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冷却水喪失事故では、ECCSに頼るという原則がすべて果たせなかった └──── (元理化学研究所研究員)
【2号機・原子炉の冷却に失敗した欠陥隔離時冷却系】
2号機では、原子炉配管が地震により損傷を受けず健全で、隔離時冷却系は有効に働いた。ところが、地震から3日後の3月14日9時、隔離時冷却系は原子炉への水の供給ができなくなった。その原因は、水源を復水器タンクから圧力抑制室に変えたことによる。圧力抑制室にはこの隔離時冷却系から原子炉の蒸気が流れ込み、溜まっている水は沸騰していたからである。沸騰する水はポンプでは吸引できない。 この隔離時冷却系には非常用復水器の機能が付いていた。しかし、前記浜岡原発の水素爆発事故で、東電はこの冷却機能を削除していた。ここで、非常用復水器機能を削除するのではなく、これに水素逃し弁を付ける対策をしていれば、冷却した水が原子炉に供給されるから、2号機は事故にはならなかった。この非常用復水器機能の削除は東電の決定的な間違いであり、コスト削減だけを目的にしたこの東電のECCS削除は許されない。 14日18時、発電所は、隔離時冷却系に頼るのをあきらめ、消防ポンプにより海水を注入することにして、原子炉の圧力を下げるため原子炉逃し弁を開放した。原子炉の圧力は1時間で70気圧から6気圧に急減圧したので、消防ポンプで海水を注入した。 しかし、すでに空焚きになっている燃料に海水が接することになり、燃料はさらに崩壊し、崩れ落ちた燃料は制御棒置き場に溜まっている海水中に落下し、6時間にわたって多数回の水蒸気爆発を起こした。 15日0時、原子炉から蒸気が供給された格納容器は7気圧となった。その破裂が心配されてベント(大気への放出)がなされた。このベントにより同日8時頃から10時頃にかけて、原子炉と格納容器の圧力は共に大気圧まで低下した。大量の放射能を含む蒸気は120メートル高の排気塔から放出され、南東の風に乗って福島県民を襲うことになる。
【3号機・ECCS低圧注水系を使用せず事故収束に失敗】
3号機では、計器読み取りで計測するまでの計測空白は13時間もかかった。この空白時間直後の12日6時には水位は二重表示で原子炉は空焚きだった。使用されていた隔離時冷却系(11日16時起動)は有効ではなく、冷却水は破断口からすでに流出していた。 12日13時、高圧注水系が自動起動したが、水位はやはり二重表示で空焚き状態だった。運転員には水位のこの二重表示の意味が分からず、苛酷事故であることを見逃していた。 3月13日3時、高圧注水系停止。原子炉圧力はすでに10気圧以下と低く、原子炉の圧力高を利用する高圧注水系は使用不能だった。3号機は津浪被害が少なく、蓄電池などを補充すれば使用可能だった低圧注水系を使用しなかった。 3月13日9時、消火ラインによる給水(非ECCS)を目的に原子炉逃し弁を開く。原子炉は一挙に大気圧に低下して、人為的冷却水喪失事故となった。 3月30日原子炉真空(誤表示)、格納容器大気圧。空焚きを放置して汚染水流出。
【結論】冷却水喪失事故では、ECCSに頼るという原則がすべて果たせなかった。
.. 2013年11月22日 11:31 No.654001
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