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■--高浜原発パブコメに送った意見
++ 山崎久隆 (社長)…495回          

(その1からその5)
 |  上(その1とその2)・下(その3からその5)の2回で掲載
 |  はじめに
 |  規制委のあまりにもずさんな審議に腹立たしくも悔しい思いをした
 └──── (たんぽぽ舎)

  高浜原発パブコメ(関西電力株式会社高浜発電所3号炉及び4号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集)について、送った文章を掲載します。
 川内原発でも、規制委のあまりにもずさんな審議に腹立たしくも悔しい思いをしたところですが、高浜原発でも同じような審査を行っていました。
 高浜原発に固有の危険性が見逃されていないかといった観点からも意見を書いて送りましたので、紹介します。長文になりましたので、全2回に分割します。
 具体的数値もない審査書で、何を「科学的、技術的」に論じろというのかと言った根源的問題もあります。そう言っても通じない人たちですが、そういう問題でもあることを最初に書いておきます。

高浜原発の規制基準適合性審査書への意見 その1

パブコメのテーマについて−おかしい。大事な避難計画がない。

  パブコメの案件名が「関西電力株式会社高浜発電所3号炉及び4号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集について」とされている。
 これでは審査初案の中に書かれた技術的な問題点についてのみ意見を聞くといっていることになる。
 言うまでもなく高浜原発の再稼働問題は、立地住民や隣接市町村住民のみならず、遠くは250キロも離れた地域の住民をも危険にさらす。それは福島第一原発事故を見ても明らかである。ところがパブコメのテーマは「科学と技術」だとされる。
 地域住民にとって最も重要な問題は「避難計画の実効性」だ。一体逃げることが出来るのかどうか。昨年末から今年にかけて福井県地方は大雪に見舞われて市民生活に重大な影響を与えた。このとき同時に原発事故が発生していたらどうだろう。規制委はそれに答えることは出来るのか。
 音海半島は唯一の道が原発の真横を通る。田ノ浦トンネルを通って半島の外に出る唯一の道は、原発事故が起きれば直ちに高い放射線の影響で封鎖されるであろう。
 どのようにして避難することが出来るのか。規制委は代替避難ルートを示す必要がある。

理想的な条件の下での推定でさえ

  『30キロメートル圏内に住む福井県四市町55,000人の90%が30km圏外に避難するまで最長11時間10分もかかる。最大20,000台の自家用車が移動し大渋滞を引き起こすと想定されている。放射性物質が拡散する中、被曝せずに避難させる実効性ある計画の策定支援を原子力規制委員会がすべきである。(東京新聞12/18朝刊)』
 これが現実だ。若狭湾は年間何日も雪が降るし、低気圧の通過や台風などで海が荒れれば、海岸沿いの道は通行不能になる場所が随所に発生する。この対策も事実上ない。
 立地住民だけではなく、影響を受ける地域の住民の声を聞くべきである。
 また、高浜原発が事故を起こせば、その高線量放射線が大飯原発にも及ぶ。波及的事故(恐怖の連鎖)の拡大も想定し、対策を取らねばならない。
 これらの点についても明確に回答をすること。
.. 2015年01月21日 08:03   No.855001

++ 山崎久隆 (社長)…496回       
高浜原発の規制基準適合性審査書への意見 その2

MOX燃料を使っている原発の規制基準適合性審査について

 ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料(MOX燃料体)については、243ページの「臨界ほう素濃度の設定根拠」の項目に出てくるだけである。しかしMOX燃料体にはウラン燃料体とは異なる多くの問題がある。次のような点にどのように答えるのか。

