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パレスチナ実験室 パレスチナ人を「実験台」にして開発された技術が、 世界中の弱者を抑圧するために使われてきた
大矢英代(カリフォルニア州立大助教授)
オーストラリア在住のジャーナリスト、アントニー・ローウェンステ イン氏の著書とドキュメンタリー『パレスチナ実験室』は、イスラエルの 軍産複合体の闇を暴いた、いま最も注目すべき報道作品だ。 同氏は、イスラエル軍と軍事企業が、50年以上にわたり、ガザや西岸 地域を兵器開発や監視・スパイ技術などの「実験場」として利用してきた こと、最新鋭の兵器を世界中に輸出し、世界第8位の武器輸出国となった 経緯を調査報道によって浮き彫りにしている。
ミャンマー軍に売却された兵器は少数民族ロヒンギャの殺害に使用さ れ、EU国境警備機関フロンテックスが使用するドローンは地中海を渡る 難民を監視し、米国ではメキシコ国境で不法移民の取り締まり技術が導入 されているという。 パレスチナ人を「実験台」にして開発された技術が、世界中の弱者を抑 圧するために使われてきたと言っても過言ではないだろう。 武器や監視技術を輸出することで、イスラエルは他国との友好関係を築 いてきた。
そしていま、同国製ドローンの導入を検討しているのが日本である。 2年に及ぶ虐殺によって、イスラエルの武器産業は相当な利益と「実験 データ」を得たはずだ。 たとえこの戦争が終わったとしても、これは新しいテクノロジー戦争の 始まりに過ぎない。 (10月13日「東京新聞」朝刊19面「本音のコラム」より)
.. 2025年10月16日 05:38 No.3351001
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