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■-- 鎌田 慧
++ 東京新聞 (社長)…3157回          

◆客観報道の罪
  捏造による死刑判決は殺人罪にも匹敵する

      鎌田 慧(ルポライター)

 再審無罪判決のあと「東京新聞は」との主語で、毎日新聞は編集局長
名で、袴田巌さんへ「おわびします」と文章を発表した。筆者が知る限
り再審報道で初めてだ。
 一家4人殺害や放火。この大事件の報道は連日マスコミで続けられた。
 担当した地裁裁判官が、無実の心証をもちながらも容疑者を犯人視す
るマスコミの影響力を挙げ、死刑の判決文を書いた、と告白する悲劇も
あった。
 誤報と司法とが1人の人間の一生を破壊した。

 読売新聞は謝罪しなかったが、1面中央に社会部長名で「検察は控訴
断念を」と主張した。58年も費やされた冤罪の証明のあと、いま最大の
不安は検察側が冷酷無謀な控訴に持ち込まないかだ。

 ところが謝罪のなかった朝日新聞は、10年前に再審開始を決定した村
山浩昭元裁判長の、今回判決の「捜査機関の捏造」説を支持する
コメントに対置し「今回の事件は自白を除いても、有罪方向の証拠がた
くさんある…上級審の判断を仰ぐべきではないか」「控訴をする可能性
は十分考えられる」(元最高検次長検事・伊藤鉄男氏)と後輩を激励さ
せている。

 捜査機関の発表記事に対する、冤罪被害者の無実を叫ぶ声が取り上げ
られることはない。
 捏造による死刑判決は殺人罪にも匹敵する。
 その加害者の「控訴の可能性」を示唆する両論併記は、あまりにも
権力寄りだ。  (10月1日「東京新聞」朝刊17面「本音のコラム」より)
.. 2024年10月06日 20:15   No.3115001

++ 日刊ゲンダイ (社長)…281回       
日本外交と政治の正体<541>
  死者が増え続けるガザ戦争を許してはならない
                           孫崎 享

 イスラエル軍が8月10日、パレスチナ自治ガサの学校施設を攻撃した。
 ロイター通信は避難していた100人超が死亡し、数十人が負傷したと報
じた。
 アルジャジーラは11日時点で、ガザ戦争で「パレスチナ人の死亡は4
万319人、イスラエル人は 1139人」と報じている。
 確かにパレスチナ側が先制攻撃をした。
 しかし、先制攻撃された方は無制限に相手の人々を殺していいという
ものではない。
 しばしば怒りの発露として「倍返し」や「3倍返し」、さらには10倍
返し」と言う、とんでもない言葉もあるが、ガザの戦争では、すでに「
30倍返し」になっている。

 イスラエルは「自己の戦略を達成するためには、敵側の、戦闘に参加
していない人を無制限に殺してもいい」と考えているのだろうか。
 こんな攻撃が許されるわけがない。国内外の多くの人がそう思ってい
るだろう。

 一般市民を標的にして大量の死人を出したのは第2次世界大戦である。
 東京大空襲の死者は11万5000人以上。原爆投下で広島では9万〜16万
6000人が死亡、長崎では6万〜8万人が死亡とされている。
 これらの死者は「戦争を早期に終わらすため」などとして正当化され
ている。
 ドイツに対する攻撃では、ドレスデンへの爆撃が最も激しい戦闘のひ
とつとされているが、ドレスデン市歴史調査委員会による調査結果では
「死者約2万5000人」とされている。

 つまり、人類は「自己の戦略の成就のため」には3万人の民間人の犠
牲者が出ることを容認しているのだ。
 8月9日に長崎で行われた平和記念式典で、米英などG7の6カ国の
駐日大使が欠席した。イスラエルの要人が招待されなかったことが影響
しているとみられている。
 G7の大使は4万人の死者を出していることを人類の蛮行とは見てい
ないのである。(後略) (8月15日発売「日刊ゲンダイ」より)

.. 2024年10月06日 20:22   No.3115002
++ 日刊ゲンダイ (社長)…282回       
日本外交と政治の正体<544>
  イスラエルが生存する道はアラブ諸国との和平しかない

                         孫崎 享

 レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘員らが保有する無
線通信機(ポケベル)が17日、レバノン各地で一斉に爆発。ヒズボラの戦
闘員など11人が死亡し、4000人以上が負傷した。
 イスラエルの情報機関が、納品の時点で工作したと見られている。
スパイ映画「007」のような情報機関の視点で言えば“偉業”である。

 イスラエルは建国以来、近隣諸国に対して武力で威嚇してきた。
 武力攻撃を受ければ「倍返し」「3倍返し」どころか、「10倍返し」
の被害を受けることになると、執拗に示してきたのである。

