返信


■--第五検察審査会
++ 槌田 敦 (小学校中学年)…18回          

槌田 敦(物理学研究者)さんが「第五検察審査会」に出した手紙
 └──── 
  第五検察審査会御中            2015年8月5日
                   物理学研究者  
  7月31日、「第五検察審査会が東電元3幹部を強制起訴」というニュースがありました。
 私は、日本物理学会で、これまで原発過酷事敏の研究を続けてきましたが、お役に立てればと思い、手紙を差し上げる次第です。
 福島第一原発は、地震と津浪で打撃を受け、炉心崩壊を引き起こし、住民に大災害を与えました。
 地震・津浪→炉心崩壊→大災害ですから、地震・津浪があったからといって、それだけで大災害になるのではありません。
 そこで、その途中の炉心崩壊を防ぐためにどのような対策をしたのか等、東電の対応が問われることになります。
 私は、物理学会のみなさんと共に、この部分に焦点を当てて研究して参りました。その結果を、パンフ「増補版−福島原発事故3年 科学技術は大失敗だった」にまとめましたが、この中で、東電幹部の怠慢または判断ミスを多数見いだしました。
たとえば、
◎【炉心崩壊と放射能の放出を防ぐための各原子炉共通の対策】
1.地震による鉄塔倒壊と津浪により、福島第一原発は全交流電源喪失となった
  東北電力との電力融通は、実行されなかった
  福島第二原発との電源共有は、役員会での議論だけだった
2.交流電源を喪失して、第一原発全体で温度の測定が復旧まで8日間も
  不能となった
  温度の計測不能は、原子炉運転の資格なし
3.直流電源の喪失で、圧力と水位が、長時間の測定不能となった
  圧力と水位の計測不能も、温度とともに原子炉運転の資格なし
4.しかも、水位では実際よりも高く表示されて、原子炉満水と誤解していた
 また、圧力では格納容器より原子炉が低く表示され、判断不能の事態となった
 この計器誤表示の原因は容器の空焚きであるが、測定計器を改良せず放置し
 ていた
5.事故時・平常時共用のECCSについて
 事故なのに、自動起動したECCSを平常時のマニュアルで手動停止
 (1号機)した
 また逆に、事故なのに、平常時の条件でECCSが自動停止
 (2、3号機)した
6.3月12日より原子炉に海水を注入。だが、淡水は集中廃棄物処理施設に
 大量に存在
 海水の蒸発で塩析出。燃料冷却は妨害されて高温化。
 放射能は大量に気化し流出へ
7.格納容器に液体窒素を注入して固化すれば、放射能は氷に閉じ込められる
 また、冷却水の供給は不要となって液体放射能の流出を防止できた

.. 2015年08月11日 10:09   No.946001

++ 槌田 敦 (小学校中学年)…19回       
◎【1号機での東電の対応】
1.ECCS非常用復水器(IC)が自動起動したが、東電は運転員に
 手動停止させた
 以後、自動起動、手動停止を繰りかえして、原子炉に注水せず、
 空焚きに導いた
 ECCS非常用復水器を手動停止しなければ、1号機は過酷事故に
 ならなかった
2.非常用復水器は逆U字管構造で水素が溜まる構造だが、点検時に
 申告しなかった
 また水素逃し弁の設置などの対策をせず、放置していた
3.3月11日夕刻には、この逆U字管に水素が溜まり、非常用復水器は
 機能停止した
 その結果、原子炉の冷却は不能となり、1号機破滅となった
4.同日22時には、ふたつの水位計は別々の値を示し、空焚きによる誤表示を
 示した
 しかし、どちらの値も正だったので、国に冠水状態と報告し、対応を誤った

