返信


■--除去土壌はどのように扱われるべきか
++ 大島堅一 (小学校低学年)…5回          

除去土壌はどのように扱われるべきか (下)(了)
 | 「再生利用」可能とされている100〜8000Bq/kgの除去土壌等は
 | 低レベル放射性廃棄物(L3廃棄物)相当の汚染土壌として
 | 浅地中トレンチ処分すべき
 └──── 大島堅一(龍谷大学政策学部教授、原子力市民委員会座長)

  (出典:2025年1月15日開催 放射能に汚染された土の無秩序な拡散
   につながる「除去土壌の再生利用」はありえない 放射能拡散に反
   対する会、原子力市民委員会共催 緊急オンライン・リレートーク
   資料より抜粋)
            ※(上)は、2/7発信【TMM:No5147】に掲載

2.除去土壌等の処分に関し、原子炉規制法、放射性物質汚染対処特措
法を改正するべきである。

 現行の放射性物質汚染対処特措法(以下特措法)には、汚染された土
壌の再生利用に関する条文がない。
 そこで環境省は、再生利用を特措法上の「処分」に該当するとしてい
る。法令上の「処分」を、「再生利用」や「復興再生利用」という文言
に言い換えることは、国民の誤解を生じさせ、無用な対立につながる。
そのような混乱を、環境省が作り出してはならない。

 何より重要なのは、除去土壌等の「処分」のあり方について、明確な
規制の枠組みと制度、機関を構築することである。
 福島原発事故由来の廃棄物や除去土壌は、原子炉規制法の枠外に置か
れているため、クリアランス規則に相当する厳密な規則や基準、さらに
はそれらが基準を満たすかどうかを科学的に審査する規制機関が存在し
ていない。
 これは明らかな法の欠缺(けんけつ)である。
 政府は、この法の不備を放置せず、立法措置の必要性を踏まえて国会
に法改正案を提出する責任がある。

 現在、国内には、原子炉等規制法と放射性物質汚染対処特措法が併存
している。その結果、同程度の放射能汚染濃度であっても、事故由来廃
棄物および事故由来汚染土壌・除去土壌については、原子炉規制法に基
づく厳密な規制が実施されておらず、放射能汚染に関する「ダブルス
タンダード」(二重基準)が生じている。
 このような規制の不整合を解消するために、事故由来廃棄物、汚染土
壌・除去土壌を原子炉等規制法に組み込む必要がある。
.. 2025年02月14日 05:38   No.3191001

++ 大島堅一 (小学校低学年)…6回       
3.「再生利用」可能とされている100〜8000Bq/kgの除去土壌等は、低
レベル放射性廃棄物(L3廃棄物)相当の汚染土壌として浅地中処分(
トレンチ処分)すべきである

 除去土壌、廃棄物については、最終処分に関わるものとして関連法令
の整理が環境省によってされている。(注4)
 原子力規制委員会の定めた「第二種廃棄物埋設施設の位置、構造及び
設備の基準に関する規則」およびその解釈において、浅地中処分(
トレンチ処分)の技術的要件が定められている。低レベル放射性廃棄物相
当の除去土壌等は、L3廃棄物として扱い、浅地中処分するべきである。
 L3廃棄物に相当する低レベル放射性廃棄物は、世界の主要国で、専
用の処分施設での処分が基本である。道路等のインフラ施設下での処分
は採用されていない。(注5)

 日本のJAEA原子力科学研究所が茨城県那珂郡東海村で実施してい
る浅地中トレンチ処分も同様である。低レベル放射性廃棄物であっても、
厳密な安全評価に基づく長期管理が基本となっている。

(注4) 環境省環境再生・資源循環局(2023)「最終処分に関わる関連法
令での規定の整理」(中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略
検討会中間貯蔵施設における減容化技術等検討ワーキンググループ第3
回会合、参考資料3)

(注5) 原子力環境整備促進・資金管理センター技術情報調査部江藤次
郎(2024)「海外の放射性廃棄物の処分等の情勢」11月19日(令和6年第
38回原子力委員会定例会議、資料1)、原子力環境整備促進・資金管理
センター(2021)「平成30年度放射性廃棄物共通技術調査等事業 放射性
廃棄物海外総合情報調査(国庫債務行為に関わるもの)報告書(令和2年
度分)」3月

.. 2025年02月14日 05:47   No.3191002
++ 上岡直見 (社長)…392回       
ヨウ素剤不要と言い出した規制委員会−
 | 能登半島地震で屋内退避も避難もできない、
 | 再稼働に合わせて前提を変えてしまう
 | 原子力規制委員会−非科学的だ
 └──── 上岡直見(環境経済研究所代表)

