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■--過酷事故対策もいい加減
++ 木村雅英 (中学生)…45回          

   原子力規制委員会は原発再稼働推進委員会! その15
 └──── (再稼働阻止全国ネットワーク)

○ 過酷事故対策は新規制基準の目玉だ。2012年冬にIAEAが来たしばらく後に原子力安全・保安院が開始した「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策規制の基本的考え方に係る意見聴取会」(同年2月22日〜8月6日まで計7回開催)を傍聴したが、何か焦点が定まらない議論が始まり集まった専門家にも戸惑いが観られた。田中委員長が新規制基準に織り込んだことを強調しているが、これも欠点だらけ。
 例えば、
 「…福島事故から明らかなように、過酷事故対策では過度に人の対応に依存するべきではない。すなわち、国際的な過酷事故対策がパッシブ(無動力)、自動、公設、プロアクティブ(先を見越す)、実践主義(実証主義、現実主義)である。にもかかわらず、日本ではアクティブ(動力依存)、手動(判断に基づく人的操作)、仮設(まず移動・設置が必要)、リアクティブ(起こったら考える)、楽観的(精神論的)机上論であって、必要以上に緊急対応要員の行動に依存していて非常に危うい。
○ また、テロ対策を新設したとされているが、米国の苛烈な実践的対策に比べれば日本は無防備に等しい。…」
(以上、岩波書店「科学8月号」の、佐藤暁「不吉な安全神話の再稼働」と石橋克彦「原発新基準は『世界で最も厳しい水準』の虚構」から)
 これら過酷事故対策についても、8月15日締め切りの川内原発再稼働審査書へのパブコメに書きたい。

※8/27川内原発再稼働をやめろ!規制委抗議行動

日時:8月27日(水)12:00〜13:30
場所:原子力規制委員会前(六本木ファーストビル)
    (こちら
    港区六本木1丁目9番9号 TEL:03-3581-3352(規制庁)
    東京メトロ南北線「六本木一丁目駅」徒歩4分
主催:再稼働阻止全国ネットワーク TEL 070-6650-5549
こちら
メール info@saikadososhinet.sakura.ne.jp
.. 2014年08月15日 08:28   No.777001

++ 山崎久隆 (社長)…441回       
いよいよ深刻な汚染水対策 その2
 | 地下水も汚染水も漏れ続けている
 └──── (たんぽぽ舎)
              
(これは8月5日発信の【TMM:No2243】「1.いよいよ深刻な汚染水対策 福島第一原発 ALPS不調、凍土遮水は固まらず、東電は汚染水対策に全力を投入せよ」の続きです。)

 東電は、2号機タービン建屋と地下のトレンチがつながっている部分から、建屋内の汚染水が流れ出しているため、トレンチの汚染水を抜く作業を計画しているが、この背景にはもう1つの大きな問題がある。

○知らされない問題点

 トレンチは主にタービン建屋から海側に延びる地下トンネルを形成しているが、この場所には凍土方式遮水壁の凍結管を1m置きに地下30mまで埋める。この際にトレンチなど地下構造物が邪魔になる。しかし掘削して構造物を除去するという方法は採らない。コンクリートのトレンチをステンレス製の凍結管で貫通する。トレンチの上も下も、そして中もマイナス30度の冷媒で凍らせる計画だが、そんなに予定通り凍らないことが今回の2号機トレンチ凍結失敗で明白になった格好だ。
 さらに問題なのは、工事中に起き得る最悪のシナリオだ。凍土壁の凍結管でトレンチを貫通する作業を行うのだから、トレンチの壁が割れてしまい大量の汚染水が漏れ始める恐れがある。そうなると1リットルあたり数億ベクレルの汚染水を止める手段がない。
 大量の汚染水が土壌に流れ出せば1日400トンのペースで海に流れている地下水に混じって徐々に流れ出している放射能が、今度は桁違いに大量漏出する。

○汚染水の現実

 今でも11,000トン×4億ベクレル=4400兆ベクレルの汚染水がトレンチに溜まっており、トレンチに破損が生じれば建屋の70,000トンも流出し始める。合わせれば京の単位の汚染水が流出する可能性が出てくる。
 そのため、止水壁工事を始める前にトレンチ内を空にしなければならない。
 東電はまたしても「事態が小さく見えるように」明確な表現をしないまま止水壁用の凍結管埋設工事を障害物のないところから先行実施しているが、トレンチなど地下障害物にさしかかる時点で、内部から汚染水が漏れないように対策が終わっていなければならないのに、トレンチへの汚染水流出を止められない事態が4月以降続いている。


