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南西諸島を戦場にするな 鎌田 慧(ルポライター)
「先の戦争の再来のようです」と声を落として言った。沖縄戦で 祖父、 母親、兄、妹など家族4人を失った石垣島に住む山里節子さん (いのちと暮らしを守るオバーたちの会代表)の恐怖だ。 「台湾有事」。南西諸島から12万人を避難させる計画を持つ政府は、 戦争に参加するつもりのようだ。避難といえば、マラリアがまん延する 猖獗地へ追いやられ、家族を亡くした人も多い。
石垣島での基地設置と強化は、あっという間と言えるほどのスピード で進んだ。 ついこの間までマンゴー畑を柔らかな風が渡っていた島の中心地が自 衛隊基地と化した。 石垣島に加えて宮古島や与那国島、台湾につながる南西諸島にミサイ ルが林立するようになった。
3月下旬、陸海空の各自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」 が発足。 集団的自衛権の行使が可能となり、「防衛力の抜本的強化」が図ら れ、敵基地攻撃の司令部となる。 さらに、横田基地(東京)の在日米軍司令部との連携が強化され、ア メリカ側も新たな司令部を創設。日本はその指揮下に従属するというこ となのか。
山里さんが「先の戦争の再来」と言うのは、住民を強制疎開させた旧 日本軍の戦術を思い起こさせるからだ。 「石垣島に戦場はいらない」との横断幕を掲げて、毎週日曜日、山里 さんたちはスタンディングで抗議している。 (4月8日「東京新聞」朝刊19面「本音のコラム」より)
.. 2025年04月12日 08:34 No.3226001
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