテメェからだけどな。」
アマノジャクがヴォルクの方を向く。
ヴォルクが震え上がる。
「なんだよ。いきなり放火で出しゃばって。その上・・・ヴォルクに何のようだ!?」
グレンドルが拳を握る。
少年は噴出すと、笑った。
「ぎゃははは!!こりゃいいぜ!事実を教えてやるよ。ソイツはな―オレ等闇月族のスパイなんだぜ・・・!」
「!!」
ヴォルクの表情が絶望へと変わる。
グレンドルが振り向く。
「嘘だろ!?嘘だって言ってくれ!ヴォルク!」
彼の叫びにもヴォルクは頷きもしなかった。
ただ、絶望に身を寄せているかのようだった。
「嘘じゃねぇっつーの。バーカ。―なー、ヴォルク。」
呆れたように言い放ち、馴れ馴れしい様にヴォルクに問う。
が、彼は震える唇を開き、
「違う・・・!僕は・・・僕はお前の味方じゃない!」
と、言い張った。

(220.213.98.38).. 2008年04月24日 01:08   No.196016
++ ウェリス (オリカ王子)…103回       
若干グロが混じっています。
と言うより、アマノジャクの性格が悪すぎるような・・・;

「あぁ?今のは空耳か?―オイ、もっぺん言ってみろよ。」
アマノジャクの目が怒りに震えていた。
「僕はお前の味方じゃない!僕は―気功族の住人の一員なんだ!スパイだったかもしれない。でも、お前達なんかとはもう嫌なんだ!」
強く、強く言い放った。
アマノジャクの怒りが頂点を指した。
「んだとテメェ・・・!生み親のネヴィアに逆らって良いとでも思ってんのか!?」
「確かに僕はレプリカとしてネヴィアに作られた。お前もレプリカで、同じネヴィアに作られた。でも僕はもうそんな事どうだって良い!僕は・・・僕の道を選ぶ!!」
アマノジャクは溜息を吐いた。
そして、笑顔でヴォルクを見る。
「しょーがねーの。じゃ、別れの挨拶って事で、ちょっとこっち来いよ。」
彼が手招きをする。
グレンドルは一瞬迷った。
行かせるべきか、行かせないべきか。
それはヴォルクも同様だった。
「んだよ、信用ねーな。オレ。心配すんなって。何もしねぇから。」
苦笑して言った彼のその言葉に、偽りは無さそうだった。
2人は目配せをし、ヴォルクは歩み寄った。
アマノジャクはふっと笑い、彼の肩に手を置いた。
「じゃ、元気にしてろよ・・・。―」
彼の手が後ろに動いた気がした。
「―あの世でな。」
アマノジャクの冷たい声が響いた時には遅かった。
先程投げた物と同じようなナイフをヴォルクの鳩尾に沈める。
血が黒い空に舞った。
「!!」
声も出さず、彼は崩れ落ちた。
「ヴォルクっ!!」
「ぎゃははっ!誰が許すと思ってんだ!クソったれがよ!!」
汚く笑う彼を横目に、血に汚れたヴォルクをグレンドルは抱き留めた。
「グレン・・・やっぱり・・行くんじゃ無かったよ・・・。」
何故か笑顔を浮かべた。
何故?
何故笑顔でいられる?
「馬鹿っ!悪いのはお前じゃない。俺なんだ・・・!」
大粒の涙が自然と零れ落ちる。
「違うよ・・・本当に悪いのは・・あいつだったんだ・・・。グレンは悪くない・・。」
ヴォルクは息を吸い直した。
命の灯火は消えようとしていた。
「嘘付いてごめん・・・。記憶はあったんだよ。・・・でも・・・気功族の皆と・・・もっと一緒に・・・いたかった・・・な・・・。」
「ヴォルク・・・!仇は絶対にとるからな。心配すんな、ネヴィアも倒すって・・・約束するからな!」
彼の細い体をしっかり抱いた。
「有難う・・・グレン。ううん・・・僕の大切な・・・兄さん・・・。」
そう言って、ヴォルクは生命の火を消した。
ヴォルクの体は光の粒子となり、掻き消えた。
「許せねぇ・・・!絶対に許せねぇ・・・!覚悟しろっ!アマノジャク!!」
「ははは!おもしれぇ光景も拝んだもんな!いいぜぇ!血が唸る!―オレは手加減なんてしねーからな!!」
そう言うと、背後から彼の部下が飛び出した。
部下は他の人に任せると、2人の戦いの火ぶたは切って落とされた!

(220.213.103.155).. 2008年05月19日 17:58   No.196017
++ クォーツ (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…91回       
あー、その通りですなー。
後で直しておきます。
あと、「殺りがい→殺しがい」「火花→火ぶた」かと。
続きは後ほどに。

「……来るか」
何か、得体の知れない力が迫ってくる。以前自分が使った、この部屋への直通ルートで。コンクルは、意識を臨戦態勢に突入させた。
「だああぁぁぁっ!!」
塞いでいた穴を豪快に突き破り、コンクルの目の前に現れたそれは、あまりにも大きかった。シルエットだけでも異形だろうに、自身のボディカラーである虹色が更に異形さを際立たせる。
「さぁーて、このシヴァ様が、あんたを冥界に送り返してやるわ!覚悟なさい!」
「…その声、ヘイムか。しかし、何故生きている?その姿はどうした?」
「あんたを殺す為に変わってきたのよ。だから名前も変えた。シヴァと呼びなさい」
お互いに平然としている。シヴァは新しい力を得たことで、コンクルは一度殺した者が相手ということで、互いに余裕なのである。
「幽霊としては存在できたか、死に損ないめ。だが、お前はこの世界を統治することなぞできぬと言った筈だ。お前如きでは無理だ」
「このセントラルタワーに得体の知れないエネルギーを循環させるようになったあんたに言われたくないわね」
互いに構える。緊張が高まる。そして―
『はああああああああっ!!』
両者は同時に、因縁の相手へと襲いかかった。

(124.84.55.245).. 2008年04月24日 04:55   No.196018
++ クォーツ (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…92回       
「もはや、お互いに得体の知れない存在へと変わり果てたようだな」
「あんたは始めっから得体の知れない存在じゃなくて!?」
コンクルとシヴァ、両者の計り知れないエネルギーと魔力が激突する。
その影響で、周辺の床や壁、天井は、見るも無惨に破壊されている。
戦況は五分―互いに決定打を与えられぬまま、夜が明けようとしていた。

一方で、その戦いの激しさを音と振動によって感じていたフィン達。
「まだ続いてるんだ、あの喧嘩」
「多分、最上階付近は喧嘩レベルじゃねぇ悲惨な状態になってるだろうぜ」
一行は、安全であろう1階で朝を待っていた。間もなく日の光が差してくるだろう。そんな中、シヴァに捨てられた身となったルカイは、これから自分は何をしたいのかと考え続けていた。
「おそらく、この戦いに勝利した方がセントラルタワーを、この世界の全てを司ることになりますよね」
「まぁ、そうだろうな。おっかねー連中だけど」
「そうなって、この世界に本当の意味での平和って訪れるんでしょうか…?」
ルカイの疑問は、生まれはどうあれ辺境世界の民ならば当然の疑問だった。
ヘイムの復讐の為に生み出されたも同然の「虹の騎士団」の一員故に、平和の本当の意味を知りたかったのである。
「……多分、あの2人ではどちらが勝とうと結果は同じだろうね…」
フィンから出された答えは、あまりにも現実的で、辺境世界の未来に陰りが生じ始めていることを意味していた。
「で、お前はこれからどーすんだ?ヘイム改めシヴァに捨てられたんだろ?」
「……そ、それは…」
やはり、ルカイは答えられない。いくら嫌っていたとはいえ、主であることに変わりはなかった。導く存在が突然自分を捨てた。その対処法など、主が教育しているわけがなかった。
「…仲間に、なるかい?」
「えっ?」
「僕やテュールも、君とは違うけど自分を導く者を失った身だ。だから、今までもこれからも、自分が何をやるかは自分で決める。その初めの一歩として、僕らの仲間になるか、別な道を自分で探してみるか、考えるんだ」
フィンが何故こんなことを言い出したか?それは、ルカイがフィン達を呼び寄せた依頼内容を思い出したからであった。
シヴァの体探しということで忘れていたが、元々はルカイの身寄りになることでセントラルタワーの内部情報を手に入れようと思ったのだ。
身寄りになるのだから、仲間になったからといってこれといった大差はない。
「選択権は、君にある」
「………お願いします。そして、ありがとうございます…!」
そう言った直後、ルカイはフィンの胸に飛び込んで、大泣きしていた。

(124.84.55.245).. 2008年04月25日 04:26   No.196019
++ ウェリス (オリカ王子)…107回       
遅くなりつつも修正しました。
「殺りがい」は漫画のセリフでよくあるような「やりがい」って感じで読みます。
まぁ、そこら辺の読み仮名を打たなかった私にも責任はありますけどね;
アマノジャクは基本的「殺りがい」「殺りあい」などと言いますが、ミスではないですよ^^

「てめぇなんざ俺一人で十分だっての!―オラァ!テメェら全員殺っちまえ!」
アマノジャクが武器を一気に握ると、天高く掲げた。
武器から放たれた銀光と共に沢山の鬼達が飛び出す。
「面白い。如何なっても知らんぞ!―ストーン・プレッシャー!」
グレイブが腕を振ると同時に魔術が発動。
目の前に飛び込んできた鬼を纏めて押し潰した。
「女だからって手加減しないでよね!爆崩弾(バクホウダン)!!」
ダリアが一瞬で敵に肉薄し、強力な一撃を見舞う。

一方、ガンタスは石のハンマーを握り、巨大な鎌を握った男と対峙していた。
「俺の相手はガキか。馬鹿にしているのか?」
鎌で地面を叩く。それだけで地面が沈む。
「それじゃこっちも言わせて貰うダス。馬鹿にしていると痛い目にあうダスよ!」
ガンタスもハンマーで地面を叩く。
地面が沈んだ。
「はっ。言うじゃないか。では、その口、永遠に開かんようにしてやろう。―黒龍鎌ブロード、いざ参らん!」
ブロードの鎌とガンタスのハンマーが火花を散らした。

「んじゃ、俺等もとっとと始めるとしねぇ?突っ立ってんのも頭に来るだけだしな。」
大量の武器が地面から浮き上がる。
「上等じゃねーか。ヴォルクの仇はとらせて貰うぞ!」
拳を掌に打ち付ける。
―風が舞った。
アマノジャクの刈りたてた髪が、グレンドルの銀髪が揺れる。
彼方から飛んできた木の葉が地面に落ちる。
その刹那、2人は一瞬にして間合いを零にした!
「吹き飛べ!気竜光波(キリュウコウハ)!」
グレンドルの放った龍の形をした気が狭められた間合いで放たれる。
「なめんな!ぶった切ってやらぁ!衝十斬裂(ショウジュウザンレツ)!」
あれだけ狭められた間合いの中でも彼が斧と長剣で放った切りにより、気は真っ二つに切れた。
アマノジャクに余裕の笑みが浮かんだ。
「馬鹿かお前は!今のはただの誘い水だ!―気爆撃(キバクゲキ)!」
引き裂かれた気からグレンドルが飛び出し、アマノジャクの鳩尾に拳を突き出す。
距離は届かなくとも、突き出された拳から気が放たれたと思うと、弾けた。
まともに気を受け、敵は吹き飛んだ。
が、空中で体制を整え、鳩尾の痛みで少しよろけながらも着地した。
「んだよ、やってくれるじゃねぇか!」
どうやら敵の体力も半端ではないようだ。

(220.213.108.48).. 2008年06月23日 16:57   No.196020
++ ウェリス (オリカ王子)…105回       

「引き裂け!牙翔尖気(ガショウセンキ)!」
「くらえっ!双月連脚(ソウゲツレンキャク)!」
レイヴの鋭利な爪の付いたグローブが鬼を裂き、セルネの弧を描くように2度蹴りを見舞った。
それでも悲鳴のような笑い声を上げ、鬼達は次々と襲い掛かる。
「だーっ!うぜえっての!」
ギンは敵の数に惑いつつも拳で次々と敵を殴り倒した。
「手械を外す訳にもいかんが・・・くっ、この状況では・・・!」
そう言いながらも足のみで敵を蹴り飛ばすゼロ。
劣勢に偏りつつあった。
「皆!諦めないで!―ヒールサークル!」
戦う彼らをサポートするべく、サニルは戦闘に参加した。
「サニルさん!私も共に・・・」
「クリアス!来ては駄目!貴方は患者を診ていて!」
今にも詠唱を始めようとしたクリアスを彼女は止めた。
「―分かりました。でも、気をつけてくださいね!!」
クリアスはそう言うと、共にいた別の治癒術使いに手をとって貰い、共に病室へ駆け出した。

「小僧、やるではないか。それなりの重さのあるハンマーで私に付いて来るとはな。」
ブロードが武器を構えつつ言う。
しかしガンダスはついと顔を背ける。
「お前なんかに言われても嬉しくないダス。オラの目的は付いてくる訳じゃないダス!お前を倒す!」
「つまらん小僧だな。まぁ、仕方あるまい。」
2人は武器を構え直し、再び突撃した。
「砕けるダス!崩爆岩弾撃(ホウバクガンダンゲキ)!!」
「闇の淵にて眠るがいい!闇龍裂斬鎌(アンリュウレツザンレン)!」
ハンマーが地面に当たり、岩が砕けると、巨大な破片は彼の周辺に噴火のように吹き出した。
鎌が振られると、鎌の軌跡がどす黒く残った。
巨大な岩石と闇が弾けあう。
相殺したと思うと、ブロードの頭上にはハンマーを振り下ろすガンダスの姿があった。
「―馬鹿なっ!?なんて速さだ!?」
鎌で防ごうとしても遅かった。
彼の頭上にハンマーは振り落とされた。
「ぐぎゃあっ!?」
「どーダスか!オラの力を思い知ったダスか!?」
額に流れる血を拭おうともせず、ブロードは立ち上がる。
しかし頭に直撃したハンマーの威力は絶大だったか、よろめいた。
「ぐぐ・・・次の一撃だ!次の一撃で最後にしてやるっ!!」
「上等ダスよ!最後の一撃まで手を抜くなダス!」
その台詞にブロードは微笑し、残った力を鎌に注いだ。
ガンダスも強くハンマーを握り締め、力を込めた。

(220.213.102.195).. 2008年05月19日 18:43   No.196021
++ クォーツ (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…93回       
了解ですー。
確かにマンガとかでよく見る(聞く)表現…。そこを見落とすとはなんてこったw

辺境世界に朝が来る。太陽が昇り、外は明るくなっている。そして、結末を照らす…。
昨晩から戦闘に突入していたコンクルとヘイムの戦いは、膠着状態にあった。
エネルギーの放出による互いの障壁の激突、これだけで時間が過ぎていった。
一晩中、エネルギーの衝突だけで両者のエネルギーは消耗していた。維持する為にエネルギーを放出し続けた為だ。
時間が経てば経つ程、両者の命が削られていく。両者共に「強引な転生」を行った為に、力を行使すればする程命が削られていくのだ。
武士や忍者のような根比べとなったまま時間が過ぎ、気づけば朝だ。どれだけ続いたか。
「……いい加減、この泥仕合にも終止符を打たねばな」
「奇遇ね、こっちもそう思ってたところよ」
互いに、決着の一撃を放つべく構える。同時にエネルギーの放出が止まる。そして…
「受けよ、ペトリアルス・グラファー!!」
「必殺、ヒュドラ・メイズン!!」
コンクルとヘイム、両者の必殺技が交錯する。凄まじいエネルギー同士は、やがて互いの軌道をずらし、相手に命中した。
その瞬間、セントラルタワー最上階付近にて、辺境世界では前代未聞の大爆発が起きた。
これからの辺境世界の未来を占う、重大な意味を持った大爆発が。

