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あれこれ考えている時間など無かった。 「こんな所で死んでたまるかよっ!」 俺はとっさに左へ飛び込み、そこから前回り受身に持ち込んだ。すると、すぐに未だ嘗て経験した事の無い轟音と共に未確認飛行物体は不時着した。この間、丁度5秒。 危なかった……まさかここで体育でやらされた柔道が役に立つとはな。加納治五郎もビックリだぜ。 制服に付いた砂を払い、俺を潰しそうになりやがった『何か』を見ようと振り向くと、巨大な物体が大量の白い煙を噴き出していた。薄っすらと影は見えるが、この煙のせいでハッキリとした像を把握する事はできやしない。とにかく現時点でわかっている事は、この『何か』がやたら大きくて、今まで見たことが無い物体であるという事だけだ。 いつどこで言ったかは忘れたが、 「皆が仰天する出来事なんてそう簡単に転がってるものか!(中略)現実を見ろ!」 とハルヒに言い放った事がある。 悪い、ハルヒ。この言葉、撤回してやるぜ。不本意極まりないけどな。何せ発言者の目の前で、仰天する出来事が起こってるから撤回せざるをえないんだよ! まぁ、長門が宇宙人で現実世界の情報操作をしたり、朝比奈さんが未来人で時間移動するところを見て、古泉が超能力者で灰色空間に連れてかれたりした時点で撤回すべきだったのだろうが、これはまた別の話。とにかく今はコイツの正体をこの目で確かめなければ。 煙は依然と噴き出されたままだった。 ……まさかとは思うが、最近公開された映画で出てきた、顔に白い布を被った謎の人物が教祖の怪しい宗教団体が秘密裏に作った、液状殺人ウイルスを撒き散らしながら歩き回る実は安っぽい構造のロボットだったりしないよな? もしくは、破壊の限りを尽くす某・怪獣王を倒すために、そして「怪獣王を倒せるのは怪獣王しかいない!」というある意味納得な理由で作られたメカ怪獣王の一部とかか? どちらかと言ったら絶対に後者の方が夢があるし、助かる。 色々と考えを張り巡らせているうちに、沢山出ていた煙は殆ど無くなっていた。徐々に謎の物体の全貌が露わになる。 「こ、これは……!」 目の前に聳える(そびえる)物体を目の当たりにした時、俺は驚愕の余り言葉を失った。
(もりぞーに続く)
.. 2010年01月15日 18:27 No.605001
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