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規制委員長こそ事実誤認 高浜差し止め反論に批判 論点すり替え 突然、非常電源に言及 国民期待は分かりやすい基準
関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働差し止めを命じた福井地裁の仮処分決定について、原子力規制委員会の田中俊一委員長が「事実誤認がいくつかある」と発言した。これに対し、申し立てた住民側からは「事実誤認は田中委員長の方。決定の内容を真摯(しんし)に受け止めるべきだ」という反発の声が上がっている。 決定が出たのは14日。地裁は規制委が定めた新規制基準について「緩やかにすぎ、合理性がない」と指摘し、基準に適合したとしても原発の安全性は確保されず、再稼働は認められないと結論づけた。 翌15日に開かれた会見で田中委員長は、3、4号機の使用済み核燃料を貯蔵するプールの給水設備について、裁判所の決定が耐震性が低いBクラスとしたことについて「Bだと書いてあるが、これは(最高の)Sクラス」と指摘。 外部電源が断たれると、原発の冷却機能が不安定になるとの記述については「SBO(全電源喪失)を防ぐということで、非常用発電機や電源車、バッテリーと、いろいろな要求をしている」と述べた。 これに対し、仮処分を申し立てた弁護団の河合弘之共同代表は「全体を読めば、給水設備のくだりが冷却設備を意味していることは明らかだ。事実誤認ではない」と反論する。 ちなみに新基準には、Bクラスの施設として「使用済み燃料を冷却するための施設」が挙げられ、関電の口頭弁論調書にも「使用済み燃料ピット冷却設備は、耐震クラスとしてはB」と記載されている。 「いろいろな要求」(田中委員長)についても、「原子力規制を監視する市民の会」(東京)の阪上武代表は「原告の主張も裁判所の決定も、通常時の電源について論じている。ところが田中委員長は突然、非常時の電源のことを話しだした」と、論点のすり替えではないかといぶかる。 15日の会見では、決定が「地震の平均像を基礎として、原発の基準地震動を策定することに合理性は見いだしがたい」とした点にも質問が及んだ。 規制庁の担当者は「基準地震動は地震の平均像ではない。最大級の地震を考えている」と答えたが、阪上代表は「原告も地裁もその点は理解している。問題は(規制庁が参考にする)入倉レシピと呼ばれる手法が標準的な方法論について記したものであること。最大級の地震時に、どれぐらい揺れるかは導き出せない」と不満を隠さない。 規制委の前身・旧原子力安全委員会事務局で技術診与を務めた滝谷紘一氏は「会見では、一般に発言者は担当者らの調べた内容を話す。そうだとすれば、田中委員長の発言からは、規制委全体として地裁決定のミスを探そうとしている印象を受ける」と推測する。 今回の決定では、2005年以降、4原発が5回にわたって基準地震動を超える地震に見舞われたことに触れ、「想定を超える地震が来ないという根拠は乏しい」と強調。使用済み核燃料についても「堅固な施設で閉じ込めていない」と関電の姿勢を批判した。 田中委員長は従来、新規制基準に適合しても、絶対に安全とはいえないと繰り返し述べている。その発言について、河合氏は「過酷事故が起きた時に、責任を免れるための言い訳」と評して、こう付け加えた。 「国民が期待しているのは『これで通るなら、さすがに安全だろう』という分かりやすい基準だ。今回の地裁の決定が、そういった根源的なテーマを突き付けていることを規制委は認識するべきだろう」 (4月21日「こちら特報部」より)
.. 2015年04月22日 08:09 No.903005
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