(124.84.55.245).. 2008年05月20日 04:37   No.196022
++ クォーツ (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…94回       
大爆発により、まずセントラルタワーの「王の回廊」周辺の階層は消滅した。
その範囲は、月光世界との唯一の往復手段である泉があった最上階にも及び…。
当然、その爆発の音と振動はフィン達のいる1回にも届いた。まずルカイが目を覚ます。
「……今のは…?」
ほんの2〜3時間ではあったが眠っていたので、半分寝ぼけていたものの、本能的に外に出て、セントラルタワーの上の方を見た。
「…これって…!ちょ、フィンさん!テュールさん!起きて下さい!」
これまた寝ぼけ状態のフィンとテュールも、大爆発後の光景を見た瞬間目を覚ました。
『なんじゃこりゃあ!!』
「多分、上の方で爆発があったのでは…」
「え、じゃあ、あの喧嘩は終わったの?」
「何にせよ、ちょっと見てみようぜ」
単体での飛行能力を持つフィンとテュールが飛行してタワー上部へ上がる。
そこには、見るも無惨な光景が広がっていた。
「どうでしたか…?」
状況確認後、降下した2人にルカイが尋ねる。だが、どうにも複雑な表情だ。
「…間違ってなければ、相打ち。どっちもオシャカになっちゃったってところだね」
「どっちも体の色がほぼ真っ白。つまり、既に虫の息ってことさ」
辺境世界の住人には、特殊な体質がある。体の色の濃度によって、生命力が判断できるのだ。
濃ければ濃いほど生命力に満ちあふれており、逆に薄ければ薄い程死にかけているのだ。
相打ちとなった2人は、共に真っ白、ほぼ死亡に近い状態となっていたのである。
「…ならば、今の内に仕留めてしまうのがいいだろう」
「そうですね。あの時のようには絶対にさせませんよ、管理者の権威にかけて」
「って、いつの間に来たんだよオイッ!」
いつからか、テュール達の後ろにムーンライトとユニバースがいた。
「我々は、神々の泉に魔の手を染めた愚か者共を抹消する為にやってきたのです」
「あのコンクル・シオンも、ヘイムも、同じく神々の泉を利用した愚か者。それ故、こちらのユニバース殿が永遠なる罰を下す」
そう言うと、ユニバースとムーンライトはタワー上部へと飛んでいった。

(124.84.55.245).. 2008年05月20日 05:08   No.196023
++ クォーツ (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…95回       
ウェリスさーん、元気ですかー!(オイ
…アレ?更新ストップの記事がブログに出たのいつなのか思い出せない(マテ
取り敢えず、続き投下。
ユニバースが本領発揮するお話です。

「オイオイ、いきなり現れて何なんだ、アイツらはよ…」
「冷静を装いつつも、急ぎの用事であることは分かりましたね」
2人のことを知らないテュールとルカイは状況を飲み込めずにいたが、フィンだけは違った。
「…あれは、創造主ユニバース…!しかし、何故ムーンライトが組んでいる?」
「あの、知っているんですか?」
いかにも2人のことを知っているような口振りのフィンに、ルカイが尋ねる。
「あぁ、女性の方はユニバース。『万物の泉』に住まうといわれる精霊だ。機獣の方はムーンライトで、分断災害後は行方不明だった筈なんだけど…」
「けどよぉ、そんな連中がなんでまたコンクルとヘイムに用があるんだよ?」
「そこまではさすがに分からない。けど、ムーンライトの発言からすれば、2人共万物の泉に手を出したことになる…」
尋ねたら知らない単語がまた出てきた…。余計に状況が分からなくなった2人。それを察したか、フィンは万物の泉について説明した。
「万物の泉っていうのは、この辺境世界にある地下世界のどこかに存在するという神聖な泉。ユニバースや神々の憩いの場となっていて、彼女ら以外は立ち入ることすら禁じられているんだ。少なくともここ数十年の間に生まれた者は、存在さえ知らない筈だ」
「しかし、それなら何故フィンさん、ヘイムやコンクルはその場所を知っているんですか?」
単語の意味が理解できたところで、そこから自然と別な疑問が出てきた。何故知っているのか?
「それは、僕やアイツらが分断災害の時からこの辺境世界に関わっていたからさ」
「って、どーゆーことだか分からねぇんだけど」
「簡単なことさ。この辺境世界は、元々は分断災害から逃げ延びてきた連中によって作られた世界だ。つまり、地下世界のことだって、作った一員なら場所とかも知っているってこと」
その世界を作ってきた者であれば、たとえ他が知らないような場所でも知っていて不思議ではないし、ある意味で当然でもある。
「…えーと、オイラは知らなかったんだけど…」
「まぁ、全員が知っていたわけでもなかったからね」
どうやら地下世界の方には関わっていなかったようだ――テュールは呆然としていた。

(118.0.119.186).. 2008年06月11日 05:55   No.196024
++ クォーツ (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…96回       
一方、そのユニバースとムーンライトはタワーの上部に来ていた。
「さて、こやつらが復活しない内に…」
「はい。この世界の王であった者、コンクル・シオン…。王になろうとした者、ヘイム…。万物の泉に手を出したその過ちに、今こそ罰を下す」
そう言うと、ユニバースは両腕を広げ、そして前に突きだして円を描く。すると、彼女の目の前に黒い穴のようなものが現れて…。
「禁忌に触れた者共よ、今こそ消えよ。ジ・エンド・オブ・ユニバース」
コンクルとヘイムはその穴に吸い込まれた。吸い込まれた瞬間、2人の体は細かい光に変わり、一際大きな光は穴の奥へと消えた。その光景にはムーンライトも感嘆の声を上げる。
「おお、これが万物の創造と抹消を司るユニバース殿の『ジ・エンド・オブ・ユニバース』…!あの2人を光に還すとは…。ところで、一際大きな光は何だったのだ?」
「あれはコンクルとヘイムの魂です。この技で体を分解され、器を失った魂は私が生み出した穴によってボイドへ飛ばされ、封印されるのです」
そう、ジ・エンド・オブ・ユニバースは、対象を『分解』し、器は光に変わり、残された魂は黒い穴にでボイドへ飛ばし、封印する技なのだ。
ボイドとは、この果てしない大宇宙をくまなく見渡せる程に広大な空間である。その直径は計り知れず、また特に何かあるわけでもない(おそらく)ので、まさに無の空間といえよう。
つまり、このボイドへ飛ばされた魂達は永遠に路頭を彷徨うことになり、実質上封印されたに等しい状態になるわけである。宇宙はあまりにも広大である故に、ボイドからピンポイントで元の星に戻るのは限りなく難しい。そもそも、宇宙に出たことすらないこの世界の住人達にとっては、まさに無限の無という地獄なのである。もっとも、宇宙の名を冠するユニバースだけは何度も宇宙を巡ったことがあるようだが。
「ユニバース殿、これからはどうされる?」
「私は万物の泉に戻り、今まで通りの暮らしをするだけです。これから暫くは長らく泉を留守にするわけにもいきませんから」
とその時、2人の背後から声がした。様子を見に来たフィン達3人であった。

(118.0.119.186).. 2008年06月11日 06:30   No.196025
++ ウェリス (オリカ王子)…106回       
生きてます。起きてます。ウェリスです(何
更新ストップは未だ続いています。なのに書いちゃいますw(おい
やべ;明日と明後日テストだ;どーしよ(ちょw


拳と武器がぶつかり合う。
鍛え抜かれた拳から放たれる一撃はいとも簡単に武器を弾く。
対する武器も攻撃間隔に間はあるが、拳より上の攻撃力で弾き返す。
力は互角。
一瞬の隙が戦いを動かす。
「うおらっ!ブレイク・トマホーク!!」
アマノジャクが巨大な斧を振り上げ、衝撃波を放つ。
地面を削りながら進む。
「させるか!剛破気衝(ゴウハキショウ)!!」
対するグレンドルは強力な気を放ち、相殺させる。
―地面が裂ける。
粉と化した岩石が煙の様に舞い、目の前が白くなる。
煙の間から時たま垣間見える影が攻撃の手がかり。
敵の影を捉えた瞬間、グレンドルは一気に肉薄した!
「くらえっ!!」
喉笛の辺りを目掛けて拳を突き出す。
が、強い振動と鉄の冷たさを感じ、すぐさま下がる。
目の前に巨大な斧の刃が横切った。
「ちっ!首ぐらい刈らせろってんだ。」
えげつない事を言い、アマノジャクは唾を吐き捨てる。
「お前なんかに俺の首を預けられるかよ。」
浅く切られた頬から血が流れる。
それを気にする事無く拳を構える。

「ギーギーるっせぇよ!大人しくしろ!」
ギンの一撃が鬼の腹に沈む。
「ぐげげえっ!?」
可笑しな声を上げ、敵が吹き飛ぶ。
唖然とする間に2体、3体と片付けていく。
「あのねー。アンタ等死にたいの?ちょっと退きな!―連牙気天破(レンガキテンハ)!!」
ダリアが指をゴキリと鳴らしたと思うと、一気に肉薄。
連続攻撃を仕掛けた。
今度は彼女の指でなく、敵の骨がゴキリと鳴った。
それだけでない。バキバキと骨が砕ける音もした。

(220.213.98.4).. 2008年06月11日 17:34   No.196026
++ クォーツ (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…97回       
えーと、このタイミングなら「テストお疲れ様」ですよね。ホントお疲れ様です。
ちなみに私のテストは…約2週間後(ぁ

「やはり…!君達だったか!」
「あなたは…」
「おお…こうして顔を合わせるのは何年ぶりか」
フィンが声をかけると、ユニバースとムーンライトは懐かしむように答えた。
「あの…この人達は一体?」
「紹介しよう。こちらが創造主ユニバース、そしてムーンライトだ」
「初めまして」
「以後、お見知り置きを」
「ルカイです。創造主がどこかにいるとは聞いたことがあったんですが、本当にいたとは…」
「テュールだ。フィンとは付き合いが長いようだな、オイラもそうだけど」
互いに紹介を終え、フィンが本題を持ち出す。
「…コンクル・シオンとヘイムは?」
「あの2人には消えてもらいました。もっとも、消えたのは体だけですが」
「オイオイ…これってさ、歴史の授業で習った『創造主の抹消』ってやつかよ?」
「そうだ。あの2人は、本来立ち入ってはならぬ万物の泉に無断で接触した罰を受けたのだ」
「2人共、揃いに揃ってこの世界の統治の為に力を欲し、禁忌に触れましたから」
ムーンライトの説明にユニバースが続くと、ようやくテュールとルカイも状況が飲み込めたようで、納得したらしい。
「これから私は、万物の泉に戻って暫くは警戒にあたることにします。またこのような事態が起こると、この世界はもっと不安定になりますし」
「そうした方がいいだろうね。それに、世界を治めるリーダーを決めるまでの間は、少なからず混乱が生じるのは間違いないから…」
「私はユニバース殿を泉まで送り届けた後、今一度月光世界に上がる」
「ちょっと待てよ。セントラルタワーの上部は綺麗サッパリ吹き飛んだんだぜ?どうやって月光世界に上がるってんだよ」
テュールの疑問はもっともだ。この世界の住人ですら、辺境世界と月光世界を繋ぐルートはタワー最上階の泉しか知らなかったのだ。それが無くなったということは、月光世界への転移が不可能になったことを意味する筈である。だが、この疑問を解決したのは、ルカイだった。
「ヘイム様…いや、ヘイムの話では、確かセントラルタワーの真下に当たる海底遺跡のどこかに、似たような泉があるらしいんです」
「うむ、私はそのもう1つの泉を使って月光世界と辺境世界を往復している。従って、タワー最上階の方の泉が使えずとも問題はない」
「僕も聞いたことがあるな。ただ、ツヴァイアドライがいたせいで誰も近寄らなくなったから、いつの間にか忘れ去られたんだろうね」
「けどよ、そのツヴァイアドライはヘイムと融合してそのままオダブツだろ。だったら、海底遺跡に入っても大丈夫じゃね?」
ツヴァイアドライ、かつてヘイムの魂の器を探して海底遺跡にフィン、テュール、ルカイ、亡霊状態のヘイムが入った際に遭遇した、とてつもなく恐ろしい、凶暴なモンスター。あまりにも目撃例が少なすぎることから伝説とされ、現に海底遺跡で大騒ぎを起こしても現れたのは結局ヘイムに憑依された1体だけだった。その1体が消えたことで、海底遺跡は安全エリアになったとテュールは考えたのだが…。

(118.0.119.186).. 2008年06月14日 06:32   No.196027
++ クォーツ (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…98回       
「そういうわけでもない」
あっさりと否定された。誰よりも海底遺跡のことを知っていておかしくないムーンライトに。
「じゃ、じゃあ、まだあんなおっかねーのがいやがるってのか?」
「いくら目撃例が異様に少ないとはいえ、子孫を残している可能性は非常に高い」
「あ、そうか…。個体数が少ないってことは、毎年残す子孫の数も少なくて、その子孫を死に追いやる天敵の存在も否定できなくて…」
「そういうことだ。海底遺跡にはツヴァイアドライもいたが、同じくその天敵もいるのだ。あのツヴァイアドライは特に力の強かった、一族のボスのようなものだったが故に、その天敵とも互角に渡り合っていたらしいがな…」
フィンの説明に続くように、ムーンライトが海底遺跡の実体を暴露する。海底遺跡はツヴァイアドライの一族とその天敵の一族とでなわばりを形成していたのだが、種族間抗争によって互いに個体数が激減。現在は互いの唯一の生き残りと僅かな幼生体しか残っていないらしいのである。
「おそらく、幼生体は戦えないでしょうからその生き残り同士の一騎打ちが遠からず始まるでしょう。互いの生き残りをかけて」
「そして、勝った方が一方的に増殖を始めるということですか…。しかし、その天敵は我々にとっても危険な存在なのでは?」
まだ辺境世界の情勢の多くを知らないルカイであるが、少なくとも生態系に関する知識は誰かから叩き込まれたようだ。おそらくは教育担当だったメデュールからか。あれほど恐ろしいツヴァイアドライの天敵、ならば他の生物にとっても非常に恐ろしい存在ではないか。ある意味で当然の疑問を投げかける。
「…そーいや、聞いたことがあるんだけどよ。確かこの世界の伝承でこんなのがあったよな。
『中心なる海の底、人知れぬ遺跡の中、辺境の地にて最も凶暴なるモンスターを鎮める、それだけの為に生まれた機械生命体、存在せり』
…とかいうの」
テュールが話した伝承、それは本来辺境世界の中でもごく少数のエリートしか知ることのないとされる古代伝説である。テュールはそれほどのエリート生徒ではなかった筈なのだが…。その疑問は皆がスルーし、古代伝説との関連性を追求してみることにした。
「『遺跡』っていうのは、僕達が踏み込んだあの海底遺跡で間違いないよね」
「『最も凶暴なるモンスター』ってのは、絶対ツヴァイアドライだよな」
「それを『鎮める』ということは、おそらくは天敵であることを意味するのでしょう」
「その存在は『機械生命体』か…。今でいう機獣と考えて間違いなさそうだな」
フィン、テュール、ユニバース、ムーンライトが古代伝説の言葉が今で意味するものを推測し、やがてルカイがそれを組み合わせて結論を導く。
「機獣…ツヴァイアドライの天敵…『それだけの為に生まれた』…。もしかして、その機獣はツヴァイアドライのセーフティアンチプログラムのような存在なのでは?それで、今もツヴァイアドライがいると思って、攻撃態勢をとっているのかもしれません」
ルカイが導き出した結論は、天敵機獣の今を物語っている。それに納得する一同だが、そこから発覚する、海底遺跡の現状といえば…。
「つまり…今もまだおっかねーって…ことだよな?」
『…………』
揃いに揃って、沈黙するしかなかった。

(118.0.119.186).. 2008年06月14日 07:57   No.196028
++ ウェリス (オリカ王子)…107回       
「てめぇ等もるっせぇけど、こっちも五月蝿いな・・・まぁいっか。―おら!てめぇ等かかって来な!ぶっ飛ばしてやるよ!―龍砕月破(リュウサイゲッパ)!!」
セルネが呆れたような素振りをしたが、挑発に乗ってきた敵を蹴り飛ばした。
が、がら空きになっていたサニルに鬼が1体向かってきた。
「えっ!?ちょ、ちょっと!来ないでぇ〜っ!!」
当然言う事も聞かない敵は距離を詰めてくる。
味方は彼女の悲鳴は分かっていても、全員が手一杯で、彼女の元へ向かう事が出来ない。
「あーもーぅ!こうなったら―これでどうよ!?」
一体何処から出したのかと聞きたくなるほどの巨大な注射器を出し、敵の額に突き刺した。
注射器の中にある薬の液を押し流す!
「うげぇっ!?」
鬼は額を抑え、何故か眩暈を起こしたかのように、よろよろ歩く。
暫くして、がっくりと崩れ落ちた。
「ひぃー、ひぃー。危なかったぁー・・・。」
実はというと、彼女は戦う際は護身用として注射器を持っている。
その中にあるのは薬ではない―毒液である。
何事かとさらに鬼が2,3体向かってくる。
「ちょっとコラーッ!!集団リンチなんて卑怯じゃない!!」
今度は先程より小さめの注射器を敵の数分出し、敵に向けて投げた。
それは見事に全員に突き刺さった。
衝撃で刺さったと同時に毒液が体に入っていく。
先程の鬼と同じように、よろよろ歩き、倒れた。
「あー、もうイヤー。」
サニルは地面に座り込む。
隙はあり過ぎる筈なのに。誰一人として彼女を襲わない。
―毒液が恐ろしいが為に。

