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消えた「脱原発依存」「安倍政治2年を問う 岐路12・14衆院選」 (下)原発
「再稼働は、電力会社のためとしか思えない」 年明けにも再稼働する可能性がある九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)。東京電力福島第一原発事故を受け、福島県双葉町から家族で鹿児島市に避難してきた自営業遠藤浩幸さん(48)は、また原発に悩まされることになった。「事故が起きれば避難計画も役に立たない。事故の責任は誰も取れるわけがないのに」と憤る。 住民の不安をよそに、安倍晋三首相は今年7月、九電会長ら九州の財界人約20人が出席する会合で「川内は、なんとかしますよ」と再稼働に意欲を示したという。 原子力規制委員会が新規制基準に適合していると認めた原発は、再稼働させるというのが政府の立場。首相は「低廉、安定的なエネルギー供給があって経済を維持できる」と国会答弁などで強調している。 もともと自民党は2012年の前回衆院選で「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立」を公約していた。しかし、政権獲得後の一三年参院選では消えた。 それどころか、政府が今年4月に閣議決定したエネルギー基本計画では、原発を「重要なベースロード電源」と規定。原発事故の教訓を国際社会と共有するとして、原発輸出も成長戦略の柱に据える。破綻状態の核燃料サイクルも継続する方針だ。 問題は安全性。首相は、規制委の審査によって再稼働に求められる安全性は確保されていると説明するが、規制委の田中俊一委員長は「リスクがゼロということはない」。想定外の事態が起きる可能性は否定できないのに、かつての「安全神話」に戻りつつある。 一方、福島第一原発では汚染水漏れが続く。(中略) 今年は、電力の使用量が最も増える夏を、福島の事故後初めて原発ゼロで乗り切った。省エネ機器の普及と、節電意識の浸透が大きい。再稼働を急ぐ政府の方針と裏腹に「原子力に依存しなくてもよい経済・社会」が実現しつつある。 それでも原発依存に回帰するのか、ブレーキをかけるのか。重大な岐路に立つ。 (11月25日1面より抜粋)
.. 2014年11月26日 08:21 No.836002
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