◎ 能登半島地震では、原発事故があっても屋内退避もできず、道路損
傷で避難もできない状況が明らかになった。
 原子力規制委員会の山中委員長も、2025年2月12日の記者会見では
「屋内退避ができるような状況ではなかったということが明白になった」
「避難所、避難路の強化、輸送手段の強化などをきっちりと満たさなけ
れば、原子力災害に対しての実効性は上がらない」と所感を述べている。

◎ しかし規制委員会としては能登半島地震を反映した具体的な対応を
していない。
 能登半島地震以後に「原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討
チーム」を設置し2025年2月5日に報告書(案)を公表したが、「避難
と屋内退避等を適切に組み合わせることにより、被ばく線量の低減と被
ばく以外の健康等への影響を抑えることができる」など漠然とした見解
を示しただけである。
 言いかえれば、原発事故時には住民は被ばくしてもいいという前提に
なる。

◎ しかも報告書(案)では、福島第一原発事故では急性も晩発性も健
康被害は発生していないという一方的な断定を前提としている。
 その根拠は「UNSCEAR2020年/2021年報告書」によっているが、
この報告書には重大な誤りがあり過小評価となっていることについて現
在裁判で争われており、確定した結論ではない。

◎ また規制委員会は報告書(案)と同時に市町村向けの「Q&A(
案)」を発表し、この中でヨウ素剤に関してはUPZ(5〜30km)では
「屋内退避中に安定ヨウ素剤の服用が必要と判断される可能性は低い」
としてヨウ素剤は不要ともいえる見解を言い出した。これは「検討
チーム」での議論の過程で放射性物質の拡散シミュレーションを見直し
た結果をもとにしている。

.. 2025年03月01日 07:04   No.3191003
++ 上岡直見 (社長)…393回       
◎ しかしそのシミュレーションは【TMM:No5114】(2024/11/27)でも紹
介したようにBWR(沸騰水型)については福島第一原発事故の放出規模
の1万分の1に下げた想定の結果である。(※)
 これは、PWRで再稼働可能な炉はあらかた再稼働済みで、これから
はBWRが主になる状況を反映したものと思われる。

◎ 規制委員会は「再稼働の都合に合わせて判断を変える」という非科
学的な考え方で動いているのではないか。

(※)解説動画「市民運動・裁判と放射性物質拡散シミュレーション」

.. 2025年03月01日 07:12   No.3191004
++ 冨塚元夫 (社長)…483回       
山田國廣著「核分裂・毒物テルルの発見−原爆/核実験/
 | 原発被害者たちの証言から」(藤原書店)を読んで
 └──── 冨塚元夫(たんぽぽ舎)

<https://www.fujiwara-shoten-store.jp/SHOP/9784865783759.html>
核分裂・毒物テルルの発見—原爆/核実験/原発被害者たちの証言から

 テルル(英:Tellurium 独:Tellur)は原子番号52、元素記号Te)
は、同位体Te-127,Te-128,Te-129,Te-130,Te-131,Te-132など多数あり、
半減期は最短は15秒、最長1億年以上です。
 ウランやプルトニウムと同様に化学毒と放射能毒の両方を持っている
金属です。
 東電福島第一原発事故や原爆の爆発で放出される核種としてはヨウ
素、セシウムとともに最も多量で、放射能雲(プルーム)を形成する
ホットパーティクルに含まれています。

 テルル132は半減期が約3日でβ(ベータ)崩壊してヨウ素132に変
わります。ヨウ素132の半減期は約2時間です。
 福島県は東電福島第一原発事故から数日後、畑の葉物野菜に含まれる
放射性物質を調べました。
 すると、とびぬけて大量のヨウ素132が検出されました。ヨウ素
132の半減期は2時間ですから、事故から数日後に畑に大量に残って
いるとは考えにくく、半減期約3日の大量のテルル132がヨウ素13
2に変わったと考えられます。
 このテルル132、ヨウ素132もヨウ素131と同様に甲状腺がん
を引き起こしていると考えられます。

 上記は私にとって新発見ですが、やや難しい話です。
 実はこの本はもっと理解しやすい新発見に満ちあふれていてどんどん
読み進める本です。被爆者の証言が多く、また写真や図、グラフがたく
さんあります。

.. 2025年03月13日 05:36   No.3191005
++ 冨塚元夫 (社長)…484回       
 2011年3月13日、空母ロナルド・レーガンの乗組員は原発から180km
はなれた宮城県沖で降った雪に交じった放射能プルームを浴びました。
 皮膚が焼けるように熱くなり、頭痛に見舞われ、血の味や金属味を感
じました。
 3月30日に、ある女性乗組員は横須賀基地で体調が悪化し、子宮から
の出血が止まらず、子宮摘出手術を受けた。その後顔面麻痺し、右目が
ほとんど見えなくなった。数人が白血病になった。がんなどで死亡した
人も数人います。