「小僧・・・死ねえぇぇっ!!―斬裂滅衝牙(ザンレツメッショウガ)!!」
「死ぬなんて御免ダスよ!―いけぇっ!岩砕爆連舞(ガンサイバクレンブ)!!」
一気に間合いを詰め、必殺の一撃を仕掛ける。
振り上げられた鎌がドス黒い闇を放ち、ハンマーが地面を砕き、吹き上がった大量の岩が敵に襲い掛かる!
案の定、力は相殺。
目の前に黒い霧―否、煙が立ち込める。
両者の首下にハンマーと鎌がぴたりと吸い付くようにある。
少しでも動けば最後。
首を飛ばされるか首の骨が砕ける音が響く筈。
両者は固まったように動かなかった。

(220.213.107.152).. 2008年06月16日 00:27   No.196029
++ クォーツ (なんと!オリカ製作委員から会場推薦状が!)…99回       
考察が正しければ、海底遺跡には未だ危険が潜んでいることになる…。そんな現実を悟った一同だが、海底遺跡とは別な場所にある万物の泉に戻るユニバース、それを護衛した後に月光世界へ上がるムーンライトを除き、フィン、テュール、ルカイは、これ以上海底遺跡に関わるか否かの結論を導かなければならなかった。
関わるということは、地図さえない広大な遺跡の中で彷徨うことになりかねない。そこで暮らしができるかさえ分からないのだ。しかし、ルカイだけは迷いがなかった。
「僕は、海底遺跡に入ってその天敵機獣のことを調べてみます」
「オイオイ、ヘタすりゃ二度と戻って来れねーんだぞ?いいのかよ?」
「皆さんには帰る場所があります。でも、セントラルタワーは半ば崩壊したも同然。そこ以外に居場所がなかった僕は、帰る場所がないんです」
その瞳には、どこか悲しげで、でも何かを決心したような輝きが宿っていた。
「だから、決めたんです。どうせ帰る場所がないなら、未知が潜んでいるあの海底遺跡を冒険してみようって。もう他の騎士団の面々も散り散りになってしまいましたし、同じように遺跡で彷徨っている可能性を探してみたくもあるんです」
いくらまだ修理のしようがあるとはいえ、中枢機能が集中していたのは王の回廊周辺。運悪くそこを中心に半分以上の施設が消失してしまった為、現在のセントラルタワーはその機能を維持できないのである。このセントラルタワーが生まれ場所であったルカイにとって、ここまで酷いダメージは破棄されてもおかしくない、即ちほぼ全壊を意味している。巣立ちの機会ととることもできるのである。そこから固まった意志だった。
「随分と短い間に、そこまで固い決意を…」
「フィンさん…。すいません…せっかく招いてくださったのに…」
だが、フィンからの回答は、寧ろルカイの意志を誰よりも肯定・応援するものだった。
「別にいいさ。道が決まったなら、それを行けばいい。それが誰かとの別れになったって、道を進む内に新しい出会いがある筈だ。僕は君の旅路を応援するよ」
「…!」
「フィン…。ま、フィンがそう言うんならオイラは否定しないし、応援するぜ」
「ありがとうございます、フィンさん、テュールさん!」
その光景には、ユニバースとムーンライトは混ざっていなかった。小さな書き置きを残して既に去ってしまったらしい。その書き置きには、一言だけ。
『いつかまた会えることを信じて、この書き置きにて旅路でのご武運を祈らせていただく』
「…ホンット、あいつらはいつの間に動いてるんだかわっからねーな」
「多分、これ何年も前から変わらない癖だね。あの2人、こういう時の挨拶は直接参加しないのに、絶対書き置きは残すから…」
「変なの。オイラには全然理解できねーや」
「やはり、世の中にはいろんな人がいるんですね。じゃあ、僕もそろそろ…」
「じゃーなー」
「お達者で」
こうして、ルカイは海底遺跡へと旅立っていった。こんなやりとりをしている間にも、ムーンライトは月光世界へ上がっていったのだろうか。そんなことを思いつつ、フィンとテュールは別々な方向にセントラルタワーを後にした。

(118.0.119.186).. 2008年06月16日 18:44   No.196030
++ クォーツ (オリカ王子)…100回       
先の投稿も含め、話は散り散りになった虹の騎士団メンバーのそれぞれを語るものへ変化。
スポットが当たっていなかった辺境世界西区域の静けさが、小さな異変へと変わっていきます。

一方、ルカイの求めていた可能性は、この時から運命へと変わっていた。
コンクル・シオンがヘイムを殺したあの後、ルカイと同じようにセントラルタワーから離れていった虹の騎士団の面々。
その内、ルカイは前述の通り未知なるものを求めて海底遺跡へと旅立った。そしてこの2人、ボマーとチックもまた、セントラルタワー以外では唯一の当てとなる海底遺跡へと、『何者かに呼び寄せられるかのように』入っていったのである。そしてメデュールはといえば、あるアイテムを携えて西区域を彷徨っていた。

西区域は、全体の半分を占める広大な砂漠が災いして立ち入る者の少ないエリアである。とはいえ辺境世界として成り立つ前、古代世界という謎ばかりが残る空間だった頃はそれなりに文明が栄えていたらしく、それを証明するかのような古代遺跡が、砂漠地帯に数多く眠っているのである。メデュールは、携えるアイテムが示す遺跡を目指していたのだ。
「…ここか」
アイテムが示す反応が明らかに強い。今にも飛び込みたいかの如く、若干ではあるが遺跡の方に向けて震えている。このアイテムが示した遺跡に間違いない。メデュールはそう確信した。
「どうやら、ヘイム様は古代文明の『遺産』の1つがここにあると分かっていたようだが…。本当に、マトモに可動するシステムがあるのか?」
メデュールの疑問ももっともだった。そもそも、メデュールがこうして西区域の砂漠地帯へ踏み込んだのは、ヘイムの敵討ちの為の戦力として古代遺跡を調べる為だ。手始めに、かつてヘイムが設置した発信器に反応するように調整されたセンサーによって探知・確定した遺跡を調べることにしたのだが、この遺跡は道中で見つけた他の遺跡よりも風化やら崩落やらが酷い。とてもではないがまともなシステムが残っているとは思えない、廃墟とも呼べるシロモノである。しかし、メデュールはあくまでヘイムを信じていた。
「…いや、遺跡の具合など、どこも似たようなものだ…。ヘイム様を信じなければ、私の存在意義は失われてしまう」
既に『抹消』されてしまったことも知らず、自分が信じる思いのまま、センサーが鳴りやまぬ遺跡へと足を踏み入れた。

(118.0.119.186).. 2008年06月16日 20:28   No.196031
++ クォーツ (オリカ王子)…101回       
メデュールが入った遺跡は、ところどころにヒトデやフジツボといった海洋生物の無惨な干からびた姿が見られた。
遺跡そのものが周辺の大地よりもへこんでいるクレーターのような場所にあったことと、砂漠地帯の筈なのに貝殻が無数に転がっていたことから、どうやらこの遺跡は水の底にあったものらしい。しかも、どういう構造になっていたのか、海水が流れ込んでいたようだ。
「干からびてしまったオアシス…といったところか」
水、正確には海水が満ちていた頃はオアシスのような状態だったのであろう。それを示すかのように、どこを見ても海洋生物の亡骸が転がっているばかりなのである。
「さて、遺産は…向こうか」
センサーは反応を示すだけのものから地図のようなものになった。おそらく遺産のことを示しているであろうマークを目印に、地図を見ながら通路を進んでいく。そして辿り着いた部屋は、他とはあまりにも異質で、殆ど風化も崩落もしていなかった。
何万年も放置されていたにもかかわらず、辺境族も真っ青な超高度テクノロジーが、原型を留めたまま存在している。今でも誰かが利用しているのか、それとも初めから超長期間の放置或いは保管を想定されていたのか、どちらにせよ丹念に整備されていることだけは確かだった。
「遺産…この設備そのものとは言いにくいが、調べれば出てくるか。見たところ、何らかの実験室のような感じもしなくはないが…」
辺境族の極秘施設ですら、このようなどこか生物的な壁を持つ実験室など見たことがない。やはり古代文明のオーバーテクノロジーと考えるのが妥当なのだろうか。そんなことを考えながら調べていると、人間型の辺境族と同じくらいの大きさのものがすっぽり入りそうな巨大カプセルが目に入った。シェルターのようなもので閉ざされていて内部までは見えない。その台座近くにコンソールのようなものがあった。細かい形状は異質なものであるが、基本は変わらないようだ。
慣れた手つきでコンソールを操作し、調べていく内にシェルターの開放を意味する古代文字の文章が出てきた。迷うことなく解放するメデュール。そして現れたのは…。
「馬鹿な……人間……だと…?」

(118.0.119.186).. 2008年06月21日 05:21   No.196032
++ クォーツ (オリカ王子)…102回       
シェルターが開かれたことで分かったこと、1つは中に少女と思われるものが存在していること。もう1つは、それが収まっているカプセルが培養カプセルの1種であること。そして、それが明らかに『作られた生命』であることだった。
「確かに古代文明には謎が腐るほどある。しかし、こんなことが古代からあったというのか…」
メデュールが驚くのも無理はない。経緯などは違うにせよ、同じく『作られた生命』である彼には、今自分の目の前にある現実が受け入れられなかった。生命を『作る』ことが禁忌であることを騎士団中唯一知っている彼は、等しく禁忌と呼ばれるであろう産物を前にして驚くしかなかった。
確かに古代文明の『遺産』ではある。だが、それが禁忌の産物である以上、『遺物』とも呼べる。解放してはならない―そう思ってしまった。
もしヘイムがこれを見つけたのが創造能力獲得前で、これを見て生体兵器の研究に携わるようになったのだとしたら…。唯一、彼女の過去を教えられた彼は、禁忌を繰り返すことに嫌悪感を抱いていた。そして今、古代の禁忌が解き放たれることは、世界の混迷を更に深くするだけだと思った。彼が選んだ行動は――カプセルの破壊だった。
「古代の禁忌となれば、どのような危険性を秘めているか知れたものではない。今すぐにでも破壊し、テクノロジーを根絶やしにしてくれる!」
禁忌の産物である自分が、禁忌の産物である少女を殺める――そんな光景を作り出そうとしている自分に戸惑い、一瞬攻撃を躊躇ってしまう。戸惑いを払い、カプセルを破壊しようとしたまさにその時だった。
まるで破壊されるのを感づいたかのように、カプセルの中の少女が目覚め、カプセルから出てきたのである。しかも、破壊してではなく、すり抜けて。メデュールには、その光景が信じられなかった。カプセルをすり抜けて出てくる話など、当然ながら聞いたことがなかったからだ。
「あたしを殺そうとしたのは…あんた?」
少女がメデュールに対し、初めて言葉を放った。カプセルの中の液が濃すぎてよく分からなかったが、少女は水色の髪に青をメインカラーとした服を身に纏い、スパッツをはいている。そしていつどこから出したのか、2本の剣を持って構えていた。先程メデュールがカプセルごと殺す気だったように、この少女も自分を殺そうとしたメデュールを殺す気でいるようだ。言葉からも想像できなくはないだろうが、何よりもそう思わせるのは、それを敵だと認識するような鋭い目つきだ。命の危機を本能的に感じ取ったが故の行動であり、正当性は認められる。いくら古代の遺物とはいえ、それだけでは殺される理由にはならない。
ただ問題は、少女に関する情報があまりにも少なすぎることであった。名前などは勿論、戦闘能力も未知数である。目つきの鋭さがどんどん増していることからしても、戦うのは危険だ。
「ま、待て。取り敢えず落ち着け。確かに私はお前をカプセルごと殺そうとしたが…」
「それなら問答無用!」
メデュールの話を聞く気はさらさらないらしく、話し終えるよりも前に2本の剣をかざして少女は突っ込んでいった。

(118.0.119.186).. 2008年06月21日 06:08   No.196033
++ クォーツ (オリカ王子)…103回       
「待て!こちらの話を聞いてくれ!」
「うるさい!挨拶すらしないまま殺そうとした奴の話なんて、誰が聞くか!」
どうやらカプセル越しにメデュールの動作が分かっていたらしい。おそらく第六感辺りが優れているのだろうが、それを考えてもつじつまが合わない。メデュールが少女を殺す為にカプセルを破壊しようとした時、まだ目覚めてはいなかった筈である。目覚めたのは攻撃する直前の筈―構えていたところから悟られたのだろうか。
「そんな奴はこっちから殺してやる!何万年もの間カプセルに閉じこめられて、それでこんなところで殺されるなんて心外だから!」
「(殺すのは情報を頂いてからでも遅くはないだろうが…まずはこの攻撃の手をどうにかしなければな)先程は悪かった!あれは、ここにあるテクノロジーに嫉妬したが故に血迷ったからだ!」
「…?」
「それにだ、あの攻撃はカプセルを狙ったわけではない!その下にあるコンソールを狙ったのだ!開け方が分からなかったからな」
「…出してくれるつもり…だったの?」
「(かかった!)あぁ、そうだ。お前には、色々聞きたいことが、あるのでな」
メデュールがそう言い終えた直後、多数の魔力球が少女の背中に立て続けに直撃した。彼の必殺技『粛清の魔弾』である。先程の行動とは逆のことを言って嘘をつき、少女の心の揺らぎと共に攻撃の手がゆるんだところへ、不意打ちの要領で魔力球を打ち込んだのである。
「な…っ!?か、体が…動かない…」
「残念だったな、今打ち込んだ魔力球には、相手を麻痺させる効果があるのだ。ご丁寧に重ねがけまでしたのだ…当分は動けまい」
「く…、そんな…!」
「抵抗はやめておけ。元はと言えば、私に挑みかかったのが運の尽きだったのだ。大人しく、こちらの質問に答えてもらおうか」
「どうせ、質問が終わったら殺すんでしょ…!」
「…………そんなところだ」
体が動かない以上、勝負にすらならない。そして、お互い相手を殺そうとしている身だ。用済みになれば殺されることなど、すぐに分かった。死に対する本能的な恐れからか、少女の声は途中から震えていた。よく見れば泣いている。我慢こそしているようだが、一目瞭然ではある。
本当に殺してしまっていいのだろうか、今度は心から謝った方がいいのではないか、途端にそう思い始めたメデュールの心には、迷いが生じ始めていた。

