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■--世界の気候にも影響を及ぼす火山灰
++ 島村英紀 (大学院生)…111回          

   「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその101
 └──── (地震学者)

 いまからちょうど200年前、現在に至るまで世界最悪の噴火が起きた。
 1815年4月にインドネシアのタンボラ山が大噴火を起こしたのだ。
 噴火で村が丸ごと消滅し、インドネシアでの噴火による直接の死者は1万人にのぼった。そして噴火後の食料枯渇のため餓死や流行した疫病を含めてインドネシアでは9万人もの死者を出してしまった。
 しかしそれだけではすまなかった。影響は世界中に及んだのだ。
 噴火があった1815年の夏は世界的に異常な低温になった。上空高く舞い上がった火山灰は世界中に拡がり、地球に降り注ぐ太陽熱を遮って世界の気候を変えてしまった。
 米国北東部では6月に雪が降るほどの異常低温になった。英国やスカンジナビア半島でも5月から10月まで長雨と低温が続いて農作物が不作になった。
 ヨーロッパでは食料難から各地で暴動が発生した。なかでもスイスは深刻だった。子どもに食べ物を与えられなくなった母親たちが、飢餓で苦しんで死んでいくわが子を見るに堪えず自らの手で殺害した。彼女たちは後に裁判にかけられ、斬首刑となった。
 翌1816年も世界各地で「夏のない年」と言われた。噴火後5年間にもわたって、世界各地で太陽が異常に赤っぽく見えたり、太陽のまわりに大きな輪が出現する「ビショップの環」が見えたりした。噴火で舞い上がった火山灰は、それほど長い間、世界中の空を漂っていたのである。
 もっと大きな影響があった噴火も過去にはあった。
 同じインドネシアのクラカタウ火山は西暦535年に大噴火して地元にあった高度な文明が滅びてしまった。だがそれだけではすまず、この噴火による気候変動を発端として、東ローマ帝国の衰退が起き、イスラム教が誕生し、中央アメリカでマヤ文明が崩壊し、少なくとも4つの新しい地中海国家が誕生し、ネズミが媒介するペストが蔓延したことなど、人類にとっての大事件が次々に引きおこされたのではないかと言われている。
 じつはクラカタウ火山は1883年にも大噴火した。このときも北半球全体の気温が下がるなど世界の気候が変わってしまった。数年にわたって異様な色の夕焼けが観測された。ノルウェーの画家ムンクが1893年に制作した代表作「叫び」は、この夕焼けがヒントになっていると主張している学者もいる。
 今年4月に南米チリでカルブコ火山が43年ぶりの噴火をして、地元で6500人もが避難を強いられた。
 この噴火での火山灰は15000メートルまで上がった。成層圏だ。この高さまで上がってしまった火山灰は世界をめぐる。
 もし火山灰の量が多ければ、1815年のタンボラ山ほどではなくても世界の気候に影響するかもしれない、と地球物理学者は心配しているのである。
  (5月8日『夕刊フジ』より)

.. 2015年05月13日 08:13   No.910001

++ 島村英紀 (大学院生)…112回       
日本で最大津波“明和の大津波”を起こした琉球海溝
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその102
 └──── (地震学者)