◎【2号機での東電の対応】
1.2号機には、残留熱除去系付属の蒸気凝縮系に非常用復水器機能が
 ついていた。
 しかし、浜岡原発でこの蒸気凝縮系の逆U字管上部に水素が溜まり爆発
 したので、 福島第一の2〜6号機で蒸気凝縮系を削除してしまった
 これを削除せず、水素逃し弁をつけていれば、2号機の事故はなかった
2.平常時使用の水位高信号により、ECCS隔離時冷却系は自動停止した
 東電は運転員に手動起動を続けさせて、原子炉を冷却した。これは正しい
 しかし、その水源を復水貯蔵タンクから圧力抑制室に切り替えさせて失敗した
 隔離時冷却系の連続使用で、圧力抑制室の水は沸騰状態となり、
 使用不能だった
 水源を復水貯蔵タンクに戻し、これに淡水を追加して、隔離時冷却系を
 使用すべき
3.隔離時冷却系は3日間運転できた。その間に代替交流電源を用意せず、
 低圧注水系、炉心スプレー系、格納容器冷却系などECCSの使用を
 しなかった
4.東電は消防車利用を計画し、その吐出圧以下に減圧するため、逃し弁を
 開放した
 その結果、減圧により原子炉は沸騰から空焚きに移行した。
 逃し弁開放は重大過失
5.風向きが内陸向きなのに、格納容器をベント(開放)しようとした
6.ベントできなかったが、格納容器または配管の破断により格納容器の
 圧力は急低下
 格納容器の放射能の大半が流出。2号機建屋の壁に開いた穴からの湯気が
 流れでる

.. 2015年08月11日 10:40   No.946002
++ 槌田 敦 (小学校高学年)…20回       
7.この放射能の大量流出は、南東の風に乗って、福島県民を襲うことになる
 しかし、その事実を住民に知らせなかった。これは東電の重大な過失
8.逃し弁開放により、原子炉と格納容器の圧力差はなくなり、崩壊した
 炉心燃料ペレットは原子炉底を溶かし、格納容器底にまとまって落下
 その結果、燃料ペレットはコンクリート底を溶かし、これを突き抜けて、
 2号機から環境への放射能の大量放出となった

◎【3号機での東電の対応】
1.2号機と同様に、3号機でも平常時使用の条件で隔離時冷却系は
 自動停止した
 3号機の運転員も最初は手動起動したが、再度の自動停止には手動起動
 しなかった
 その結果、事故発生直後の段階で40分間も注水不能となり、炉心崩壊となった
2.3号機では、温度計測だけでなく、水位、圧力の計測も大幅に遅れた
3.3月12日7時(地震後15時間)に最初の測定。水位はA…0.4と
 B…0(メートル)と二重表示
 原子炉空焚きを示すが、東電は、両者が正の値なので冠水と判断し、対策せず
4.11時36分隔離時冷却系停止。原因は、原子炉圧力低、
 または圧力抑制量(SC)沸騰
5.12時(地震後20時間)、圧力抑制室(SC)7気圧、
 ドライウ工ル(DW)3気圧と測定、両者は同じ格納容器の一部で
 同じ圧力、DWの低圧表示はDWの空焚きを示す
 しかし、原子炉圧力は14日まで測定不能。この破局的DW空焚きを
 東電認識せず
5.12時35分、原子炉水位低信号(マイナス1.2メートル)により高圧注水系が
 自動起動。しかし、原子炉とSCが同じ圧力では作動不能。
 また、SCは沸騰状態で吸い上げ不能
6.東電は、ECCSの隔離時冷却系と高圧注水系が有効だったとして、
 測定できていない原子炉の圧力と水位を計算し、これに「実機計測値」と
 命名した
 最近の東電の報告ではこれを「実測値」として扱い、事故解析に用いている
 すでに原子炉は底抜け段階。この「実機計測値」の採用は事実解明を妨害する
7.lAEAによる政府報告書(2011年6月、表4−5−3)では、
 上記「実機計測値」により12日12時には原子炉75気圧、20時には急降下して
 8気圧、と空想上の報告をしている
8.13日12時36圧力抑制量のベント弁大開。福島県民被爆
 20時(地震から2日と7時間)に原子炉圧力の計測始まる。
 原子炉はすでに大気圧
9.14日11時1分、3号機建屋でオレンジ色の閃光の後、500メートルの
 垂直黒煙爆発。水素爆発(白煙・横に広がる)とは異なり、
 チェルノブイリ型核爆発とみられる
10.3号機では、地震・津浪でも非常用電源は使用可能で、
 すべてのECCSも使用可能
 最初からECCS使用なら過酷事故にならなかった。東電幹部による重大過失

◎参考資料
(1)自著パンフ「増補版−福島原発事故3年 科学技術は
         大失敗だった(改定版)」
(2)保安院がIAEAに提出した報告書(2011.4.4)
(水位と圧力の実測データ、温度なし)
(3)自著「エネルギーと環境(原発安楽死のすすめ)」(学陽書房)
(別便で郵送します)
   チェルノブイリ事故、スリーマイル島事故、
   美浜原発事故についての研究結果