 広島・長崎で原爆を見た人は、ピカの時に一瞬青い光を見たといい
ます。
 青白い光、体に感じる熱、金属の味は、広島・長崎原爆被爆者や、セ
ミパラチンスク(カザフスタンにある旧ソ連核実験場の町)の核実験被
爆者も同様に目撃・体験しています。
 また同様の初期被ばく症状を訴えています。めまい、下痢、吐き気、
鼻血、だるさ、頭痛、紫斑、下血、歯肉出血等は多くの被爆者に起こって
います。
 その後何年後、何十年後に歩行困難、腎臓がん、肺がん、甲状腺がん、
白血病等に苦しむようになりました。
 原爆被爆者が遭遇した放射能プルームの黒い雨は福島事故では「白い
雨」として、福島県内(浪江町津島、飯館村等各地)に降り注ぎました。

 空母ロナルド・レーガンの乗組員、セミパラチンスク住民の証言、浪
江町の菅野みずえさんの証言、郡山市の松本徳子さん、富岡町の木田節
子さん、福島市の大越良二さんの証言に多くの共通点があります。大越
さんは甲状腺がんに苦しんでいます。

 福島市や郡山氏では多くの人が若くしてがんで亡くなっています。
 実は放射能プルームは東京を含む東日本全体に降り注ぎ、風に乗った
ホットパーティクルは日本全体に降り注いでいます。
 この本では疫学調査に基づく豊富なデータをグラフ・表にして示して
います。
 また被爆者の証言を視覚化する写真も多く掲載されています。

  (2023年2月28日初版第一刷発行 3600円+税)

 この本の著者、山田國廣さんは3月15日(土)と4月19日(土)14時から
たんぽぽ舎学習会の講師として「核分裂後のテルルによる初期内部被ば
くの恐ろしさ」を解説します。是非ご参加ください。

.. 2025年03月13日 05:42   No.3191006
++ 上岡直見 (社長)…394回       
東電はプロジェクト管理能力があるのか? 国はあるのか?
 | NHK番組で指摘された廃炉に関連するトラブルや
 | 工程遅延続出の背景は
 | 作業員の被ばくを増やすだけの無意味な廃炉作業をやめて
 | 地下水遮断の対策だけを本格的に進めるべき
 | 「記者も驚いた 福島第一原発 最前線の作業員が話したこと」
 └──── 上岡直見(環境経済研究所代表)

◎ 14年目の3.11に合わせてメディアでさまざまな特集が組まれたが
「NHK Web特集」で注目される番組があった。(※)
 昨年のデブリ取出しで装置を挿入するパイプの取りつけ順のミスが
あって作業が遅れたが、その他にも廃炉や汚染水に関するあらゆる工程
でトラブルや工程遅延がつきまとっている。その背景について、過去に
実際にその現場で働いたことのある作業員が取材に答えている。

 まず作業環境の厳しさがあり、人間が入れるエリアのうち最も線量が
高くて、防護服と全面マスクの重装備の上に、1人あたり10〜15分で
交替しながらの作業のため、普通にできることが簡単にはできないという。
 そのような状況でありながら、取りつけ順の確認などが手順書に盛り
込まれていなかった。

 作業員の話によると、東電は指示だけ、工事の管理だけで、実際は
現場の請負業者まかせだという。
 双方のコミュニケーションが取れておらず問題があっても一緒になって
考えるという姿勢がなく、中には「なんでこんなトラブルが起きたんだ」
とただ言ってくるだけの社員もいて風通しが良くないという。

◎ これに対して東電(廃炉カンパニー)の幹部は「これまではどうし
ても仕事の発注者と受注者という立場に立ちがちだったが、これからは
そういう枠を超えて一緒になって作業に携わる、現場レベルで協調・協
働しながらやっていく必要性があると思っている」などと取材に答えて
いるが、福島第一原発事故だけから数えても14年になるのに「これまで」
などといつのことを言っているのか。全く責任が感じられない。

.. 2025年03月16日 07:55   No.3191007
++ 上岡直見 (社長)…395回       
◎ そしてさらに無責任なのが国である。
 東電を監督する立場にある「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」は
「どの事案も多重請負体制が関係している」と指摘し、他人事のような
コメントをしているが、国こそ建前だけの現実性のない工程を掲げて、
実務は東電まかせの「多重請負」の屋上屋を重ねているだけではないか。
 これ以上作業員の被ばくを増やすだけの無意味な廃炉作業をやめて、
地下水遮断の対策だけを本格的に進めるべきである。

(※)NHK Web特集
  「記者も驚いた どうなる福島第一原発 最前線の作業員が話したこと」
  2025年3月10日
  https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250310/k10014742271000.html

.. 2025年03月16日 08:04   No.3191008


▼返信フォームです▼
Name
Email
ホームページ    
メッセージ
( タグの使用不可 )
Forecolor
アイコン   ICON list   Password 修正・削除に使用