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補償を値切るためのごまかし
福島大学でも、学食周辺など学生が通る広場が2012年3月に除染され、そこにポストが設置された。当時表示板には0・23などの数値が示されていたが、周囲は0・8〜0・9μSv/時だったという。権力から束縛されない、自由な「真理探究の場」であるはずの大学で、それも福島原発事故のあった地元の大学で、人々を欺くためのごまかしが行われている。 飯舘村の長谷川さんは、線量の高い地区でも測定を行った。蕨平では、ポストで4・5μSv/時。30m離れて測ると、9μSv/時になった。比曽地区では、ポストで2・4μSv/時、30m離れると5・6μSv/時を示した。実態は公表値の2倍以上の汚染だったという。 長谷川さんががこの問題を重視するのは、次のような理由だ。「10年後、20年後、今の子どもたちの身体に異常が出てきた時に、国との補償交渉で必ずポスト の数値が出されるに違いありません。ポストの数値が実測値の半分の場所もたくさんあり、この数値を根拠に事故と健康被害の因果関係を否定されてしまうことになりかねません」。 長谷川さんは、2011年の12月から、前田地区全55戸の玄関先で放射線量を定・記録する活動を続けている。「結果を見ると、平均的には少しずつ下がっています。でも、とても子どもが暮らせる環境ではない」と肩を落とす。 「子ども福島ネット」の深田和秀さんは、「帰還事業の道具だ」と指摘する。 空間線量を低く誤解させることで、県外避難した県民の帰還を促し、「復興」をアピールしたい県の意向がごまかしを招いている、と語る。 小出裕章さんは、「ポストは除染をし、きれいに整地した場所に検査機を置いているわけだから、周辺地域より低い値が出るのは当たり前」とコメント。今中 助教は、「こんなごまかしは、専門家でなくても誰でも検証できること。未だに改善されず、放置されていること事態が異常」と語る。 ポストの測定値が当該地域の放射能汚染値としては全く使えないことは、実証済だ。にもかかわらず、これが公的な数値として記録され、東電による補償などの判断基準になっていくとすれば、誰が得をし、誰が損をするのか?明らかだ。政府・自治体がポスト測定値のごまかしを誰のために行っているのかも、同様だ。
※(6月5日通巻1483号より、了解を得て掲載)
.. 2013年06月25日 21:52 No.567001
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