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■--日本海溝に迫る大地震予備軍
++ 島村英紀 (大学生)…79回          

「海山(かいざん)」
 |  太平洋の真ん中に1100メートルの海山を発見
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その68
 └──── (地震学者)

○ この8月、太平洋中部で新しい海山(かいざん)が発見された。まだ名前はない。5500メートルの深さの深海平原から立ち上がっている高さ1100メートルの山だ。山頂付近の傾斜は23度。山頂は富士山のように凸凹している。なかなか形のいい孤立峰である。
 これがもし陸上だったら、高さ1000メートルもの山が、いままで見つかっていないことはあるまい。しかし海底ではこのくらいの山が「発見」されることは珍しいことではない。超音波を使って精密に調べなければ海底地形が分からないからである。
○ 見つかったのは米国領ジャービス島の東南300キロ、太平洋のほぼ真ん中だ。島は長いところで2キロあまりしかない無人の小島だが、国立野生動物保護区になっている。米国はこの周辺で排他的経済水域の調査をしているときにこの海山を見つけた。
 太平洋の底は太平洋プレートで覆われている。プレートは東太平洋にある海嶺(かいれい)で生まれ、年に8センチほどの速さで北西に動いている。終着地は日本の東にある日本海溝や千島海溝だから、この辺ではほぼ半分だけ進んだところになる。この海山はプレートが生まれたときに作られたに違いないから、約1億年かかってここまで動いてきた。ちなみにジャービス島は海山がずっと大きかったので山頂部分にサンゴ礁が着いて島になっているものだ。
○ ほぼ平らな太平洋の海底に海山は数多く、それぞれがプレートに乗って日本海溝や千島海溝に押しよせてきている。
 たとえば千葉県犬吠埼東方約160キロの日本海溝にある第一鹿島海山は富士山なみの大きな海山だが、プレートに乗って海溝にぶつかったときに、うまく沈み込めなくて割れてしまった。
 山体の西半分が正断層を作って割れて海溝に崩落している。その崩落した部分の海溝が浅くなっているだけではなくて西側の海溝壁には海山から崩落した岩石が散乱しているのだ。しかし、いずれは海山の本体が日本海溝に呑み込まれる。
 ここから西側の海底には複数の膨らみがある。これらは昔、別々の海山が沈みこんでいった名残にちがいない。
○ ところで、こうして海山が海溝にひっかかってから最終的に沈みこむまで大きな地震エネルギーを溜め込んで、それを一気に放出するのではないかという学説がある。
 東北地方太平洋沖地震(2011年、東日本大震災)はまれに見る巨大な地震だった。この地震が起きる前、プレートの境界が半径70キロほどの範囲でしっかりくっついていたことがわかったのだ。
 この部分は太平洋プレートに乗ってきた古い海山で、これが引っかかることによって大きな地震エネルギーを蓄積したのではないかと考えられているのである。
 第一鹿島海山の「後続」として香取海山、第二から第五までの鹿島海山、磐城海山などが、日本海溝に迫ってきている。これらもいずれは日本に大地震を起こす予備軍なのであろう。 (9月12日『夕刊フジ』より)
.. 2014年09月19日 10:56   No.797001

++ 島村英紀 (大学生)…80回       
首都直下 静穏期間終わった
 │ 首都圏の地下には3つのプレートが潜り込んでいる。
 │ プレートを3つも抱え、しかもその上に3千万人もの人々が
 │ 住んでいるところは、世界じゅうで日本だけ
 │   「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その69
 └────(地震学者)

 さる16日午後、茨城県の地下50キロほどのところでマグニチュード(M)5.6
の地震が起きた。この地震で近隣3県のかなり広い範囲で震度5弱を記録した。
怪我人が11人出たほか、崖が崩れて自動車が埋まった。
 江戸時代から現在までの首都圏の地震活動を見ると、不思議なことに関東地
震以来の90年間は異常に静かだったことが分かる。たとえば東京の気象庁(千
代田区大手町)ではこの90年間に震度5を記録したのは東北地方太平洋沖地震
(2011年、東日本大震災)と2014年5月の伊豆大島近海の地震を入れても4回
しかなかった。
 じつは関東地震とよく似た海溝型地震である元禄関東地震(1703年)のあと
も約70年間、静かな期間が続いたのだ。
 その後、関東地震までは地震ははるかに多かった。江戸時代中期の18世紀か
ら24回ものM6クラス以上の地震が襲ってきていたのだ。被害地震も多かった。
平均すれば、なんと6年に一度にもなる。
 つまり首都圏で起きた海溝型の地震である関東地震と元禄関東地震以後、大
きい地震がほとんどない状態が続いていたのである。

