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■--原発が爆発 絶望感…
++ 東京新聞 (社長)…3380回          


  訪れし 仮設住宅に住む人を 「仮設の人」と 言ってしまえり
               三原由紀子(歌人)

 週が明け、放射能への不安な気持ちを抱えたまま原宿の勤務先に行く
と、大きなテレビ画面では、東京電力福島第一原発が爆発した時の映像が
流れていました。同僚たちはまるで映画を見るように眺めていましたが、
「もうふるさとは終わってしまった」という絶望感から、私は涙をこらえ
てパソコンに向かうしかありませんでした。

 その一方で、ふるさとがこんな大変なことになっても、いつものように
働くことしかできない自分に疑問を持ち始めました。祖母と両親は福島市
を経て、親戚を頼りに山形県米沢市へ避難し、アパートを借りて住んでい
ました。避難生活に慣れないうちに、父はホームセンターで、母はスー
パーでアルバイトを始めました。母は慣れない仕事に泣いた日々もありま
した。

 避難にはまとまった仮設住宅、個別の借り上げ住宅があり、それぞれの
選択がありました。同じ町民なのに、無意識のうちに「仮設の人」とひと
くくりに呼んでいた自分に気づき、とても違和感を感じました。
 その年、独立したいという気持ちが確かなものになり、私と夫は一念発
起して東京下北沢で詩歌の出版社「いりの舎」を立ち上げました。原発事
故前から気になっていた福島県大熊町の歌人、佐藤祐禎さん=2013年に
84歳で死去=とお会いし、歌集「青白き光」を文庫版で再版したことが、
大きな出発点となりました。
      (11月26日「東京新聞」朝刊22面「私の東京物語」「6」)
.. 2025年12月06日 09:05   No.3383001

++ 東京新聞 (社長)…3381回       
カネ、カネ、カネの政治        鎌田 慧(ルポライター)

 ひとくちで「政治とカネ」と言われても、どんな実態なのかはよく表れ
ていない。政治を腐敗させるカネとか、カネで動く政治とか、ズバリと言
う方がわかりやすい。
 岸田内閣で経済産業相を務めた斎藤健氏は2024年5月にパーティーを
開き、2349万円が入った(本紙11月29日)。
非正規労働者の年収のほぼ10年分にあたる。
 議員歳費が年にほぼ2千万円。調査研究広報滞在費が年に1200万円、
さらに立法事務費が年に780万円。これらが国会議員の収入だが、使途非
公開の「政策活動費」など、「裏金の温床」と呼ばれている膨大な資金が
さらに加わる。

 高市早苗首相が代表を務める政治団体の場合、 2024年の政治資金収支
報告書では収入が約2億円。8384万円を、石破茂氏に敗れた2024年の総
裁選の告示直前と選挙期間中に支出していた。「印刷及び封入費」「発送
費」として、4584万円を支出している。全国30万人以上の党員にリーフ
レットを発送、
「多くの党員票を獲得する一因になったと指摘された」
                     (毎日新聞11月29日)。

 一方、小泉進次郎氏の関連団体の報告書によると、都内のPR会社に
2023万円、ブランド戦略2919万円。選挙情勢を調べる会社に1300万円
を支払っている。
 とにかく、働け、働け。カネ、カネ、カネ。
 こんな社会になったのが、情けない。
      (12月2日「東京新聞」朝刊17面「本音のコラム」より)

.. 2025年12月06日 09:11   No.3383002
++ 東京新聞 (社長)…3382回       
鈍感な流行語 「本音のコラム」
      斎藤美奈子(文芸評論家)

さあ、今年も新語・流行語大賞の(結果に斎藤が茶々を入れる)季節
がやってきた。
  今年の年間大賞は「働いて働いて働いて働いて働いてまいります/
女性首相」だった。「女性首相」まで入っての「流行語」なのだろう。
「そんなのいつどこで流行したんじゃ」「首相を会場に呼びたかっただ
けなんちゃう?」という毎年恒例の疑問はさておくとしても「なんじゃ
それ」な結果である。
 表彰式にご機嫌で登壇した高市早苗首相は「国民の皆さまに働きす
ぎを奨励するような意図はございません。長時間労働を美徳とする
ような意図もございません」と語ったそうで、受賞理由にも皮肉が
込められているのもわかる。わかるがしかし「気合いの入った物言
いに、働き方改革推進に取り組む経済界はド肝を抜かれた」に続けて
「共感した昭和世代も実は多かったのではないか。『仕事ってそう
いうものだったな』と」とか言ってるからな。萎(な)えるわー。
 厚生労働省によると、2024年度の過労死等の認定件数は1304件
で過去最多だった。うち8割はうつ病などの精神疾患、最多の原因は
「上司のパワハラ」だ。
 首相の発言意図や賞の選考理由が何であれ、日本はまだそういう
国なのよ。働く人の現状を考えれば鈍感すぎる。「働いて」を5度
も連呼するってパワハラ上司への援護射撃か。
(12月3日「東京新聞」朝刊21面「本音のコラム」)

.. 2025年12月07日 09:19   No.3383003


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