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■--第7次エネルギー基本計画のここが問題
++ 山崎久隆 (社長)…1690回          

第7次エネルギー基本計画のここが問題 (上) (2回の連載)
 | 原子力産業の利活用拡大路線を具体化
 | 福島第一原発事故の教訓は忘れ去られている
 | 経産省は原発依存を「可能な限り低減」させる具体的な
 | 計画を策定するべきなのにしなかった
 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

1.実現性のない電力供給計画

◎ 第6次エネルギー基本計画(エネ基)は2021年に策定された。
 内容は2030年に再生可能エネルギー36〜38%、原子力20〜22%、火力
40%(天然ガス20%、石炭19%、水素・アンモニア1%程度)として
いる。
 今から5年余り先の見通しだが、これが実現できる可能性は全くない。

◎ 原発が20〜22%占めるためには、概ね27〜30基程度が稼働していな
ければならない。その出力は2700万kw程度。
 しかし現在再稼働しているのは12基、約1100万kw。
 新規制基準適合性審査を通過した原発全てが動いたとしてもプラス5
基で17基。1700万kw余り、全電力の15%程度に過ぎない。
 あと5年で再稼働できる原発は他に存在しないから、現段階で、目標
値はもはや成り立たない目標であることは明白だ。

◎ 「第7次エネ基」では、これがどのような数値になるのか未だ不明
だが、原子力の利活用という方針に大転換すると見られるので、2030年
ではなく2035年に原発が36〜38%占めるという計画になるのだと
思われる。
 しかし結局これも実現することはない。
 仮に36基とした場合、新規制基準適合性審査を通過した17基に加えて
19基ほど必要になるが、現在審査中のものは7基、合計で2300万kw程
度だ。建設中の大間と島根3号が稼働しても26基、2500万kw程度だ
が、それでも圧倒的に足りない。

◎ 加えて再稼働原発は全て60年超の老朽炉になる(*)から、これが
進んだとしても新増設をしない限りいつかは脱原発になる。経産省や原
子力ムラにとって絶対に避けねばならない事態だ。

*例えば高浜1号は10月16日に50年の「長期管理計画」が規制委により
認可されたが、GX法により最大限延長したとしても2050年までには廃
炉になる。これは高浜2、3、美浜3、川内1も同じだ。
.. 2024年10月22日 07:12   No.3126001

++ 山崎久隆 (社長)…1691回       
2.経産省は原発依存を「可能な限り低減」させる具体的な
  計画を策定するべきなのにしなかった

◎ 政府は福島第一原発事故の教訓から、2014年の第4次エネ基から現
在の第6次エネ基まで原発依存を「可能な限り低減」するとしてきた。
 このような表現の下でも原子力は常に推進されてきた。
 特に核燃料サイクル政策は六ヶ所再処理工場の建設が大幅に遅れ、実
現可能性さえ危ぶまれているのに一切見直しの気配すらない。
 原発の利用を低減するのならば再処理は最初に中止するべきものだ。
 しかし核燃料サイクル事業は中止されなかった。
 原子力政策は見せかけの「原発依存の低減」のもとで「推進」されて
きたのである。

◎ その中でも特徴的なのは一貫して原発を推進してきた経産省だ。
 責任官庁として「可能な限り低減」させる具体的な計画を策定するべ
きなのにしなかった。
 むしろ計画的かつ段階的に原発を復活させ推進してきた。
 これに呼応する原子力規制委も、40年の運転期間制限を炉規法で定め
ていながら、「極めて例外的」(当時の田中俊一委員長)といいつつ20
年延長を認める規定のもとで60年運転を既成事実化した。

 さらに2023年、脱炭素電源法(GX電源法)で運転期間の規定を規制
委所管の原子炉等規制法から経産省所管の電気事業法に移したことで、
ついに微かな歯止めさえなくなり、全ての再稼働原発が事実上60年運転
許可を得ることになる法律改訂が強行された。

◎ この「GX」が、そもそも欺瞞と詐欺の温床である。
 GX(グリーン・トランスフォーメーション*)という名目の「脱炭
素」方針を利用して、発電時に二酸化炭素を出さないという点だけを取
り上げて「ゼロエミッション電源*」などと原発を規定している。
 ゼロエミッションとは「廃棄物を出さない」という意味だが、放射性
廃棄物を大量に発生させる原発に使っているということだけで、その意
味のすり替えぶりが分かる。(下)に続く
      (2024年10月18日たんぽぽ舎発行「金曜ビラ」494号より)