 首都圏の地下には、プレートが3つ(太平洋プレート、北米プレート、フィ
リピン海プレート)も同時に潜り込んでいて、それぞれのプレートが地震を起
こすだけではなくて、お互いのプレートの相互作用で地震を起こす。つまり、
いろいろな場所のいろいろの深さで何種類もの地震断層が地震を起こしている
のだ。今回の地震は茨城県の太平洋沖にある日本海溝から潜り込んだ太平洋プ
レートが茨城県の地下で起こした。
 世界では2つのプレートが衝突しているために地震が多発するところはある。
しかし3つのプレートが地下で衝突しているところは少なく、なかでもその上
に3000万人もの人々が住んでいるところは、世界でもここにしかない。
 つまり首都圏は「地震が多くて当たり前」のところなのである。

 このほかに東北地方太平洋沖地震の影響がある。M9という巨大な地震は東
日本全体を載せたまま北米プレートを東南方向に大きく動かしてしまった。首
都圏でも30-40センチもずれた。このために、日本列島の地下がリセットされ
てしまったことになる。各所に生まれたひずみが地震リスクを高めているので
ある。
 不幸中の幸いだったが今回の地震は震源がやや深かった。このためマグニ
チュードのわりに地表での揺れが小さく、被害も限られていた。しかしもっと
浅い地震は過去にも起きたし、これからも起きる可能性が高い。

 先月も栃木県北部で局地的には震度5弱の地震が起きた、そして今回の震度
5弱。首都圏は一時の静穏期間が終わって、いわば「いままでよりは多い」そ
して「プレートが三つも入り組んでいる場所では普通の」状態に戻りつつある
のだろう。 (9月19日『夕刊フジ』より)

.. 2014年09月22日 08:10   No.797002
++ 島村英紀 (大学生)…81回       
溶岩流でハワイが非常事態 火山から溶岩が流れ出て住宅に迫っている
 |  ハワイ諸島の北西にある海山列は昔は島だった。
 |  それがマグマの供給が止まり島が消えて海山になったもの
| 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」 コラムその70
 └──── (地震学者)

○9月になってから、米国ハワイで非常事態宣言が出される事態になっている。火山から溶岩が流れ出て住宅に迫っているのだ。
 火山はハワイ島にあるキラウエア山(1247メートル)。熔岩が住宅地から約1.6キロの地点にまで迫ってきたことを受けて郡知事は非常事態宣言に署名した。
 溶岩流はあと数日から1週間で住宅地に達するのではないかと報じられている。この宣言によって、いざというときに住民が迅速に避難できるよう、住民以外の道路通行が禁止された。
 この火山は20世紀中に45回も噴火した活発な火山だ。そもそもハワイ語でキラウエアは「吹き出す」という意味だ。キラウエアは昔から頻繁に噴火を繰り返してきた火山なのである。
 熔岩が住宅地を襲った例としてはアイスランドのヘイマエイ火山がある。この噴火は1973年。溶岩流は時速数メートルというゆっくりとした速さで町と港へ流れてきた。火山は本土から離れたヘイマエイ島にあり、港は住民にとって唯一の「玄関口」だった。
 熔岩は比重が大きいから土塁やコンクリートを置いても軽々と押し流してしまう。住民が考えたのが消防ポンプで大量の海水を溶岩流に放水することだった。これはうまくいった。いくつもの民家が溶岩にのみ込まれたものの、最終的には漁港の手前で熔岩の流れは止まってくれたのだ。
○日本人が多くハワイ観光に行くのはオアフ島だが、ハワイは北西から南東へ500キロあまり拡がる8つの島から出来ている。ハワイ諸島だ。
 島が出来た年代は南東へ行くほど新しくて、南東端のハワイ島がいちばん新しい。他方、ハワイ諸島の北西には長い海山(かいざん)列がある。この列はロシア・カムチャッカ半島沖の千島海溝まで延々5000キロも続いている。
 これは太平洋プレートが北西に動いているのに、ハワイを作ったマグマの「源泉」がプレートよりずっと深い地球内部にあってマグマがプレートを突き抜けて島を作ったためだ。源泉は停まっているのにプレートが動いていく。それゆえ新しい島が次々に南東に作られてきたのである。
 ハワイ諸島の北西にある海山列は昔は島だった。それがマグマの供給が止まり、温度も下がって収縮し、島が消えて海山になったものなのである。
 熱帯地方ならば、島が縮んで海山になっても、その上の浅い海に次々にサンゴが増殖して島として残るものもある。サンゴ礁だ。しかし、ハワイ諸島から北西に動いていった先は北の海だ。サンゴが育つには寒すぎたのである。
 ところでハワイ島の南東にある海底では、いまぶくぶくと火山性ガスを吹き上げている海山が成長を続けている。
 すでに海底から3000メートルの高さになった。ロイヒと名づけられたこの海山は、あと1000メートルほど高くなれば、もっとも新しい島としてハワイ諸島に仲間入りをするはずである  (9月26日『夕刊フジ』より)

