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1990年代、日本経済は穏やかに成長していました。本当の意味での「失われた」という形容詞が当てはまるのは、ミレニアムと呼ばれる21世紀の最初の10年間でした。1998年のGDPは528兆円、10年後の2008年のGDPは520兆円です。10年間でマイナス成長という世界的にも前例のないマクロ経済の低迷が長期間続きます。
同じ10年間で米国のGDPは1006兆円から1633兆円へ、中国のGDPは129兆円から483兆円へと大きく拡大していきます。韓国、マレーシア、インドネシア、タイ、そしてインドが成長を加速していきます。なぜ、日本だけが成長を止めたのか。政治と行政が誤った施策を進めたのか。
民間の活力を活かすため、中曽根内閣による電電公社の民営化、国鉄の分割民営化、橋本内閣による金融自由化 (1980年代に英国のサッチャー政権が実施した大規模な金融規制緩和、ビッグバンになぞらえて日本版ビッグバンと呼ばれました)、小泉内閣による郵政民営化など具体的な規制緩和への取り組みが行われました。
少子高齢化という日本の人口構成の変化が原因なのでしょうか。生産年齢人口(OECDの定義では55歳から56歳)は1990年代にピークを打ち、その後、低下しています。しかし、米国や欧州でも同様の傾向があり、このことだけで日本のGDPの成長停止を説明することはできません。
生産年齢人口が減ってもイノベーションを行い、生産性を上げれば成長を実現できるからです。では、なぜイノベーションが生まれず、生産性が上がらなかったのか。規制緩和会議の議長を務めるなど 民間活力の開発に関わってきたオリックスの宮内義彦氏は次のように述べています。
「日本は現状を維持しようとする力が非常に強い。日本を代表する大企業でさえ、官僚的な組織になってしまっているところもあります。行政と同じように、民間企業も官僚組織になってしまえば、日本全体が大きな変化を望まない組織になってしまう。そこからは改革や変革、イノベーションは生まれないのではないでしょうか」(「論客経営者10人が語る新時代への提言と警鐘」「Monthly BOSS』 2019年6月号)
.. 2024年10月01日 04:23 No.3111001
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