.. 2024年10月22日 07:18   No.3126002
++ 山崎久隆 (社長)…1692回       
第7次エネルギー基本計画のここが問題 (下) (了)
 | 原子力産業の利活用拡大路線を具体化
 | 福島第一原発事故の教訓は忘れ去られている
 └──── 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

◎ カーボンニュートラルという言葉も飛び交うが、化石燃料を燃やす
タイミングを殊更問題視するために使っている用語であり、原発が極め
て大きな環境汚染源であることを見えなくさせる言葉遣いだ。
 本気で達成するための議論ではなく、原子力推進体制を再構築するこ
とを目的に「あらゆる政策を動員する」ために用いられるのが「脱炭素」だ。

 *グリーントランスフォーメーション(GX)とは、化石燃料中心の
産業や社会構造を、クリーンエネルギー中心の構造に転換していく取り
組みのこと。地球温暖化による環境課題を解決し、持続可能な社会を作
ることを目的とする、という名目だ。

◎ しかし原子力開発の暗部を知らなかった時代に「無限に安定的に供給
でき廃棄物も少ないバラ色のエネルギー」として原子力を想像していた
時代ならばいざ知らず、度重なる原発事故と開発による放射能汚染の現実
を知った今、「クリーンエネルギー」と言った時点で、完全に破綻した
理念である。

 *原発が二酸化炭素を出さないことなどあり得ない。
 核分裂時に出ないことを殊更強調しているだけだ。ライフサイクルに
おける原発の排出原単位は極めて大きいと考えられ、キロワット当たり
180〜288グラムという研究もある。なお国は19〜20グラムとしている。
 LNG火力は470グラムで、原発との差は2倍程度というのが実相。
 とりわけ三分の二の原発が止まっている日本の場合、それらは単に
二酸化炭素を出すだけの存在になっている。

3.徹底した省エネルギーこそが最大の政策だ

◎ 「第7次エネ基」において、政府・経産省は、原発の再稼働と新増設
を含むGX法の完全反映を目指す。
 「エネ基」を議論している資源エネルギー庁の「基本政策分科会」では
原発推進意見のオンパレード。その前提としての電力需要増の議論が席巻
している。
 これに対して実行可能で最も確実な政策は、徹底した省エネ・節電を
おこなうことである。

.. 2024年10月24日 05:19   No.3126003
++ 山崎久隆 (社長)…1693回       
◎ 第6次エネ基では年間の電力消費量について2050年では30〜50%も
増えるのに2030年までは10%以上減るという、呆れるほど矛盾した見通
しを出している。
 電気自動車、データストレージ(データセンター)、AI(人工知能の
活用)など、新たな電力多消費産業の開発により電力消費量は増加すると
いうのが政府の基本的認識のはずだが、2030年の再生可能エネルギー
電源比率および原子力発電比率を極めて高く設定するトリックとして、
電力消費量の分母を小さくする偽装を用いたためだ。

◎ 「第7次エネ基」では、もはや「偽装」ではなく現実問題として
2035年および50年の「電力消費量見通し」を引き下げなければ、いわ
ゆる「目標値」を達成できないことになる。
 分母を減らすということは消費電力量の大幅な削減、すなわち省エネ
しか方法はない。

◎ 再エネの導入規模も大幅な上方修正が迫られることになる。
 この場合、大量の再エネを安定供給するため、2つの施策が必須と
なる。
 1つは広域連系の拡大、もう一つは電力貯蔵システムの構築だ。
 また、将来は再エネの拡大しか道はないことは明らかだ。

 再エネはどうしても出力変動を免れない。そのため貯蔵システムの
構築以外にも電力のバックアップシステムが必須となる。
 まだ火力発電の役割があるとしたら、この点である。

 また、バックアップを従来の蓄電池に依存するのは不安定要因がつき
まとう。価格の面や供給力にはまだ限界があり、さらにレアメタル資源
の偏在、国際情勢に大きく左右されること、今後蓄電池市場が高騰する
ことも考慮しなければならない。