.. 2014年09月29日 10:53   No.797003
++ 島村英紀 (大学生)…82回       
御嶽山の噴火予知が失敗したワケ
 |  噴火予知はせいぜい数日前にしかわからない
| 警戒レベルを決める客観的で数値的な基準もない。
| 「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」コラムその71
 └────(地震学者)

 御嶽山の噴火予知には失敗した。気象庁が火山ごとに発表している「噴火警戒レベル」1(平常)という登山もしていい状態からいきなり噴火したので、火山活動の被害としては戦後最悪の規模になってしまった。気象庁が警戒レベルを3(居住地域近くまで生命に危険の及ぶ噴火が予測されたり発生したりする)に引き上げたのは噴火の40分も後だった。
 じつは火山の噴火予知は学問的にはまだまだの段階なのである。
 火山は山ごとに違う性質を持っていて、なかには噴火予知に成功した例もある。しかし、予知に失敗して今回のように不意打ちの噴火が起きてしまった例も世界的に数多い。
 いちばん成功した例としては北海道・室蘭の近くにある有珠(うす)山がある。2000年に噴火したときは事前の警告で住民が避難して死傷者は一人も出なかった。
 有珠山は歴史上知られている7回の噴火すべてで、近くに有感地震が起きだしてから1-2日以内に噴火した。つまり経験的に噴火予知ができる火山なのである。だがこの有珠山でさえ、噴火に至る学問的なメカニズムは分かっていない。
 また鹿児島・桜島のように、年に数百回も噴火する火山では、大学による精密な観測網が敷かれているうえに蓄積した経験も豊かなので噴火予知が成功している。
 しかし、有珠山にせよ桜島にせよ、噴火予知はせいぜい数日前にしかわからない。数週間以上前には、何も分からないのが実情なのである。
 そして、このほかの日本のほとんどの火山では今回の御嶽山と同じように噴火予知が出来なくて不意打ちになる可能性が高い。
 これは火山ごとに性質が違うためだ。ひとつの火山で使えた予知の方法が、ほかの火山では役に立たないことが多い。実情は、地下で起きている「事件」が精密に分からなくても「実用的な噴火予知」だけはいくつかの火山で成功してきた、ということなのだ。
 このためいまの学問水準では火山を監視するには多様な経験と豊富な知識に裏付けられた判断能力が必要だ。有珠山も桜島もそれぞれの地元の大学が「ホームドクター」のように経験を蓄積していたから可能になった。
 ところが2007年に気象庁が5段階の警戒レベルや、それに応じての「噴火警報」が出される仕組みを作って前面に出ることになった。
 だがそれぞれの警戒レベルを決める客観的で数値的な基準もない。そのうえ地震や火山噴火などの専門教育を受けた気象庁の職員はごく少ない。庁内の人事異動で気象など他部門から火山監視に配置換えになることも多い。経験も知識も十分ではない可能性が高い。
 つまり5段階の警戒レベルや噴火警報を出す仕組みこそ出来てしまっているのに、肝心の噴火予知がいまだあてにならない。気象庁が噴火警報を発令するのを待って避難すればいいということはない。そのことが明らかになってしまったのが今度の噴火なのである。
 今回、「警戒レベル1」という「安心情報」を出してこれだけの被害を生んでしまった責任は重いというべきであろう。
(10月3日号『夕刊フジ』より) 

