|
隠される被曝 鎌田慧
富山市の「イタイイタイ病を語り継ぐ会」が主催した「イタイイタイ病とフクシマ」という集会に参加した。44年ほど前に『隠された公害』を書いていたからだ。 その本で朝鮮海峡に面している対馬での、イタイイタイ病をテーマにした。被害者であるはずの地元住民から、「ここには被害はありません」と取材を拒否されたあとのいきさつを書いた。幸いなことに内部告発があって、隠れた公害は一挙に解決した。 富山のイタイイタイ病は、水俣と新潟の「水俣病」や四日市市の大気汚染とともに、4大公害病といわれていたが、そのなかでもっともはやく農民の運動がはじまった。神通川流域に住む年配の女性たちが、三井金属鉱山が流出したカドミウムを野菜や水から摂取して、腎臓と骨に異常をきたして亡くなっていく事例は、明治の末年から伝えられていた。しかし、旧厚生省が公害と認定したのは1968年になってからだった。 フクシマで被曝した自衛隊、消防隊、警察、東京電力社員、下請け労働者、派遣労働者、除染労働者、逃げ遅れた膨大な住民たち、この人たちの健康管理と補償がどれだけ、精密かつ手厚いものになるのか、それはこれからの市民運動のテーマでもある。ヒロシマ、ナガサキのほかにミナマタ、富山の教訓も活かされなければならない。 (ルポライター) (11月24日「本音のコラム」より)
.. 2015年11月25日 10:14 No.986002
|