 ハマスがイスラエルを攻撃して以降、イスラエル軍は報復攻撃と称し
てガザ地区などを空爆。
 対イスラエルの戦闘に参加しているのは、レバノンのヒズボラ、イエ
メンのフーシ派、イラクのシーア派、イラン政府及びシリア政府である。

 イスラエルと交戦状態にあるヒズボラは15万発以上のロケット弾でイ
スラエル北部を砲撃し、約10万人のイスラエル人を住居から追放して
いる。
 ヒズボラの攻撃に対し、かつてのイスラエルは戦車などでレバノンを
制圧する戦術を取った。
 しかし、今のウクライナ戦争を見ても、戦車は制圧に貢献するのでは
なく、むしろ攻撃の目標になりかねない。そこでイスラエルはポケベル
爆発や空爆を使用している。
 イスラエル軍は 20日、レバノンの首都ベイルート郊外の住宅街を空爆
し、ヒズボラ幹部のアキル司令官を殺害したと発表したが、こうした攻
撃はイスラエルの長期的安全に貢献することになるのか。
 ヒズボラに関しては、彼らの戦闘意欲をますます駆り立てている。

 問題はアラブ諸国の全体の動きである。
 アラブ諸国はパレスチナの闘争を支援する立場にある。
 仮にイスラエルを支持する立場に立てば、自分の政権も危うくなる。
 イスラエルと有効関係にあったサウジアラビアも、皇太子が「パレス
チナ国家が樹立されない限り、サウジがイスラエルと国交を樹立すること
はない」と明言した。
 イスラエルが長期的に生存する道はアラブ諸国との和平しかない。
               (9月26日発売「日刊ゲンダイ」より)

.. 2024年10月06日 20:31   No.3115003
++ 日刊ゲンダイ (社長)…283回       
永田町の裏を読む連載 <連載564>
安倍政権の“生みの親”
  野田立憲では政権交代は起きない…起きても意味がない

                ジャーナリスト 高野 孟

 このことは実は本欄で今までに2回も書いているが、あえてもう一度
書かせていただく。
 私が野田佳彦だけは立憲民主党にせよ何にせよ、旧民主党の系譜を引
くリベラル政党の責任ある立場に就かせるべきではないと考える理由で
ある。
 「2回」と言うのは 2016年9月に蓮舫が民進党代表となり野田を幹事
長に指名した時と、2022年9月に彼が安倍晋三元首相の“国葬”に出席
するくらいならまだしも自民党から請われて弔辞まで読み上げた時
である。

 形式面で言うと、野田は、やらなくてもいい総選挙を安倍に持ちかけ
て、結果としてその当時政権党だった民主党の同志173人を落選させて同
党を壊滅状態に追い込んだだけでなく、この日本を決定的にダメにした
安倍政権の生みの親である。

 内容面で言うと、これを私は本欄で3回目となるのをいとわず繰り返
すのだが、第1に、安保法制。
 野田政権の国家戦略会議フロンティア分科会が憲法解釈を変えて集団
的自衛権の行使を認めるべきだと提言した。
 第2に、武器輸出。
 藤村修官房長官が武器輸出三原則を見直す案を発表。
 第3に、オスプレイの沖縄配備を何ら疑問を挟むことなく受忍した。
 第4に、尖閣国有化。
 第5に、原発再稼働。
 第6に、TPP。最初に「参加を検討する」と言ったのは菅直人首相
だが、野田は「参加のため関係各国と協議に入る」と表明。
 第7に、消費増税。野田内閣は2012年2月に「社会保障・税一体改
革」大綱を閣議決定し、8月に「2014年に8%、2015年に10%」とする
消費税法改正案を成立させた。
 つまり、安倍政権で起きた禍々しいことのほぼ全ては、野田政権の時
代に始まっていたということである。

 どうしてそうなのかといえば、理由は簡単で、野田も安倍も共通し
て、自分には何の政策能力もなく、外務・財務・経産などの小ざかしい
官僚が言うことを素直に受け入れたからである。
 野田は「今度こそ政権交代を」と叫んでいたが、彼の下では政権交代
は起こらないし、起きても意味がない。
               (9月25日発売「日刊ゲンダイ」より

.. 2024年10月06日 20:37   No.3115004
++ 原発事故 終わっていない (幼稚園生)…1回       
原発事故 終わっていない 二本松市連携終了  一時は存続危機に
被ばく研究の灯は消さない 国や自治体 進む幕引き

東京電力福島第1原発事故から13年、被災地で放射能汚染や住民らの
被ばく状況を調べ、生活上の助言などを続けてきた独協医科大国際疫学
研究室の福島分室が9月末で、福島県二本松市から同県浪江町津島地区
に移った。被ばく防止事業を巡る市との連携協定が終わり、一時は存続
の危機に。経緯を追うと、福島が置かれた現状が浮かぶ。移設に結び付
けたのは「誘致」した住民や研究者たちの「原発事故は終わっていない」
との思いだ。

