|
日本学術会議が再稼働に「待った」 将来世代に無責任
原発から出る「核のごみ」の対策があいまいなまま、再稼働を進めるのは「将来世代に対し無責任」。わが国を代表する科学者の集まりである「日本学術会議」が、こう指摘する報告書をまとめた。長期的な国民合意を得るまでは、各電力会社管内で高レベル放射性廃棄物を暫定保管することを求めている。核のごみの処分のめどが立たない中、安倍政権の再稼働方針に「待った」をかけた形だ。
◎核のごみ 行き場ない
「使用済み核燃料の貯蔵余地が逼迫(ひっぱく)。短いもので数年程度で置き場がなくなる」。経済産業省総合資源エネルギー調査会原子力小委員会の資料に、使用済み核燃料の現実が記されている。 原発から出る使用済み核燃料は現在、各原発の敷地内にある冷却用プールなどで保管されている。今年3月末時点で、その量は総計1万4330トン。保管可能な総容量2万810トンの7割近くに当たる。九州電力玄海、東京電力柏崎刈羽、日本原子力発電東海第二の各原発では今後約3年分しか余力がない。原発が再稼動すれば、いずれ全国の原発でもあふれることになる。 政府が進める核燃料サイクル計画では、原発から出る使用済み核燃料はすべて再処理することになっている。取り出したプルトニウムや燃え残りのウランを混合酸化物(MOX)燃料に加工。高速増殖炉やプルサーマル発電で再利用するという「夢の計画」だった。 しかし、サイクル事業は事実上破綻している。九州大の吉岡斉教授(原子力政策)は「技術的、コスト的にサイクル事業の実現性はない」と断言する。 日本原燃(青森県六ケ所村)が運営する再処理工場の稼働のめどは立っていない。 不具合が見つかるなどして、完成は遅れに遅れている。今年1月に原子力規制委員会に新規制基準の適合審査を申請したが、6月の審査会合で書類の不備などを理由に「審査の段階にない」と批判され、今も審査が続く。建設費は2兆2000億円で、当初予定の3倍に上っている。日本原燃の工藤健二社長は9月の記者会見で、予定していた10月の完成は「現実的に厳しい」と認め、再び完成時期を延期する方針を示した。延期はこれで22回目だ。 核燃料サイクルのもう一つの柱である高速増殖炉もまったくめどが立っていない。研究段階の原型炉である「もんじゅ」(福井県敦賀市)は、ナトリウム漏れ事故などのトラブルが続き、長期停止したまま。2012年には機器の点検漏れ約1万件が発覚し、昨年5月、規制委から事実上の運転禁止命令を出されてしまった。 たとえサイクル計画がうまくいったとしても、再処理の後に出る高レベル放射性廃棄物の処分の問題が残る。政府は、高レベル放射性廃棄物をガラスと混ぜ合せて固め、「ガラス固化体」として地下300メートルよりも深い場所に埋める「地層処分」をする考えだ。 国はこの最終処分場地を公募したが、07年に高知県東洋町が応じて住民らの猛反発で撤回した以外、応募はない。そのため昨年末、国が主導して候補地を提示する方式に転換。輸送方法の確保や人口密度などを踏まえ、適した場所を絞り込むという。 吉岡氏は「日本に地震や火山の影響を受けない場所があるとは思えない。国が主導すれば、弱い立場の自治体が狙われる結果にならないか」と危惧する。
.. 2014年10月09日 09:36 No.810003
|