 沖縄・石垣島には漁師がまちがって人魚を捕まえてしまったという伝説がある。
 その人魚を海に帰してあげたお礼に人魚から大津波が来ることを教えられた。信じる人たちは山に登って避難したが、信じない人たちは村に残り、村は津波に飲み込まれてしまった。
 この津波は1771年の「明和の大津波」。宮古・八重山の両列島で死者行方不明者が12000人以上にものぼった。
 東日本大震災が日本海溝に潜り込む太平洋プレートが起こしたのと同じように、こちらは琉球海溝から潜り込むフィリピン海プレートが大津波を起こしたのだ。津波の高さが100メートルにも達した日本史上最大の津波と言われてきた。
 石垣島の東海岸には途方もない大きさの石がいくつも転がっている。大きなものは大型バス2台が並列駐車したくらいの岩で、重さは1000トンもある。上に大きな木が茂っている。
 これらの巨岩はサンゴが作った石灰岩である。かつての大津波が海底から持ってきたものだ。
 この巨岩がいつの津波で上がってきたものか、最近の研究で明らかになってきている。
 その手法は「堆積残留磁化(たいせきざんりゅうじか)」を利用するものだ。サンゴが石灰岩になったり、マリンスノーが海底に降り積もるときには、そのときの地球の南北を憶えている。その後の津波で転がって向きが変われば、回転した角度が分かる。海底から海岸に打ち上げられたときに回転しないことはまずないから、回転が分かることは、その岩が打ち上げられたことを意味しているのである。
 その後も微弱ながらその後の南北を憶えている。それゆえ再び大津波に襲われて転べば、その岩の磁化から何遍回転したかが分かる。
 一方、巨岩だけではなく、もっと小さな岩も打ち上げられた。小さい岩や砂は内陸まで運ばれる。それら大小の岩の分布から、津波の高さも正確に推定できるようになった。
 その結果によれば、1771年の津波の高さは、いままで知られていたよりも低く、約30メートルではなかったかということも分かった。しかし、それにしても大きな津波だった。
 これらの巨岩のうち、35トンほどの重さの岩は1771年の津波で回転したものだった。ところが200トンの岩は1771年の津波では動かず、もっと前の、約2000年前の大津波で回転したことが分かったのだ。
 つまり、大津波は過去何度も琉球海溝で起きて、もっと大きなものも襲ってきたことがあったのである。
 日本人が日本列島に住み着いたのはせいぜい1万年前。しかし、地震も津波もそのはるか前から起き続けてきている。
 研究が進むにつれて、いままで知られていなかった恐ろしい津波があったことが知られるようになっているのである。 (5月15日『夕刊フジ』より)


.. 2015年05月19日 08:20   No.910002
++ 島村英紀 (大学院生)…113回       
100年以上続く余震 「嵐の前の静けさ」は本当かも
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその103
 └──── (地震学者)

  先週、強い地震があり、岩手県花巻で震度5強を記録した。地元の人たちは久しぶりの震度5だっただけに驚いたことだろう。幸い被害はなかった。
 これは東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)の余震に違いない。
  余震が他の地震と性質が違うわけではない。それゆえ地震学的には余震を他の地震と区別することはできない。
 だがこの地震は本震の震源域の中で起きたこと、地震のメカニズムが典型的な海溝型地震であることから、ほぼまちがいなく余震と言っていいものであった。
 余震は、怪我をしたあとの「うずき」のようなものだ。本震で地震断層が動いたあと、本震の領域内で小さめの地震が起き続ける。それが余震なのである。
 余震は時間とともにゆっくり減っていく。
  ただし数学的には原子核の崩壊のように「指数関数で減って」いくのではなく、本震直後の減り方は指数関数より速いのだが、後に長く尾をひくという特徴がある。つまり、意外に長く続くのである。
 たとえば米国では余震が200年以上も続いている例もある。これはミズーリ州とケンタッキー州の州境で1811年から1812年にかけての3ヶ月弱の間に、マグニチュード(M)が8を超える大地震が続けて3回起きた。その余震である。
  日本でも、岐阜県と中心に愛知県や福井県まで地震断層が伸びていた濃尾地震(M7.9、1891年)の余震は100年以上も続いていたのが知られている。
 しかし日本ではふだんから地震活動が高いので、余震がたとえ続いていたとしても、他の地震にまぎれてしまう。米国では地震の活動レベルがごく低いから、こんなあとになって小さな地震がわずかに起きても、余震に違いないと分かる。つまり日本でも余震は続いているのだが、見えなくなってしまうのだ。
 M9という東日本大震災くらい大きな地震だと余震はやはり100年以上も続くと思われている。4年や5年では収まるものではなく、これからも余震が続き、なかには大きいものも混じることは間違いがない。
  経験的には最大の余震のMは本震よりも約1小さいことが多い。だが、東日本大震災のように陸から遠い海底で起きる地震は別だが、陸で起きた本震では、広がりがある余震域のどこで大きな余震が起きるかによっては、本震なみの震度のこともある。本震で傷んでいる家屋や、崩れかけている斜面の地滑りなどに余震がだめ押しになってしまう可能性がある。
 ところで、地震予知はむつかしくて世界でも成功した例はないが、余震のように、起きる場所も、起きるメカニズムもある程度分かっている地震群では、地震予知が出来るのではないかと研究した学者がいる。
  唯一分かったことは、大きな余震の前に余震の数が減る静かな期間があることが多いことだった。余震では「嵐の前の静けさ」は本当かもしれない。
 そのほかは残念ながら、いつ、どのくらいの大きさの余震が起きるのか、役にたつ情報にはほど遠い成果しか得られなかったのである。
   (5月22日『夕刊フジ』より)