.. 2015年08月11日 10:49   No.946003
++ 坂東喜久恵 (小学校高学年)…26回       
.「安保法案=戦争法案反対」「核―原発反対」
 |  「辺野古基地反対」で「安倍政権打倒」を前面に
 |  広島ツアー報告
 └────  (たんぽぽ舎)

◯ 8月4日広島へ 今年は被爆70周年の節目の年です。
 毎年暑い広島は覚悟していますが、今年は東京のほうが暑いかも!
 参加者は川内原発の再稼働が迫っていることも重なり東京からは6名。現地で広島の方々4名、(6日のデモにはK夫妻も加わり中電前抗議集会は総勢12名に)。
◯ 8月4日の17時15分から原水禁の開会式に10名参加。その内2人は、市内デモ後に合流してきた…暑い!
 今年の被爆者の話は、86歳(1929年生まれ)の切明千枝子さん。自身の被爆の記憶、自分はかろうじて助かったこと、家族を失い、友を失い、周りの地獄絵のような状況…、気丈に話されることにより悲惨さが伝わりました。
 福島現地からの報告、高校生のアピール等々。
 大会事務局長・藤本泰成さんの基調提案は非常に力強く、基調本文に(時間的に)載らなかったことを中心に提起。川内原発再稼働に対する怒り、東電福島原発事故を忘れたかのような、忘れさせようとする政府の意図を厳しく糾弾。(基調は10ページに及ぶしっかりしたものです。)
 「核と人類は共存できない」と言った初代原水禁議長の森瀧市郎さんの言葉をあげて、締めくくりました。
 「人類は生きていかねばなりません.だから核はなくしていかねばなりません」
◯ 8月5日は原水禁の分科会と4日から開催されている「ヒロシマ平和へのつどい」の各講演会へ参加。
 私は、午前は、脱原子力2−「再稼働問題と日本のエネルギー政策」へ参加。台湾と韓国のゲストからの原発反対運動の報告。浅石紘爾さん(弁護士)“核燃料サイクルの現状と破綻”、西尾獏さん(原子力資料情報室)が再稼働問題についての報告。
 浅石さんは、六カ所再処理工場はあれもこれも問題だらけで八方ふさがりの状態だ。と報告。最後に、「再処理」をなぜやめないのかは『潜在的核保有願望』があるからだ。核に対する自民党政権の危険性について指摘。
 午後は毎年参加している「ヒロシマ平和へのつどい」へ。
 今年は「安保法案=戦争法案反対」「辺野古基地反対」「核―原発反対」で「安倍政権打倒」を前面に打ち出した充実した内容。昼から夜までびっしり。
 主催は「検証:被爆・敗戦70年−日米戦争責任と安倍談話を問う−」実行委員会。
・「戦争責任と天皇制」−天皇(制)の戦争責任と招爆責任−
・「沖縄・辺野古新基地建設阻止!安保・自衛隊・米軍再編」
・「戦争法制と明文改憲−戦争法案を廃案に−」
 メイン集会は「安倍政権を葬るなかで新しい世界を視野に捕える 戦後日本国をめぐる原理次元での対決」
 この後のアピールでは、天野さんが「再稼働阻止全国ネットワーク」の立場で「川内原発再稼働阻止の闘いと行動」について提起しました。
◯ 8月6日は朝の平和公園での集会、8時15分の原爆投下を悼むダイインの後、中国電力前までのデモと中電前集会。
 昨年は朝から雨だったのですが、今年は天気が良すぎる位でデモ・集会の参加者も多く、盛り上がりました。
 山本礼治さんが「経産省前テントひろば」についてアピール、坂東が「川内原発の再稼働反対の抗議行動と飛行機代カンパ」について報告と要請をしました。


.. 2015年08月11日 10:57   No.946004
++ 山崎久隆 (社長)…549回       
再稼働は犯罪である。事故が起こればもちろんのこと、
 |  仮に事故が起きなかったとしても、準備も態勢も整わない再稼働は、
 |  それそのものが犯罪行為
 |  検察審査会による強制起訴と原発再稼働の関係とは
 |  川内原発をケースに考える
 └──── (たんぽぽ舎)