.. 2014年08月18日 08:10   No.777002
++ 山崎久隆 (社長)…442回       
○ドライアイスと氷

 そこで「最終手段」に打って出た。それは「氷とドライアイスの投入」だ。
 ドライアイスは非常に低温なので、下手をすればコンクリートに損傷を与える危険性がある。氷は溶けるので、当然汚染水を増やしてしまう。
 方法としては良くないのだが、背に腹は替えられぬとばかりに7月下旬から作業を始めた。ところが凍らない。
 30日までは1日2トンとか6トンとか、おそるおそる投入していた感があったが、30日以降は日量15トンに増やした。最初の氷は投入後3時間で溶けてしまい、水温も3〜5度ほど下がったがまだ10度ほどあるというから、始めた以上成果が出るまでやるということらしい。
 そしてついに1日27トンまで投入量を増やす決定をしたのが8月7日だった。ドライアイスも1トン入れるという。
 こういうのを泥縄というが、本当にこれで凍るだろうか。
 東電の見立てのように、単に水の流れが邪魔をしているだけなのか、疑問が残る。
 もっと大きな問題、例えば温度の高い地下水が地表面付近からトレンチや建屋内に侵入しているとか、空隙があって凍らない場所が出来てしまいそこに流水が流れ込むとか、大きな本質を変える事態が起きているのではないかと懸念する。

※事故情報編集部より
 1.上記の山崎久隆さんの文章は、8月14日発信の【TMM:No2249】★1.速報
  ◆「氷の壁」断念を検討 ドライアイス効果なく[産経新聞より抜粋]も合わせてごらん下さい。
 2.この山崎久隆さんの文章は、8月10日に届いていましたが、「夏休みと多くの原稿が来たこと」の2つの理由で、事故情報への掲載が遅れて本日に至りました。

.. 2014年08月18日 08:17   No.777003
++ 山崎久隆 (社長)…443回       
パブコメを書こう その3
 |  川内原発は避難困難原発
 |  「事故の可能性がゼロではないはずなのに事故はありえないことを
 |  前提にしているからこそ、原子力防災・避難計画の策定が
 |  地元自治体に丸投げされている。」
 └──── (たんぽぽ舎)
 
  「実効性ある避難計画を再稼働の要件とせよ」
       こちら
  川内原発審査の問題3.広瀬弘忠・東京女子大名誉教授
  中村 稔、岡田 広行:東洋経済編集局記者

○対象にすらなっていない防災計画

 3回目は広瀬弘忠東京女子大名誉教授による実行性の無い原子力防災批判である。
 そもそもパブコメに原子力防災は対象にすらなっていない。それは規制委員会の規制対象になっていないからであるが、そもそも原子力防災を規制委員会が扱わないこと自体が大問題だ。
 世界でおそらく最も厳しい部類に入るであろう米国NRC(原子力規制委員会)の規制基準には当然のこととして原子力防災は含まれる。
 さらに防災計画を策定した後でも、州がこの計画を承認しなければ原発を稼働させることは出来ない。二重に「安全装置」が掛けてあるようなものだ。
 日本はといえば、防災計画そのものを作るのが地方自治体である。
 これについて広瀬教授は「立地自治体はもともと、税収増や雇用増などの経済的メリットがある原発を誘致したいのだから、チェック機能は働きにくい。それなのに、自治体へ避難計画が丸投げされ、結果的に実効性の乏しい避難計画になっている。福島の教訓が全く生かされていない。」と、実態のひどさを明確に見切っている。

.. 2014年08月18日 08:40   No.777004
++ 山崎久隆 (社長)…444回       
○想定の甘さも巨大

 川内原発の防災計画は、海沿いの国道が使えないケースでも南九州自動車道は使えるなど、恣意的なケースばかりが目立ち、最悪のケースは想定されていない。
 また、30キロ圏内ばかりでなく40キロ圏、50キロ圏の人々が動き出す可能性はあるし、UPZ・緊急時防護措置準備区域の30キロ圏内で指示に基づかないで避難をする割合を40%と、到底考えられない低さで想定したりと、本来「最悪の事態」例えば、燃料切れなどで道を塞いでしまう車が続出、交通規制も避難指示も行われないなどということを考えてもいない。
 こんな楽観的計画では実際に役に立たないのに、都合のいいように恣意的に作られていると指摘する。