.. 2014年10月06日 10:05   No.797004
++ 島村英紀 (大学生)…83回       
現代社会を混乱させる磁気嵐
 |  普段より100倍も強い「太陽フレア」発生
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその73
 └──── (地震学者)

 さる9月に大規模な磁気嵐(じきあらし)というものがあった。
 地球は巨大な磁石になっていて、その磁石の作ってくれた地磁気のバリアのおかげで人類など生物は強い宇宙線からさえぎられている。しかし太陽から出る「太陽フレア」がこのバリアを一時的に乱してしまうのが磁気嵐なのである。
 9月中旬に、いつもよりも100倍も強い「太陽フレア」が出た。その太陽フレアからは「コロナ質量放出」といわれる荷電粒子のかたまりが噴出し、それが地球に達すると磁気嵐になる。
 太陽フレアは太陽黒点から出る。その規模はエックス線強度によって5段階に分類されるが。今回は最も規模が大きいクラス5だった。黒点は太陽の表面としては表面温度が相対的に低いところだが、それでも温度は約4000度もある。
 磁気嵐が発生すると、地磁気が大きく乱れる。このため人工衛星やGPS(全地球測位システム)などの人工衛星や、航空や漁業に使っている無線、それに送電網などに障害が出る恐れがあった。悪くすると国家レベルの甚大な被害を及ぼす恐れさえあったので各方面で厳戒態勢が敷かれていた。
 さいわい緊張の一週間がすぎて、今回は心配したほどのことはなかった。
 だが、太陽フレアによる影響は過去にも起きている。たとえば1989年にはカナダで大規模な停電が起きたほか、2003年には日本の人工衛星が故障したこともある。
 じつはハトは磁気を感知するのだ。磁気嵐がハトレースに大きな影響を及ぼしたことがある。
 いまのようにインターネットが発達する前は、伝書バトは重要な通信手段だった。小さく巻いた写真や図面を足に付けた伝書バトは世界のニュースを伝えていた。
 このため昔から伝書バトのレースが行われてきて、伝書バトの意味がなくなった現代でも世界各地でハトレースが行われている。元来は実用の道具だった馬も自動車も競争の道具にしてしまった人類のことだから、ハトも恰好の道具として選ばれたのであろう。
 ところが、このレースが悲惨な結果に終わったことがある。選ばれてレースに出るほどの方向感覚が優秀なはずのハトが道に迷ってしまったことがあるのだ。
 1988年6月に、フランスから英国へ向けて行われた国際レースはとりわけ悲惨だった。5000羽のハトが放たれたが、2日後のレース終了までにゴールに到着したハトは20羽に1羽にしかすぎなかった。ほとんど全滅だったのである。
 ハトのレースの主催者は、事前に地球物理学者に訊くべきであったのだ。その日はたまたま大規模な磁気嵐の日だったからである。
 ハトは磁気を感じて方向を知るに違いない。そしてハトだけではなく渡り鳥や、もしかしたら生まれた川に帰ってくるサケも感じているのかもしれない。
 じつは私の知人のフランスの地球物理学者は、カーテンの後ろに隠した磁石の位置を正確に当てる。そしてこの能力は彼の娘にも遺伝しているのだ。さて、あなたは磁気を感じられるだろうか。
(10月17日『夕刊フジ』より)

.. 2014年10月20日 08:55   No.797005
++ 島村英紀 (大学生)…84回       
.「太陽系外惑星」に高等生物が生存する?
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその74
 └──── (地震学者)