イ.溶融点低下と崩壊熱の大きさの問題

  燃料の溶融点が約80度低い。しかし事業者は運転中の燃料温度がせいぜい1800度あまり。十分余裕があるという。けれども福島第一原発事故を経験した今では、全く異なる問題に直面している。
 運転中に地震や津波などの外部要因でSBOが発生するなどして過酷事故が起こり、燃料が冷却できなくなると、炉心溶融の危機に直面する。その時残された対処時間は、MOX燃料が多ければ多いほど少なくなる。
 福島第一原発3号機もプルサーマル原発だった。3.11のときに32体のMOX燃料を抱えたまま被災した。その結果、MOX燃料体ごと炉心が崩壊し大量の放射能を放出した。果たしてMOX燃料の存在がどの程度影響を与えたのか実際には分かっていない。
 東電の分析などを見ても、3号機の燃料は予想以上に早く高温になり崩壊したことが明らかとなっている。NHKは燃料の高温原因は発熱反応であるジルコニウム水蒸気反応が大きな理由としているが、そのためには高温環境がまず存在しなければならない。崩壊熱はプルトニウムを多く含むMOX燃料の方が大きいから、炉心が冷却水の上に出た状態で十分水蒸気がある環境が作られれば、あとは燃料そのものの温度が高ければ高いほどに厳しくなる。つまりMOX燃料は炉心崩壊を加速させたとみられる。
 福島第一原発はまだ全炉心の6%(548体中32体)だった。三分の一炉心の予定だったから、最大で180体のMOX燃料を入れる計画だった。
まだしも少なかったので事故の程度も他号機と大きな違いはなかったのかもしれない。もし180体のMOX燃料が入っていたらどうだったか。その分析と議論が先に必要なのではないか。

ロ.核爆発により近づく原子炉

  もう一つは、制御棒が効きにくいことだ。
 原子炉内を飛び回る中性子の数は、臨界状態では常に一定になるが、ウランだけの燃料とMOX燃料では、プルトニウムを吸収する効率(中性子断面積)が違う。プルトニウムのほうがより多くの中性子を吸収するので、臨界状態で中性子の数が比較的少なくなる。反面、中性子を吸収する制御棒やホウ酸の寄与は小さくなる。そのため、MOX燃料を使う場合はECCSの一つ、蓄圧注入系統のホウ酸の濃度を高めているが、これはポンプ駆動用電力が無くなれば起動しないからステーション・ブラックアウトになった段階で、ホウ酸投入が出来ない。
 大規模地震が起きた場合など、ホウ酸注入系の配管が破断するなどしたら、さらに危機的状態になる。
 原子炉を冷却するために大量の水を投入する場面が福島第一原発でもあったが、その際に海水にホウ酸を混ぜて投入した。通常の配管からの注入はできなかった。
ホウ酸注入用の系統はポンプが駆動しなければ入らない。そのため海水を注入する際にホウ酸を混ぜて投入したのだが、高浜などでは冷却用の水を入れれば入れるほどホウ酸が希釈される問題が起きるが、その解決方法は示されない。
 大規模な地震の際には制御棒も挿入失敗する可能性が高い。その結果、原子炉は暴走する可能性がある。


.. 2015年01月21日 08:09   No.855002
++ 山崎久隆 (社長)…497回       
ハ.制御困難な原子炉

  炉心の中を飛び交う中性子には二つの種類がある。そのうち少ない方、0.6%程度の中性子は核分裂から1秒ほど遅れで出てくる。これを「遅発中性子」と呼ぶ。その他の核分裂の直後に出るものは「即発中性子」である。
 緊急時に制御棒を挿入して中性子を吸収して、原子炉を止めることを「スクラム」と言うが、この時にはせいぜい3秒程度で制御棒が入る。しかし即発中性子は数万分の1秒で生成されるので、これを吸収するには間に合わない。
 そこで遅発中性子が意味を持つ。核分裂反応は0.6%の遅発中性子があって初めて臨界状態を保つのだから、制御棒が挿入されると、この中性子が制御棒に吸収されることで核分裂に寄与する中性子の数が減る。これが原子炉を制御可能にしている。即発中性子だけで臨界状態になった場合を特に「即発臨界」という。この状態では原子炉の制御は出来ない。
 問題はMOX燃料の場合は遅発中性子の割合が小さいため、ウラン燃料よりも即発臨界に近い状態で運転していることだ。
 電力会社などは「運転中にもプルトニウムは生成されているのだから事情は同じ」と言うが、これは全くのうそ。
 MOX燃料を入れるということは、最初からプルトニウムなどの核分裂性物質を多く含む状態で起動される。原発は燃料を入れて1年間ほど交換なしで運転を続けられるが、これは1年分の核分裂性物質を、あらかじめ燃料に入れているということに他ならない。プルトニウム239とウラン235が主なものだ。
 従って初期の頃は燃料の核分裂性物質が「暴走状態」にならないよう、制御棒を一部挿入し、さらにガドリニウムなど中性子を吸収する物質を入れて運転する。
ウラン燃料に比べ制限値からも近い位置で動いている。つまり「安全余裕」を食いつぶしている。
 それでも問題なしとされてきたのは、炉心崩壊するような過酷事故は起こらないと決めつけてきたからではなかったのか