 7月31日に福島第一原発事故に関連した検察審査会による「起訴」議決は、東電の元取締役3名についてだから、具体的に再稼働を行おうとする原発とは直接関係なく、差し止める効力はないと国や他電力は考えているのかも知れない。
しかし世の中そんなに甘くはない。
 確かに法的に川内原発などの原発が再稼働することを直接止めるには、それぞれに対する差止訴訟が一番近道であることは間違いないが、この起訴議決は経営者のみならず再稼働を容認した、あらゆる関係者に対して影響があり、大きな歯止めになる。

1.業務上過失致死傷罪

  福島第一原発事故が現在も11万人を超える人々に避難を強いている現実など、大規模な被害を与え続けている点は大きい。業務上過失致死傷罪に認定された人数は限られるが、背景にある大勢の被災者の存在は大きかった。
 将来起きた場合の事故の影響範囲がどれくらいのものになるかにより結果は違ってくる可能性があるが、大気中への放射性物質拡散事故となれば、多くの人々が避難を強いられ、生産活動が出来ない地域が出現するだろう。一方、検審の議決には「人格権」という言葉そのものは出てこないが、双葉病院の入院患者や作業を行った自衛隊員等についての死亡ないし負傷の事実をもって業務上過失致死傷罪を認定している。川内原発など再稼働をした原発で発生する事故が、結果として死傷事故になれば当然、同様の認定がされる可能性が高くなる。
 今後起きる事故が、福島第一原発事故の規模に至らない場合でも、多数の住民避難を含む災害になれば、一定の前提条件の下に適用される可能性が生ずることになる。
 事前に繰り返し警告されてきたにもかかわらず、原発を再稼働して事故を引き起こし、大量の放射性物質を環境中に放出し、そのため多くの住民が被曝し、従業員を含め死傷者が出たら経営者だけではなく再稼働を容認した関係者にも、その職責に応じた責任が問われるであろう。
 具体的には規制委員を含む規制庁、経産省などの公務員、自治体の長や議員、そして事業者の意思決定責任者である。


.. 2015年08月12日 08:01   No.946005
++ 山崎久隆 (社長)…550回       
2.予見可能性の適用・国の機関

  業務上過失致死傷罪が成立するには業務上の注意義務に違反した事実が認められなければならない。
 「本件地震、本件事故に関し、被疑者らには業務上の過失がある」とするためには、そのような地震、事故を予見できたと認定する必要がある。
 検察は「出来ない」と判断していたが、検察審査会は出来ると判断した。
 1997年の7省庁手引きから2002年の地震研究推進本部(推本)の長期評価まで、国の機関による津波評価があったにもかかわらず、実効性のある対策は取られなかった。それどころか長期評価の表現を巡り東電などが圧力を掛けていた。
 これに対して検審の議決は次のように述べている。「推本の長期評価は権威ある国の機関によって公表されたものであり、科学的根拠に基づくものであることは否定できない。」「大規模地震の発生について推本の長期評価は一定程度の可能性を示していることは極めて重く、決して無視することができないと考える。」
 東電自身が「予見」したと認定されるよりも遙か以前から、国の専門機関は太平洋沖の日本海溝沿いに巨大津波を生じさせる地震を想定した。議決では「これらに共通して言えるのは、原発事故が深刻な重大事故、過酷事故に発展する危険性があることに鑑み、その設計においては、当初の想定を大きく上回る災害が発生する可能性があることまで考えて、「万が一にも」、「まれではあるが」津波、災害が発生する場合までを考慮して、備えておかなければならないということである。」と指摘している。
 川内原発についても、火山学会などの専門機関や専門家は「火山ガイドラインは不十分」「噴火を未然に察知して使用済燃料を移送するのは困難」との見解を明らかにしてきている。これらは「万が一にも」あってはならない火山災害に伴う原発災害を防止することは困難と、火山の専門家や専門機関が指摘し、警告しているのだから、それを押して原発の再稼働を強行すれば、専門機関の警告を無視して引き起こされた原発災害だから、予見可能性が適用され、厳しい責任追及がなされることになる。

3.事故を予見し対策する理由

  原発が過酷事故を起こせばどうなるかは、チェルノブイリ原発事故で世界中に示された。これほどの大災害を繰り返しても良いとして原発を推進する国も人もいない。自然災害によりチェルノブイリ原発事故を繰り返さないように、あらゆる対策は立てられるのである。およそ地上にあるありとあらゆる産業施設、設備の中で、最も高い強度で津波や地震などの自然災害に備えねばならないのが原子力(核)施設だということだ。
 川内原発においても、例えば火砕流に巻き込まれればおよそ格納容器を含めて放射能を封じ込めることは不可能となることは自明だ。福島第一原発の場合は使用済燃料は救えたが、今度は全部巻き込まれるだろう。そうなると2炉心分の燃料では済まない放射能が拡散される。そのような災害を防ぐためには予見し対策する義務がある。