 先々週は皆既月食、今週にはオリオン座の流星群があった。久しぶりに星空を眺めた人も多かったに違いない。
 かつての「地球物理学」という学問はいくつかの大学では「地球惑星科学」になっている。地球をもっと知るためにはほかの惑星を研究しなければならない時代なのである。
 その学問の最新の話題は「太陽系外惑星」。地球は太陽系にある惑星のひとつで、火星や木星のきょうだいだ。しかし、宇宙には太陽のような恒星(こうせい)はあまたあり、ぞれぞれが太陽系の惑星のような「子分」の星を従えている可能性が高いことが知られるようになった。
 地球もそうだが、惑星は太陽のように自分で光るわけではない。このため直接、望遠鏡で見ることは出来ない。「親分」恒星が「子分」惑星にわずかに振り回される動きを観測したり、惑星が恒星の前を横切るときに恒星の明るさがわずかに減ることを観測したり、という間接的な手法でようやく見つかるのが「太陽系外惑星」なのだ。
 研究の進歩によって1990年代半ばから「太陽系外惑星」が実在することが確かめられ、見つかった数は年々増えている。とくに今年になってからは昨年の10倍も見つかって、いまや1800個にもなっている。これからもっと増えるだろう。
 なぜ「太陽系外惑星」が研究の焦点になっているのだろう。それは私たち人類のような高度の生物が地球だけにたまたま生まれたのだろうかという根元的な疑問に答えるためだ。
 かつては地球上の生命は特別な偶然が揃ってはじめて出来たと思われていた。しかし近年では水や温度やある種の元素が揃えばどこにでも生命が生まれると考えられるようになっている。つまり地球は特別な星ではなく、ありふれた惑星のひとつになってしまったのである。
 「太陽系外惑星」のなかには条件が揃っていて地球のような生命が生まれて進化してきている星がある可能性が高くなっている。SFの世界ではない。あるいは人類よりも、もっと進化した生物がいても不思議ではない。
 だが、現在の学問はまだそこまでは探れない。いまは「太陽系外惑星」のそれぞれの大きさや水の量が少しずつ分かりかけている段階だ。「スーパーアース」といわれる地球より1〜5倍ほど大きな地球型の惑星もいくつか見つかっている。生命現象の証である酸素があるかどうかはこれからの研究なのだ。
 地球の生命の源、海がある惑星も見つかっている。「へびつかい座」にある「GJ1214b」という惑星は海に取り囲まれて、その海の深さはなんと600キロもあることが分かった。地球の海の深さの平均は4キロしかない。「水の惑星」と言われる地球全体の水の量は0.023%だが、この惑星の水は10%もある。
 地震、火山、戦争、飢餓。人類にとって大事件が地球には繰り返し起きる。
 だが、何億という星のなかには、これら大事件とは関係のない高等生物が生きている星があるかもしれないのである。 (10月24日『夕刊フジ』より)


.. 2014年10月30日 08:28   No.797006
++ 島村英紀 (大学生)…85回       
火山噴火は予知できない
 |  噴火の予知は地震予知以上にむつかしい
 |  警戒レベル別に区分すること自体が間違い
 └──── (地震学者、武蔵野学院大学特任教授)さんの発言紹介

A.島村英紀氏はこう解説する。「噴火の予知は地震予知以上に難しいんです。世界的に見ても、予知できずに噴火した例の方がはるかに多く、予知できたケースはごくわずかです。今回も警戒レベル1の御嶽山がいきなり噴火したように、私は警戒レベル別に区分すること自体が間違いではないかと思っています。“1だから安心”と人は信じてしまうからです。むしろ“火山噴火は予知できない”と肝に銘じておくほうがいいのです。」
B.「東日本大震災クラスの巨大地震が発生するとプレートが大きく動きます。その結果、震源地付近での歪みはある程度解消されますが、隣接する他の地域との均衡が崩れます。その影響で今後、100年単位で余震が続くと考えられます」
(島村特任教授)
C.M8までいかずとも、今後、関東では大規模な地震が多発する可能性が高いと島村特任教授は強調する。
 「1703年の元禄関東地震から1923年の関東大震災が起こるまで約200年ありました。このサイクルから、関東で巨大地震が起こるまであと100年は平穏な時期が続くはずでしたが、東日本大震災で状況が一変した。今後、関東は活発な地震活動期に入るはずです」   出典:「女性セブン10月16日号」


.. 2014年10月31日 07:53   No.797007
++ 島村英紀 (大学生)…86回       
新潟県中越地震から10年「人災」と余震予想に課題浮き彫り
 |  気象庁の余震の発表が「当たらなかった」
 |  どんな余震がいつ起きるかを正確に予測することは現在の学問レベルでは不可能
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその75
 └──── (地震学者)

