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原発を止めた裁判官-樋口英明氏・井戸謙一氏の | 対談書籍(6月9日発売)と記念シンポジウムの案内 └──── 上岡直見(環境経済研究所代表)
◎ 原発運転差止めの訴訟はハードルが高いが「原発を止めた裁判長」 はこれまで8人(2人は福島第一原発事故前、6人は事故後)いる。 残念ながらいずれも上級審で覆され、最終的に運転差止めまで到達し たケースはないが、その中でも有名な2人として井戸謙一氏と樋口英明 氏の対談を中心にまとめた本が出版された。
◎ 判決を言い渡すのは裁判長だが、実際の判決は裁判長と、2人の 陪席の「裁判体」の合議(最高裁は別)で決められ、意見が対立するこ ともあるという。 司法に対して「政府から圧力がかけられている」「差止め判決を出す と冷遇される」などの風説がある。樋口氏によるとそのような経験は なく、あくまで裁判官本人の意識だという。
◎ これまでの原発訴訟で画期的だったのは、2014年5月の福井地裁の 大飯差止め訴訟の樋口判決だった。樋口理論を適用すれば、特定の原発 ごとの議論ではなく全国の原発を止めなければならなくなるからだ。 しかし樋口氏はそれまで原発訴訟を専門に研究していたわけではなく 訴訟のスタートとなる訴状を見て判断を確信したという。 それは、実際の地震で4000ガルを越える加速度が記録されているのに、 関西電力は700ガルで耐震性があると主張しているのはおかしいという、 ごく単純明快な原告側の主張である。
◎ 興味深いエピソードも紹介されている。井戸氏のほうは以前からい わゆる人権派裁判官として活動しており、福島第一原発事故前に差止め 判決を出した経歴がある。 しかし樋口氏と交流はなく、大飯差止め訴訟で名前を聞いても普通の 保守的な裁判官だと思っていて判決にも期待していなかったが、天地が ひっくり返るような樋口判決で驚いたという。
☆書籍『司法が原発を止める』旬報社(6月9日発売) 4-6判・184頁 定価 1,760円(税込) https://www.junposha.com/book/b662940.html
☆出版を記念してシンポジウムが開催されるので合わせて紹介します。 7/24『司法が原発を止める』刊行記念シンポジウム
.. 2025年06月15日 08:05 No.3270001
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