.. 2015年05月27日 08:23   No.910003
++ 柳田 真 (大学生)…72回       
地震が多い、火山噴火もひん発−原発が心配だ!
 |  が、テレビ・大手新聞は意識的に原発に触れない。おかしい。
 └──── (たんぽぽ舎、再稼働阻止全国ネットワーク)

1.箱根の噴火に続いて、九州鹿児島県の桜島の噴火(4000mの噴煙)、口之永良部島(くちのえらぶしま)の噴火(9000mの噴煙)が続いた。続けて、5月30日(土)には、小笠原諸島近海で、マグニチュード8.1(修正値)という大きな地震が起きた(兵庫県南部地震=阪神淡路大震災よりも16倍も大きいエネルギー)。
 日本列島各地で、地震が頻発し、火山も噴火し続けている。原発が危ないのではないかと誰もが思う。

2.ところが、テレビ・大手新聞は、全く原発に触れない(東京新聞のみが1回報じた)。意識的に地震・噴火と原発を切り離している。桜島などは、すぐ近くに九州電力川内原発があるというのに。
 又、東大地震研の中田節也教授が「南九州全体が危ない」(つまり、川内原発も危険範囲内だ)と言っているのに、これまた、報道しない。逆に、屋久島へ避難した島民を自衛隊が助けているという報道がされる。なんたることだ。
 「ものの本質」を全く報道していないNHK・民放テレビ・大手新聞にあきれる。原発再稼働が間近なので「報道統制」がおこなわれている感じだ。
 こういう事態に際し、私たちは、メールマガジンなどを使って、全力で、大事な情報を発信していこうと思う。

.. 2015年06月02日 08:03   No.910004
++ 山崎久隆 (社長)…531回       
また一つ「常識」が覆された プレート内地震でMj8.5
 |  原発が危ない、「再稼働は自殺行為である」
 └──── (たんぽぽ舎)

◎ぎょっとするほど大きく揺れた小笠原近海の深発地震。震央位置、モーメントマグニチュードなどを米国地質調査所が公表。Mjは8.5だけれどMwは7.8。防災科研はMw7.9
 父島空港まで震央距離約210km、母島までは約190km、震源距離は深さが590kmが正しいとしたら約610km、これだけ離れていて震度5強は脅威。
  こちら 
 気象庁の記者会見を途中で打ち切ってレベルの低い解説をはじめるNHKには毎度の事ながら腹が立つ。異常震域の発生理由とか、この地点でMj8.5が起きるメカニズムとか、それが他の海洋プレート内で起きるのか、とか、解説すべき事は山のようにあるのだが。この影響で大涌谷がやや心配。フィリピン海プレートを伝って震度5強の揺れが二宮町に到達。箱根と近い。約22km。

◎小笠原諸島西方沖はこれまでの「常識」を覆したか。伊豆小笠原海溝で起きる地震には巨大地震は無いという考えは通用しなくなった。分かっていないことの方が遙かに多いのが地震と火山。自然の営みにもっと謙虚でなければならないわけで。

◎さて、川内原発と伊方原発の下には、フィリピン海プレートが潜り込んでいることは「分かっていること」。さらに今回の地震はプレート内(スラブ内)地震だと思われること、さらに、海洋プレート内の地震でこれほど大きいものは観測史上初めて(かもしれない)こと、さらに川内も伊方も、そんな巨大なスラブ内地震は想定外であること。これらをつなぎ合わせて出てくる結論は「再稼働は自殺行為である」こと。

◎そのことをはっきりと言うべきは気象庁と地震学会である。石橋克彦さんははっきりと述べていた。では他の人たちはどうするのか。曖昧な発言は出来ないなどと言っている内に再稼働してしまう。そうなれば原発震災が起きるまで、原発は止まらない。
 なお立石雅昭さんや渡辺満久さんや島村英紀さんなどは発言を続けています。
 報道は、ほとんど取り上げていませんが。(以上は、5月30日にFacebookで発信した内容)

.. 2015年06月02日 08:08   No.910005
++ 山崎久隆 (社長)…532回       
原発の耐震設計審査指針は無効
 |  川内、伊方原発はプレート内巨大地震で破壊される
 |  真下で起きるM8クラスの地震に川内、伊方原発が
 |  耐えられると事業者や規制委は言い切れるのか
 └──── (たんぽぽ舎)