.. 2015年01月21日 08:26   No.855003
++ 西村俊弘 (小学校低学年)…9回       
外国の原発映画には秀作が多くある
 |  日本の原発ドキュメンタリーはなぜ駄目な作品が多いのか?
 |  講師:加藤久晴さんの講演要旨
 └──── (スペースたんぽぽ講座運営委員)

○ 1月17日(土)加藤久晴さんによるシリーズ最終回の講座が、行われました。
チェルノブイリの子供たちの悲惨な状況を描いたアメリカの作品「チェルノブイリハート」、ウラン発掘の実態を追いかけたドイツの作品「イエローケーキ」、
放射性廃棄物の埋蔵を追ったフィンランドの作品「10万年後の安全」など外国には多くの優れた原発映画がある、中でもメリルストリープ主演の「シルクウッド」はアカデミー賞を取ってもおかしくない作品であったが、候補にものぼらなかった。
 それらの作品に比べると、日本の原発映画の多くは、何かが欠落している。特に政治的側面を描かない物が多い。
 しかし、優れた作品も少数ではあるが存在する、その一つがこれから上映する
 「原発の村 刈羽の反乱」−ラピカ事件とプルサーマル住民投票−である。

○<映像上映>
 2本の巨大な排気塔がそびえ立っている、それをみおろす住民が吐き捨てるように呟いた。「この原発は俺たちの意思に関係なく造られた」
 刈羽村に原発交付金により、215億円の予算で建設された、公共施設ラピカ生涯学習センターに対して住民監査請求が起こされた。
 ラピカの工事変更は166ヶ所におよび、最高級の建材は全て安物にすり替えられた。差額はどこに。
 2000年11月10日、公共事業をチェックする国会議員の会がラピカを視察、あまりの酷さに議員たちは驚き、村長に問いただすが、村長は国の責任と言う。
 11月16日、議員の会は通産省、会計検査院に質問をぶつけるが、村が解決すべき問題と回答する。
 2000年12月14日、加藤実村長がラピカ問題をうやむやにしたまま退職、原発推進派の品田宏夫が村長になる。
 住民投票の実施がもちあがる。刈羽村議会は推進派が殆どだが、原発交付金が期限を迎えるため、交付金条件闘争を念頭に3人の推進派が寝返った。住民投票案は可決された。
 12月26日、品田村長が異議を申立て、再議をもとめ、その結果、投票案は否決される。住民は住民投票の署名を集めにかかるが、原発推進派はこれをつぶしにかかる。
 1月18日、東電が全世帯を個別訪問、住民投票に圧力をかける。
 3月24日、住民投票で刈羽村が揺れるなか、MOX燃料がフランスから持ち込まれた。
 4月、直接請求による住民投票案は9対6で可決された、村長は再議を断念した。
 投票日は5月27日に決定し5月17日に告示、東電がピーアール運動に介入してくる。投票はラピカで行われた。投票率88%、プルサーマル反対票1925、賛成票1533、保留票131で、反対派が勝利した。
プルサーマル計画の実施は当面先送りになった。民意は示された。


.. 2015年01月21日 08:33   No.855004
++ 木村雅英 (大学生)…73回       
福島第一原発がれき撤去作業によるコメ汚染を否定する田中委員長
 |  「科学的・技術的」でなく「非科学的・政治的」規制委だ−牧野淳一郎さん(理化学研究所)
 |  原子力規制委員会に深刻な問題があることを、私たちは真剣に考えなければならない
 |  原子力規制委員会は原発再稼働推進委員会!その35
 └──── (再稼働阻止全国ネットワーク)