○ 先週10月23日は新潟県中越地震(マグニチュード(M)6.8)からちょうど10周年の日だった。
 この地震は川口町(現長岡市)で震度7という日本では最大の震度を記録した。だが地震発生直後には停電で衛星通信端末が止まり、当初は小千谷市などで観測された震度6強が最大震度だとされていた。
 地震10周年ということで被害の中心になった長岡市では犠牲者68名を追悼する式典が開催された。また山古志村(現長岡市)など被災各地では追悼のロウソクがともされ、発生時刻の午後5時56分に犠牲者に黙祷(もくとう)をささげた。
 私が地震学者として忘れられないことがある。それは、この地震の犠牲者のうち地震による直接の死者は16名しかいなかったことだ。あとの50名以上はストレスや深部静脈血栓症、いわゆるエコノミークラス症候群などによる地震後の関連死だった。
 避難した人たちから地震後に犠牲者を出すのは天災というよりも人災というべきであろう。
○ また、気象庁の余震の発表が「当たらなかった」ことも忘れられない。
 地震後に気象庁が発表した余震の見通しはたびたび裏切られた。
 気象庁は3日以内の最大震度5強以上の確率は10%と発表していた。だが実際には震度6を超えるものだけでも4回もあり、なかでも震度6強という強い余震も2回あった。地震後、10月の末までに600回、11月末までに825回もの有感地震(身体に感じる地震)の余震があった。
 この地震はほかの大部分の地震とちがって地震断層がひとつではなくて複雑だった。このために気象庁の予測発表を上回る余震が何度も繰り返されたのだ。
 余震の起きかたには経験則しかなく、しかも例外も多い。気象庁が記者会見で発表しているのは、たんに平均的な経験例にもとづいているだけなのだ。このため気象庁の余震の予想が外れることは多い。
 一般には震源が浅い地震ほど余震が多く、震源が深い地震には余震がないこともある。
 また余震の最大マグニチュードは本震から1くらい小さいことが多い。しかしこのときの余震でもM6.5が起きたし、本震とほとんど同じ大きさの余震が起きて双子地震と呼ばれるようになることさえある。他方、最大の余震が本震よりずっと小さいこともある。
 最大の余震は本震の後、数日以内に起きることが多いのだが、これもいつもあてはまるわけではなく、半月以上たって起きることもある。たとえば東日本大震災を起こした東北地方太平洋沖地震(M9.0)では約1ヶ月あとになって最大の余震が起きて宮城県北部と中部では、余震の中で最強だった震度6強を記録した。Mは7.1だった。
○ 気象庁はこの種の余震の見通しの発表をこの地震に限らず続けている。しかし、どんな余震がいつ起きるかを正確に予測することは現在の学問レベルでは不可能なのである。 (10月31日『夕刊フジ』より)


.. 2014年11月10日 08:27   No.797008
++ 島村英紀 (大学生)…87回       
南海トラフで東京の超高層ビルが5メートル揺れる?
 │ 長周期表面波の恐怖
 │ 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その76
 └──── (地震学者)

 ちょうど10年前の新潟県中越地震(マグニチュード(M)6.8)の被害は地元
だけではなかった。ほとんどが震度3だった東京でも、思いもかけなかった
「被害」が出て青くなった関係者がいた。
 港区にある54階建ての超高層ビルのエレベーターを吊っているメインワイ
ヤーが切れてしまったのだ。鋼鉄製のワイヤロープは直径1センチもある。幸
い、エレベーターは非常ブレーキで止まって、大事故にはならなくてすんだ。
 Mは7にも満たず、距離は250キロも離れた地震でこの「被害」。

 地震学的にはこの高層ビルを予想外に揺らせたのは「長周期表面波」という
ゆっくり揺れる地震波だ。ほかの地震波が地球の内部を伝わってくるのと違っ
て、これは地球の表面だけを伝わる。
 普通の地震波は距離が増えると距離の3乗で小さくなっていく。これとちが
って「表面波」は距離の2乗でしか小さくならない。つまり遠くに行っても普
通の地震波ほどは弱くならないのだ。
 この長周期表面波に注目していた地震学者かいた。岐阜大学のM先生は30年
以上も前からこの地震波が超高層ビルに及ぼす影響の観測を企てていた。
 日本で超高層ビルが建てられるようになったのは1964年。建物の高さが31
メートルまでという建築規制が撤廃されたのだ。
 東京のあちこちで建てられ始めた超高層ビルの上と下に地震計を置かせてほ
しいとM先生はあちこち交渉した。だがビルの所有者は地震計を置くのを嫌が
り、ようやく新宿の超高層ビルで「ビル名は決して出さない」という約束で置
かせてもらった。