国道から1本入った津島地区中心部は、平日の昼間でも人影がない。
除染や解体作業の白いワゴン車が時々通る程度で、目に入るのは住人が
避難した空き家と、家を解体した後の更地ばかり。民家の周りの放射線
量は毎時1.0マイクロシーベルトを超える所も点在し、国の除染の長期
目標(同0.23マイクロシーベルト)をはるかに上回る。
 「人は散りぢり、地域社会はばらばら。家が朽ちるのを見ていくしか
ない。子孫に負の遺産を残せないと、先祖が建てた家を断腸の思いで
解体する人が多い」と行政区長の一人、今野秀則さん(77)が語る。
 (中略)
独協医科大の木村真三准教授(57)が言う。「原発事故当時から、
少なくとも20年は福島を見続けるつもりでいた。38年前のチェルノブ
イリで影響が残っているのに、福島の事故が13年で終わるわけがない」
(後略)

※詳細はWebで:題は「被ばく研究の灯は消さない 国や自治体が
「風化待ち」の中、独協医科大分室が移転してまで続ける活動の意義」

.. 2024年10月06日 21:42   No.3115005
++ 東京新聞 (社長)…3158回       
知らされなかった原発事故
              伊藤延由(福島県飯舘村民)

 2011年3月11日、福島県飯舘村も、経験したことのない強い揺れに見舞
われました。村は深くまで花こう岩の地層が続いているせいか、被害は
比較的少なく、私が管理人を務める農業研修所は屋根瓦がずれたり、
玄関の引らき戸が開きにくくなったりした程度ですみました。
 13日まで停電のためテレビは見られず、山がちなのでラジオの入りは
いまひとつ。情報が少ない中、12日からは、海側の南相馬市や浪江町
などから1200人ほどの人たちが避難し、村民は炊き出しをして出迎えま
した。この時点では、まさか自分たちも東京電力福島第一原発事故の
被害者になるとは思っていませんでした。

ところが15日タ、村の状況は一変したのです。村から事故の情報は
ほとんど知らされませんでした。
しかし、福島第一から漏れた膨大な放射能は北西向きの風に乗って村
方向に流れ、折あしく降り続いていた雨、夜半からの雪によって村周辺に
降り注ぎました。
 当時、私たちは何も知らされず、普通に暮らしていました。

 後日知ったことですが、14日に急きょ村役場近くに、放射線量を監視
する簡易型モニタリングポストが設置され、通常時より少し高かった
放射線量は15日午後6時ごろ、千倍にまではね上がったのです。
 福島第一の放射能が降った瞬間です。
 研修所周辺に雪が積もった16日朝の写真を載せましたが、この雪こそ
が村の暮らしを破壊し、今も、これからも村を苦しめる汚染の元凶なのです。
  (10月2日「東京新聞」朝刊24面「私の東京物語」8より)

.. 2024年10月06日 21:47   No.3115006
++ 東京新聞 (社長)…3159回       
原発事故の実像 発信し続ける
  政府与党は原発回帰に走っていますが
  もう原発事故のことを忘れたのでしょうか?

                 伊藤延由(福島県飯舘村民)

 東京電力福島第一原発事故の実像を記録し、何としても伝えなけれ
ば。その強い思いでいっぱいです。
 放射能は見えず、においもしませんが、特に山野では非常に高い濃度
の汚染が残っています。
 濃度が半分になるまでに30年もかかるので、事故前に近い水準に戻る
まで300年かかります。
 数多くの方に助けられ、今も続く原発事故被害のデータを取れるよう
になりました。

 私のつたない原稿を直してくれた山川剛史記者とは、山菜や野生キノ
コの定期的な観測をはじめ、栽培実験や放射線量の分布といった各種調
査を一緒にやってきました。数多く紙面化されていますので、お読みに
なった方も多いかと思います。放射能の「ほ」の字も書かないメディア
がほとんどですが、心強い限りです。

 大切な「第二のふるさと」の飯舘村を汚染され、奪われた怒りはおさ
まりません。
 村民の仲間と裁判を起こし、年数回、東京地裁に通っています。
 法廷では、原発事故が何を奪ったのか切々と陳述してきました。
 私たちの苦しみが裁判官たちに届いてほしいです。
 裁判で上京した際など、少人数の集まりであろうと苦い経験をお話し
させていただいています。

 政府与党は原発回帰に走っていますが、もう原発事故のことを忘れた
のでしょうか?
 過ちを繰り返さぬよう、交流サイトのフェイスブックやX(旧ツ
イッター)などでも原発事故の実像を発信し続けます。
     (10月4日「東京新聞」朝刊22面「私の東京物語」10より)