  規制委が「科学的・技術的」でなく「非科学的・政治的」情報発信していることを何度も述べてきた。今回は、牧野淳一郎さん(理化学研究所)が岩波「科学(本年1月号)」に書いた「3.11以後の科学リテラシー」から紹介する。
 2013年8月19日に行った福島第一原発3号機のがれき撤去作業で、がれきの下敷きになっていた放射性粉塵が飛散し、20km以上離れた南相馬市で収穫されたコメから基準値(100Bq/kg)を超える放射性セシウムが検出され農水省が要請して作業を中止した。現実に、双葉町(郡山)34000Bq/平方m、浪江町(浪江)580Bq/平方m、南相馬市(福浦)1100Bq/平方mと放射性セシウム降下量の実測値があり、双葉町(郡山)のモニタリングポストの空間線量がイチエフからのダスト放出時間と一致して午前10時前後と午後1時半前後に上昇している。
 にもかかわらず、田中俊一委員長が「汚染はがれき撤去によるものではないことが明らかになった」と発言した。その根拠に使ったのが一見「科学的・技術的」に見えるモデル計算。モデル計算では、例えば双葉町(郡山)で144Bq/平方mと実測値の236分の1。要するにモデル計算には説明力が無いのだ。にもかかわらず、そのことを無視して、モデル計算の結果にもとづいて「がれき撤去によるものではない」と言ったのだ。
 牧野さんは、「田中委員長の発言は、現実を説明しないモデル計算を根拠にし、計算に合わない現実は無視するという態度であり、理解しがたい非科学的な主張です。原子力規制委員会に深刻な問題があることを、私たちは真剣に考えなければならない」と述べ、最後に「科学的・合理的な検討が、行政の都合によってないがしろにされている」、「このようなトンデモなことが原子力規制委員会をはじめとする、真っ当な科学的検討ができなければなんの意味もない組織で実際におこっている、ということと、それがどのような帰結をもたらすか、ということを、多くの人々が理解することは重要だと考えます」と結んでいる。
 この組織・原子力規制委員会が、UPZ30km、5km圏外屋内退避、100mSv/年で安全、20mSv/年で帰還、…を「国民」に押し付けているのだ。

.. 2015年01月21日 08:44   No.855005
++ にしざきやよい (小学校低学年)…6回       
釜石でも官邸前でも思いは同じ、ここに来られない人の分も思い新たに
 |  「釜石のコーヒーと金曜日行動」
 |  1月16日(金)第133回首相官邸前・国会議事堂前抗議にて
 └──── (たんぽぽ舎)

○ 今日、メルマガに何かを書こうと思案していると、以前、メルマガに書いてくださった、鳥居さんが、嬉しい原稿をくださった。この金曜日行動には本当に色々な人が来ていて、また、色々な事情でこの場には来られないけれど、思いは同じ人がいることが本当に嬉しかった。以下、鳥居さんの原文ままです。

○−「釜石のコーヒーと金曜日行動」
 釜石を初めて訪れたのは震災翌年11月であった。震災後しばらく避難所となった宝来館に泊まり女将さんから当時の話しを聞いた。当日の津波の押し寄せるビデオも見せてもらい、津波の強さ恐ろしさに言葉を失う。その後、各地の津波のビデオを見るチャンスは何回もあるが、見るたびに鳥肌が立ち、言葉を失う。
 その宝来館に同じボランティアとして泊まった人が「釜石に住み込んで復興の手伝いをするつもりだ」と話してくれた。関東に家族を残し釜石に家を借りたその友人宅に月1回2泊3日通い始めた。
 通っているうちに超おいしいコーヒーに出会い、マスターと話しをするようになった。賞味期限1か月というコーヒー豆を毎月1kgずつ買い込み、コーヒーに目がない夫も「釜石以外のコーヒーが飲めなくなった」絶賛。ある時そのマスターに思い切って「原発をどう思う」か聞いてみたら、「釜石でコーヒーを出す前は東京に住んでいて、金曜の官邸前反原発集会に通っていました」と即答これには驚いた。もっと早く話しをすれば良かった。 そのコーヒー屋にはお客さんが次々に来て、マスターと話し込んでいく。コーヒーを求めて並んでいる客が途切れるのを待って話に行くのだが、待ち時間は長い。客も自分のうしろに誰も並んでいないとなると1時間でも話している。マスターとの会話を楽しみに遠くからコーヒーを買いに来る人もいると聞く、マスターの人柄が偲ばれる。
 そのマスターが東京に用事がありそのついでに1月23日(金)官邸前国会議事堂前反原発抗議に久々に来ると言う。「昔の仲間に出会うから挨拶回りで終わるかなあ」と本人の弁。 知人も知人でない人もそこにいるみんなが一人を待っている。毎週金曜日に国会前に来たくても来られない人がいることを知り、東京に住む自分は行ける時は必ず行く決意を新たにした