◎残念ながら、原発再稼働と今回の地震・噴火を関連づけた報道は皆無だった。
 せいぜい「東海原発には異常なし」などの規制委、事業者発表の広報紙に過ぎなかった。
 原発再稼働を前に、自然の猛威はひたひたと原発に迫っているように感じる。
 川内原発が立地する南九州は火山列島そのものである。阿蘇山、桜島は現在進行形で噴火を繰り返し、東日本太平洋沖地震の前年には宮崎県の霧島山、新燃岳が噴火している。そして5月29日には口永良部島が昨年8月に引き続き、マグマ水蒸気爆発を起こした。その衝撃が続く中、翌30日午後8時23分頃、遠く太平洋上の伊豆小笠原海溝の近く、小笠原諸島の西方沖を震源とするマグニチュード(Mj)8・1(当初は8.5から下方修正)の地震が発生、小笠原諸島の母島と神奈川県二宮町で震度5強を観測した。震源の深さは約682キロ(こちらも当初590キロから下方修正)と、深発地震であったことで遠く北海道から沖縄までの全国各地で揺れが観測された。大きな震度が震源からの距離に比例しない「異常震域地震」であることも特徴である。

◎知られていない地点で大地震か

  地震が起きたのは、伊豆小笠原海溝に近い地点で、太平洋プレートがフィリピン海プレートに潜り込んでいる先の太平洋プレート内で起きた。
 しかし少しおかしな点がある。この位置では太平洋プレートがフィリピン海プレートに潜り込む深さは250kmほどである。実際に大小沢山の地震が毎日のように起きているのだが、それはもっとずっと浅い位置。深度682kmというのはプレート内としても余りにも深い。こんな深くでは、この地点では、これまではさほど大きな地震は起きていないと思うので、その点に限れば「想定外」の出来事か。予測どおりに起きる地震はほとんど無いという証拠では無いだろうか。
 ただし伊豆小笠原海溝付近の地震は歴史上いくつか知られている。延宝房総沖地震などだ。また、巨大津波で 西日本各地に大規模な被害が出た1707年の慶長地震は、南海トラフの地震だとしたら説明が付かないこともあり、この伊豆小笠原海溝付近の地震ではないかとの説もあるという。


.. 2015年06月03日 07:59   No.910006
++ 山崎久隆 (社長)…533回       
◎西之島新島と地震

  東日本太平洋沖地震により日本各地は地震と火山の活動期に入ったと見られている。最近、世界で起きたマグニチュード9以上の地震では、その後に大規模な火山噴火や誘発される地震が起きている。チリもインドネシアも例外ではなかったし、日本も例外ではない。
 現在、箱根・大涌谷や富士山などの噴火が迫っているのではないかとの懸念が高まっているようだが、その前に現在噴火している火山を忘れていないだろうか。
 この火山は「西之島新島」。フィリピン海プレートに潜り込む太平洋プレートの「火山フロント」である。東日本太平洋沖地震によりプレート境界面に何らかの応力が掛かった。そのため西之島新島で大きな噴火に繋がったが、これだけではプレート間地震と火山の関係が説明出来ない。
 火山の噴火は、地中のマントルに水が作用してマグマが生じ、それが地表面に出てくることで起きる。すなわちプレート内部に含まれる大量の水(海水)が火山のエネルギー供給に寄与している。西之島新島が噴火を続けているのは、太平洋プレートとフィリピン海プレートに含まれる海水が大きく寄与している。

◎異常に深い地震の意味は

  深発地震とはおおむね200km以下の深い地点で起きる地震を指すが、682kmなどという深さはあまり例がない。(2004年のマーシャル諸島770kmとか、全くないわけではないが)このような地震は、沈み込む海洋プレート(スラブという)の内部で起きると考えられるが、一般に深度が深くなればスラブが地熱で暖められ、剛性が低下して地震は起きにくくなる。ところが今回、太平洋プレートのスラブ内でマグニチュード8.1の地震が起きたということは、このような大深度でも大きなエネルギーを放出するほどにスラブの剛性があることになる。
 さて、日本列島内部には太平洋プレートとフィリピン海プレートが潜り込んでいる。いずれのプレートもスラブ内地震を沢山起こしているが、その上限規模がスラブの厚さと深さによって規定されてきた。つまりあまり深くまで地震を起こすほど剛性を有しないとか、プレートの厚さが薄ければ大きな地震を起こさないといった類のものである。
 しかし今回、太平洋プレート内の地震としては想定を超える深度で、想定を超える地震が起きたことは大変重い。
 川内原発はおよそ200キロほどの位置に太平洋プレートのスラブが沈み込んでいる。伊方原発はわずか40キロほどの位置に太平洋プレートが存在する。
 いずれもマグニチュード8を超えるスラブ内地震を想定していない。真下で起きるマグニチュード8クラスのスラブ内地震にも、両原発が耐えられると事業者や規制委は言い切れるのか。
 その答えは再稼働前に明らかにしなければならない。
  原発震災を繰り返したくないと思うのならば、両原発の再稼働は拒否しなければならない。


