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皇帝溥儀は、頭脳は鋭敏ですが、小心で偏執狂的性格者とみられています。「私の日常生活は食うことと寝ることを除けば、次の言葉で概括できた。すなわち、殴り、怒鳴る、占う、薬を飲む、恐れる、である」著書『わが半生』に告白していますが、皇帝溥儀の叙述によれば、王宮内での生活は異常であったと言います。
少しでも気にいらない言動が眼にふれれば、妻や弟、妹の夫のほか、殆どの家中の人間が、怒鳴られ、殴られたといいます。痔の座薬の形が銃弾に似ているのを見て、銃弾にあたるように呪っている、と買ってきた甥を竹むちで叩かせ、ハエの足が料理にはいっているのに気付くと、料理人に罰金刑を科しました。
入り口の敷居を跨ぐ時、左足を先にすれば吉か、右足が吉かと思いまどい、しきりに瞬きをして、ツバを吐き、舌打ちを続けたりした。召使が不正していると思い込み、買物に行くあとを別の召使に尾行させ、夜は暁になるまで眠れなかった。
日本人が殺しにくる――というのが、この異様な神経興奮の原因であり、日本の戦勢が不利となってからは、ますます不安と動揺が高まった、と皇帝溥儀はいいます。ブレイクニー大佐は、詳細は知りません。しかし、少佐は、それまでの調査と情報により、少なくとも皇帝溥儀の性格についての知識を得ていました。
ひ弱な神経と性格は、過酷な環境によってバランスを崩しやすい。そして皇帝溥儀は、日本の敗北にともなう新京脱出とソ連抑留、さらに法廷出席という、過酷なうえに惨めな転変の時を重ねてきたので、神経が耐える力を失ったのでは、ブレイクニー少佐は、瞳孔をすえて虚ろに呟く皇帝溥儀に無気味な直感を覚えたのだが、皇帝溥儀の精神は頑強でした。
ブレイクニー少佐は、質問に答えるよう命令してくれ、とウェップ裁判長に頼みました。「証人、あなたは誰かにその文章を書く権限を与え、または書くことを命じましたか」「全然そういうことはございませぬ」かん高い声で皇帝溥儀は、裁判長の言葉に応じました。
再び、眼はキョロキョロとせわしなく動いている。ブレイクニー少佐は「人間に良心がある限り、ウソをつき、それを追求されるのは苦痛だ。耐えがたい苦しみだ。そのために死を選ぶこともある。しかし、良心をうち砕く利己心の持ち主もいることを発見した」と言います。
.. 2026年06月19日 05:23 No.3504001
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