.. 2015年08月12日 08:12   No.946006
++ 山崎久隆 (社長)…551回       
4.予見可能性の適用・津波

  これまでにおよそ発生したことがない、未曾有の事故であるならば、原子力損害賠償法第三条ただし書きにある「異常な天災や地変」にあたり、免責であると主張できる可能性がある。しかし東電はそうしなかったし、国もそれが認められるとはいわなかった。理由は、認められる余地がないからだ。
 株主総会では法的知識の無い株主の一部からそういった主張がされるが、東電は「被災者救済を優先した」などと驚くべき説明を繰り返してきている。勝俣会長時代は「可能性はある」と言ったことさえある。しかし実際にはあり得ない。
 異常な天災や地変であるためには、歴史上計測されたことがない規模のものが、確率的に極めて小さい自然現象で発生する場合である。例えば隕石落下の直撃などと、過去の国会答弁で例示されたことはあった。
 今回の津波は、国の機関や地震学者が指摘した地点において、想定された規模で発生したものであり、過去の歴史に基づき、同程度の津波被害は原発の周辺区域である南相馬市でも確認されていた。日本の沿岸域では津波の被害が予見可能性どころか実際に経験されていたものである。仮に異常な天災地変であったとしても、それが予見されていたのならば、必要な対策を取るのが当然である。その対策には運転を止めることだけで無く、対処不能として原発を廃止することも含まれるのは当然のことである。

5.予見可能性の適用・噴火

  火山噴火は九州地方で有史以前に繰り返されたことは歴史的事実であり、いずれは再来するだろうと考えられている。九州全域をも越える噴火災害が起きたとしても、火山史から知ることが出来る規模を超えない限り「異常な天災地変」などとは言えない。
 近年でもピナツボ火山の噴火やセントヘレンズ火山の噴火は有史以後に起きた大噴火だ。大正噴火規模の桜島噴火でさえも「未曾有の」というには小さい。
 しかし原発にとっては、そのクラスの噴火でさえ影響を受ける。ましてや破局カルデラ噴火が姶良(あいら)カルデラで発生したら原発は崩壊するだろう。それでも「異常な天災地変」ではないのである。

6.予見可能性の適用・溢水勉強会

  日本では臨界事故(志賀原発及びJCOで)が起きていた時に、フランスでは世界初の海水浸水事故による原子炉緊急事態が起きていた。
 以下、規制庁の資料から、何が起きていたかを詳述する。

.. 2015年08月12日 08:18   No.946007
++ 山崎久隆 (社長)…552回       
ルブレイエ原子力発電所は、ボルドーの北、ジロンド河口に位置している、4基の95.1万kw加圧水型軽水炉がある。1、2、4号機が運転中、3号機が定期検査中という状況で、1999年12月27日から28日夜にかけて記録的な嵐に見舞われた。日本と同様に海岸線に立地している原発なので高潮の被害を受けることになった。
 海水や河川水の浸水被害を想定した防護対策が不十分であったことで、発電所のボーラーシステムおよび安全関連系統の多くの区画が浸水した。
 強力な低気圧により海面が上昇すると共に、最大風速56mに達する強風により吹き寄せられた海水がジロンド河口に押し寄せた。これが堤防内に氾濫し、ルブレイエ原子力発電所の敷地の一部が浸水した。
 1号機と2号機が洪水の影響を最も受け、3号機と4号機は室内に僅かの水が浸水した。送電網にも支障が生じた。
 全号機の225kV補助電源設備が24時間機能喪失し、2号機と4号機の400kV送電網が数時間喪失した。400kV送電網が復旧するまで、非常用ディーゼル発電機による電力は正常に供給された。
 原子力発電所の北側に位置するダクトの覆い板に水が浸水し、管理建屋と共通補助建屋の地下階層に浸水した。1号機と2号機の区画では、扉や開口部を通じて海水が広がり、電気室の地下階部分、海水ポンプ室の接続トレンチ、周辺建屋と燃料建屋の地下階に達した。この浸水により次の系統が電源喪失した。
 1号機のエッセンシャル・サービス水系(ESW)のA系列、1、2号機それぞれの低圧注入系と格納容器スプレイ系の両系列。
 この浸水の結果、1、2号機は、一次系の冷却に蒸気発生器を使用し、余熱除去系(RHR)で停止状態にもっていった。一方、4号機は高温停止状態から再起動した。