○要援護者を逃がさない

 30キロ圏の避難準備区域を作っても、その区域の要援護者を避難させるマンパワーは存在しない。だから逃がさない、そしてそれは当然とする伊藤祐一郎知事の発言は、以前から懸念されていた事態を現実のものとするものだ。つまり自力で逃げられない人は見捨てられる。これについても広瀬教授は「一番援護が必要な人たちを避難させられない状況で、本当に避難計画と言えるのか」と批判する。
 もちろん、これに加えて要援護者を援護する施設や病院のスタッフ、その家族はいったいどうするつもりか。恐ろしく非人道的計画といわざるを得ない。

○福島の教訓

 「原子力防災は不可能」といった意見があってもいい。しかし原子力防災は地方自治体に策定義務があるので、そこにある矛盾を厳しく指摘することは規制委員会だけでなく地方自治体への大きな牽制にもなる。
 前例を重く見る役人に対して「過去の教訓はどうした」と迫ることは重要だ。教訓も生かせないで、次に進めるはずがない。
 広瀬教授の指摘は、その意味でも重要である。
 「われわれには「福島」という一つの大きな教材がある。いろいろな失敗から学ばなければならないのに、失敗を避ける方法をあえて無視している。そういうやり方はあまりにも政治的というか、エゴイスティックという気がする。
 福島の教訓を生かすなら、30キロメートル圏だけでなく、40キロメートル、50キロメートル圏のことまで考えなくてはならない(福島事故では、30〜45キロメートル圏の飯舘村に避難指示が出された)。」

.. 2014年08月18日 08:49   No.777005
++ 山崎久隆 (社長)…445回       
パブコメを書こう その4
 |  住民の安全性を踏まえない規制委審査
 |  「もし不十分な形で原発を稼働させて再び大事故が起こったら
 |  “日本は終わり”と言っても過言ではない」「安全性、経済性、
 |  倫理性の3つの点で、原発は稼働に値しない状況にある」
 └──── (たんぽぽ舎)

  「住民の安全性を踏まえない規制委審査だ」
       こちら
  川内原発審査の問題1.植田和弘・京都大学大学院教授
     中村 稔、岡田 広行:東洋経済編集局記者

 東洋経済の連載は、実際には、この記事が第1回目だ。実は紹介の順番を逆転させている。川内原発のパブコメについての参考文書として紹介したいので順序を変えた。
 この回は、いわば「川内再稼働そもそも論」である。
 パブコメは今回は「専門技術的な意見」を募集している。「そもそも論」や「防災論」は「送っても無駄」らしい。しかしパブコメの内容を限定する根拠など法的には無い。国の役人がめんどくさい「そもそも論」や福島の人々の再稼働批判文などは読みたくもないと思っているから、こういう根拠の無い縛りを掛けてきた。不遜、反省無し、お上意識丸だし。命令慣れしている官僚は人の意見を聞く態度さえ知らない。
 これではパブコメを読んで役人に回答を指示する「第三者機関」を作った方が良い。全くばかばかしいことだ。

○安全性の中身に問題有り
 
 「安全性」とはいったい具体的に何を指しているのか。田中委員長は新規制基準について「安全と認めたわけでは無い」というし、基準に適合という場合の「基準」が、安全とどのような関係にあるのかもはっきりしない。それでいて「世界で最も厳しい基準」と安倍首相がいうのは、何を指しているのか。まさしく専門技術的な意味において、誰にも分からない。
 例えば安全対策としてとりわけ加圧水型軽水炉に「コアキャッチャー」「二重の格納容器」を義務づけるというのならば、かなりの高い安全性能を求めているように思われるが、そういう基準にもなっていない。尤も、仮に世界最高水準の基準だとしても、それで本当に十分なのかという本質論もある。もちろん、それもなされていない。
 結局のところ「福島を再現しない」というところくらいしか、落としどころの無いのが現状であることを植田教授は指摘している。

