<連載−2> │ 当時の伊方原発所長の発言は、根拠がない真っ赤なウソ │ 航空機などの墜落について、安全審査など全くされていなかった └────(南海日日新聞社) ●推進派の知事も衝撃受ける 原発近くにヘリが墜落したことに震え上がったのは、大沢さんや地元伊方町民ばかりではなかった。 マスコミは「ミサイルを積んでいたらと思うと背筋が寒くなる」(七月四日付け毎日新聞)と、恐怖を隠さずに書いた。それは原発推進に力してきた当時の伊賀貞雪愛媛県知事も例外ではなかった。 事故直後の二七日の記者会見で「県民に大きな衝撃と不安をあたえ、遺憾千万だ」と、強い口調で語った。事故直後「原発は飛行機が墜落しても安全だ。 今後特に対策を取るようなことはない」と言下に言い放った四国電力に対し、飛行機の墜落の対策や防止策を求めた質問状を提出、さらに墜落事故の確立は「二〇〇〇万年に一回だ」という電力会社や国の説明に対しても「それだからといって安心できない」と反論した。 伊賀知事のこの言葉は、県内の原発推進派が、この事故でいかに大きな衝撃を受けたかの証だった。 しかし、住民の受けたショックは知事の比ではなかった。伊方原発立地周辺の住民で組織する伊方原発反対八西連絡協議会、伊方原発から直線で一〇キロ の町、八幡浜市の主婦らが集まっている「八幡浜・原発から子供を守る女の会」、さらには原発から五〇キロ以上離れる「宇摩原子力発電を考える会」、「原発なくするまでガンバロウ会」「原発さよならえひめネットワーク」など、県下の一〇以上にのぼる民主団体が、四電や伊方町・県に対して、「不安の原因である原発をすぐ廃止の方向へ持っていくべきだ」と、抗議文や抗議行動要 請文の提出など相次いで行った。 こうした行動は、原発反対を日頃から言っている人たちばかりでなかった。三〇日には、原発建設問題が起こってからのこの二〇年間、ただひたすら沈黙を守ってきた伊方原発立地の九町地区にあるただ一つの農協、町見農協にまで口火を切らせた。町見農協理事一二人連名の福田直吉伊方町長への要請文は「ここは原子力発電所の立地場所であり、報道されているように墜落現場は原 子炉に大変近い位置で、一つ間違えると大惨事になっていたと考えられ、精神的な面で住民の不安は一般に高まっており、誰もが痛烈な憤りを感じております」と記していた。 身近にある「危険物」への恐怖は、時間がたつにつれ、怒りへと変わっていったのだ。恐怖感を逆なでした四国電力の対応 ところが「危険物」を設置した四国電力のこの事故に対する対応は、こうした住民感情とかけ離れたものであるどころか、住民の恐怖感を逆なでするものだった。 事故直後の記者会見で、山下一彦伊方原発所長は「原発の近くで事故が起きたのは残念だ。しかし上空に航空機は飛んでおらず、国の安全審査も通っている」(六月二六日付け愛媛新聞)「原発に航空機が落る場合も考え、安全審査している。落ちても原子炉は頑丈な幾重もの壁にさえぎられているから大丈夫だ」(同日付け毎日新開)と発言したのを皮切りに、「原子炉は五重の格納 容器で保護されているので、ヘリコプターがぶつかった程度なら、放射性物質が外に出るような事故にはならないだろう」(中尾邦之・伊方原発機械補修課長・同日付け読売新聞)と相次いで原発の安全性を強調した。ところが、これらの言葉は何の根拠もない真っ赤なウソだった。
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.. 2012年11月03日 09:00 No.448001