.. 2015年01月21日 08:52   No.855006
++ 山崎久隆 (社長)…498回       
高浜原発パブコメに送った意見(その1からその5)
 |  下(その3からその5) 上は1月20日発信【TMM:No2383】掲載
 └──── (たんぽぽ舎)

高浜原発の規制基準適合性審査書への意見 その3

高浜原発周辺の危険な地質を見逃している

 高浜原発の近くにある青葉山は、若狭富士と呼ばれる風光明媚な山だが、有史以前には山体崩壊を起こし、ふもとが岩屑雪崩に襲われた。若狭湾内には岩屑雪崩により崩れた岩石が沢山見られる。
 近年、地震や風水害に伴う山体崩壊、あるいは深層崩壊の危険性が指摘され、日本各地で災害が発生している。短期間に大量の雨が降ったり、強力な地震に襲われれば、思いもかけない野老が土砂崩れに襲われることが常態化している。
 2008年6月14日の岩手・宮城内陸地震(マグニチュード7.2)では深層崩壊が発生し、ふもとに岩屑雪崩による大きな災害を引き起こした。このときには防災科学技術研究所、一関西観測点(岩手県一関市厳美町祭畤)で4022ガルの揺れを観測している。特徴は、水平動が1433ガルに対して上下動が3866ガルに達した
ことである。重力加速度の4倍近い揺れが、山体崩壊を引き起こした。また、揺れの衝撃力に相関関係が強い速度は316カイン(センチメートル毎秒)というとてつもない大きさであった。このような巨大な揺れにより、山体はトランポリンのように跳ね上げられ、地盤が弾性限界を超えてしまい、粒状化して崩れたものと考えられた。同様の地震が高浜を襲った場合、後背地の山体が崩壊し、原発の建屋も破壊される危険性がある。
 事業者はこういった危険性について何ら対策を取っていない。規制委員会も、さしたる根拠もなく、そういった危険性を指摘せず、事業者の主張を認めている。
 2014年8月豪雨による広島市の土砂災害では、局地的な短時間大雨によって安佐北区可部、安佐南区八木・山本・緑井などの住宅地後背の山が崩れ、同時多発的に大規模な土石流が発生し、死者74名、重軽傷者44人という過去30年間で最も大きな災害になった。
 8月19日11時から20日6時までの総雨量が243.0mmを記録するなど、24時間雨量としては過去に例が無いほどの短期間記録的大雨が原因であるが、山崩れの現場から住宅地までが非常に近かったこと、長期間の長雨で地盤がゆるんでいたことも要因としてあげられる。
 高浜原発も、周囲を山に囲まれ、近くの青葉山や山裾に広がる区域も加えて土砂崩れ危険地帯である。
 岩手・宮城内陸地震や広島市の土砂災害のような規模の土石流災害に見舞われて、炉心の冷却が継続できるとは到底思えない。土石流に襲われれば原子炉建屋やタービン建屋等が崩壊するであろう。その結果、原子炉格納容器、原子炉圧力容器、加圧器あるいは蒸気発生器等が破壊され、倒壊して破壊される。
 原子炉容器が倒壊し、又は傾いたりすれば原子炉容器内の燃料集合体や制御棒及び安全保護装置類は衝撃によって変形又は損傷することは避けられない。そうなれば制御棒の挿入は不可能である。同時に主蒸気管、主給水管などの一次系及び二次系の配管も同時に破壊されるため、一次系、二次系冷却水が全て失われる。
制御棒の挿入も出来ず、冷却水を喪失した原子炉は暴走する。

.. 2015年01月22日 08:00   No.855007
++ 山崎久隆 (社長)…499回       
 燃料棒は短時間のうちにメルトダウンし、圧力容器を突き破って大気中に放出される。同時に水素爆発や水蒸気爆発あるいは即発臨海による核爆発等が生じ、大量の放射性物質を環境中にまき散らし、発生した原子雲が広範囲に拡散していく。
 その結果、全世界の生存環境が高濃度の放射能汚染に晒されるとともに地球的規模の放射能汚染を招くことは必至である。

