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(文字数が多過ぎてエラーに成ったので分割) しかし最も面白かったのは安藤昌益です。この人は江戸時代中期の八戸の町医者(=開業医)で、前から気になっては居て漸く時間が取れたので読んだのですが、彼の論はスゴイ、そして面白い! その著『自然真営道』(稿本は何と100巻92冊)、『統道真伝』に拠ると、自然(しぜん)とは始め無く終わり無い土活真(どかつしん)が進退し微妙なバランスで「自(おの)ずと然(な)すもの」或いは「自(ひと)り然(す)るもの」也です。天地を「転定(てんち)」、人(ひと)を「男女(ひと)」と再定義し男女(ひと)は須らく直耕(ちょっこう)すべし、と言ってます。「直耕」とは田畑を直(じか)に耕すことですな。 昌益曰く「元来、男女は自然世(しぜんよ)に生きるべきなのに、今は法世(ほうよ)が罷り通って居る。聖人や王が現れ耕すこと無く自分に都合の好い法律を勝手にデッチ上げ他人を教化したり支配して居るが、本来男女(ひと)は”教えず教えられず””支配せず支配されず”存在であるので、全ての法は私法(わたくしのほう)に過ぎない。故に私法を以て直耕せずに食するのは食を盗む行為である。全ての男女(ひと)が直耕し己の食を己で得る自然世に戻す必要が有る。」と。 彼はこの論を進め独自の宇宙論を構築してる点がスゴイですな。男女と書いて「ひと」と読ませてる様に、男と女、陰と陽、転(てん)と定(ち)、日と月、これらは彼に於いては対立概念では無く補完概念であり、元々一つのもの(=太極、太一、始原) −彼が言う土活真− の両面であるという捉え方です。故にその「合体」を重要視して居ます。曰く「日月は晦日の夜に交合する」と。晦日の夜は新月で真っ暗、故に「男女(ひと)も夜暗い中で交合するのが”人の道”であり、昼日中交合するのは畜生道である」と。 更に直耕論を推し進め「米粒が男女(ひと)の元であり転定(てんち)の元である」と。転定=天地=宇宙ですから、これで米粒というミクロコスモスと宇宙のマクロコスモスが互いに補完し合体するのです。これは宇宙の始原をラグビーボール位とするビッグバン理論を想起させますな。 昌益の理論は、自然法主義・平等主義・農本主義に陰陽五行・天動説・理趣経・漢方医学などの知識を総動員して構築されたものですが、独自の宇宙論を完結させて居る点が大きな特徴であると共に異常です。勿論こんな理論は江戸中期では公表されず、僅かな弟子達に秘匿されて居ました。その論は論理的と言うよりも直感的且つ直観的で、一派は秘密宗教的に勉強会を開いて居ました。しかし東北の片隅でこんな傑作な大理論が密かに構築されて居ようとは実に愉快です、痛快です。
.. 2010年03月17日 03:53 No.198001
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