(118.0.119.186).. 2008年06月22日 05:50   No.196034
++ クォーツ (オリカ王子)…104回       
「さて、質問タイムといこうか」
取り敢えず迷いは捨て去り、当初からの目的である情報収集の手段として、質問という名の尋問を開始した。5回も重ねがけした麻痺効果は、そう簡単には解除されないので安心しつつ。イテンはというと、麻痺の影響かへたれこんでいる。
「まず、お前の名前は?」
「…イテン」
イテンという少女は、そっぽを向きながらも質問には答えた。抵抗が無意味だと分かったからか。かまわず、メデュールは続ける。
「いつ、どこで生まれた?」
「最初からここだった。ここで生まれた」
「(やはり、作られた生命だったか…)
では、何故カプセルに閉じこめられていた?」
「生まれた時には白い服着た連中がいて、そいつらが『こんな平和な世では意味がない』とか『乱世の時代にこそ存在意義がある』とかぬかして、出したばかりのあたしをまたカプセルに閉じこめた。外の世界を見ることもない内に」
「(乱世の時代にこそ…?ということは、戦闘力を高められた遺伝子調整生命体だったか)
ここは、一体何の施設だ?分からないかもしれんが」
「ここは、遺伝子とか調整して命を作る実験施設。人造人間とかいうのかな、そーゆーのばっかり作ってるくだらない施設…。白服連中があたしに向かって『人間だけでなく、精霊すら人の手で生み出せるとは最高だ』とか言ってたっけ…」
ここまで聞いて、メデュールはあることに気づいた。メデュールは最初、イテンは人造人間だと思っていた。こういう技術では精霊は作れないと思っていたからだ。しかし、その考えを改める必要が出てきた。彼女の証言が正しければ、彼女は人の手によって作られた精霊。いわば人造精霊とでもいうべき存在となる。古代人が自らの心のままに作り、勝手に封印された、オーバーテクノロジーの犠牲者といえるのだ。
「では、最後の質問だ。心のままに答えろ。お前は生きたいか?死にたいか?そして、生きたいというなら、どうしたい?」
更に深くなった迷いを断ち切る為、決心の礎とする質問をした。イテンは俯きながらではあるが、ハッキリと答えた。
「……生きたい…生きたいよ…!ここから外に出て、今の時代を生きたいよ…!」
その声には、生命体の本能たる生への執着と悲痛な願いが混じっていた。最後の回答を得て、メデュールは決めた。
「そうか。聞きたいことは全て聞いた。もうお前には用はない。この施設、いや、遺跡にもな」
「…っ!」
メデュールは周囲に魔力球を、大きなものを1つだけ作り、掲げた。ついに殺される―そう確信したイテンは目をつぶり、魔力球は動いて―破壊した。イテンの背後にあったカプセルと、更にその後ろの壁を。大きくしたのは、外まで貫通させる為であった。思わぬ出来事に、イテンが戸惑う。
「ど、どうして?なんであたしを殺さない?」
「私とて鬼ではない。必要な情報を手に入れてまとめた結果、お前を殺すことには何の意味もないと分かった。そして、お前と等しく作られた生命である私の本能が怒鳴った。イテンを殺すな、生かせ、世界に溶け込む第一歩を踏ませろと。あとは好きにするがいい」
そう言うと、メデュールはさっさと立ち去ってしまった。その少し後、イテンは体が思い通りに動くのを感じた。麻痺効果がきれたらしい。もっとも、メデュールが麻痺効果を継続させる魔力を止めたからなのだが。ともあれ、イテンは立ち上がり、メデュールが去った方を見やる。
「……ありがとう…」
呟くようにそう言うと、逆の、彼が開けた穴の方へと走っていった。
この遺跡が突如爆発、崩壊したのは、イテンが遺跡を飛び出してから数分後のことだった。

(118.0.119.186).. 2008年06月22日 06:36   No.196035
++ ウェリス (オリカ王子)…108回       
これだけでも貼っておきます。
今後貼りに来れるか、ちょっと心配です;

一歩動くだけで変わる。
―生か死―
2人は動かぬままだったが・・・
「ぐっ・・・」
呻き声を上げ、ブロードが片膝を付く。
どうも頭部への一撃が強かったのだろう、先程の攻撃が限界だったのだ。
「小僧・・・さっさと俺に止めを刺すんだな・・・。」
流れる血を拭う気配も無く彼は続ける。
ガンタスは強くハンマーを握った。
―が、
知らぬ間にどさり、と音がしてブロードがうつ伏せになっていた。
―背中に血を流して。
「アマノジャク・・・貴様ッ・・・!」
薄れた意識の中で切った相手に口を開く。
「あーあ、残念。てめェ、もうちょっと強えぇって思ったのになー。悪ぃな。俺、雑魚には興味ねーんだ。」
その口に現れたのは恐ろしく残虐な笑み。
「―え・・・?」
唖然とするガンタスの横でグレンドルが食って掛かる。
「アマノジャク!お前、味方なのに何も思わないのか!大体、試合放棄じゃないか!」
「うっせーよ。雑魚を殺っても悪くはねぇだろ。」
信じられない。
雑魚は雑魚でも味方を裏切り、殺すとは―
グレンドルの瞳は怒りに揺れた。
「あーもー。んなに怒るなっての。―じゃ、お元気で。雑魚のブロードさんよ。」
アマノジャクは斧を振り上げ、迷う事無く振り下ろした。
鮮血が舞い、ブロードは消えた。
「アマノジャク・・・許さねぇ!ヴォルクの分、ブロードの分、俺が仇をとる!」
振り向いたアマノジャクには残虐な笑みが未だ残っている。
頬にこびり付いたブロードの鮮血を腕で拭う。
「あぁ?敵の仇とってどーすんだ?感謝しろっての。」
感謝だと?
敵とはいえ裏切って殺す事に感謝しろと?
ふざけている―
「敵、味方なんてどうでもいい!お前を許すわけにはいかないっ!」
「あっそ!んなら一生馬鹿げた事言ってろ!」
2人は構えをとった。
グレンドルはガンタスに皆の所に行くようにといい、2人は激しくぶつかった。

(220.213.108.48).. 2008年06月23日 17:05   No.196036
++ ウェリス (オリカ王子)…109回       
「お前はどうかしてる!味方を殺すなんて人間じゃねぇっ!」
「人間じゃない?―あぁ、そうだよ!俺は人間なんかじゃねぇんだよ!」
幾重にも渡り人を殺していったからなのか。
彼は意味の分からない事を言う。
―やはりどうかしてしまっているのだろうか?
「馬鹿げてるのはお前の方じゃないか!」
「あぁ!?ヴォルクやブロードのヤロウ見て何も思ってないのか?」
戦いつつ考えた。
ヴォルクとブロードの関連―
ヴォルクはスパイとは言えど、こちらに心を寄せた。
ブロードは違う。
としたら元はネヴィアの手下、という事か。
『いいや、それは違う。それがあいつに関連するわけが無い。』
ふと、先程のブロードの血が目に入る。
よく見ると、住人の1人か、倒れていた。
ぴくりとも動かない。
恐らく死んでいるのだろう。
『―あ!そう言う事か!』
その表情にアマノジャクも気付いたようだ。
「やっとお分かりか、お馬鹿さん?」
「あぁ。よく分かったぜ。」
ヴォルクとブロードに関連する物―
それは死体だった。
住民の遺体は疎らだが見つかる。
が、正反対に彼らの遺体は粒子となって消えていた。
何かの現象による物だろう。
それを一通りアマノジャクに話すと、2人の動きは止まった。
「大正解だなー。ってワケで、俺は人間じゃねーんだよ。」
「じゃあお前は一体何者なんだ!」
しつこい、と言いたげな目でグレンドルを睨む。
が、口を開いた。
「―お前の能力とかを使ったレプリカ。人工生命体だ。」
思わず息を呑んだ。
数々の人のデータを扱い、人工生命体を作り出す。
そんな「モノ」が目の前にいるということを。
「レプリカってのは、死んだら内部の乖離現象が起こる。まぁ、何のことかはサッパリだけど、そのせいで死体が無いんだ。どーだ?スゲーだろ!」
「はっ。レプリカって技術には正直驚いたけどよ・・・面白いじゃないか!」
その一言に彼はふっと笑う。
「殺ってやろうぜ!どっちが死体になって消えるかなァ!」
「上等だ!粒子になって空の彼方へ吹き飛びな!」

(220.213.100.41).. 2008年07月31日 14:28   No.196037
++ クォーツ (オリカ王子)…105回       
あくまで無理はなさらずに。
大丈夫、諸事情により1人でストーリーを完結させた経歴は伊達ではありません(何だそりゃ)
あと、2つ目の方の「人口生命対」は「人口生命体」の間違いでは?

さて、西の砂漠地帯の遺跡から外の世界への進出を果たしたイテンの行方はまた後ほど語るとして、何かに吸い寄せられるように海底遺跡へ入ったボマーとチックの様子をお伝えしよう。

「何かに呼ばれてるよなー、俺ら…」
「あー、ぜってーに呼ばれてるぜ、何かに」
ボマーが、チックが、「呼ばれてる」と呟きながら海底遺跡を彷徨う。
コンクルの逆襲によってセントラルタワーから脱出したこの2人、最初は中央区域の北側で身を隠していたが、コンクルの波動が消えると同時に、まるで入れ違いの如く発生した謎のパルスに導かれるようにして、海底遺跡に入ったのである。
しかし、明確な地図がないのは以前侵入したルカイ達と同様であり、パルスの発信源、即ち呼び声の主を求めて遺跡を彷徨い続けているのだ。
実はその波動にヘイム=シヴァの面影は全くない。つまり、彼らは虹の騎士団とは全く関係ない何かに呼ばれているのだ。当然、それは謎だらけである。
「にしても、一体何なんだろーな。オレらを呼び出すよーなヤツ」
「さぁな。ただ1つ分かってんのは、俺らはここでそいつを見つけなきゃなんねぇってことだ」
チックは勿論、ボマーとて抱いている疑問は同じである。何故、虹の騎士団というシヴァの操り人形的存在だった彼らを、このようなパルスを発してまで呼び出すのか。そもそも、虹の騎士団の存在は本来、関係者以外には秘密にされている。その存在を知っているというのは、一体どういうことなのか。この海底遺跡に、いつぞやのタイマーのようなはぐれ者がいるとでもいうのか。
「……ここだけパルスが強いぜ、チック」
「あぁ、どーやらアタリらしいな。とっととパルスの発信源さんとご対面といこーぜ」
とある部屋の奥、入り口同様に相当大きな穴が開いている。謎のパルスは、その穴から広がっている。つまり、発信源はその穴の奥となる。ボマーとチックは迷わず入っていった。

穴の奥には、他とは全く雰囲気の違う空間が広がっていた。まるで、突然宇宙空間に放り出されたような感覚に見舞われる特異な空間。実際、穴を出てからというもの、2人は浮きっぱなしだ。少し手を動かすだけでクルリと回ってしまう。どうやら宇宙ではないにしろ、無重力空間ではあるようだ。その空間を、謎のパルスが支配している。
「…ヨクゾ来タ、我ガ呼ビ声ニ誘ワレシ者達ヨ。私ハ、コノ時ヲ待ッテイタ」
どこからか、機械言語特有のカタコトな声が聞こえてくる。どうやら呼び声の主らしい。
「私ノ名ハ、『パルース・ペール』。『ツヴァイアドライ』ヲ抹殺シ、辺境世界ニ永遠ノ安寧ヲモタラス為ダケニ生マレタ。人ハ皆、私ノコトヲ機械生命体、モシクハ機獣ト呼ブ」
パルース・ペールと名乗ったその声の主は、ボマー達の目の前の空間を歪ませてその実体をあらわにした。機械生命体と呼ばれるだけあって、その姿はまさしく今時のロボット。額に2本の角を持ち、体の所々にあしらわれているクリアイエローのラインと背中の大きなリングが特徴的だ。

(118.0.119.186).. 2008年06月26日 15:24   No.196038
++ クォーツ (オリカ王子)…106回       
「アンタか、俺らを呼んでたのは。んで、なんで呼んだ?」
「別にオレらはツヴァイアドライとは関係ねーし、ここに来る理由も無かったんだけどなー」
「見ツケテ欲シイ。ソノ『ツヴァイアドライ』ノ幼生体、全部。私ハ、コノ空間カラ外ニ出ラレナイ。生体ハ少シ前カラ消エタ。ダカラ、後ハ幼生体ヲ全テ滅ボセバ、辺境世界ヲ脅カス存在ハ消エ失セル」
彼がボマー達を呼び寄せたのは、この特異空間から出られない自分に変わってツヴァイアドライの幼生達を見つけてもらう為だったのだ。チックが更に質問する。
「ちょっと待てよ。なんでツヴァイアドライはこの遺跡で引きこもってたんだ?理由が分からねーんだけど」
「『ツヴァイアドライ』ハ、コノ海底遺跡ヲ根城ニシテイタ。ココノ湿気ト魔力粒子デシカ、幼生ハ育タナイカラ。私ハ、ソノ根元ヲ潰ス為ニ送リ込マレタ」
ツヴァイアドライが伝説と化していた要因の1つである個体数の少なさは、ごく限られた条件下でしか幼生が育たないのが原因だった。
ツヴァイアドライの幼生は、大気中に漂う湿気と魔力粒子をエサにして成長していくが、魔力粒子が絶えず発生する空間は辺境世界では非常に限られたごく僅かな部分にしかない。その僅かな部分に更に湿気も十分という条件が加わると、更に限定されてしまうのだ。
そして、その非常に限定された場所こそが、この海底遺跡だったのである。
パルース・ペールは、その唯一ともいえる場所でツヴァイアドライを根絶やしにするべく、誰かによって送り込まれたのであった。
「逆にどーしてアンタはここから動けねーの?」
「遺跡ニアル魔力粒子ガ、私ノ機能ヲ著シク低下サセテシマウカラダ。チナミニ、『ツヴァイアドライ』ハ、コノ場所ヲ知ラナイ。ダカラ、オ互イ攻撃デキナカッタ」
ツヴァイアドライと、その天敵として何者かに制作された古代機獣パルース・ペールが、長き時代を膠着状態のまま過ごしてきた理由。それは、お互い打って出ることができなかった為であった。パルース・ペールは遺跡内部の魔力粒子によって行動を抑制され、ツヴァイアドライは彼の居場所を知らなかった。両者とも、攻撃するチャンスがなかったのである。
おそらく、何事もなければこれからも同じように時を過ごしていたであろう。しかし、ヘイムがシヴァへと変わる為にツヴァイアドライを取り込んだことで、それは突然終わりを告げた。戦うこともないまま、ツヴァイアドライの生体がこの世から消えることになってしまったのである。かといって魔力粒子が消えるわけでもなく、パルース・ペールは結局引きこもり状態から脱することはなかったようだ。
一通り回答を終え、パルース・ペールが2人に依頼する。
「改メテ、諸君ニ『ツヴァイアドライ』ノ幼生体ノ探索ト私ヘノ届ケ出ヲ依頼スル。地図ヲ渡スカラ、幼生体ヲ見ツケテ私ニ届ケルダケデイイ。ソレガ出来タラ、コノ遺跡ニ眠ッテイル埋蔵金ヲ差シ上ゲヨウ」
『埋蔵金』と聞いた瞬間、2人は目を「¥」にして高らかに宣言した。
『全力でお受け致しますッ!!』
かくして、ボマーとチックの『ツヴァイアドライの幼生捜索ミッション』が開始された。

(118.0.119.186).. 2008年06月26日 16:55   No.196039
++ クォーツ (オリカ王子)…107回       
ボマー&チック編、後半。
現代のみにく〜い大人達(ぇ)がしていそうな葛藤が繰り広げられます。

遺跡の地図をもらい、パルース・ペールの依頼遂行に乗り出したボマーとチック。依頼遂行の為に捕獲・連行するのは、伝説の凶悪モンスター・ツヴァイアドライの幼生。レーダーまではもらえなかったので、肉眼と気配で探すしかない。
「埋蔵金♪埋蔵金♪」
「幼生連行埋蔵金♪」
ボマーもチックも、報酬金が遺跡の埋蔵金であることにすっかり上機嫌。もとはといえば、埋蔵金の為だけに依頼を受けたわけであるが。
遺跡を歩き始めて数十分。何やら鳴き声のようなものが聞こえた。たとえて言うなら、見知らぬ人が通りかかって警戒する小型犬のうなり声といったところだろうか。2人は早速走る。
『まいぞ〜きぃ〜ん!!』
もはや、その思考は完全に金に目がくらんだ醜い大人である。今時の人間世界でいえば天下りを享受している政治家だろうか?とにかく、よい子には見せたくない光景である。
それはさておき、2人は丁度小型犬くらいの大きさの6本腕と4本足、狼頭の奇妙な生物がいた。もしこの時ルカイやフィン達がいたら、これがツヴァイアドライの幼生だとすぐに分かっただろう。ところが、何しろ成体と対面したことがない2人にはそれが何なのか分かっていなかった。
「……これか?」
「いろいろ変なところあるけど、これなのか?」
一応、ツヴァイアドライの噂は知っている。異形な姿をした大型モンスターで、6本腕と4本足の超攻撃的な存在だと。最初は、この奇妙な生物がその幼生だとは思わなかったが、その後の行動で確信することになる。
――噛んだ。それはもうおっかない形相で、近づいたチックに連続で噛みついたのである。なんとかボマーが引き離したが、その直後のチックの惨状は…「血だるま」とだけ言っておこう。
「こいつ!こいつがツヴァイアドライの幼生に間違いねーって!メチャクチャ凶暴じゃねーか!」
泣きながら本音をぶちまけるチック。しかしボマーは幼生を押さえつけながら、あることを考えていた。ツヴァイアドライの危険性についてだ。
「でも考えて見ろよ。子育て事情があるとはいえ、ツヴァイアドライはこの遺跡から出れないんだろ?だったら、なんでむやみに殺す必要があるんだ?殺したって得しないと思うんだが」
「埋蔵金!」
「そう…そう…コイツらをパルース・ペールに届ければ埋蔵金…だが…」