○福島を繰り返さない

 植田教授は「非常事態を想定しているとは言うが、福島事故の教訓を生かしているとは言い難い。福島事故では、放射能汚染の多いほうへ住民が避難してしまったことや、重度の病気の方々がギリギリの選択を迫られるようなことがあった。
が、規制委の審査では、住民の避難計画をしっかりたてることが要件になっていない。」と、原子力防災を審査対象としない規制委を批判している。福島の教訓は無視されたままだ。このうえ、再稼働して福島原発震災を繰り返したら日本は終わりだ。
 「まず確認しておく必要があるのは、もし不十分な形で原発を稼働させて再び大事故が起こったら、“日本は終わり”と言っても過言ではないことだ。」
 ところが田中規制委員長自身が事故を否定しない。否定できない程度の基準しか作っていないのだから当然だ。福島を繰り返さない基準にするまで、そもそも審査を始めるべきではない。


.. 2014年08月18日 08:58   No.777006
++ 山崎久隆 (社長)…446回       
○経済性も対象外

 「原発が引き起こす被害の大きさを考えると、経済的なベネフィット(効用)よりもはるかに大きいリスクがある。」と福井地裁判決は示した。
 そして安定供給にも役立たない。「原発自体が安定供給の電源か、というとそうではない。何らかの事故が起これば、大量の発電能力を持つ発電所が一度に止まってしまう。止まれば、かなりの期間、検査もしなくてはならない。原発が安定供給の手段というのは間違った理解の仕方だと考えられる。」
 「日本の経済社会全体の構造を、省エネ、節電型の方向へ持っていくことは、たくさんのビジネスチャンスも生む。そういう意味で、再生エネや省エネの推進には、二重、三重のメリットがある。」
 いずれも再稼働の審査には「関係ない」とされるのであろう。しかし、わずかな経済的利益と引き替えにするリスクの巨大さは、どうしても伝え続ける必要がある。
 また、電力システム改革にとっても原発は途方も無い障壁にしかなっていないことも事実だ。中部電力が使えもしない原発のために巨大な防潮堤を建造する費用を、再生エネルギー開発や原子炉の使用済燃料の安全保管対策に使っていれば、大きな前進が見られただろう。同様に、川内原発に巨額の資金をつぎ込むのならば、もっと合理的で安全な電力システムに投資する方が未来の世代に対して責任を持つ姿勢だということなど、伝えるべき意見が封じられている。
 もっとも、専門技術的意見を述べてみても、結果的に採用される可能性は絶無なのだから、言うべきことを書き続けるのは重要だ。

◎川内原発に関するパブリックコメントの締め切りは明日8月15日(金)です。
◎九州電力株式会社川内原子力発電所1号炉及び2号炉の発電用原子炉設置変更
許可申請書に関する審査書案に対する科学的・技術的意見の募集について
こちら
◎意見提出フォーム
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Opinion

.. 2014年08月18日 09:42   No.777007
++ 山崎久隆 (社長)…447回       
川内原発のパブコメ募集は終わったが…
 |  再稼働は出来ない(はず)
 |  手続的にも間違っている パブコメは無効
 └──── (たんぽぽ舎)

◎中身のないパブコメ案

 8月15日に募集が終わった「川内原発設置変更許可申請書に対する審査案」への意見募集だったが、これに関連して再稼働の時期に関していくつか報道がされている。
 例えば8月5日付けの「川内原発の再稼働 12月以降の見通し」(NHK)などだ。
 7月16日に規制委員会による事実上の審査合格といった報道がなされていたが、実態は全く違っている。それがこの報道でも明かされている。
 原発の運転許可を出すのは経産大臣である。内閣総理大臣ではない。(もんじゅのような研究炉は内閣総理大臣)だから安倍首相が何かを「保障する」など行政手続き的にあり得ない。責任を負うというならば事故が起きたら損害は全部自ら及び責任者の財産で賠償することを契約すべきだろう。
 パブコメに掛けられていた文書の表題も「川内原発設置変更許可申請書に対する審査案」となっていることに注意してもらいたい。新規制基準とか合格といったものは何処にもない。あるのは従来の行政手続きの「設置変更許可申請書」という言葉だ。これは原発の様々な設備変更や、プルサーマル用にMOX燃料を装荷するといった時にされる申請と同じ手続きだ。
 そしてこの文書、今まで以上に中身がない。科学的、技術的意見のみ、などとパブコメ募集要項に記載されていたが、いったいこの文書の何処が科学的で専門的なのか。工学部の学生の試験答案ならば失格だろう。何しろ根拠がほとんど書かれていない。
 工学的な妥当性とか安全性を保障する施設、設備、管理が書かれていなければならないのに「方針を妥当なものとした」などと規制委の結論が書いてある。一方、方針の提示では変更許可申請にならない。「何をどう変え、その強度解析などの妥当性はこうこうだから変更を申請する」といった内容でなければならない。
 そこで出てくるのは設置工事認可申請、通称「設工認」または「工認」だ。これは具体的な工事内容を記述するので、例えば耐震強度をどのように評価しているかなどはこれを見なければ分からない。この設工認が規制委員会により承認されて初めて、具体的な工事に着手でき、それが完成した後に使用前検査を受審し、合格して初めて運転可能な状態になる。一般的に原発の手続きは、このように行われる。


