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アメリカから突きつけられた「放射能後遺症」の恐怖
2013年3月11日。東日本大震災から2年が経ったこの日、日本のテレビ・新聞報道は、「あの悲しみを忘れない」「復興に向けて」といった感傷的な報道で溢れた。一時、あれほど語られた「放射能の健康被害」については、まるで忘れられてしまったかのように静かだ。しかし、海外ではいまも多角的な研究が続けられている。そして彼らは、こう警鐘を鳴らす。「福島原発事故から2年。日本はこれから本当の悲劇を迎えるのではないか」とー。 3月11日、ニューヨーク。福島原発から約1万キロメートル離れたこの地で、「福島原発事故が医学・環境に及ぼした影響」と題されたシンポジウムが開催された。主宰したのは、ヘレン・カルディコット財団と、1985年にノーベル平和賞を受賞している「社会的責任を果たす医師団」。彼らの呼びかけで世界中から放射能研究の権威が集結し、数百人の聴衆を前に、福島第1原発事故の影響に関する詳しい報告が行われた。本誌はこのシンポジウムに参加した専門家たちの取材を行ったが、彼らの口からは新たに判明した福島原発の「不都合な真実」が次々と出てきたのである。
なぜ鈍感でいられるのか
まず、原発のエンジニアで、アメリカの原子力委員会にも提言を行っているアーニー・ガンダーセン氏が明かす。 「福島だけでなく東京の汚染が予想以上に深刻に進んでいる、ということが分かっています。昨年、私は東京中心部の土壌のセシウムを測定しましたが、1キロ平方メートルあたり7000ベクレルが検出されました。これは、アメリカにおける放射性廃棄物の基準値に相当する量です。つまり、東京中に放射性廃棄物がばらまかれているも同然なのです。(中略) 「2012年11月に日本の沖合のセシウム137の汚染状況を調べたのですが、海底には94テラベクレルが、海水では15テラベクレルが検出されました。また、2012年末の時点でも、海水は1平方メートルあたり1000ベクレル以上汚染されていて、汚染濃度はまったく低下していません。これらはチェルノブイリ事故後の汚染よりもはるかに高い数値です。海流の流れによってセシウムはより広域に広がっているので、太平洋の汚染が進んでいる。現時点で18パーセント以上の魚が制限値以上の数値を検出している。なぜ日本の人々がこのことに鈍感でいられるのかが分からない」(中略) 今回のシンポジウムで最も耳を傾けなければならないのが、サウスカロライナ大学で生物科学の研究を行っている、ティモシー・ムソー博士の調査結果だ。ムソー博士は福島の現地調査を行い、野生生物に奇形や個体数の減少といった明白な"変化"が表れていることを明らかにした。「私はチェルノブイリと福島の両方で、事故後の野生生物の状況を調査しました。野生生物は最も放射能の影響を受けやすいからです。福島県内の400カ所で調査を行いましたが、放射線量の高い地域では鳥類の数が著しく減少しています。放射能の影響がチェルノブイリの2倍にも達しているところもありました。チョウの減少や奇形も顕著です。また、鳥の個体を調査すると、奇形が見られたり、斑点ができているものが多く見られ た。明らかに放射能の影響で、遺伝子障害の率が増加しているのです」
.. 2013年03月22日 09:31 No.514001
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