(118.0.119.186).. 2008年06月29日 14:21   No.196040
++ クォーツ (オリカ王子)…108回       
確かに、ここは考えどころではある。いくら凶悪なモンスターとはいえ、子育ての為にこの遺跡からは出られないのだ。
海底遺跡から出られないとなれば、必然的に辺境世界への被害は遺跡の存在によって抑止されていることになる。遺跡が崩壊すれば話は別だろうが、水圧に耐え続けて何百年と経過している。そう簡単には壊れたりしないだろう。それに、唯一の住処がなくなれば、絶滅している筈である。
「まだ何匹もいるだろうし、そんなおっかねぇの相手にしなくても、さっさと帰ればいいんじゃねぇのかな?あ、でも埋蔵金は欲しい…」
パルース・ペールはともかく、自分達にはこの幼生達を殺すようなことをして埋蔵金以外に得られるメリットはない。それどころか、無防備に近づけばほぼ確実に負傷するような相手だ。関わって得するようにも思えない。
埋蔵金か、それとも我が身か。辺境世界の中でも「底」という意味での辺境の空間で、ボマーは若干迷っていた。どうするべきか。
幼生は、とにかく逃げだそうと必至にもがいて暴れている。気を許せばすぐに噛まれそうだ。
「…………チック」
「ん?」
「……やっちまえ」
ボマーは、埋蔵金をとった。自分の「滅びの爆魔」でもいけそうだが、この状況でならチックの「電光痛刺」の方がよほど迅速で有効だ。噛まれないように気を付けながら、幼生の体をチックに向けた。「刺せ」と促すように。
「よっしゃ!埋蔵金〜!」
彼の「電光痛刺」が幼生の腹のど真ん中に見事に突き刺さり、幼生は悲鳴を上げ、沈黙した。

「オオ、私ガ探知シタ反応ノ数ト完全ニ一致シテイル。見事ダ、約束通リ、埋蔵金ヲ授ケヨウ」
結局、パルース・ペールの依頼は無事遂行されたのであった。金への執着が抜けきれない、ある意味で哀れな2人は、パルース・ペールにとっては格好の利用対象でしかなかった。とはいえ約束は守る。きちんと遺跡の埋蔵金を用意し、それをいかにも固そうな箱に厳重に入れた。
「んじゃ、俺達はこれで帰るぜ」
「あんたも、とっとと帰ったらどーだ?どーせ殺すんだろ?そいつら」
「ソウダ。私モ帰ルサ、コイツラヲ始末シタラ、スグニデモナ…。サラバダ」

こうして、ボマーとチックは埋蔵金を収めた箱を担いで遺跡を去っていった。その後、パルース・ペールの空間も消えていた。それとルカイが再び海底遺跡に入り込んだのは、ほぼ入れ違いともいうべきタイミングだった。

(118.0.119.186).. 2008年06月29日 14:56   No.196041
++ クォーツ (オリカ王子)…109回       
海底遺跡に入ったルカイの行方…は、現時点では執筆するかどうか未定です。
そろそろ新展開を考えなければ…。
今回は、メデュールによって西の古代遺跡から脱出したイテンの話。

「う〜、ここどこ〜?」
メデュールの計らいによって、数万年の時を越えて外に出てきたイテン。
だが、この世界の地図を持っているわけでもない為、遺跡が砂漠地帯にあったことも含めて、イテンは当てもなく彷徨っていた。
水も食料もなしに約10時間も砂漠を彷徨って平気(?)でいられるのは、やはり人工的に生み出された故であろうか。
脱出して1時間ほどで日が暮れたことも考えられる。砂漠の夜は冷えるのだ。
「は〜、さっさとオアシスとか見つけて休みたいな〜。ま、なんとかなるか」
自分が今置かれている状況を理解しているのかいないのか。ポジティブ…いや、楽観主義ともいうべき彼女の言動は、ある意味で逞しい。
そんな中、何やら「戦う音」が聞こえてきた。近くに誰かがいるのだろうか。いや、砂漠地帯故にサソリなどのモンスターの可能性もある。
「何だか知らないけど…行ってみよ」
ともかく、ここで突っ立っていても仕方ないと判断し、音がする方に走り出した。

「へっへ、俺の料理魂が燃え上がるぜぇ!」
「さっさ、ほいさ、さっさ、ほいさ」
「シギャー!」
コック帽を被った稀身族と、長い針が特徴的な時計型の生き物が、蛇やらサソリやら砂漠特有のモンスター達を次々と倒してゆく。
「ねー?何してるのー?」
そこへイテンがやってきた。コック帽を被った方が敵を倒しながら説明する。
「調理前の下ごしらえだよ!お嬢ちゃん、そこにいると危ないぞ!」
「むっ、あたしだって戦えるもん!」
そう言うと、イテンはどこからか2つの剣「トレントブレード」を取り出し、モンスターの内の1匹に切り掛かる。更にもう1匹。
今度は4匹の蛇型モンスターが同時に襲いかかってきた。だが、イテンは動じず、3歩ほど後ずさってから勢いよく飛び込んだ。すると、突然いくつもの刃のようなものによって4匹ともバラバラに解体された。まるで砂が海であるかのように、イテンは砂、正確には特殊空間に潜ったのだ。
飛び込んだところとは別な場所から、サソリ型モンスターが群がっている場所から飛び出てきた。この時にも、複数の刃がモンスター達をバラバラにしていく。
「どう?カリーシュダイブの威力!」

(118.0.119.186).. 2008年07月05日 03:40   No.196042
++ クォーツ (オリカ王子)…110回       
「おーおー、スゲーじゃんか、お嬢ちゃん!」
ただ潜って飛び出すだけで敵を倒せる―イテンの戦いぶりに、コック帽の男が感嘆する。こちらも残っていた分は全て倒したようだ。
「…さて、サソリ型が10匹に蛇型が12匹…。砂漠生活の食料には困らないな」
時計型の方が討伐数を確認し、すぐさま大きなボックスに死骸を放り込む。
「……そういえば、自己紹介してなかったね。あたしはイテン、あんた達の名前は?」
「俺はチェスト。爆裂料理人といやぁ、少しは有名なんだぜ。こっちはタイマー、俺の相棒だ」
「よろしくな、イテン」

「へー、モンスターを料理して、それを村人達に配るんだ…。ボランティアだねー」
「ぶっちゃけ、やることなくて暇だっていうからオイラが提案したプランなんだけどな」
ひとまず村まで案内してもらうことにしたイテン。その道中で、タイマーが今回のチェストの目的を話す。一方、そのチェストは腕を組みながら歩いている。
「ねー、どしたの?チェストさん」
「ん?あぁ、どんな料理作るのか考えてたんだ。何しろ、蛇だのサソリだのは未経験だからな」
料理の振る舞いの際、どんな料理を作るか。チェストは今回に限らず、料理を作る予定があればすぐ思索にふけるのだ。その負担にならないよう、荷物運びは最低限のものを除きタイマーの役目だ。
「…相棒、今回は『いつも通り』だとシャレになんねーからな。頼むぞ」
「分かってる分かってる。…頭じゃな」
「?」
チェストの料理の、ある意味で最大の問題点は、公共の場で晒してはいけない。それを誰よりも理解し、肝に銘じているタイマーは、何やら楽しそうに思索にふけるチェストに念を押した。
勿論、イテンにはよく分からなかった。

「わーい、わーい!村だ村だー♪」
辺境族の民の大半は精霊で、動物のような寿命という概念を持たない。人造とはいえ精霊の一員であるイテンは、子供系の人格を持っているようだ。初めて訪れた場所に、子供らしい反応。
そんなイテンに大人故の懐かしさを感じつつ、チェスト達は村長のもとに訪れた。
「おお、爆裂料理人殿。待っておりましたぞ」
「しっかし、味は絶品とはいえ問題を抱える相棒の料理を、よくもまぁ歓迎しましたね村長殿」
「ちょ、何言ってんだよ…!」
あらゆる面で念を押すつもりか、タイマーはわざとらしくこんなことを言った。勿論、チェストは動揺したが。一応自覚はあるらしい。
「ほっほっほ、既に村の衆には伝えております故、覚悟はできておりますぞ」
「あんたもノリノリか、村長…」

一方でイテンは、村人達からこの世界の地理などの情報を収集していた。この世界で生きていく以上、一刻も早く地理を理解しなければならない。この辺境世界の大まかな構造が簡単なのがイテンには幸いした。覚えやすかったのである。
「…おかげさまでこの世界の地理が大分理解できました。ありがとうございまーす♪」
村人にお礼を述べ、西区域と中央区域を繋ぐ一本線のようなルート上のオアシスを目指す。このオアシスを当面の間の根城とし、準備を整えてから改めて中央区域を目指すつもりなのだ。

「さーて、灼熱の時間が戻ってこない内に、オアシス目指してレッツゴー!」
それから翌々日の夜、砂漠の気温が下がったのを見計らってイテンは出発した。これからの自分を支えてくれる、根城となるオアシスを求めて。

(118.0.119.186).. 2008年07月05日 04:29   No.196043
++ クォーツ (オリカ王子)…111回       
取り敢えず1回分更新。
半ば廃墟と化したセントラルタワーのその後。

コンクルとシヴァの戦闘により壊滅的な被害を受けたセントラルタワー。その戦闘から数日後、現場に立ち会っていたフィンやテュールを筆頭に復旧作業が行われることになった。
辺境世界の統括において最重要拠点となるこのタワーを一刻も早く修復し、新たなリーダーを据える必要があるからだ。
特に問題なのは、コンクルやシヴァに代わる新たなリーダーだった。特に全体治安に影響が出なかったとはいえ、リーダーなくして民は存在しえないのが世の常だ。しかし、秀でて優れた指導者となりうる者が見つからず、難儀していた。

タワーの復旧自体は順調―せっせと機材を運びながら、テュールはフィンに尋ねた。
「なー、これからどーなると思う?リーダー選出の話」
「分からないなぁ…コンクルの時以上に重大な意味を持っているわけだし、気楽にはいけないよ」
「だよなぁ…」
フィンからの答えも芳しくない。選出は早急に行わなければならないが、これといった有力候補がいなくてはどうにもならない。タワーの復旧とは比べものにならない程の難題であった。
「いっそのこと統括形態を変えてみたらどう?」
予期せぬ声の割り込みに一瞬ビビるが、よく見ると自分達の間に入るように(正確には真横から見た視点であるが)稀身族がいる。どうやら、作業中にこちらの話を聞きつけたらしい。
「あー、まず聞く。お前誰?」
「あ、すいません。僕フィリーっていうんだ」
「フィリー?あぁ、そういえば東区域の方で少し会ったことがあったね」
さすがは辺境世界を股にかけるモンスターハンター、フィリーとも知り合いらしい。
「ん?ランストルはどうしたの?」
「ランストルは別な方で作業してるよ」
「ランストル?えーと、フィリーのダチか?」
「そう。分断災害の際に言葉を話せなくなっているが、コミュニケーションには困らないさ」
ランストルとの対面はひとまず休憩時間にということで、もう少し話を続ける。
「統括形態を変えるって…どういうこった?」
「今は東西南北と中央でそれぞれにリーダーがいるけど、その東西南北の代表リーダーがこのタワーに集まって統率を謀るってこと」
「なるほど…中央の人達も、元々は他の区域から移り住んだ者ばかり。違和感はないかもね」
北区域のヴォーテクスを始め、リーダーと呼ばれる者は他に3人、東西南北で1人ずつ存在する。そのそれぞれから代表を募り、その代表達がセントラルタワーで共同で政治を行うという案だ。
最近になってスクール(義務教育)を卒業したばかりの少年とは思えぬ画期的な理論を打ち出したフィリー。ここまで政治に対しての意見が固まるようになったのは、セイガ達と出会い、そこから辺境世界の政治について調べてみようと思い至ったのがきっかけであったりする。フィンやテュール、殆どの他人には知るよしもないが。

(118.0.119.186).. 2008年07月08日 05:18   No.196044
++ クォーツ (オリカ王子)…112回       
間が空きましたが、続きです。
辺境族の新たな歴史の第一歩、その布石となるお話です。ランストルも再登場。

「なるほどね、4人で共同政治を行えば、今までみたいな悪政はされにくい」
「最低でも誰か1人が静止役になって、それで悪政に歯止めがかかるってわけか」
フィリーが出した、今後の辺境世界の新たな政治形態。これは画期的なものだった。
東西南北の各地からそれぞれ1人ずつ、合計4人の代表をセントラルタワーに集めて政治を行ってもらうというものだ。これなら、現時点でも代表は4人いるわけなのだから、取りいれた直後から立て直すこともできる。
フィンやテュールの言うとおり、4人という共同形態ならば、他の何人かが暴走しても残りが静止役となって悪政を阻止できる。政治面では未熟さの残るこの世界では、リーダーを1人とするよりも複数にした方が政治的安全性は高くなる。
「どうかな?このプラン、結構いいと思うんだけど」
「この世界は技術では優れていても政治は未熟。静止役は必要になるだろうしね」
フィリーのプランは、リーダー不在で不安定になりつつある現状ではすぐにでも取りいれるべきだろう。フィンもテュールも、途中から話に加わってきたランストル他数名も一様に頷いていた。
そして、頷いていた内の1人がこんなことを言い出し、周囲を驚かせた。
「だったら、代表4人から出てきた意見をまとめる議長みたいなの必要だよな。その議長役、この翼の少年にやらせてみないか?」
「え、えぇぇぇぇっ!?」
翼の少年、即ちフィリーのことである。勿論、突然議長役に指名されたフィリーは驚くが、この発言には他の面々も驚いた。

(118.0.119.186).. 2008年07月12日 05:13   No.196045
++ クォーツ (オリカ王子)…113回       
「い、いくら提案者とはいえ…」
「まだ若すぎる、経験がなさすぎるだろ」
「いやいや、議長役の経験のなさという観点では皆同じではないか?」
「それをいうなら、もう少し大人の方が…」
たった1人の何気ない発言が議論を呼んだ。議長役は誰が務めるべきか?まさに急務といえた。そこへ、フィリーよりも幼い声が聞こえた。
「ハハハ、一体何を今更騒いでいるのだー!この僕の、北区域リーダーのヴォーテクスの存在意義はどこへいってしまうんだー!」
『ヴォーテクス(殿)!?』
場にいた者全員が忘れていた。「幼いのに大役」ということでは、以前からこのヴォーテクスがいたではないか。
いくら代々北区域のリーダーを務める家系の者とはいえ、その幼さは人間でいえば赤ん坊レベル。コミュニケーション能力の急激な発達ぶりがあるとはいえ、1つの地域のリーダーを任せるには幼すぎた筈だ。
「リーダー、もしくはそれに準ずる存在と共に成長していく世界か…。いいかもね」
まず考えを固めたのはフィンだった。肯定派だ。否定派もいたにはいたが、少数だったのと区域リーダー4人からの後押しとでフィリーが議長役を務めることになった。メモが異様に得意なランストルは、議長補佐として書記に任命された。
フィリーが議長役に任命された時、ランストルが万歳をしていたのは割と有名な話となる。

一方、オアシスを求め再び一人旅を始めたイテンは、砂漠にも生える特殊な木々の木陰に入って休憩していた。この木々の生命力は強い。
「しっかし、砂漠にもこんな植物が生えるなんて驚いたな〜。根が深いのかな?」
大体、植物は地中に伸ばした根から水分を吸収することで生きている。砂漠という極度に乾燥した世界では植物は殆ど生きていけないのだが、どうやらこの木々は特別らしい。イテンの推測通り、根が他の植物よりも深く伸びているのだろう。
「ふ〜、暑い暑い。オアシスまであとどれくらいだろ?話だとこの道なりに進んでいけばいいってことみたいだけど…」
チェストやタイマーと共に訪れた村の住人の話によれば、今イテンが目的地とするオアシスへは、村から西区域のターミナル(西区域の東端)までの道の通りに進んでいけば辿り着くらしい。偶然ではあろうが、丁度最短ルート上にあるベストな休憩地点として重宝されているのだ。
まさしく、そのオアシスは西区域の者達にとっての憩いの場、癒しの場となっているのである。

