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福島で6年、チェルノブイリで31年経った今でも避難者の大半が故郷を 失い、家族の絆を引き裂かれ、心労と悲観、病苦から多数の方が自ら命を 絶たれ、癌に侵され、発癌の不安にさいなまれていることを、大阪高裁は どう考えているのであろうか。 大阪高裁は決定の中で、避難計画などの原子力災害対策については未だ 改善の余地はあるが、取り組み姿勢や避難計画等の具体的内容は適切であ り、不合理な点があるとは認められないとした。
しかし、昨年8月27日に高浜原発から30km圏の住民179,400人を対象に して行われた避難訓練は、最大規模と言われながら、参加者数は屋内退避 を含めて7,100人余りで、車両などでの避難に参加したのはわずか約1,250 人であった。それも県外への避難は約240人に留まった。この規模は、重 大事故時の避難の規模とはかけ離れた小ささである。 車道などが使用不能になったことを想定して、陸上自衛隊の大型ヘリに よる輸送訓練も予定されていたが、強風のため中止された。
また、悪天候のため、船による訓練は全て中止された。老人ホームなど への事故に関する電話連絡は行われたが、実際行動の必要はないとされた。 なお、高浜原発から50km圏には、京都市、福知山市、高島市の多くの部 分が含まれ、100km圏には、京都府(人口約250万人)、滋賀県(人口約 140万人)のほぼ全域、大阪駅、神戸駅を含む大阪府、兵庫県のかなりの 部分が含まれる。 このことと福島原発から約50km離れた飯舘村が全村避難であったことを 考え合わせれば、高浜原発で重大事故が起こったとき、数100万人が避難 対象となる可能性が大であり、避難は不可能であることは自明であるが、 避難訓練では、そのことが全く考えられていない。 なお、この圏内には琵琶湖があり、1,450万人の飲用水の汚染も深刻な 問題である。
さらに、避難訓練には、原発事故での避難は極めて長期に及ぶ(あるい は永遠に帰還できない)という視点がない。福島第一原発およびチェルノ ブイリ原発の事故では、今でも避難された10数万人の大半が故郷を失った ままである。 それでも、大阪高裁は、避難計画等の取り組み姿勢や具体的内容は適切 であるとしている。
.. 2017年04月05日 09:00 No.1159013
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