 そして1984年、長野県西部地震(M6.8)が起きた。最上階では地階の20倍
以上も揺れ、しかも揺れが長く続くことが初めてわかった。
 東日本大震災(2011年)のときには大阪府咲洲(さきしま)庁舎(旧WTCビ
ル、55階建)で天井が落ちたり床に亀裂が入り防火戸が破損するなど360ヶ所
もが損傷した。エレベーター4基に5人が5時間近く閉じこめられた。エレ
ベーターを支えるワイヤロープがからまって翌日にも8基が復旧しなかった。
震源から800キロも離れたところだ。
 恐れられている南海トラフ地震が起きたときには東京の高層ビルの上部は振
幅5メートルもの揺れになると予想している科学者もいる。そんなに揺れたら、
ビルそのものは倒壊しなくても中にいる人々はコピー機やロッカーなど重い家
具につぶされてしまうだろう。
 超高層ビルには限らない。巨大な石油タンクや、長大な橋、新幹線の土木構
造物など、振動の固有周期が長い建造物はどれも強い長周期表面波の洗礼を受
けたことがない。
 最近はようやく対策がとられ始めている。しかし対症療法的なものだ。そも
そものビルの設計のときにどのくらいの地震波が来るか知らないまま、ゼネコ
ンや工学者たちが設計しているのは、地震学者として、とても心配なことなの
である。                (11月7日『夕刊フジ』より)


.. 2014年11月19日 08:50   No.797009
++ 島村英紀 (大学生)…88回       
温暖化調査のカギ握る「棚氷」地震計
 |  地震計を置く目的はこの巨大な棚氷が海の波にどのくらい揺すぶられるかを知ること
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその77
 └──── (地震学者)

○ この11月に南極最大のロス棚氷(たなごおり)の上に16台の地震計が設置される。
 ロス棚氷の面積はフランスほどある。幅は800キロ。その氷の厚さも200メートル以上ある。
 棚氷とは南極大陸をとりまいて海に浮いている平らな氷のことだ。1911-1912年に南極点初到達を争ったアムンゼンもスコットも、このロス棚氷から上陸した。昭和基地とは反対側の南極にある。
 地震計を置く目的はこの巨大な棚氷が海の波にどのくらい揺すぶられるかを知ることだ。
 棚氷は揺すぶられることによって壊れる。そして棚氷が壊れると、それまで棚氷に押さえられていたために流れ出さなかった南極大陸の氷河が海に流れ出してしまう。
○ 棚氷は海に浮いている氷だから、融けても海の水が増えるわけではない。コップの水に浮いた氷が融けても水が増えないのと同じだ。その意味では北極海の氷も同じだ。たとえ地球温暖化で北極海の氷が融けても海水が上昇するわけではない。
 しかし日本の面積の33倍もある南極大陸の広大な氷河が融けることは地球全体の海水が増えることを意味する。ツバルやキリバスなど標高が数メートルしかない太平洋やインド洋の島国が水没してしまうことになるのだ。
 南極全体はお椀を伏せたような形をしていて、そこに最大では4000メートルもある氷河が載っている。それが流れ出さないように押さえているのが棚氷なのだ。
 つまり南極最大のロス海の棚氷が将来どのように海の波の振動で壊されていくのか、それは南極の気温や季節とどんな関係があるのかを調査することが、地球温暖化による海水面の上昇のカギを握っているのである。
 南極のまわりの海は一年中荒れるので有名だ。マゼランが世界一周の航海で、もっともてこずったところでもある。この荒れた海を越えたことがある船乗りは人と話すときに、机の上に足を投げ出したままでいい、というのが世界の船乗りの決まりだというほどだ。
 私がポーランド船で越えたときにも船は左右にそれぞれ40度以上も揺れ、食事に出てくる船員や科学者もみるみる減っていった。ビューフォート風力階級は最高の10まで行った。そのうえ私が乗った船のスクリューと舵の軸が曲がってしまった。
○ ロス棚氷での研究計画には米国の2つの大学が参加する。荒れた南極海の波からの振動を棚氷の上で捉えようというこの計画では、氷全体が上下するゆっくりした揺れまで記録できる「広帯域地震計」というものが使われる。
 設置されて足かけ3年間の観測を続ける予定だ。これなら季節変化も十分に捉えられる。なお地震計のほかにそれぞれの地点に気圧計も設置される。
 この地震計は、ほかの大多数の地震計とちがって地震を記録するのが目的ではない。だが、地震計は高感度の振動測定器でもあるわけだから、地震以外にもいろいろな用途に使われるのである。 (11月14日『夕刊フジ』より)

.. 2014年11月19日 11:50   No.797010


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