◎ 当面は火力発電によるバックアップが不可欠になるのである。
 その火力はガス火力発電。
 エネルギー効率を85%以上に高め、温排水や二酸化炭素排出を極限
まで減少させる技術が必須になる。
 廃熱も回収し使い尽くすシステムだ。この技術は世界中で必須になる。
 日本が海外に売り込める技術になるだろう。
      (2024年10月18日たんぽぽ舎発行「金曜ビラ」494号より)
 

.. 2024年10月24日 05:25   No.3126004
++ たんぽぽ舎 (社長)…891回       
.【声明】
 | 東北電力女川原発2号機再稼働反対!
 | 東日本大震災で被災した原発を動かすな!
 | 福島第一原発と同型炉(沸とう水型)の再稼働反対!
 | 私たちは女川を含め全ての原発の廃炉を求めます
 └──── たんぽぽ舎

◎女川原発2号機が再稼働

 東北電力女川原発2号機は、10月29日に再稼働する。
 東日本大震災で被災し、再び原子炉災害を起こせば避難も困難な原発
の再稼働に抗議する。
 2011年3月11日に地震と津波に被災し、電源設備に甚大な被害を受け
て火災を発生させた女川原発。
 そのなかの2号機が10月29日に原子炉を起動し再稼働する。炉心燃料
は既に装荷されており、制御棒を引き抜く作業を開始すれば、原子炉は
臨界に達する。
 その後11月上旬には発電器を並列し発電を開始する予定。この間に最
終段階の使用前検査を終了し、営業運転入りすることになる。
 女川原発2号機は沸騰水型軽水炉の82.5万キロワット。建設時期が異
なるものの震災でメルトダウンした福島第一原発2、3号機と同型炉で
ある。

 では、どうして震災時の結果が大きく異なったのか。
 女川原発の立地点は海抜14.8mだった。地震で1m地盤が沈下した
が、13.8mの津波に対してまだ余裕があった。
 主要施設の標高が高かったことで津波の被害を最小限に抑えることが
できた。
 具体的な被害は、女川原発2号機の熱交換器室に浸水し非常用ディー
ゼル発電機1系統が使用不能になったが、他に2系統の電源が正常に稼
働した。
 加えて外部電源も1系統が繋がっていたので、冷却に必要な電源を確
保できた。
 しかし、地震により1号機の配電盤がアーク放電火災で焼損したた
め、ここでは外部電源は使えなかった。

 福島第一原発は原子炉とタービン建屋は10mにあったが、非常用
ディーゼル発電機を稼働させるために不可欠な海水ポンプは6mまでに
しか耐えられなかった。
 一方、福島第一原発は13mの津波に襲われたうえ、外部電源も地震に
より全滅し、全電源を喪失した。
 2つの違いは、結果として大きい。
 しかし立地点が高かったことは今回の津波をしのげたことは確かだ
が、例えば30mを超える規模だったら同じだった。

.. 2024年10月31日 05:14   No.3126005
++ たんぽぽ舎 (社長)…892回       
 女川原発は現在、想定津波(基準津波)を23.1mとし、到達点を海抜
29mとして防潮堤を増強している。これを超える津波は来ないのか、そ
れは誰にも分からない。1つ言えるのは、日本海溝沿いは全ての海岸線
で30mを超える津波に襲われる可能性は否定できないはずだ。

◎福島第一原発と同じ炉型として初めて稼働

 女川原発2号機は沸騰水型軽水炉という型式で、これは福島第一原発
と同じだ。
 ただし2号機の設計は比較的新しいためマーク〔1〕(ローマ数字の1
です)改良標準型という格納容器である。
 福島第一原発や女川原発1号機よりは体積が大きく、余裕のある設計
とされている。
 この場合の余裕とは、燃料が損傷しメルトダウンしたり再循環系統が
破断して大量の冷却剤が蒸気となって噴出しても耐圧限界に達するには
時間に余裕がある。フィルターベントも増設はしている。これが作動す
ることで周辺地域には放射性物質が拡散する。

