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「和解」という暴力 大矢英代(カリフォルニア州立大助教授)
先日、米国務省のブルース報道官が発表した声明に、愕然(がくぜん)と したり、憤ったりした人も多かったのではないだろうか。「広島の市民の 和解の精神が、日米同盟を強化してきた」。私も目を疑った。 和解?いつしましたっけ? 報道発表の原文を読んで、もっと腹が立った。「リコンシリエーション (reconciliation)=和解」という単語を使っていたからだ。 日常的には「口論をした両者が再び友好的になる状況」(ケンブリッジ 辞書)という意味だが、国家レベルでこの言葉が使われる時には、より重 要な意味を持つ。 南アフリカのマンデラ大統領が、アパルトヘイト後の社会再生のために 立ち上げた「真実和解委員会」に代表されるように、加害者と被害者が互 いに証言し合い、歴史的事実を調査、共有し合うこと、二度と過ちを繰り 返さないように行動する時に使われる。 だから、報道官の会見室にいた記者たちには質問してほしかった。 「一方だけに求める『和解』は暴力と何が違うのですか?」「米側は どんな努力をしたのですか?」と。 それからもうひとつ、大事なことも。 「あなたのいう『広島の市民』とは誰ですか? 日本人だけではなく、 強制連行されてきた朝鮮半島出身者、米兵捕虜、外国人留学生などが含ま れていたことを知っていますか?」と。 (8月11日「東京新聞」朝刊19面「本音のコラム」より)
.. 2025年08月21日 05:42 No.3306001
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