.. 2015年08月12日 08:26   No.946008
++ 山崎久隆 (社長)…553回       
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  これに対するJNESの記述は「日本の源発は津波対策を取っているから安全性が損なわれることはない」といった信じがたいものだった。しかしこうは言いながらも「インド洋沖津波の経験情報を用い、検討を実施することは有意義である」として、2004年に発生したスマトラ島沖地震に伴う津波災害に関して気になる様子を見せている。さらに「外部事象(津波)による溢水及び内部溢水の両方に対する施設側の溢水対策(水密構造等)の実態を整理しておく必要がある。」として、原子力事業者の内部でも注意喚起が測られていることが推測される。
 これを受けるようにして、2006年1月には保安院・JNES・電事連等による「内部溢水、外部溢水勉強会」が開かれている。
 更に東電でも2006年から社内で溢水勉強会が何度も開催されていることが分かっている。その第3回目で敷地を超える津波について議論されており、全電源喪失も想定されていた。東電は、次の章に述べる浸水被害の恐ろしさを認識していないと言うことはあり得ない。むしろ全電力でも最も強く感じていたはずである。だからこそ、10m盤から4m盤にかけて地下トレンチを敷設して海水管の損傷に備える防護対策を取ったのである。海水管からの漏えいよりも、もっと厳しくなる外部溢水について対策をしなかったのは、防潮堤を含む費用が1000億円規模になることが分かったからであり、長期に運転を止めている柏崎刈羽原発の再稼働準備に巨額の費用を投じている時に、さらに巨額の費用負担が出来ないと考えて先送りをしたのだ。地震と津波対策については、川内原発にも同様の問題が発生している。
 地震の規模を想定する際に、これまでよりも原発に近い位置にある断層について、国の地震調査研究推進本部(推本)がより大きな地震になり得る断層を公表している。さらに津波についても「想定の倍半分の誤差」という観点から見れば小さすぎる。これらを勘案すれば東電と同様に免震棟の建設以前に再起動しようとする九州電力の「先送り」方針で大惨事になる危険性がある。


.. 2015年08月12日 09:00   No.946009
++ 山崎久隆 (社長)…554回       
7.予見可能性の適用・水没していた非常用ディーゼル

  溢水勉強会は、単なる事例研究会などではなかった。具体的に浸水事故を起こしていた東電にとっては、海水侵入の危険性は十分すぎるほど理解できていたはずだからだ。東電では海水浸水被害は、それなりに「深刻」に捉えられていた事件が起きていたのである。
 1991年10月31日、1号機格納容器冷却系統に送られている海水配管が、地下で漏水を起こした。たまたま近くにタービン建屋があったため、漏えいした海水はタービン建屋に浸水、設置されていた非常用ディーゼル発電機の下部を水没させる事故になった。
 このため、発電機1台が長期間にわたって使用不能となる。非常用ディーゼル発電機は2台あるが、2台とも緊急時に起動できなければならない。点検中に短時間解列することは認められるものの修理のため長時間解体することは認めていないため、その間は運転できない。
 この事件の後に海水管はトレンチに収納され、点検管理と修理が出来るようになった。それまで埋めっぱなしというのも驚くべき事だが、それが点検可能になるのが運転から20年もたった後のことだというのも驚きである。
 このような事故を起こしたので、発電機水没のリスクを思い知ったはずだ。吉田所長も「原発にとって最大の事故」とまで言っている。しかしこの時は外部電源が健全であり、過酷事故と結びつけられることはなかった。
 米原子力規制委員会NRCの分析でも、炉心溶融に至る事故は、電源喪失が最も大きい原因としている。地震が起きれば外部電源は期待できないことは東電も当然のこととしていた。従って地震時に頼れる電源は非常用ディーゼル発電機だけなのは共通理解だった。その発電機が水没すれば一巻の終わりであることを認識しつつ水没させた東電の行為は、過酷事故を予見しながら6号機の1台を除いて溢水に強い作りにしなかったこと、さらに6号機の一台を溢水に強い空冷設備として設置したのに、1〜4号機に連絡線を敷設しなかったため電力を送れず、生き残ったディーゼル発電機は5、6号機の冷却にしか使えなかったことを含めて、予見しながら対策しなかった東電の責任である。
 川内原発の場合も似たことが起きている。外部電源を強化し、非常用ディーゼル発電機が使えない場合でも外部電源で供給できるほどの対策をしているかと言えば、そんなことはしない。非常用ディーゼル発電機が使えない場合に備えているのは、もっと信頼性が低い電源車であり、外部接続線である。
 耐震Sクラスで設備されている安全保護系回路が破壊されるような事態で、耐震クラスさえない外部の電源車や接続設備が耐えられると考えているのならば、あまりに楽観的である。実際の地震にさえ遭遇したことのない設備を、緊急時に当てにせよとする発想自体が、安全設備に対する理解の欠如を物語っている。これでは事故を準備しているに等しい。