 しかし限界に達すれば福島第一と同様に格納容器の損傷に至るから、
程度問題ともいえよう。
 原子力規制委員会の基準に適合する安全対策工事は2013年から11年
間、約5700億円をかけて実施されたという。これだけの費用をかければ
再生可能エネルギー設備はどれだけできるだろうか。
 原発の建設費並みの費用を投じても、運転開始から約30年たっている
原発は60年の制限まで約30年、停止期間を追加するというGX法でもあ
と40年しか動かせない。その間に事故を起こせば取り返しのつかない事
態になるだろう。

◎重大事故が起きれば避難不可能

 東海第二原発の再稼働について、水戸地裁は2021年3月に「運転をし
てはならない」との判決を下している。
 理由は「防災体制が構築されていないから」。
 避難計画の不備を理由に、周辺住民の生命や身体を侵害する具体的危
険があるものと認めたのである。

 女川原発はどうか。
 仙台地裁は、女川原発2号機の再稼働差し止めを求めた住民の訴えを
棄却する判決を2023年5月24日に言い渡した。
 仙台地裁は「避難計画に実効性を欠いていることをもって、直ちに運
転の差し止めを求めることはできない」としている。
 これは水戸地裁とは真逆の判決である。
 現在、仙台高裁で控訴審の審理中。11月27日に判決である。

.. 2024年10月31日 05:21   No.3126006
++ たんぽぽ舎 (社長)…893回       
 女川原発は牡鹿半島の付け根に立地しており、この地点で事故が起き
れば半島全域が避難困難になる。
 実際に3・11の津波では女川町の中心部がほとんど浸水し、道路も
寸断された。
 能登半島地震で避難道路がほぼ使えない状態になったことを教訓とす
るならば、こうした場所に原発は建てられないはずである。

◎女川原発再稼働…各地で抗議行動

 女川原発の再稼働に反対する行動が各地で取り組まれた。
 原発ゲート前では、午前中に抗議活動が行われ、女川から未来を考え
る会、さようなら原発inいしのまき実行委員会の申し入れ書が読み上げ
られた。
 その見出しを紹介する。
1.自然災害への不安は大きい。
2.東京電力福島第一原発事故から学ぶ。
3.多量の温排水が海水温を高める。
4.10万年間も子孫に危険を強いない。
5.人的災害(戦争・テロ)への不安は大きい。

 仙台の東北電力本社前でも抗議行動が取り組まれている。

◎私たちは女川を含め全ての原発の廃炉を求めます

 「原発が環境対策になる…」などと、震災から13年余り経って堂々と
主張されるようになっている。世界的にも原発を新増設する動きが高
まっている。
 しかし一定の間隔で起きる事故とそれに伴う放射性物質の拡散による
原子力災害では、広範な地域と大勢の人々の生活を破壊し、命をも
奪っている。
 「直接被ばくで死んだものはいない」などとうそぶく政治家、「金の
ためだ」とはばからず言い放つ地元の有力者や住民が、すさまじい放射
能災害を引き寄せる原発事故を招き寄せている。
 このような世界を終わりにするためにも、原発を全て廃炉にする。
 これが私たちの取るべき道である。
 女川原発の再稼働に反対し、廃炉を求める。

☆関連記事

 女川原発(宮城県)2号機再稼働に抗議(42人)
 広島県原水禁と県平和運動センター

.. 2024年10月31日 05:26   No.3126007
++ たんぽぽ舎 (社長)…894回       
 東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の2号機の再稼働で、広
島県原水禁と県平和運動センターは29日、広島市中区の平和記念公園で
抗議の座り込みをした。
 42人が原爆慰霊碑前に集まり、午後0時15分から約30分間、「女川原
発2号機の再稼働に抗議」と書かれた横断幕を掲げた。
 「今求められているのは、危険な原発への回帰ではなく、原発に頼ら
ないエネルギー政策の推進だ。核と人類は共存できない」などとするア
ピール文も採択した。政府と東北電力に届ける。
 28日には中国電力が12月に予定する島根原発2号機(島根県松江市)
の再稼働に向け、原子炉に核燃料を入れる燃料装荷の作業を始めた。
 広島県原水禁の木原省治常任理事は「衆院選が終わるのを待っていた
ようだ。女川も島根も地形から避難計画が難しく、非常に危険な状況
だ」と批判した。(下高充生) (10月29日「中國新聞デジタル」より)

.. 2024年10月31日 05:32   No.3126008


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