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再審法の改正を 証拠の全面開示と再審開始決定にたいして検事側抗告を防ぐ
鎌田 慧(ルポライター)
静岡地裁の村山浩昭裁判長が再審開始を決定、「これ以上、拘置を継 続することは耐え難いほど正義に反する」として、袴田巌さんの拘置と 死刑を停止して釈放した。 が、静岡地検が即時抗告して審理は東京高裁に移され、再審開始決定 が取り消された。最高裁が東京高裁決定を取り消して静岡地裁で再審公 判が始まり、無罪の判決が出されたのは、村山決定から10年半経った20 24年9月。袴田さん逮捕から58年が経った。88歳。無罪判決まで生き抜 いた。
その半年後、3回目の再審請求をしていた石川一雄さんが誤嚥(ご えん)性肺炎で死去した。86歳だった。 女子高校生誘拐殺人事件で一審死刑判決、二審で無期懲役。31年獄中 にいて仮釈放されたが、本人は「視えない手錠をかけられている」と訴 えていた。冤罪を晴らせないまま世を去らなければならなかった無念 は、菟罪を訴えている人々の共通の思いだ。
『駱駝が針の穴を通るように難しい」「開かずの扉」などと言われ、 これまでも帝銀事件、三鷹事件、名張毒ぶどう酒事件などの容疑者が、 再審を認められないまま他界した。福岡事件や菊池事件など冤罪を訴え ながら処刑されたゲースもある。 「疑わしきは被告人の利益に」が鉄則だが、証拠の全面開示とせっか くの再審開始決定にたいして検事側抗告を防ぐ、再審法改正が早急に求 められている。 (4月29日「東京新聞」朝刊21面「本音のコラム」より)
.. 2025年05月01日 08:28 No.3238002
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