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食べかけのパンをキッチンに放置しておけば、一週間も経たないうちにカビが生えるでしょう。このカビという生物は、一見すると何もないところから自然に発生したように思えますが、そうではないことを我々は知っています。
目に見えないほど小さな菌がパンの表面に最初から付着していたか、どこかから風で飛ばされて付着し、それが増殖して「目に見えるサイズになっただけ」です。虫の死骸にいつの間にかウジ虫がわいても、布団にいつの間にかノミが現れて体に痒みを引き起こしても、それが「何もないところから生まれた」とは誰も思わないでしょう。
すべて「どこかからやってきて増えたもの」だと我々は知っているからです。だが、科学の歴史において、この知識は非常に新しいのです。何もないところから生物が発生するという「自然発生説」は、18〜19世紀頃まで長きにわたって信じられていたからです。
特に、17世紀にレーウェンフックによって微生物の存在が確認されると、生物の自然発生を否定するのがさらに難しくなりました。目に見えない以上、それが出現する瞬間を観察できないからです。この自然発生説は、とにかく根強かったのです。
例えば、1760年代にイタリアの動物学者ラザロ・スパランツァーニは、自然発生説に疑いを持ち、ある実験を行いました。ガラス瓶に入れた肉汁を煮沸し、微生物をひとまずゼロの状態にしたのち密閉した場合と、空気にさらしていた場合を比較したのです。
その結果、空気にさらしていた肉汁は微生物が大量に現れて腐ったのに対し、密閉したほうは何も変化がなかったのです。生物は自然発生するのではなく、あくまで外部からガラス瓶に入りこんだことを示す実験結果でした。
ところが、自然発生説を信じる論者たちは猛反発しました。生命が生まれるには空気との接触が必要だ、と主張したのです。彼らは、密閉して空気を遮断したせいで、生命の自然発生が妨げられたと考えたのです。
自然発生説を否定するためには、「空気が供給されてもなお生物が自然に発生しないこと」を示す必要がありました。この難題を解決したのが、フランスの化学者ルイ・パストゥールです。
.. 2026年03月19日 08:14 No.3449001
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