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4.認識の欠如
『○吉田所長 800何年ですから、1,100年か1,200年ぐらいたっているわけで、可能性としてゼロではないけれども【中略】ほかの波源との絡みでちゃんと評価して、これが非常に強いんだったら、その評価に基づいてやるべきということです。』 コスト問題から津波対策を先送りした場面で、重要な役割を果たしたという認識があるからなのか、津波の問題になるととたんに冷静さを失う。原発の安全性をどこまで確保するかは、自然災害については「既往最大」だけを見るのではダメで、起こりえる最大級を想定し、なお安全確保が出来ることが条件とされている。これが一般産業における安全基準と決定的に違う点であったはずなのに、こと津波に関しては「既往最大」までしか見ていないことは良く分かっていたはずで、対策をしていなかったことは言い逃れできない。 もともと土木学会手法がそうであるため、その限界に引きずられてきたわけだが、土木学会津波評価部会の多くは電力関係者であるから、自分たちで限界を作り上げていたことになる。これについては少なくても保安院や地震学者の多くは気づいていて、早く対策をしなければ大変なことになることは認識していた。 島崎邦彦氏の聴取録では明白に、「日本海溝沿いの地震は明治三陸が最も良く解析されているが南北方向は曖昧だ。この波源データを南に伸ばして福島県沖に設定すればいいだけで何ら難しいことではない。」としている。 これは実際に東電が試算で行ったことであり、15.7mという、2011年の実際の津波よりも更に大きな津波モデルが作られていた。それに従って対策をすることが工学的に可能なことは、吉田氏も否定していないし(パラメータを与えられれば工学者はそれを元に設計できると述べている)実際に東電も「10m盤」に10mの高さの防潮堤を構想していた。 付け加えるならば、別の場面では吉田氏は「ここに20mの津波が来るとしたら原発は建てられない」とも語っている。現在の福島第一地点で想定されている最大津波高は26mであるので、立てられないことになる。 つまり原子炉等規制法違反であったことを認めていることになる。
.. 2015年12月01日 10:17 No.987012
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