|
神奈川県の箱根山でごく小規模な噴火が起き、気象庁が昨日、噴火警戒レベルを3(入山規制)に引き上げた。不便もあるだろうが、安全を最優先したい。それが火山との付き合い方だ。 各地で火山活動が活発化している中、箱根山は5月6日に噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)に引き上げられた。約2カ月でレベル3となった。 心配されているのは、昨年秋、御嶽山(長野、岐阜県)で起きたような水蒸気爆発だ。大涌谷周辺の想定火口域で爆発が起きると、噴石が周囲700メートルまで飛ぶ可能性がある。箱根山は広いので、規制区域は一部に限られているが、避難を強いられた人もいる。地元の人からは不安の声も出ている。 レベル2になってから今回の噴火まで爆発はなかった。「箱根山全体が危険だと誤解されている」との指摘があり、気象庁は火山情報の表記を「箱根山」から「大涌谷周辺(箱根山)」と変えた。関係者が知恵を絞り、観光への影響を抑える努力をしてきた。 一方、地震活動は一時、低下したが、地殻変動が続いていたことから、警戒レベルは変えなかった。安全を最優先した専門家の見識に敬意を表したい。 だからこそ、一つ注文を付けたい。噴火活動はどうしても長期化する。警戒レベルがずっと同じだと、警戒心は薄くなる。 噴火のあった6月29日は、午前7時32分から約5分間、火山性微動が観測された。火山性微動は熱水やマグマの移動を示すとされる。箱根山での観測は初めてだった。このような場合、警戒を強めた方が良いことを、誰にでも分かるように伝える工夫をしてほしい。たとえば「2強」のような表現はできないだろうか。 箱根山では約3200年前、大規模なマグマ噴火が起きたこともある。その兆候は見えないが、油断はできない。大噴火も初めは水蒸気爆発から始まることが多い。いったん活動が始まると、その後、どのような噴火が続くのかを予想するのは難しいという。気象庁などは観測により力を入れてほしい。 噴火の制御はできないが、噴火は必ず終息する。御嶽山は6月26日、警戒レベルが3から2へ引き下げられた。蔵王山も同月16日、火口周辺警報が解除された。箱根山でも、終息する日まで火山情報に敏感でありたい。それが風評被害を防ぐ方法でもある。 (7月1日「社説」より)
.. 2015年07月02日 08:23 No.932001
|