.. 2015年08月12日 09:28   No.946010
++ 山崎久隆 (社長)…555回       
8.予見可能性・蒸気発生器

  川内原発は加圧水型軽水炉であり、福島と異なる大型設備「蒸気発生器」を持っている。この装置は巨大なので地震の影響を大きく受ける。それだけではない。
 蒸気発生器内部の細管は、直径21ミリ、厚さ1.3ミリのインコネル(ニッケル・クロム・鉄の合金)製の管であるが1台の蒸気発生器に約3400本もある。
 川内は3ループ式なので3台ある。合計11000本を超える。1本でも破断すれば炉心から冷却材が失われる事故になる。1992年に発生した美浜原発2号機の細管破断事故では原子炉頂部に空げきが生じたが、運転中には誰もそれを認識していなかった。原子炉への注水は高圧注入系で行われていたが、これを止めてしまってメルトダウンを引き起こしたのが1979年のスリーマイル島原発事故である。
 1号機は既に新しい蒸気発生器への交換が終わっている。ところが2号機は新品の蒸気発生器を倉庫にしまったまま、30年ものの老朽化したものをそのまま使う予定になっている。交換用のものがあるにもかかわらず交換工事をしないで運転するとは、より安全性を高める努力放棄して再稼働ありきの事業者の姿勢を表している。安全よりも経済優先、命より金という態度がここでも露骨に表れている。交換したからといって劇的に安全性が向上するわけではない。蒸気発生器が新しくなるだけで、原発の事故確率を大幅に下げる効果は無い。しかし美浜原発2号機のような蒸気発生器の細管損傷は地震の際に最も懸念されることでもあり、さらに2号機の蒸気発生器の細管は厳しい状態にあることが予見される。
 その対策をしないで蒸気発生器の細管破損をきっかけとした重大事故が起きれば直ちに、その責任を問われることになるのである。

9.事故時に避難も出来ない
 
  原発の再稼働を「認可」するのは誰なのか。原子炉等規制法では、認可手続きは経産大臣の所管事項であるが、事故後の手続きは極めて曖昧になっている。
 実際には、再稼働というのは川内原発1号機にとっては「第21回定期点検の終了」に過ぎない。定期点検の最後には、総合負荷試験があり、その合格証をもって営業運転入りが可能と言うだけである。
 ただし、今回は原子炉等規制法に基づく原子炉設置変更許可申請が加わっているので、許可の手続きと、その工事を行うための工事計画認可申請手続きがあった。さらに保安規定の変更申請もあるので、その審査結果も出された。また、30年を超える原発に義務づけられている「高経年化技術評価等に係る原子炉施設保安規定変更認可申請」(いわゆる老朽源発の技術評価)が、むりやり8月5日に認可された。
 行政手続き上は、これらが進めば再稼働できると考えているのかも知れないが、重大事故が起きた時に必要な災害対策、住民避難などはほとんどまともに策定されていないし、誰が再稼働を承認したのかもはっきりしない。すくなくても30km圏内の住民、自治体の了解があったわけではない。
 防災計画も作れないまま、既成事実として原発の運転が強行されるのであれば、3.11とは一体何だったのか、深刻な問題と言わなければならない。
  以上、あらゆる観点から、再稼働は犯罪である。事故が起こればもちろんのこと、仮に事故が起きなかったとしても、準備も態勢も整わない再稼働は、それそのものが犯罪行為である。


.. 2015年08月12日 09:38   No.946011


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