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「リレー参加作品『謎』」作者☆タカ
前髪をかき分け、古泉は俺を正面から見すえた。 「もう少し、僕の方へ近づいて下さい。」 近づけだと? 確かにおまえの顔はいつも近いが、この期に及んでさらに近づけというのか。実はおまえの声は俺の脳に直接語りかけていて、そのテレパシーの有効範囲がせまいために顔を近づけなければならないというSFチックな勝手な理由じゃないだろうな? 動いてる口は口パクか? 口パクなのか? 俺は言われるがままに古泉に近づいていった。 2メートルくらいの距離まで近づいた時、俺の右隣にあった机が真っ二つに裂けた。 「なにぶん、初めてのことなので、まだまだ精度に問題があるようですね」 何言ってんだ、こいつ? まさかこれは古泉、おまえがやったのか? 冗談は顔だけにしてくれ。そしてとっとと状況説明に入れ。 「お察しの通り、その机を割ったのは、僕の力です。本当はあなたの身体がそうなる予定でした。」 どうして閉鎖空間じゃないのに超能力が使えるんだ? 「言いましたよね。ここは、裏側の世界だって。涼宮さんが望めば、どんな事だって実現が可能なのですよ。」 次の瞬間、古泉の目が赤く光った。危険を感じて、俺はとっさに廊下へ走った。振り返るが、古泉が追ってくる気配はない。 昇降口から校庭へ出た。満月だったが、足元が見えないほどに暗い。さっき古泉と話しているとき時計は午前7時台を指していたはずだが、いま短針は11を指している。あと数秒で午前0時だ。校舎から出るだけで何時間かかってんだ。ワケが解らん。 とにかく、ハルヒを探そう。いつぞやのように長門と連絡が取れればなんとかなりそうなんだが・・・。 かの有名な宇宙飛行士のように歴史的な第一歩・・・というのは冗談にもならないが、俺が重い足を踏み出したその時、目の前に華車(きゃしゃ)な影が立ちはだかった。 「うふふ。困ってるみたいね」 朝倉涼子だった。 「私を倒せたらヒントを教えてあげる。」 言うが早いか、バスケットのゴールが俺めがけて飛んできた。さっきの古泉といい、こいつといい、俺の周りにはどうしてこうも能力者が多いんだ。 反復横跳びは苦手だが、この時ばかりはそうも言ってられない。俺としてはよけるので精一杯なんで、ナイフを素手で受け止めてくれる無口なヒューマノイドなんたらの登場を願うばかりだ。 しかし守護天使の召喚よりも先に、俺の太ももとふくらはぎが限界に達しようとしていた。 「もう終わり? 意外と体力ないのね」 俺が運動部に入ってるように見えるか。 「さてと。そろそろ・・・死んでちょうだい」 万事休す。目の前にまばゆいばかりの光が広がっていく。俺はここで死ぬのか・・・。 ・・・しかし、いくら待ってもその時は訪れない。それともなにか? もうとっくに死んでるのか? おそるおそる目を開けると、目の前に朝倉涼子が横たわっていた。全身が引き裂かれたぼろぼろの姿で。 「ジョン・スミス・・・」 最後にそう言い残して、朝倉は消滅した。
(▽▲▽▲ふぁいヴに続く▲▽▲▽)
.. 2009年10月21日 07:45 No.531001
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