.. 2015年06月03日 08:06   No.910007
++ 島村英紀 (大学院生)…114回       
石から分かる歴史とナゾ
 |  辺野古埋め立て岩石で将来の地球科学者を惑わせる!?
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその104
 └──── (地震学者)

  地球科学者は現場で採取してきた石から、その場所の過去の成り立ちを研究する。こうして地球の過去が少しずつ解明されてきた。
 しかし、拾ってきた石の中には、どう見ても解釈に困るものがあった。たとえば北太平洋で深海底から取ってきた石は、そこにある海底火山の近くにはあるはずがないものだった。
 この不思議な石の解明は結局、できなかった。いまの唯一の解釈は、クジラのような海中生物がほかの場所で呑み込んできて、ここで死んだのではないかということなのである。
 また南洋のサンゴ礁の海岸から学者が取ってきた石も明らかに大陸性のものだった。そこにあるのはふさわしくない石だったのだ。
 この「理由」は後年、わかった。戦時中に日本軍が港を作るために、日本本土から運んだ大量の岩石のひとつだったのである。
 港を作るためだけではない。近年には静岡県の駿河湾にある富士海岸の海岸浸食の対策として三重県鳥羽市の沖にある菅島(すがしま)にあったかんらん岩を「養浜材料」として大量に海に投入した。
 駿河湾の沿岸は、台風がよく襲ってくるところで、何度も台風の被害に遭った。なかでも1966年の台風26号では、甚大な被害をこうむった。富士海岸は、そもそも高波が異常に発達する地形で、そのための被害が多いだけではなく、砂がなくなって海岸侵食も進んでいた。
 菅島から持ってきたのは比較的近くで船で低コストで運べるからだろう。
  だが、これによって学問は手こずることになった。富士川上流や周辺の海岸から自然に流されてきた岩と区別が出来なくなってしまったからである。
 沖縄・宜野湾市の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設が問題になっている。滑走路を新たに作るために172ヘクタールの海を埋め立てる工事が始まろうとしている。
 辺野古の埋め立てに使う岩石の約8割を九州や本州から岩石を運ぶことになっている。その量は2100万立米、東京ドーム17個分という大量のものだ。
 沿岸の埋め立て工事には土砂や岩石を近隣から調達するのが普通だ。しかし南洋の島や沖縄のように狭い島での調達が難しいときには遠くから運ぶことがある。
  しかも沖縄の場合には、環境問題などで地元との摩擦を避けたい当局の思惑があったといわれている。また当局が直接採取すると環境アセスメントが必要だが、九州など沖縄以外の業者から購入すると環境アセスメントが不必要になることも理由だったろう。
 運ばれて海に沈められる岩石にもちろん印が着いているわけではない。かくて、将来の地球科学者を惑わせたり、学問的な結果を狂わせてしまう石が、今後、沖縄にも大量に運ばれることになるのである。
    (5月29日『夕刊フジ』より)


.. 2015年06月04日 11:40   No.910008
++ 島村英紀 (大学院生)…115回       
深発地震の脅威 47都道府県で震度1以上
 | 深発地震にはまだナゾが多いのである
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその105
└──── (地震学者)