(118.0.119.186).. 2008年07月12日 05:52   No.196046
++ クォーツ (オリカ王子)…114回       
セントラルタワーの復旧作業と同時進行でもあるかのようにオアシスを目指して旅するイテン。
西区域は砂漠が陸地の半分以上を占める過酷な地であるが、不思議なことに日照時間が他の区域よりも短く、夜が長い。日照時間が短いというのは我々の世界でいえば北方の地の傾向なのだが、辺境世界はどうにもそのバランスが狂っているらしい。地下という、全般的に冷えるような地にて発達した世界だからかもしれないが、とにかく特殊な地であることは確かだ。
今も昔も、この西区域は「探検家のキャンプ場」と呼ばれているが、これは砂漠地帯に眠る無数の古代遺跡を求めて、多くの探検家が長期活動用の物資と共に居住エリアを構える為である。今イテンが目指しているオアシスも、その探検家の内の誰かが発見したものだ。
おそらくは、ダイボウケンらアドベンチャーチームもこの地を訪れたことがあるだろう。彼らはトレジャーハンターなのだから。独立行動中のランサーとズバーンに関しては、今この地にてプレシャス(危険度が認められる特殊物質)を探して遺跡を渡り歩いていることも考えられる。

「道なりに進めば怪物も襲ってこないって言ってたけど、ちょっと離れると迫ってくる…。この道に何か特別な仕掛けでもあるのかな?」
以前戦ったサソリ型や蛇型の他、トカゲ型やサボテン型までそこら中をうろついている。五感云々でいうなら普通に射程圏内にいる筈なのだが、何故か『道』から3〜4メートルぐらいまでなら離れていてもモンスター達は襲ってこない。
そのことを不思議に思いつつ次の木陰を目指して移動していると、暑さ対策として砂漠の住人が持つローブのようなものを身に纏った鶯(うぐいす)色の稀身族がイテンに挨拶してきた。
「やぁ、水色のお嬢さん。君も旅の人かい?」
「こんにちわ。そうだけど、あなたは誰?」
鶯色の稀身族、彼から放たれる妙なオーラは不思議とフレンドリーにさせてくれる。彼自身もフレンドリーで、とっつきやすい。
「私はローレル、世間は私を『鶯色のフレンドリーな旅人』と呼んでいる。君は?」
「あたしはイテン。まだこの世界に馴染んでないけど、馴染める足がかりになるような場所を探して旅をしてるよ」
「(ほう、見たところ誕生から何万年も生きていそうなエネルギーを感じるけどね。まぁ、人には誰しも『言いたくない秘密』があるから放っておくとしよう)どこか目指す当てはあるのかい?」
「う〜んとね、この道なりに進んだところにオアシスがあるらしくて、ひとまずそこを最初の目的地にしてるんだ」
ローレルはここまで聞いて、表情を変えた。何やら歓迎の意を示すような感じだ。
「あのオアシスか…。あそこはいいところだよ。休憩地点としての不足の無さはいうまでもない。そのオアシスは私がリーダーとなって、他とはかわった暮らしを営んでいるんだ。他に当てがないみたいだし、来てみるかい?」
「オアシスで暮らしてるの?いいな〜!行く行く!もしかしたらそこの住人になっちゃったりして〜♪なんてね」
「ハハハ、その時は歓迎するよ。何しろあのオアシスに住む人達は、君と同じように『言いたくない秘密』があって独りぼっちな人達だしね」
「…え?」
「積もる話はオアシスでしようじゃないか」
「あ、あぁ、うん…」
イテンはローレルが話したことが気になったが、とにかく日差し全開の砂漠地帯で立ち話というのはよろしくない。まずはオアシスを目指し、そこで改めて詳しく尋ねることにした。

(118.0.119.186).. 2008年07月12日 06:56   No.196047
++ クォーツ (オリカ王子)…115回       
鶯色の旅人ローレルと出会い、彼の発言に疑問を抱いたイテンは、彼と同行し、遂にオアシスに到着した。かなり小規模ではあるが、中央の湖を囲むように小さなテントのようなものが点在する、ちょっとした集落となっている。これも辺境世界という影響なのか、このオアシス周辺だけは日差しが他の区域のものと変わらない。まさに集落を設けるにはうってつけであった。
「わぁ〜、ホントに集落がある〜!みんな、ここで暮らしてるの?」
「そう。ここにいる者達は、君と同じくワケありな人ばかりで、他に居場所がない故に砂漠を彷徨っているところを私が招き入れたのだ」
「…でさ、なんで…」
「おっと、そこから先は私のテントで話そう」
そう言うと、ローレルはイテンを自分のテントまで案内し、招き入れた。他のテントとは違い、彼のイメージカラーである鶯色のテント。内部は座布団とちゃぶ台、あとは寝袋だけというシンプルな構成である。もっとも、テントなのだからシンプルにせざるをえない感はあるのだが。

「さて、君がかねがね疑問に思っているであろう、何故私が君をワケありな者と知っているか。それを教えてあげよう」
「そうだよ、初対面の筈なのにいきなりワケありって認定してるし。…そうなんだけど」
「私はかれこれ100年はこの世界で、この砂漠の地で生きている。砂漠はワケありで孤独にならざるをえない悲しき者達が彷徨う世界。私は孤独な者は捨て置けない性分でね、特に君のような、世界に出てきたばかりの者はほっとけないんだ」
「それで、挨拶して、事情を聞いて、それでこのオアシスに連れてって衣食住の問題を解決してあげてるってこと?」
「その通り。そして、今みたいな集落ができるくらいにまでなると、本能的に「ワケありだな」って分かってしまうのさ。それに、この辺境世界の生き物っていうのは、内包エネルギーによって生きてきた時間を年単位だが察することができる。君はもう何万年も生きている筈なんだが、どうにもこの世界のことを知らない。そういったことを考えてみたところ、君もワケありだと分かったわけだ」
「ふ〜ん…。じゃあ、あなたは物知りさんなの?」
「物知りっていったって、こういうワケあり事情ぐらいしか詳しくないさ。この砂漠についてはよく知っているけどね」
「あんなただっぴろい砂漠のことを?」
「モンスターに出くわしやすいから、正規ルートを外れて歩くのは稀だがね」

(118.0.119.186).. 2008年07月13日 05:54   No.196048
++ クォーツ (オリカ王子)…116回       
「正規ルート…?それって、この西区域っていう場所の砂漠地帯ぜーんぶにあるの?」
「この砂漠にも、一応人が築き上げた文明があった。しかし、ある時、この西区域をすっぽりと覆い隠すかのように巨大な黒い雲が発生してね。この西区域に残っている伝承によれば、『空は闇に覆われ大地は震え、栄えた文明の大半は滅び、その滅びが集まって広大な砂漠が生まれ、やがてそこは滅びの地と呼ばれるようになった』という」
「元々は大きな街とかあったってこと?」
「そう。そしてその名残は多くの古代遺跡だけでなく、かつて栄えていた街と街を繋ぐレールのような道としても残っているんだ」
「レールのような……。あ!もしかして、砂漠にラインを引くかのように伸びていたアレのことなの?あたし達がここに来るまでに辿った…」
「その通り。正規ルートは何やら特殊な技術によって作られたらしく、どんなに砂嵐が吹き荒れようが砂に埋もれたりしないんだ。だから、西区域を横断するように太く長く引かれた正規ルートは、文字通り道しるべになってくれるんだ。その途中で古代遺跡や街だったと思われる跡がいくつも見られることから、人々は『滅びの抜け道』と呼んでいるんだ」
「そうなんだ…。古代遺跡…滅びた文明…そうだ!ねぇ、ローレル。頼みがあるんだけど…」

荷造りを終えたイテンが、ローレルに見送られながらオアシスを去っていく。その先には砂漠が広がっている。しかも、来た道を戻るように彼女は移動しているのである。
ローレルは、そんな彼女を見送りながら、その前の話を思い出していた。

(118.0.119.186).. 2008年07月19日 06:27   No.196049
++ クォーツ (オリカ王子)…117回       
「…え?発達しすぎた文明を持っていた古代遺跡に行きたいって?」
「うん」
彼女から突然出された頼み事は、滅びていった文明の中でも特に高度な技術を持っていた文明の者達によって築かれた、砂漠の真っ只中に存在するであろう遺跡に行きたいということだった。
「しかし、一体どうしたというんだい?正規ルートから外れれば、たちまちモンスターに襲われることは君も知っているだろう?」
「それは、そうなんだけど、でも、あたしみたいに何の罪もないのに遺跡の中で閉じこめられてる子がいたらって思うと、なんか、イヤなんだ」
「ふーむ…。つまり、君みたいに遺跡に閉じこめられている者を助けてあげたい。そういうことなのかい?」
「できたら、そうしてあげたい」
オアシスで暮らす者達は、皆ふれあいという温もりの中にいる。もし他に、自分と同じように遺跡に閉じこめられたまま時を過ごし続けている者がいるなら、その者達にもこの温もりの中に溶け込んで欲しい。それがイテンの願いだった。
「…………よし、分かった。なら、私は君の為にできることをしてあげようじゃないか」
「ホント!?」
「あぁ。まぁ、できることはせいぜい荷造りぐらいだがね。しかし、遺跡を探すというなら大事なものがある。それを君の荷物に加えておこう」
そう言うとテントの中にあった工具箱のような箱から「大事なもの」を取り出した。見たところ、あまり宝石としての値はなさそうな石である。
「…何ソレ?」
「これは『プロゥブストーン』といってね。ここら辺の古代遺跡には文明レベルごとに共通する発信器のようなものがある。このプロゥブストーンはその中でも最大のものが放つ信号をキャッチすると点滅するようになる。その点滅が最も速いところには、この石をセットすることで遺跡への入り口を開ける台座がある筈だ」
「じゃあ、この石を持っていけば…」
「ただ探すよりは圧倒的に早く、高度文明を誇った遺跡を見つけられるだろう。しかし、そういった遺跡に限って、正規ルートから大きく外れることになる。道に迷わないように気をつけて移動しなきゃダメだぞ」
「分かった。ありがとう、ローレル!」

「…彼女みたいな境遇のワケありさんが、他にどれくらいいるのかね」
高度文明ならば必ず彼女みたいな者がいるというわけでもない。おそらくハズレもあろう。それを承知の上で、イテンは強く砂漠行きを志願した。モンスターに襲われないことを祈りつつ、彼女を送り出したローレルは、自分のテントへ戻っていった。

(118.0.119.186).. 2008年07月19日 06:54   No.196050
++ クォーツ (オリカ王子)…118回       
そろそろウェリスさん来なくなって1ヶ月経つなー…なんてほざいてるような神経ではなく(ぇ
今回は、辺境世界の新たな歴史の第一歩が始まるお話。ヴォーテクス以外の3人のリーダーもようやっと(?)登場です。

新たな政治体制も整い、ようやく今後の辺境世界の方針を決める会議ができるまでになった。損傷の激しかったセントラルタワーも、民衆が一致団結して作業に取り組んだことで予定よりも早く修復が完了している。会議はこのセントラルタワーの最上階、「王の回廊」改め「文殊の回廊」で行われるようになったのである。
各区域のリーダー4人が議長役であるフィリー進行の下、方針や税制などを話し合うのが新しいルールだ。フィリーがランストルと共に少し待っていると、4つの扉の内の1つが開いた。その扉は、北区域の代表が使うものだ。
「やぁやぁ、フィリー議長。初の大仕事だね」
「まったくだよヴォーテクス代表。プランを打ち出したまではいいけど、まさかそのまま実質上の最高リーダーの役を任せられるとは夢にも思ってなかったからね」
談笑していると、今度は南区域側の扉が開いた。その奥から、左手に本を持ち、袖の短いコートに身を包んでいる、大人しそうな少女が現れた。
「初めまして、新しく南区域のリーダーとなったラエルという者です。よろしく」
「よろしく」
「うん?新しく…って、じゃあ…」
「えぇ…前のリーダーだった人がモンスターハンターになって世界中を旅するようになったので、私が新たな正規リーダーになったの」
フィリーが挨拶を返し、ヴォーテクスがラエルという少女に質問する。話を聞く限りでは、なんとも先代南区域リーダーは奔放な人にしか思えないのだが、実はその人はフィンなのであった。フィンであると知ったなら、フィリーはどれくらい動揺するかはさておき。
次は東区域側の扉が開く。現れたのは、袴と着物…と、なんとなく巫女を彷彿とさせるが、それはあくまで服装の話。少年のようだ。
「どうも。東区域リーダー・ヘシオ、只今到着です。皆さん、お見知り置きを」
「よろしくね、ヘシオ代表」
間髪入れず、西区域の扉も開いた。現れたのは、青いシルクハットとマントが特徴的な、全身黒づくめの妙な存在。いわゆる白黒キャラだろうか。
「おや、どうやら最後になってしまったようですね。私は西区域リーダーのコトヌシ。皆様、今後もよろしくお願いします」
「よろしく。さて、これで代表は全員揃ったみたいだし、会議を始めるよ」
東のヘシオ、西のコトヌシ、南のラエル、北のヴォーテクス、そして彼らをまとめる議長であるフィリー。新体制での初会議が今、始まる。

(118.0.119.186).. 2008年07月20日 04:49   No.196051
++ クォーツ (オリカ王子)…119回       
「さて、まず何よりも先に解決しておきたい議題は、やはりこの世界の今後の方針だ」
議長であるフィリーが進行役。今までに彼が見せたことのないような真剣な顔で、第1議題を打ち出す。この議題は、同じ民なら誰でも思うことそのもの。まずコトヌシが反応を示す。
「最近、何やら不穏な噂がある世界が多いと聞きます。余所の世界を侵略しようとか、滅ぼしてしまおうとか…。そんな噂が流れないような世界にする、それが大前提だと思いますね」
「ふむふむ、月光世界へ進出したアドベンチャーチームの報告書にもそんな記述があるし、それが第1目標かな?」
コトヌシの意見にヴォーテクスが納得し、今度はヘシオがこんなことを。
「そういえば、この辺境世界にもそんな不穏な噂が聞こえてくるよ。以前リーダーだったコンクル・シオンが余所の世界からの侵略者だったとか、そのコンクル・シオンが辺境世界の民を使って月光世界を侵略しようとしていたとか」
嫌な意味で辺境世界の歴史を変調させたコンクルの話が上がってきた。そこへラエルが、本で何か調べた後で発言した。
「そのコンクル・シオンのことなんだけど、私の持ってるこの本に情報があったの。彼は、今の闇月族の独立侵略者だったらしいの。しかも、この世界の禁忌に触れたというヘイムとも関係があったという話よ」
今は亡き存在であるが、話題になるといつも戦慄が走る。コンクルという存在は、辺境世界の民に危機感を根強く植え付けていたようだ。ラエルが話を続ける。
「それで、コンクル・シオンはヘイムに生体兵器の研究をさせていたけど、その途中でヘイムは禁忌に触れて、それ以来彼からは離反したみたい。うちの諜報員達が調査しているんだけど、最近はコンクル・シオンもヘイムも存在しないって噂が流れてる。本当なのかは分からないけど…」
噂とはいえ、その恐怖の的が2つとも存在しないといわれている。それだけで、場の空気から戦慄や緊張は消えた。フィリーはしばし考え込み、
「……うーん、もしラエル代表の知っている噂話が本当なら、いったいどうして存在しなくなったんだろう。…って、ちょっと待って」
『?』
思わず頭に「?」マークがつく代表達だが、フィリーは真っ先にツッコまなければならないであろうことを口にした。
「なんか、話が『方針』から『人物情報』にズレてるよ?どこから脱線したのかは敢えて言わないけども」
『しまった!!』
思わず声を揃えて同じことを言う4人。どこから脱線したのか―可能性が高いのはラエルだが、その根本という意味では、コトヌシも怪しい。フィリーがどっちを原因と見なしたかは不明である。だが、こんなハプニングが場の空気を和ませてくれた。ラエルが話を本題に戻す。
「え、えーと、取り敢えず本題に戻すわね。今後の方針ってことなら、コトヌシ代表が言ったものでいいと思う。付け加えるなら、この世界と他の世界を繋ぐ転移ポイントを調査する組織を編成することを提案するわ」
「調査組織…か。その根拠は?」
フィリーが組織編成の必要性の根拠を尋ねる。ラエルはこう答えた。