.. 2014年08月19日 07:58   No.777008
++ 山崎久隆 (社長)…448回       
◎再稼働は出来ない
 
 これでようやく冒頭の記事の内容が理解できるようになる。
『原子力発電所の再稼働に必要な審査に事実上合格したとされた鹿児島県の川内原発について、九州電力は、原子力規制委員会に提出する資料の作成が大幅に遅れていることを明らかにしました。これに伴い、九州電力が目指す川内原発の再稼働は12月以降になる見通しです。』
 そう、九電はまだ工事認可申請書を作成できていない。これでは再稼働手続きは進まない。
 『九州電力の中村明上席執行役員は会合のあと報道各社の取材に応じ、「資料の提出は来月末(9月末)を目指すが10月にずれ込む可能性もある。まずは認可をいただくため書類を提出することに集中したい」と述べました。』
 ではなぜ、予め分かっていたようなものの再稼働申請手続きができないのか。
その謎は突如引き上げた基準地震動Ssにある。
 『遅れの理由については、地震による揺れの想定を引き上げたのに伴って、設備の耐震性の評価に予想以上に時間がかかっていることなどを挙げました。
 詳細設計の資料を提出したあとも規制委員会による資料の確認や完成した設備の検査に少なくとも2か月前後かかるとみられ、地元の合意が得られた場合でも九州電力が目指す川内原発の再稼働は12月以降になり、来年になる可能性があります。』
 基準地震動Ssは、今回の新規制基準適合性審査に提出した設置許可申請でも540ガルだった。これは2006年の耐震設計審査指針変更に伴い、原子力安全・保安院が各電力会社に指示した「耐震バックチェック」に基づいて2010年1月に提出した「耐震設計審査指針の改訂に伴う九州電力株式会社川内原子力発電所1号機耐震安全性に係る評価について(基準地震動の策定及び主要な施設の耐震安全性評価)」(耐震バックチェック)中間報告の時から変わっていなかった。
 ところが今回、規制委員会によりSsの値が小さすぎるとの指摘を受け、「えいや」と引き上げて見せたのがSs620ガルである。
 発生する地震や過去の地震動解析などから、新しい値になること自体、あり得ることだろうが、川内原発の場合、根拠が良く分からない。620どころか、もっと大きいはずとの指摘も当然ある。

◎九電の見込み違い

 いうまでもなく、Ssを「えいや」と引き上げたからといって突如耐震強度が上がるわけがない。
 次は何が始まったかというと、そうやって引き上げたSsの元になる模擬地震波形を使って施設設備をコンピュータ上で揺らし、必要な強度や操作性が確保できるかを調べ、足りない部分は補強し、補強でもダメな場合は作り替えるなどしなければならない。(そもそもコンピュータ・シミュレーションなどあてにならないとの意見もある)
 普通、原発の新設でも耐震計算を行うには年単位の時間がかかる。
 耐震バックチェックも、2006年に新耐震設計審査指針が決まっても、耐震バックチェックが始まるのは2008年、そして川内原発(1号機)が従来270ガルの設計用限界地震動(S2)を新耐震設計審査指針に合わせて作り替えて中間報告を出したのは2010年になってからである。4年もかかるにはそれだけの理由があるわけで、今回のように、審査書を出した後に、いきなり540ガルから620ガルに引き上げたら、その後に続くはずの耐震計算も設工認も全部作り替えになり間に合うわけがないのである。


