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■--真の保守こそ反原発の道を
++ 毎日新聞 (社長)…430回          

真の保守こそ反原発の道を       (下)(了)  
 | 新著「原発を止めた裁判官による 保守のための原発入門」
 | <保守に対する挑戦の書>
 | 原発差し止め判決 元裁判官・樋口英明さんの挑戦状
 └──── (10月21日「毎日新聞」夕刊2面「特集ワイド」より)

 今年8月には南海トラフ巨大地震の臨時情報(巨大地震注意)が初めて
発表された。想定震源域にある、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)
の基準地震動は650ガルと心もとない。

◎ 「原子炉は硬い岩盤に建っていて、揺れは地表面より小さくなる」
というのも誤解で、記録を調べると、岩盤の揺れが地表より大きくなる
ことはままある。
 そもそも、半数近い原発は岩盤が地下深くにあり、岩盤上に建造され
ていないという。
 地震観測網の本格整備は1995年1月の阪神大震災を機に始まった。
 それ以前の地震学では重力加速度(980ガル)より強い揺れは来ない
とされていたが、近年は想定をはるかに超える値が珍しくないと分か
ってきた。
 なのに、対策が追いついていないのだ。

◎ 樋口さんは古巣にも憤る。
 再稼働を止めようとする訴訟が各地で起きている。本来重要なのは
福島の原発事故後に見直された新規制基準自体が適切かどうかだ。
 なのに、裁判所は新規制基準が適切であるとの前提で、各施設が基準
に適合しているかどうかばかりに目を向けているというのだ。
 「まさか裁判所が規制基準の後追いをしているだけなんて国民は思わ
ないでしょう」

◎ 思い込みや誤解はまだまだある。
 「原発がないと日本の電力は立ち行かない」と思われがちだが、稼働
中の原発が全国の電力供給に占める割合は5%程度に過ぎない。
 「発電コストが安い」もしかり。米政府機関の試算では太陽光や陸上
風力の費用が原発の半額以下で、欧米では採算を理由に廃炉にする例もある。
.. 2024年10月27日 06:19   No.3129001

++ 毎日新聞 (社長)…431回       
 「核武装の潜在能力を保持するため」と放言する政治家もいる。
 だが、核保有国とされるイスラエルは電力を原発に依存しておらず、
南部の砂漠地帯などに核研究施設を設置している。
 核武装の潜在能力うんぬんは、原発を続ける理由にはならない。
 ロシアのウクライナ侵攻で原発が攻撃されたが、日本の海岸沿いには
無防備な原発が50基以上並ぶ。
 「保守政治家は平和を叫ぶ人々を『お花畑だ』とバカにするが、それ
はどっちなのか。原発はエネルギー以前に国防問題だ」と樋口さんは訴える。

◎ 振り返れば、日本の原発は全て自民党政権下で建造された。
 化石資源が乏しく、使用済み燃料を再処理して高速増殖炉で使う「核燃料サイクル」を目指してきたが、事実上破綻している。
 地方振興の側面もあったが、原発事故は福島に被害を押しつける形となり、状況は一変した。

 なのに、岸田文雄政権では原発新増設の検討やリプレース(建て替え)
の具体化、最長60年としてきた運転期間の延長を認めた。
 今年9月の自民党総裁選で「原発ゼロ」に言及した石破茂首相も、
結局は岸田氏の路線を踏襲するとみられる。

◎ 自民党政権が原発に固執する理由について、樋口さんは「現実から
目をそらし、原発推進が単なるイデオロギー(観念)になっている」と
指摘する。
 新増設と簡単に言うが、原発は建造に時間がかかる。
 今から着工して動かせば、運転終了は22世紀になり、廃炉や放射性
廃棄物の管理で、さらなる未来の世代まで縛ることになる。景気を浮揚
させようとしても、大惨事が再び起きれば国家の損失は計り知れない。

◎ 「私が原発に反対するのは愛国心からです。今の日本で原発ほど重要
な問題はなく、真の保守政治家なら身を捨ててでも止めるべきものでは
ないですか」
 樋口さんは、新著「原発を止めた裁判官による 保守のための原発入門」
(岩波書店)を8月に刊行した。
 この本を<保守に対する挑戦の書>と銘打ち、こう記した。
 〈真の保守を自認する者がこの本を読んだ後も「原発維持」を唱える
のなら私の負け。しかし、それはあり得ない〉
 さあ、保守に誇りを持つ皆さん。この挑戦、受けて立ちませんか。
                        【千葉紀和】
(10月21日「毎日新聞」夕刊2面「特集ワイド」より)

.. 2024年10月27日 06:27   No.3129002


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