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冷酷すぎる最高裁 鎌田 慧(ルポライター)
最高裁第3小法廷は先月25日、97歳、鹿児島県の介護施設で寝たっき り、原ロアヤ子さんの再審請求を棄却した。 これまで地裁や高裁が再審決定しても、検事の抗告を受けた最高裁が 認めなかった。 しかし、今回は4対1。5人の裁判官のうち1人が棄却に反対した。 なぜ4人の裁判官は97歳の女性を救おうとしなかったのか。弁護団は 「最高裁判事の矜持を疑う」とのコメントを出した。最高裁は「人権救 済の最後の砦」であり、市民に希望を与える拠り所ではないのか。
「大崎事件」は、酒に酔って帰宅したアヤ子さんの義弟が、道路脇の 溝に転落、負傷して死亡していたことから始まった。犯罪性のなかった 事故死だったが、アヤ子さんの夫やその弟などが連続逮捕された。彼女 は逮捕されても45年間、一貫して無実を主張してきた。
「再審開始決定すべきだ」と、今回の決定に1人だけ反対意見だった 宇賀克也裁判官は、新証拠の遺体写真を採用、「殺人事件であることの 直接証拠は皆無」とした。 原口さんの共犯とされ、有罪が確定した親族3人の自白を「精神的な プレッシャーによる虚偽の自白」と判断した。
今まで地裁や高裁で再審開始決定が3回なされていた経過を見れば、 それだけでも「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則に従 うべきだ。 冷酷な最高裁を脱却してほしい。 (3月4日「東京新聞」朝刊19面「本音のコラム」より)
.. 2025年03月11日 08:27 No.3206001
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