.. 2014年08月19日 08:22   No.777009
++ 山崎久隆 (社長)…449回       
◎耐震性に重大な欠陥

 あまり楽観的になってはいけないが、年内に文書を作ったとしても、それは作文であって、実際に必要な工事類は簡単には進まない。
 おそらく基準を割り込むところがいくつも出てくるだろう。特に2号機に比べて、もともと建設時の耐震基準地震動S2の値が小さい1号機は、さらに厳しくなると思われる。
 耐震バックチェック「中間報告」はSsを520ガルとしていた。それに対して原発の構造強度は建設時270ガルで作られていた。もっとも、この値で耐震強度計算をして物を作っていたら地震よりも圧力や荷重などの応力が大きくなり、強度不足になる部位が多数出るから、実際のところ原発の各部材の強度を決定しているのは圧力や振動などの方が多くなる。ところが今回はSsをいきなり2.3倍の620ガルに引き上げたので、随所で耐震性にかかる安全裕度を食いつぶし始めたと思われる。
 例えば1.96倍あったラジアルサポートは1.71倍に、1.24倍あった蒸気発生器支持構造物は1.09倍に、という具合だろうと想像する。(数値は設工認などが出ていない段階なので筆者の推計)
 例えば蒸気発生器支持構造物はこのままでは使えないと思われるので、補強が必要になる。その工認がされていないのだから、これでは動かせないわけだ。

◎制御棒はもっと深刻?

 制御棒はもっと深刻かも知れない。
 耐震バックチェックでは、挿入時間が1.86秒と、評価基準値(安全評価の解析条件である制御棒クラスタ落下開始から全ストロークの85%挿入までの時間)である2.2秒の85%程度だった。これを機械的に比例計算すると620ガルでは2.14秒になる。2.2を下回ったといって喜んで良い値ではない。
 しかも耐震強度の場合は基準を超えたとたんに機器類や建屋が一基に破壊されると決まったわけではないが、制御棒の挿入遅れは、確実に炉心の安全性を危険にさらす。地震の最中(2.2秒ではまさに本震が襲ってくる直前くらいだ)に挿入に失敗した状態でフル運転中の原子炉が揺さぶられるなど、想像したくもない。
 そうなると現実味を帯びるのがATWS、異常な過渡変化時に安全保護系が制御棒挿入信号を発しても挿入できない、という大変な事故になることだ。以前、大飯原発の再稼働がらみで耐震性の問題が指摘され、同じ批判がされていたが、川内原発も同様の欠陥がある。


.. 2014年08月19日 08:29   No.777010
++ 山崎久隆 (社長)…450回       
◎対策不能のATWS

 これをどう解決するのか。強度部材ではないので、ますます難しくなる。
 加圧水型軽水炉については、どこもSsが1000ガルを超えない「最大の理由」は、この制御棒駆動系にあるのだろう。重力加速度980ガルと同じ揺れが挿入方向と反対に働けば、加圧水型軽水炉のように挿入そのものを自由落下で行う構造の原発では、どうしても「入らない時間」が生じてしまう。
 その対策としては、動力を取り付けての強制挿入を行うしかないのだが、加圧水型軽水炉の構造を見れば、如何にそれが困難であるのかが分かる。
 それに、そのような装置を付けたら今度は、その安定動作の保証、誤動作防止の仕組み、人の操作が必要な場合の操作手順、インターロック機構、安全保護系への組み込み方等々、検討すべき問題が山積みになる。到底1年や2年で改造、設置、運転開始など出来るわけがない。

◎次の原発事故は起こる

 結局、大地震の襲う日本において、耐震設計を行って安全に動かす、など幻想に過ぎないのである。重力加速度を超えるような地震が起きることを想像さえしなかった時代に原発は作られ始めた。そして4000ガルもの地震動が観測される今になっても、震度5強程度の地震で耐震計算をしている原発が再稼働をしようとしている。
 その間違いに気づけないのだったら、次の原発事故は確実に起こる。

◎パブコメは無効

 以上のようにパブコメは、重要情報、必要手続き、安全解析を全部すっ飛ばして、根拠のない作文を見せられただけだった。単に手続きを進めるためだけのパブコメに意味はない。こんなものは無効である。
 これから必要なのは、設工認や新たな耐震設計を批判し、国会や地元議会などを含めて広く批判を集め、再稼働へのゴーサインを政府や自治体に出させない取り組みが重要になる。手続きは「やれば良い」というものではない。内容も伴わない作文は、「突き返す」しかないのである。
 パブコメから外されている原子力防災も含めて、これからも追求は続く。


.. 2014年08月19日 08:35   No.777011


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