  先月の30日夜、北海道から沖縄県まで47都道府県で震度1以上の揺れを観測した地震があった。全部の都道府県で有感になったのは初めてのことである。
 この地震は小笠原諸島近海を震源とするマグニチュード(M)8.1という大きな地震で、震源の深さは約700キロメートルという深いものだった。この種の深い地震は深発(しんぱつ)地震と言われる。
 そもそも地震はプレートの中とすぐ近くでしか起きない。世界でもプレートがたまたま深くまで潜り込んでいるところだけ、こういった「深発地震」が起きる。
 起きる場所は今回のような日本南方の海の深部のほか、日本海の深部、南太平洋のトンガ・ケルマデック地域や、サイパン・グアム島の地下や、南アメリカの太平洋岸の地下など、ごく限られたところだけだ。
 世界でいちばん深い地震は今回くらいの深さで起きる。とても深いようだが、地球の半径でいえば、せいぜい1/10くらいまでしか起きない。
 では、その限界の深さはどうやって決まっているのだろう。それは「海洋プレート」が地球の中に潜り込んでいっている下限なのである。
 いや、正確に言えば、深発地震が起きることによって、そこまで海洋プレートが潜り込んでいることが知られるようになったのだ。
 たとえばロシア東部の沿岸の地下700キロメートルのところで深発地震が起きたことがあり、このことから太平洋プレートが日本海溝から滑り台のように地球の中に潜り込んでロシア東部の地下にまで達していることが分かったのである。
 だが、世界の深発地震がいつもこの深さまで起きているわけではない。
  たとえば同じ太平洋プレートでもアリューシャン海溝では地下200−300キロメートルまでしか深発地震が起きていない。つまり太平洋プレートはこの辺までしか潜り込んでいないことが分かっている。
 また、やはり海洋プレートであるフィリピン海プレートは南海トラフから西南日本の地下に潜り込んでいるが、その深さは約100キロメートルまでにしか達していない。
 これは、フィリピン海プレートやアリューシャン列島での海洋プレートが、海溝から潜り込みはじめたのが比較的新しい時代からだったことを示している。
 ところで、もっとへんな深発地震の起きかたをしている場所がある。
  ニュージーランドの北にあるニューヘブリディーズ海溝や南米の西沖にあるペルー・チリ海溝では、潜り込んでいるプレートが途中で切れて離れてしまっているのではないかと思われている。地震が途絶えている深さがあるのだ。
 じつは、深発地震がなぜ起きるのかはまだ学問的にわかっていない。浅い地震のように、押された岩が摩擦の限界を超えて起きるメカニズムは起きるはずがないものなのだ。温度も圧力も高い深発地震が起きる深さでは岩の性質が変わってしまうからだ。
 深発地震は今回の地震に限らず、Mが大きくても大きな被害を生むことはない。しかし深発地震にはまだナゾが多いのである。 (6月5日『夕刊フジ』より)


.. 2015年06月08日 08:03   No.910009
++ 柳田真 (平社員)…147回       
.「自然」は警告している−(日本は)原発はムリ、やめよ
 |  1995年阪神大震災と2015年の噴火・大地震の警告
| 再稼働は日本を滅ぼす  連載29
 └──── (たんぽぽ舎・再稼働阻止全国ネットワーク)

1.原発は世界のどこでも危険でやめるべきだが、特に日本ではそうだ。地震(世界の15%−20%が日本で起きる)、津波、火山噴火大国であり「原発はムリ、即時やめるべきしろもの」である。この自然からの警告はしばしば起きている。
2.私見では、20年前の1995年1月の兵庫県南部地震(M7.3・阪神淡路大震災・死者6000名強)と1995年12月に起きた特殊原子炉もんじゅ(兵器級プルトニウムを生産する特殊な原子炉)の事故の2つである。
 この年の末に私は書いた。この地震は原発をやめよという「自然界からの警告」だ、と。この警告を生かさなければ日本の未来は危ないと。 
 当時は原発はいけいけどんどんの時代で、原発廃止派は極少数派であった。デモも本当に少なかった。2011.3.11福島原発大惨事の16年前で、原発やめようの声は残念ながら細々としたものだった。
3.今年は地震が多い.噴火が多い。箱根の地震に始まり、鹿児島の口永良部島の大噴火(噴煙は9000メートルも上がった。)、東京小笠原諸島の深海巨大地震(当初M8.5、暫定値M8.1)と続いている。
 第2次世界大戦から70年目。敗戦直後から50年間位は日本列島は静かだった。この時、原発建設が強行された。今日本列島は大変動期、又は地震火山の活動期といわれる。
 2015年の地震と火山噴火を「自然からの最後の警告」ととらえなければ、日本列島とそこに住む人々は衰退に向かうだろう。私たちの賢明さと原発廃止運動の深化が試されている歴史的岐路だ。
 安保法制(戦争法制)なんてとんでもない。戦争になれば最初に原発が攻撃されるのだから。
4.日本では学生にもっと「地学」を学ばせるべきだ.高校などでは選択科目とせず、必修科目としてほしい。地学と社会科で日本の地理、地形など、その歴史も含めて、祖先の暮らしも含めて、学んでほしいもの。願わくば、原発やめる運動に若い人の参加を。


.. 2015年06月12日 07:54   No.910010


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