高浜原発の規制基準適合性審査書への意見 その4

2-2重大事故等に対処するための手順等に対する共通の要求事項(重大事故等防止技術的能力基準1.0関係) 260ページ 

 過酷事故対策について、その要員の確保を含む事故を収束させるための体制が整っているとは到底言えない。
 福島第一原発事故の教訓の一つに、高線量環境下で事故対応に当たる人員の安全確保並びに十分なパフォーマンスを発揮することの困難さが指摘できる。
 戦時中の軍隊ではあるまいし、人命を軽視して作業をさせるなどあってはならないのだが現実に福島第一原発事故においては、そういった現実に直面せざるを得ない事態となった。
 空間線量が400ミリシーベルト毎時を超えるなどといった観測データが存在するところで、作業などできるはずがない。そのような過酷な状況に陥った場合の対応はいかなるものとなるのか、残念ながら規制委は回答をしめさない。事業者に対して、そのような事態になったらどうするかを検討させもしない。結局起こらないことにしてしまう安全神話がまたしても頭をもたげてきている。
 一度起きたことは、繰り返すとみて対策するのは、安全対策の基本である。起こらないようにするだけではなく、起きてしまった場合でも十分対処できる対策を準備すべきである。
 福島第一原発所長だった吉田昌郎氏の政府事故調に対する陳述書(吉田調書)を読めば、いかなる事態になるかが想像できる。
 吉田氏は2号機の原子炉水位が急激に低下して危機的状況となった、事故発生4日目の2011年3月14日夜から3月15日朝にかけての印象を「完全に燃料露出しているにもかかわらず、減圧もできない,水も入らないという状態で、私は本当にここだけは一番思い出したくないところです。ここで何回目かに死んだと、ここで本当に死んだと思ったんです。」と述べている。そして「放射性物質が全部出て、まき散らしてしまうわけですから、我々のイメージは東日本壊滅ですよ。」とまで危機的状況であったことを明らかにしている。
 事故発生当時、福島第一原発では、東電社員755人、協力会社5660人ほどの作業員がいたとされる。15日早朝の時点でも、この中の720名程度の人員が残り、事故対策に当たっていた。そして15日の朝4号機で爆発が生じた。
 東電と政府関係者は2号機が爆発したと考えたようだ。放射線量が時間あたり1万マイクロシーベルトを超えて急上昇し作業員650名の退避の作業が始まった。
 この時点で退避したものには現場の責任者であるグループマネージャーや運転員も含まれていた。そのため残された70人では、この日の午前11時すぎまで原子炉の圧力や水位の計測すら不可能となっていた。過酷事故対策どころか、原子炉の状態をつかむことさえ不可能になっていた。現場は一時管理不可能な状態に陥ったのである。その後、原発周辺の線量が下がりはじめ、少しずつ幹部職員や運転員を戻して、事故対応を続けることができたが、それは僥倖でしかない。
 これが福島第一原発事故の教訓である。これを踏まえて高浜ではどのような検討をし、どのような対応を準備しているのか。審査書案では何ら読み取ることが出来ないのである。

.. 2015年01月22日 08:12   No.855008
++ 山崎久隆 (社長)…500回       
 具体的な記述の全く存在しない案を公表されても判断できるはずがないのである。どのように読めば福島第一原発事故を教訓として、繰り返さない準備をしていると読めるのか。
 危機的状況になっても7日間は補給無しで対処可能と読めるが、人員の交代もなく7日間も対応することなど実態として不可能である。原発に通常勤務する従業員は日勤にしろ夜勤にしろ交代要員はいない。連続して16時間程度しか働けない。7日間もぶっ通しで対処せよと本気で考えているのならば、それだけで違法だ。

