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司令塔なき万博 夢洲の開発とIRありきの維新政治に振り回された
斎藤美奈子(文芸評論家)
13日、大阪・関西万博が予定通り開幕した。 並ばない万博といっていたのに長蛇の列、大屋根リングでは雨をしの げないなど、すでにトラブル続出の由。もっとも当該万博の問題点は とっくに出そろってもいた。 この件については、5人の論者による共著、松本創編『大阪・関西万 博「失敗」の本質』(ちくま新書)に詳しい。出版されたのは昨年8 月。この時点で「失敗」は予見されていたわけだ。
開催まで1年を切ってもパビリオンの建設が着工できない。夢洲(ゆめ しま)は廃棄物処理に使われていた人工島で、万博開催の決定後、一気に 埋め立てた軟弱地盤。孤島であるからアクセスは悪く、公共交通機関の パンクも早くから指摘されていた。
加えて運営者の問題である。1970年の大阪万博以来、国家的イベント を仕切ってきたのは電通だった。 ところが電通は東京五輪の談合が摘発されて手を引き、次が期待され た吉本興業も、松本人志スキャンダルなどで自社のパビリオン以外は完 全撤退。万博協会と大阪府市の「素人集団」が穴を埋めるハメになった。 オペレーションの悪さはそのせいか…。 でもまあ初日、未完成のパビリオンは5館だけだった。現場のがんば りの賜物(たまもの)だろう。 夢洲の開発とIRありきの維新政治に振り回された結果の万博。 半年間、せめて大事故が起きないことを祈る。 (4月16日「東京新聞」朝刊19面「本音のコラム」より)
.. 2025年04月17日 07:28 No.3231001
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