.. 2024年10月08日 05:41   No.3115007
++ 東京新聞 (社長)…3160回       
石破茂氏の国賦人権説

前川喜平(現代教育行政研究会代表)

 2013年ごろ、文部科学省の官房長として自民党の石破茂幹事長に何か
を説明に行った際、石破氏が日本の憲法では天賦人権説を採るべきでな
いと語るのを聞いて驚いたのを覚えている。
 天賦人権説とは、人権はすべての人が人であるがゆえに生まれながら
に当然に有する権利だという思想だ。
 これは世界人権宣言や国際人権規約の基本的な思想だ。

 ところが、それは日本には当てはまらないという。
 日本において人権とは、国が国民に与える権利だというのだ。
 確かに、2012年4月の自民党「憲法改正草案」の「Q&A」には、国
民の権利は、共同体の歴史、伝統、文化の中で生成されてきたものだか
ら、現行憲法の天賦人権説に基づく規定は改める必要があると書いて
ある。
 この「国賦人権説」によれば、国民ではない外国人には人権がないこ
とになる。また、国の都合で「公益」や「公の秩序」を理由に人権を制
限することも許される。

 さらに国は国民に人権を与えると同時に義務も課す。
 国民の人権と義務は表裏一体なので、義務を果たさない国民は人権を
主張できない。国民の最大の義務は国を守る義務だ。
 国が戦争を始めたら、国民は戦場で戦わねばならぬ。それが人権の代
償だ。
 石破首相が目指す改憲は、こんな人権観に依拠する、危険極まりない
ものなのである。(10月6日「東京新聞」朝刊17面「本音のコラム」より)

.. 2024年10月08日 07:14   No.3115008
++ 日刊ゲンダイ (社長)…284回       
安倍元首相と統一教会 総裁応接室スクープで進む「答え合わせ」
  当初は菅官房長官が関与した

              ジャーナリスト 鈴木エイト

 「統一教会問題、忘れていませんよね?」
 前回のコラムの最後に、私は各政治家へこう問いかけた。
 予言したわけではないが、9月17日付の朝日新聞1面トップに衝撃的
なスクープが掲載された。
 2013年の参院選公示直前、自民党総裁応接室で行われた統一教会(現・
世界平和統一家庭連合)の幹部と安倍晋三首相との面談を証拠写真ととも
に報じたのだ。

 当時は総裁特別補佐だった萩生田光一氏と実弟の岸信夫衆院議員を従
えた安倍氏が、統一教会会長、国際勝共連合会長、関連団体の総会長ら
と面談。
 比例候補での初出馬で苦戦が予想された北村経夫(現参院議員)への支
援について確認したというものだ。2人のつながりは、祖父母の代まで
さかのぼり、北村氏は安倍氏の肝いりだった。

 私が当時入手した教団内部のFAXには、北村候補への「後援」、
つまり組織票による支援を「首相からじきじき」に「依頼」されたとの
記述がある。その場がくだんの総裁応接室だったことになる。

 それにとどまらず、警察が摘発に動いているとの情報を入手した教団
が「ある自民党の有力な議員を通じて安倍政権に接近した」との内部情
報を得ていた。
 この「有力な議員」とは誰を指すのか。総裁応接室でのトップ面談を
セッティングできた人物は限られる。
 実は安倍氏は2005年の時点で、ある人物にこう話している。「祖父や
父は統一教会と親しくしていたけど、僕はあの教団は嫌い」

 反ジェンダーなど思想的な共鳴関係にはあったものの、統一教会とは
一定の距離を置いていた安倍氏。
 8年を経て、なぜ組織票を教団トップに直接依頼するまでになったの
か。そこには両者を近づけた仲介者の存在があったはずだ。
 第1次政権を投げ出した失意の安倍氏に、総理総裁へ再挑戦するよう
励ました教団関連団体トップをはじめとする古参幹部ルートのほか、有
力なラインとして政界ルートを追ってきた。

 それが一連の疑惑を埋める、最後のピースだからだ。当時の菅官房長
官の関与をめぐる情報も得ていた。
 だとすると、事は自民党だけに収まらず、政権中枢にまで及ぶことに
なる。

.. 2024年10月08日 07:21   No.3115009
++ 日刊ゲンダイ (社長)…285回       
癒着の実態を解明するには、2年前の自民党による簡易な自己申告点
検では不十分だ。第三者委員会の設置や、国政調査権を発動して当たる
べき問題であることが改めて示されたと言える。
   (9月27日発行「日刊ゲンダイ」カルトな金曜日「カルキン」




.. 2024年10月08日 07:28   No.3115010


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