高浜原発の規制基準適合性審査書への意見 その5

基準地震動について 11ページ 炉心損傷防止対策について 134ページ
全交流動力電源喪失 144ページ

 基準地震動は、700ガルとされている。これは原発が過去に遭遇した地震動の中でも小さい部類になる。最も大きな揺れを観測したのは、2007年7月の柏崎刈羽原発で、解放基盤表面の地震動記録1699ガルと、とてつもないものだった。
 高浜の基準地震動は700ガルとされているが、これが全く信用できるものではない。
 高浜原発は、ストレステストにおいてクリフエッジ(これ以上の応力が掛かると安全上重要な設備が損傷する)を1260ガルと設定した。事業者自ら「冷却機能が喪失し、炉心損傷を経てメルトダウンが発生する危険性が極めて高く、メルトダウンに至った後は圧力上昇による原子炉格納容器の破損、水素爆発あるいは最悪の場合には原子炉容器を破壊するほどの水蒸気爆発の危険が高まり、これらの場合には大量の放射性物質が施設外に拡散し、周辺住民が被ばくし、又は被ばくを避けるために長期間の避難を要することは確実である」と認定している。
 日本の地盤、地質構造は、地下の震源断層面から生ずる力が伝播する際、増幅、減衰、周波数変換など複雑な変化を伴う。同じマグニチュードであっても二つと同じ地震は無い。震源断層面の面積が仮に正確に予測できたとしても、そこから生ずる地震動を、特定の地点において正確に予測することは到底不可能である。
 まして震源断層面の大きさや移動距離さえ予測困難なのに、断層の長さから確定的にマグニチュードを割り出し、そのエネルギーをもとにして特定地点の地震動を「予測」することなど科学とは言えない。せいぜい、ある幅を持って想定することしか出来ない。ならば想定幅が存在するはずであり、その幅は例えば700ガルを中心にプラスマイナス2倍程度(最大1400ガル)を見るくらいがせいぜいではないだろうか。それ以上に正確な地震の揺れの大きさを想定することは困難と言わざるを得ない。

.. 2015年01月22日 08:26   No.855009
++ 山崎久隆 (社長)…501回       
 マグニチュード6.8という中程度の地震にもかかわらず柏崎刈羽原発では基準地震動を遙かに超える1699ガルもの揺れを観測した。それならば高浜原発もFO−A-FO−B、熊川断層系が連動して動く場合、1600ガル程度の揺れに襲われると考えるべきなのではないか。
 これだけの揺れに襲われれば、まず電源系統は送電線はもとより所内変圧器、メタクラ、配電盤などが全て破壊される。また、制御棒も正常には挿入できない。
 燃料の変位も大きく、ATWSを避けることは出来ないであろう。また、配管の一部、特に残留熱除去系など比較的ノズルの耐久性が少ない配管は破断してしまう。その結果、LOCAが発生すると共に、制御棒の挿入もできない。暴走状態での冷却材の喪失は、福島第一原発事故をも超える大惨事になる。
 700ガルを超える地震動でも健全性を維持できるように、規制委は事業者を指導するべきである。

炉心損傷防止対策について 134ページ

 炉心損傷を防ぐ手段として、加圧器逃がし弁を使った一次系減圧と炉心注水を行うとしているが、減圧を行っても注水に失敗すれば福島第一原発事故を再現する結果となる。ところが規制委は高浜の過酷事故対策でも加圧器逃がし弁を開き減圧し、注水するとしている。これは事故対策としては最悪の事態を招き危険である。
 一次系を減圧をせずに炉心に注水できる設備を追加するべきだ。そのためには、沸騰水型軽水炉にある原子炉隔離時冷却系と同様に、炉心から出る熱を元に二次系の蒸気で駆動し一次系に注水できるタービンポンプを追加で設置すべきである。

全交流動力電源喪失 144ページ

 一次系冷却について、RCPポンプ停止後は自然循環によるとされている。しかし原子炉損傷後には大量の水素ガスが発生するため、自然循環は成立しない。従って、炉心冷却のためには配管内から水素を取り除く設備が必要である。
 また、電源を喪失するとポンプは使えないためECCSの高圧注入系も動かない。これでは冷却水を維持できないので、過酷事故においても発電できる設備を追加で設置するべきである。
 あらゆる段階で電力を維持できる設備が設置されない限り、事故を回避することは不可能である。実際に福島第二原発、東海第二原発、女川原発は全て外部電源ないし非常用ディーゼル発電機が駆動したので危機を回避できたのである。

.. 2015年01月22日 08:32   No.855010


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