(118.0.119.186).. 2008年07月20日 05:33   No.196052
++ クォーツ (オリカ王子)…120回       
「ヘイムはまだこの世界の住人だったと分かるとして、コンクル・シオンって明らかにこの世界の住人とは違う出で立ちや雰囲気だったし、実際にそうだって分かったの。でも、一体どこの世界からここに飛んできたのかまでは分かっていない。だから、それを解明して、再発防止策を打ち出せるような状況にしたいのよ」
「ほほう、再発防止にはまずコンクルの謎を追え…か。なかなか面白そうじゃないか。僕は北区域代表として、ラエル代表の提案に賛同する」
「東区域代表として、こちらにも異存はないよ」
「私も、西区域代表として同じく」
「となれば、それで決まりだね。不穏な噂が流れないような世界にする、コンクルの出身世界を突き止める。他に何か提案はないかな?」
初の大仕事だが、きっちりと進行役を務め、議長らしく振る舞っている。フィリーは他の提案があるかどうか尋ねるが、代表4人からは特に何も出なかった。締めくくりも議長役の務め、フィリーがきっちりと締めくくる。
「では、今後の辺境世界の方針は、最重要目標として『不穏な噂根絶』、また『転移ポイントの調査』を第2方針として取りいれる。賛同する者は起立願います」
その言葉の直後、出席していた者の全てが起立した。提案が認められたことを意味する。
「…満場一致により、このプランを世界方針として定める。尚、第2方針であるポイント調査の為の調査隊は、各区域のリーダーが中心となって編成すること。本日はこれにて解散!」

その数日後、各区域のリーダーによって編成された転移ポイント調査隊が中央区域に一旦集まり、出発式が行われた。その後、各方面へと4つに分かれて調査隊が活動を開始したのであった。

(118.0.119.186).. 2008年07月20日 06:00   No.196053
++ クォーツ (オリカ王子)…121回       
えーと、確かオリカ王って130回でしたっけね。知らん内にそこに近づいているので驚き。
今日は1つだけおいていきます。

イテンと出会い、彼女が外の世界へ出ていくきっかけを作ったメデュール。
彼女と出会った遺跡は、彼によって破壊されたのである。さて、その後彼はどうしているのか?
今回は、そこに少し触れてみることにしよう。

「…ここも特になし…ハズレか」
遺跡を置くまで調べ、それでも収穫がなかったと知るとさっさと出ていく。そして、リモコンのようなもののスイッチを入れた。
すると、さっきまでいた遺跡が爆発、完膚無きまでに崩壊したのである。
「まったく…センサーさえ無事ならこんなことなどせずに一直線だったものを…」

彼はあの後、次なる遺跡を求めてセンサーを頼りに進んでいる途中、多数のモンスターに襲われたのである。なんとか倒し、振り切ったものの、何回か攻撃を受けた。その時、センサーが壊れていたのであった。
そしてその後はしらみつぶしに遺跡を回り、収穫がないまま爆破し続けているのだ。

「むぅ…これでは、ヘイム様になんとお詫びすればよいやら…」
既に回った遺跡の数は10を越えるが、それでも大した収穫はない。ただの遺跡破壊者でしかなくなっている。それでも彼は諦めず、砂漠を彷徨いながら力を求める。彼が誰よりも慕うヘイムが、既に亡き者になっていることを知らずに。

遺跡は未だに山ほどある。おそらくは誰も入ったことのないものもあるだろう。爆破用の機材も尽きた。遺跡に入ったところで、収穫がなければ、手ぶらで何もしないまま出ていくしかない。
メデュールの思考は、もはやそこまで状況を理解できる領域にはなかった。ヘイムへの成果の献上に焦るばかりでいる内、何故自分がこんな果てしなく広い砂漠に入ったのかさえ見失ってしまったのである。彼はもはや、砂漠を彷徨う以外に何をするわけでもなくなっていた。

主への成果の献上、それだけが頭に残り、他は何一つ忘れてしまった抜け殻のような存在へと変わり果てた。ヘイムによって与えられた、唯一の不老不死の体は、ただ砂漠を彷徨うだけとなった。
もはや存在しない主の為に砂漠を彷徨い続ける彼が、他の誰かの前に姿を現すことはなかった。

(118.0.119.186).. 2008年07月21日 06:27   No.196054
++ クォーツ (オリカ王子)…122回       
本日も1本。
夏休みに入ったものの、始末しなくてはならない野暮用が多くて実感がないです。

果てなき砂漠、その中をある光を頼って進むイテン。ローレルからもらったプロゥブストーンが、高度文明の遺跡を見つけたのである。
「点滅が速い…。ということは、この近くなのかな」
ローレルの話によれば、最も速く点滅する地点には、入り口を開く台座があり、そこにプロゥブストーンをはめ込むというのだが。今のところ、そのような台座らしきものは見当たらない。
「もっと向こうかなぁ…」

点滅速度に注意しつつ、更に進む。すると、岩がまるで円を描くように置かれている場所に出た。よく見ると、円の中央に1つだけ岩がある。
「んーと……あ!点滅が凄く速い!…あれ?この岩、真ん中にくぼみが…。しかも、プロゥブストーンとそっくり」
くぼみにプロゥブストーンを重ねてみると、丁度ピッタリな大きさだった。そこで、くぼみにプロゥブストーンをはめ込んでみる。
すると、突然台座が回り、地響きが起こった。更に、地面から大きな建造物が現れたのである。それはまさしく、遺跡そのものであった。
遺跡が出現し、入り口に招くように階段が出現すると、台座は回転をやめ、プロゥブストーンが勝手に台座から抜けてイテンの手元に戻ってきた。
「…っと。勝手に抜けて戻ってくるなんて…。不思議な石だなぁ…。…そうだ、遺跡に入ろ」
プロゥブストーンが不思議なことに数秒の間意識が奪われたが、当初の目的を思い出し、プロゥブストーンに関する詮索は後回しにした。
イテンが遺跡に入ると、まるで他の侵入者を拒むかのように階段が消えた。さながら、イテンがその遺跡の主でもあるかのように。

その光景を、もはや抜け殻と化したメデュールが呆然と見つめていたが、イテンは気づくこともなかった。遺跡の方に意識が向いていたせいか、或いは彼の気配が薄れていたせいかもしれない。

(118.0.119.186).. 2008年07月26日 05:33   No.196055
++ クォーツ (オリカ王子)…123回       
今日は2本。
そろそろ、宿題にも手を付けなければ…。

プロゥブストーンによって導かれ、発見した遺跡の中は、壁一面に古代文字がちりばめられていた。何かを伝えるかのように古代文字が羅列されている遺跡の通路を、イテンは奥へ奥へと進んでいく。特に何かを考えて奥へ進んでいるわけではなく、本能的に動いているだけだ。しかし、この本能が遺跡最深部の何かに呼び寄せられているとは、イテンは気づいていなかった。

「……あいつは…確か…」
一方、その遺跡の外では、半ば放心状態のままで生きているメデュールが麻痺した思考を巡らせていた。そう、確かにあれは見た覚えがある。
「…あの遺跡で会った女…確か…イテン…といったか…」
言葉を羅列していくことすら、今の彼には大仕事である。カタコトに近い状態ではあるが、その意図はなんとか掴める。イテンのことをより深く思い出そうとしているのだ。
「…………遺跡の中で…カプセルを見て…そこから…出てきて…私が…私が………」
ここまでしか記憶が繋がらない。培養カプセルから出てきたイテンに対し、自分が何かしたことまでは覚えているが、肝心の"何をしたのか"が思い出せない。記憶が引き出せない。
「………………私は………何を………?」
そう呟いた時には、既にあらぬ方向へと移動し始めていた。遺跡へ入ることができないことと、思考を巡らせるだけの余力が尽きたことで、彼は遺跡から離れていってしまったのである。再び、放心状態のまま、抜け殻のままで砂漠を彷徨い続ける時間へと戻っていった。
思考を巡らせ始めてからそれが終わるまで、約20分間のことであった。

「…ふへぇ〜、文字とか記号とかばっかりで、何て書いてあるのか全然分かんないや」
遺跡の一本道となっている通路をただただ進んでいたイテンだが、途中で踊り場のような場所に出た。そこからいくつかルートが分岐している。そして、そのそれぞれのルートへの入り口に扉があり、それを開く手掛かりを求めて、近くに設置されている石版を見ていた。しかし、イテンが古代文字などを読める筈もなく、結局は石版とにらめっこするだけで時間が過ぎていった。

(118.0.127.84).. 2008年07月28日 16:51   No.196056
++ クォーツ (オリカ王子)…124回       
「ん〜、結局どうすりゃいいのかなぁ…?」
にらめっこだけしていてもらちが明かない。そんなわけで、石版をつついたり上から押したり、扉の近くの壁や床を叩いてみたりしてみたが、それでも手掛かりは得られない。ただただ、時間が過ぎていくばかりである。
「プロゥブストーンが使えるわけでもないし、ここでお手上げなのかな〜…?」
半ば諦めかけ、階段を上ったところにある扉の近くの石に座り、プロゥブストーンを扉の真ん中に当てて遊び始めた。ところが、当てると同時に扉が光り、開いた。
「……うっそ〜ん…まぁ、いっか!」
持ち前のポジティブシンキングであっという間に考えを変え、扉の奥へ進んでいった。

扉の奥へと進み、しばし通路を歩いた後、踊り場と同じくらいの広さの、中央の台座以外に何も無さそうな部屋に出た。やはり、この部屋の壁にも古代文字が羅列されている。
「ふー、やっとそれっぽい感じのところに着いたなぁ〜っと。さて、なんかあるかな?」
まず怪しいのは、やはり部屋の中央にある台座しかない。高くそびえ立ち、階段で登っててっぺんまで行く。そのてっぺんには、遺跡が出現した時と同じように、プロゥブストーンをはめ込むのであろうくぼみがあった。迷うことなく、背負ってきたリュックからプロゥブストーンを取り出し、くぼみにはめた。
「……何コレ?」
はめたことで少し揺れ、その後プロゥブストーンを押し上げるような感じで出てきた丸い物体を見つめ、思わず首を傾げた。だが、それだけで終わらせるにはもったいないと考え、丸い部分を支える棒が刺さっている台座のスイッチらしきものを押してみた。すると、部屋の中が暗くなり、物体の丸い部分から光が出た。その光が、更に三日月型の影を映す。音声記録装置の一種のようだ。そして、メモリーに残されているであろうメッセージを語り始めた。
《この世界の救世主がこの装置を見つけることを祈り、このメッセージを記録する。
我々ルナ族は今、非常に危険な状況に陥っている。空は闇に覆われ大地は震え、風さえもよどみ、闇から絶え間なく落ちる雷はもはや嵐といってよい。我々は月の魔力を用いて文明を、技術を発展させてきたが、この状況を打破できる術は何一つない。相手はまさに天変地異、世界に生きる小さい存在でしかない我々がいくら集まろうと、決して勝てる相手ではないのだ。
よって、我々は最後の望みをこの砦に託し、ありったけの記録と技術、そして多くの犠牲を出しながらも守りきった唯一の子孫を、砦内部の3つの台座の間に残す。
どうか、このメッセージを聞いた者は、残していった子孫を大事に育ててほしい。ルナ族最後の生き残り、名は『レミア』…。そして、その守護者たる月形の魔法武器『クレセン』…。それらが保管されている部屋は、砦の踊り場から中央の扉を開いて進んだ先にある…》
ここまで語ったところで、メッセージは終わり、記録装置から光が失われ、部屋は元の明るさを取り戻した。記録装置は、まるで使命を果たしたかのように、再び台座へと戻っていった。そこに残っているのは、押し上げられていたのが下がってきたプロゥブストーンだけであった。

(118.0.127.84).. 2008年07月28日 17:41   No.196057
++ クォーツ (オリカ王子)…125回       
新キャラが登場しますが、ブログの方での更新ペースの都合上、解説は少し後で。
本日も2本更新。

「やっぱり、いた…!あたしと似たような境遇の子が!」
高度文明を持つ遺跡を集中的に探すことにしたのは、そもそも自分と同じように何かに閉じこめられたまま時を過ごしている者を解き放つ為だ。
別に必ずいると思っていたわけではない。できれば、そのような存在は少ないものであってほしいと思っていた。だが、最初に見つけた遺跡でいきなり遭遇した。イテンとしては複雑な心境だ。
「……なんかハイペースな気がしなくもないけど、ほっとけないし、行こう」
だが、いるというのなら放っておく気はさらさらない。この遺跡で眠り続けるルナ族最後の生き残り、レミアに会うべく踊り場まで戻った。

「えーっと…踊り場の中央の扉だったよね」
踊り場の中央から3つの扉を見やる。扉は問題なく見つかった。だが、問題は開く術だ。
「さっきはプロゥブストーンをくっつけたら開いたよねぇ……こうかな?」
もしもこの遺跡そのものがプロゥブストーンに対応するものなのだとしたら?そう思い、イテンは扉にプロゥブストーンを当ててみた。すると案の定、扉は開いた。
「やっぱりね。さっきの扉といい記録装置といい、この遺跡はプロゥブストーンに合わせて設計されてたのかな」
開いた扉の奥へと足を踏み入れる。すると、通路の壁にいくつも設置されている蛍光灯のようなものが光を放ち始め、通路全体が明るくなった。この通路にも古代文字が羅列されている。
「さながら『読んでください』って言ってるみたいにたくさん見かけるけど…。考古学者でも探しておけば良かったかな」
自分にはさっぱり読めない文字ばかりなので、資料すらも準備してこなかった自分にため息が出てきた。とはいえ、足を止める理由にはならない。奥にはまた扉があったが、やはりこれもプロゥブストーンを当てることで開いた。
「さぁーて、生き残りさんとご対面〜♪」
どこか楽しげな調子でそう呟くと、奥の部屋へと入っていった。

(118.0.127.84).. 2008年07月30日 05:40   No.196058
++ クォーツ (オリカ王子)…126回       
「さぁーて、生き残りさんは…っと」
部屋の内部は、先程の記録装置があった部屋とあまり変わらない。違うところはといえば、何かを収める棺のようなものと、かつて自分も入っていた培養カプセルらしきものがあることだ。
カプセルと棺は横一列に並んでおり、その間に挟まれるようにコンソールのようなものがある。遺跡のシステムの関係上、もはや当然のようにプロゥブストーンによって作動した。
それぞれのフタが外され、ご対面となる。
「この子が生き残りさん…レミアかぁ。女の子なんだね。で、こっちがクレセン…かな?」
カプセルに少女が、棺に三日月型の何かが入っていた。それぞれレミアとクレセンであることはすぐに分かった。

「ふわぁ〜あ、よく寝たぁ…っ」
「……えーと…」
「…?誰?」
レミアの方が先にこちらに素振りを見せた。どうやら本当に寝ていたらしい。半分意識がある状態で閉じこめられていた自分とは違っていて、イテンは自分が閉じこめられていた環境を作った研究者達を今更ながら恨めしく思った。
だが、それとこれは別問題として、イテンはレミアに挨拶してみた。
「えっと、こんにちわ、レミア。あたしはイテンっていうんだ。君を見つけたの」
「見つけた?……………………あぁ!そういうことかぁ!思い出した思い出した!」
「…なんで自分がカプセルにいたのか分かってるの?」
そんな風に思わずはいられなかった。単刀直入で聞いた自分が少しバカに思えてきた。だが、対するレミアも隠すことなく自分の出自を喋ってしまうのだから、どちらが軽率か分からない。軽率などという言葉が通じる環境ではないのだが。
「分かってるよ。私の故郷がもうすぐ滅びてしまうからって、長老達がこのカプセルに入ってなさいって言って、それでずっと寝てたの」
「ずっと寝てた…って、それは何百年、何千年…ヘタすると何万年も前のことなんだよ?」
この遺跡がいつからのものかは分からないが、自分がいた遺跡とどこか雰囲気が似ていたことから相当な時間が経っていると推測したのだ。
「えーっ!?そんなに昔なの!?滅びたの!」
「何なら、外、見てみる?」
この部屋には、丁度窓のようなものがあった。ここに来るまでの通路が坂道になっていたのと、扉の位置が他の2つよりも高いところにあった。それはおそらく、この部屋を他の部屋よりも高いところに設計したのだろう。
試しにイテンが、窓の一部を開けてみる。既に風化し始めているのか、何かの拍子に壊れてしまいそうで、結構怖い。恐る恐るではあるがどうにか開ききり、レミアが覗き込んだ。
「…なんにもない…」
「ここはもう砂漠地帯で、君の故郷はここを残して滅びたんだよ。ここも大分古いみたいだし…」
窓から外を見た結果得られたのは、レミアの故郷が滅びたという覆しようのない事実だけだった。

