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【4.格納容器での水蒸気爆発】(p190〜195)
「代替格納容器スプレーにより、格納容器雰囲気を冷却、減圧する。水蒸気爆発は、申請者の実機において想定される熔融物を用いた実験により、一部実験でのみ発生し実機では考えにくいことを示した」と。何を言おうとしているのか理解できない。申請者がどのような実験をしたのか一切不明のまま、その主張を信じろという。
【5.格納容器での水素爆発】(p195〜201)
「加圧水型では格納容器は大きいので水素濃度は高くならない。そして燃焼処理している」と。 この説明は、TMI事故で、格納容器内に3回の水素爆発があったことを完全に無視している。その内1回は、格納容器上部で発生し、爆発の圧力は2気圧だった。そして天井の周辺とクレーンは熱損傷した。すでに述べたが、TMIは頑丈な構造だったので格納容器の破壊はなかったが、その他の原発の格納容器では崩壊の可能性がある。 この重大な事実に一切言及しない九電と規制委には故意がある。
【6.格納容器での底抜け】(p201〜205)
「熔融炉心を冷却し、熔融炉心によるコンクリート侵食を抑制するために原子炉下部キャビティに注水する。これにより、コンクリートの侵食は3ミリ程度に止まる」と。 熔融炉心が塊となって格納容器の底に積もった場合、水を注いでも熔融炉心の下に水が潜り込めない。また炉心とコンクリートとが接して発生した炭酸ガスが水を押し上げるからなおさらである。そのうえ、海水を使用すれば、熔融燃料は塩で包まれることになり、熔融燃料の冷却は阻害されることになる。 この格納容器底抜け問題は、福島1−2号機で発生しており、破損核燃料はコンクリートを突き抜けて土台に穴が開き、注ぎこんだ水は環境に流れだしている。1号機と3号機では核燃料がばらまかれたので、コンクリートに穴をあけることにはならなかったが、2号機では核燃料がまとまって落ちたことで格納容器底抜けの事態になった。 九電も規制委も、福島原発事故について、理解が足りない。このような組織に運転させたり、規制させたりすることは危険このうえない。
【(規制すべき最重要事項) 格納容器ベント(ventilation)】
申請者九電と審査者規制委が故意に話題としなかった問題にベントがある。 格納容器の冷却に失敗した場合に、格納容器の一部が水素爆発で破損し、また格納容器の冷却にも失敗し、そのうえ水素と炭酸ガスが溜まるという極端な場合はなおさらベントすることの要求となる。 ベントとは、発電所を救う代わりに周辺住民を襲うことであり、風向きなど気象条件による制限と住民への通知について、定めが必要となるが、請求も、審査もしていない。 (了)
※(注1):(事故情報編集部注:TMI−スリーマイル島原発。 スリーマイル島原発事故は、1979年3月28日、アメリカ合衆国東北部ペンシルベニア州のスリーマイル島原発で発生した重大な原子力事故。スリーマイル島 (Three Mile Island) の頭文字をとってTMI事故とも略称される。原子炉冷却材喪失事故 (Loss Of Coolant Accident, LOCA) に分類され、想定された事故の規模を上回る過酷事故 (Severe Accident) である。国際原子力事象評価尺度 (INES) においてレベル5の事例である。)
※九州電力川内原発の審査書を批判する(その1)「炉心損傷防止対策 批判」は、 7月10日発信の【TMM:No2531】に掲載しました。
.. 2015年07月13日 08:54 No.933011
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