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原発と東芝の闇 竹田茂夫
先頃、東芝の会計操作に関する報告書が出た。トップの当期利益主義のプレッシャーにより組織を挙げて粉飾会計まがいの不正が行われたという趣旨だが、批判が多い。報告書は上意下達の企業風土や内部統制の緩みに意図的に限定しているからだ。なぜ見かけだけの利益計上にはしったのか。経営者の資質や企業統治を超える重大な問題があるはずだ。 2006年、経済産業省の原発推進に呼応して、東芝は米原発メーカーのウェスチングハウス(WH)を破格の値段で買収した。巨額買収で活躍したのが、原発一筋の経歴で後に東芝のトップとなり、不正会計の元凶として報告書でも指弾された人物だ。3・11以降も強気の発言を繰り返し、安倍政権にも民間委員として協力してきた。 東芝の昨年末の資産合計約7兆円のうち、約1兆5500億円が「のれん」や繰り延べ税金資産などの将来の収益予想に依存する頼りない性質のものだ。「のれん」とは買収額がWHの純資産を上回る部分を指すが、今後、原発商売が下向けば減損処理を迫られる。だがそのための自己資本は1兆4000億円ほどしかない。無理な買収のつけが不正会計に表れたのではないか。 東芝は優れた事業を他に多く持ちながら、原発輸出など国策の先兵として動いてきた。袋小路の原発との心中以外に道はないのか。 (法政大教授) (7月30日「本音のコラム」より)
.. 2015年08月10日 10:57 No.945002
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