(118.0.127.84).. 2008年07月30日 06:13   No.196059
++ クォーツ (オリカ王子)…127回       
2回目のオリカ王手前まで到達した、我がオリカ人生(1回目は改名前に取った)
本日は1本投下。

「ないんだ、何も……」
「……」
外が何もない砂漠地帯であることを知ったレミアの声にはどこか悲しみがこもっていて、イテンは思わず言葉に詰まった。だが、先に話を切りだしたのはレミアだった。
「…ついてって、いい?」
「え?」
「あなたに、ついてっていい?」
なんと、出会ったばかりのイテンに同行、即ち身を預けてしまおうというのだ。あまりにも突然だった為、イテンは少々戸惑った。しかし、ここは持ち前の気楽さと当初の目的とで明るく乗り切ることにした。
「…う〜ん…オッケー!一緒に来ていいよ」
「やったー♪」
取り敢えず、遺跡に閉じこもったも同然の立場だったレミアを外の世界に出してやるのが当初の目的。それを達成するべく、同行を許可した。

「でも、どうしてここに来てたの?」
「うーんとね、あたしが君と似てる子だったから…かな?」
「似てる?」
「そう。あたしもね、ある人物と出会うまでは培養カプセルに閉じこめられていたの。その人のおかげで外の世界に出られたけど、もし似たような状況に置かれている子がいたら、ほっとけないなって思ってね」
「そうなんだ…」
「もっとも、君の場合は閉じこめられてるっていうよりは本当に寝てるってところだろうけどね」
「あ、あはは…」
移動している最中、こんな会話があった。レミアの疑問ももっともであるが、イテンは隠すことなくその動機を話した。後半のイテンの指摘には、レミアは乾いた笑いを返すしかないが。

通路を抜け、また踊り場に出た。レミアは遺跡の内部をよく知っているらしく、踊り場に出た時にはこんなことを言った。
「こんなボロっちくなってたんだぁ。私が眠る前はもっとしっかりしてたのに」
砦とされていたくらいだから、別に豪華な装飾があったわけではないのだろう。
「昔は違ってたの?」
「うん。昔はね、もっと岩もレンガもきれいなダークブルーっぽい色で統一されていて、しかももっとキレイだったんだから」
レンガはともかくとして、岩にそこまでたくさん存在するのかとイテンは疑問に思った。ダークブルーっぽい岩など、そうそう見るものではない。砂漠化するきっかけとなった『大いなる災い』によって消失したものの1つかもしれない。
「…こんな字、掘ってたんだ。気づかなかった」
ある程度周辺を見回して、レミアは壁に羅列されている古代文字の存在に気づいた。どうやら遺跡となる前はダークブルーという色の影響で気づかなかったらしい。

(118.0.127.84).. 2008年08月01日 06:53   No.196060
++ クォーツ (オリカ王子)…128回       
本日も1本投下。
早いもので、今回で128回目。メインストーリーの方は、様子見しつつ、130回目の投稿時に書いてみようかなと思っています。

「この遺跡の壁のいたるところに文字が羅列されてるんだけど、あたしには全然読めないんだ」
「へー…。この文字ってね、ルナ族の者だけが使ってた暗号みたいなものなんだ。だから、ルナ族じゃないあなたが知らなくても無理ないよね」
どうやら、この古代文字が分かるようだ。慣れ親しんでいるかのように文字に目をやる。
「…読めるの?」
「まぁね。えーっとぉ…『月は満ち欠けを繰り返す循環の化身』って書いてる」
他の壁にある文字も読んでもらうことで、遺跡の謎を解こうとイテンは思いついた。この羅列された古代文字に、ルナ族のことに関わるヒントがあるかもしれないのだ。
「他の部分も読んでくれる?」
「いいよ。まずこの踊り場にある分は…。『丸い満月があり、そこから徐々に欠けてゆく』『それは次第に半月となり』『更に欠けて三日月となり』『やがては見えなくなる』『そこから徐々に光が見える』『まず三日月を描く』『次に半月を描く』『やがて再び満月となる』『太陽の光の辺り方で月の見え方が変わるように、我らの文明もまた、滅びたように見えるだけ』『生き残りの手によって再び文明は花開く』…これで全部」
「なるほど…たとえ自分達が死んでしまっても、レミアが新しい時代の中でルナ族の文明を目覚めさせてくれるって思ってたんだね。まるで、新月から再び満月になるみたいに」
「……」
レミアは古代文字を読んでいく内、何かを考え込むようになった。自分がルナ族最後の生き残りであることが、その原因だろうか。

場所を変えて、記録装置があった部屋。ここにも古代文字が羅列されている。
「じゃあ、解読よろしく」
「うん。『それは唐突に起こった』『見事な晴天だった青空は突如闇に覆われた』『平穏な筈の大地が騒ぎ出した』『離れたところでは、どうやら海も騒ぎ始めたようだ』『いくつもの雷が荒れ狂い、強い風を連れた嵐が吹き荒れた』『原因を突き止めることができず、我々は立ちつくすしかなかった』『対抗策を見いだせぬまま、我らの里はどんどん滅びていく』『近隣の里や村でも同じことが起こっていると知った』『その頃は、眠りながら次なる時代へと移る為の技術が完成した頃だった』『しかし、その完成品は1つしかなかった』『どうやら嵐と雷のせいで殆ど壊れたらしい』『このままでは全滅を招くだけということは誰もが分かった』『そこで、"月の石"の御霊の元に生まれた少女をこのゆりかごに入れる』『そして彼女が目覚めた時代で、再びルナ族の文化が栄えることを我らは切に祈ろう』…これで終わり」
「やっぱり、レミアに文明復活の希望を託してたんだね。でも、1人じゃ文明を復活させるのはさすがに無理だと思うけどなぁ」
「文明…」
自分が何をするべきなのか、その答えを導き出せないのだろう。レミアは文字の解読が終わると、考え事にふけていた。

(118.0.127.84).. 2008年08月02日 05:17   No.196061
++ ウェリス (オリカ王子)…110回       
えっと・・・凄いお久しぶりですw
夜更かしで貼りに来ました。
一応ラストまで貼っておきますね☆
 
どれだけ拳をぶつけただろう。
どれだけ傷ができたのだろう―
だが視線を外すつもりはなかった。
ただ真っ直ぐに敵だけを見つめる。そして構える。
拳と武器がぶつかればぶつかる程、地面は沈みこむ。
面白がるように戦っていたアマノジャクの目も、今となれば餌を狩る獣の様なもの。
ただただグレンドルを見つめ、その武器を振るう。
1センチの小さな足場の踏み違いが命取りになる。
だが、焦りは見せない。
―焦れば押し返されるに違い無い。
声も出さず、また拳と武器がぶつかる!
拳は軽く肌を掠め、武器は髪を切る。
鮮血と銀髪が入り混じる―
すぐさま振り返り、1撃を沈めようとその手に力を込める。
「飛翔斬裂(ヒショウザンレツ)!」
「狼牙破鉄(ロウガハテツ)!」
上空からの1撃と地上からの1撃が激しく火花を立て、ぶつかり合う。
グレンドルの足場が揺れた―
「貰ったぜっ!!」
足場が揺らいだのを見、一気に上空から肉薄。斧を振り翳した!
「やらせるか!」
足場のヒビを蹴り、上空を回転!距離をとった。
両者の間―約1メートル半。
拳でこの距離は届かなくとも、気を放てば届く。
が、相手は武器がある。
不利な状況に、頬を伝う冷や汗。
軽く跳躍し、アマノジャクが向かってくる。
だが、攻撃方法に隙があった事を、グレンドルは見逃さなかった。
体を捻り、一気に振り出す事によって威力を格段に上げる攻撃動作。
が、それには大きな隙が出来る。
―捻った瞬間のがら空きの身体―
その刹那を―捉えた!
「くらえっ!必殺の一撃!炎龍爆連舞(エンリュウバクレンブ)!!」
炎を纏い、がら空きの体に連撃を浴びせる!
次々と放たれるその連撃は、まさに『舞』だった。
そしてグレンドルは見た。
背後で重荷が落ちるような音を立て、アマノジャクが倒れた―

(220.213.102.123).. 2008年08月03日 01:57   No.196062
++ ウェリス (オリカ王子)…111回       
息が荒かった。
肩で呼吸をしなければ息が出来ない。そんな気がした。
大きく深呼吸をし、後ろを見た。
武器に埋もれ、血に濡れたアマノジャクがいた。
が、何処にそんな気力があるのかと聞きたくなった。
彼は顔を上げていた。
「あは・・・あはははは・・・!完敗だよ。てめぇはホントに・・・面白い奴だ・・・」
息も荒いのに、笑い、普通に話してくる。
止めを刺すつもりが何故か無い。
止めを刺せ、とも思わなかった。
何故か、手を差し伸べていた。
「あぁ・・・?何で・・・手ェ差し伸べてんだよ・・・?」
「話を聞かせてくれ。お前の知っている事を・・・。」
アマノジャクは挑むような目をしようとした。
が、出来なかった。
グレンドルの目は真剣そのものだった。
溜息を吐いた。
「ネヴィアの野郎は・・・シャハルとか言う・・奴新月族の王を・・・仲間に入れていた・・・。」
途切れ途切れだが、話してくれる事を嬉しく思った。
「で、それで連合軍になって・・・闇月族になったんだ。」
「そうか。―1番気がかりなのはレプリカについてなんだけど・・・」
そう言うと、何故か彼はにっと笑った。
「アレはかなり危険だぜ。人を作っちまう・・・。悪魔の様な機械さ・・・。」
グレンドルはごくり、と生唾を飲んだ。
悪魔の様な機械―
「・・・んで、その機械でレプリカを生み出し、他族のお前らを・・・ブチのめそうってわけだ。・・・アイツは・・・ネヴィアはレプリカだけの世界を望んでんだ・・・。」
「そう・・・なのか。」
レプリカのみの世界・・・。
それはつまり、人形世界と言っても過言ではない筈だ。
「けどよー・・・ネヴィアの奴、それ以上のことを考えてんだ・・・。」
「それ以上の事?」
鸚鵡返しに聞くと、アマノジャクは頷き、その事について話し始めた・・・。

(220.213.102.123).. 2008年08月03日 02:24   No.196063
++ ウェリス (オリカ王子)…112回       
グレンドル偏、遂に完結です!
まだレオンとシンフォニーが残っていますが・・・^^;

「この世界と・・ネヴィアのいる異世界には・・・『暗殺乱具(あんさつらんぐ)』って超危険な物の欠片がある・・・。」
暗殺乱具―
噂に聞いたことがある、伝説の武具、防具の集合体。
全てで10個に別れ、それぞれ異様な殺気を放っているという。
そしてかなり危険な物であり、使用者に闇の力を与える・・・。
それを仮にネヴィアが手にしたとしたら・・・
おぞましい結末が目に見えた。
「闇殺乱具は・・奴の手に既に7つ揃ってる・・・。後3つ集まったら・・・間違いなくお陀仏さ。」
何も言えなかった。
知らぬ間に伝説は現実と発覚。
その危険な物を既に7つも手にしている・・・。
「いいか・・・これが俺からの頼みってやつ・・・。奴を・・ネヴィアを止めてくれ・・・。ま、どーせ死ぬけど・・・あの世からレプリカ世界見るのもきめェし・・・。」
顔は笑っているが、それは最後の命の灯火だった。
そして、最後の言葉を告げる・・・。
「って事で・・・後は頼むぜ。・・・あの世であの2人にしっかり謝っとくからよ・・・」
そう言い、ふっと息を吐ききる。
そして・・・掲げた腕は虚しく地面に落ちた。
「最後まで暢気な奴・・・。」
言い、彼に圧し掛かっていた武器を退ける。
その武器を、彼の近くに並べてやった。
「任せとけ。アマノジャク・・・。ネヴィアの奴を絶対に食い止めてみせる。」
そう言い、拳を握った。
周囲の仲間がこちらを心配するように見る。
ガンタスが肩に手を置く。
「大丈夫ダスか?グレンドル・・・」
グレンドルは微笑んだ。
「大丈夫さ。俺にはやるべき事がある。あいつの願いを必ず叶えてみせる。」
そう言うと、全員の顔が綻んだ。
「へっ。いいじゃんよ。皆!グレンに協力しようぜ!」
ギンがそう言うと、全員が頷いた。
グレンドルはこんな素適な仲間が、協力してくれる仲間がいる自分が誇らしく、幸せに思った―

(220.213.102.123).. 2008年08月03日 02:48   No.196064
++ クォーツ (オリカ王子)…129回       
お次はレオン編ですかね。
取り敢えず、今は129回目ということで辺境世界側のストーリーを投下。

再び場所を変え、今度はまだ未調査の3つ目の部屋。ここにも、古代文字が羅列されている。
「じゃあ、ここのお願いできる?」
「うん、いいよ。
『大いなる災いの日、奇妙な話があった』
『とある老人が、こんなことを言ったのだ』
『空の闇の彼方、何やら人影のようなものが見えた。そしてそれが、災いを起こしている。と』
『殆どの者は信じようとしなかったが、真偽を確かめようと何人かの勇気ある若者が、闇に覆われた大空へと果敢に飛び立った』
『ある者は雷に打たれ、ある者は強風に流され、脱落していった。だが、突破した者もいた』
『突破したのは僅かに2人。そして、闇の向こうへと消えてから暫くして、戻ったのは1人』
『あと1人はどうした、我々はそう尋ねた。すると、こんな答えが返ってきた』
『老人の話は嘘じゃない、確かに人を見た』
『我々は騒然とした。あの闇の向こうに、本当に人が…。しかし、詳しくは分からないという』
『どうもそいつは真っ黒なオーラか何かを身に纏っているようで、目視できないそうだ』
『屈強な老人と、勇気ある若者によって明らかとなった、闇の彼方の住人』
『その存在があったことをここに記しておく』
…これでおしまい」
「大いなる災いは、何者かの手で意図的に起こされた…?でも、なんで…?」
もしもこの記述が本当であれば、ルナ族を初めとする今は滅びた文明の住人は全て、何者かの意図で滅ぼされたことになる。文明が滅びた後に何かしたわけでもなさそうで、何故意図的に滅ぼしたのかについては疑問が残る。
「……新月族の、お尋ね者…」
「え?」
突然、レミアが口を開く。心当たりでもあるのだろうか、ここから割と詳しい話が聞けた。
「新月族っていう種族が別な世界にいて、その一族の中で膨大すぎる魔力の為にお尋ね者になっていたヤツがいるって聞いたことがあるの」
「オーバースキルってところかな?」
「多分。で、そのお尋ね者が逃げ延びる為にこの領域に立ち入っていたって話があったの。それから少し後、大いなる災いが降りかかった」
「追っ手の仕業?それにしては無差別にも程があるんじゃない?」
「お尋ね者は、自身の内包魔力をコントロールできなくて、突然暴走してしまうことがあるって聞いたことがあるんだ。追っ手に見つかって、それから逃げ切ろうとしたら暴走して大惨事…ってことになったんじゃないかな」
「大陸の半分以上を包むって、どれだけ凄い魔力なの?とても常識の沙汰じゃないんだけど」
「どれほどの魔力だったかはさすがに分かってなかったの。大きすぎて扱えないから…」
「う〜ん…」
大いなる災いの原因の手掛かりは、どうも新月族にあるようだ。しかし、新月族の世界がどこにあって、どうやってこの世界に入り込んだのかが分からず、明確な手掛かりとはいえなかった。

(118.0.127.84).. 2008年08月04日 05:41   No.196065


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