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法案可決に抗議する
◎東電は免責になるか? 「原子力損害賠償支援機構法案」という名の東電救済法案が国会に上程された。 このような恐ろしい法案は早々に廃案にすべきだ。 このような法案を作った背景には、原子力損害賠償法免責条項の適用を主張しない代わりに賠償責任を負うとした東電のしたたかな戦略があると思われる。 東電の勝俣会長は、株主総会において今回の原発震災は、原子力損害賠償法の第三条ただし書きにある「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるとき」は免責に当たるとする条文を盾に、「東電も免責になると考えられる」などと答弁した。これを適用されれば、被災者を救済できないから、 敢えてこの条文適用を主張せず、被災者に補償をすると言い出した。しかしこれは全くの間違いである。そもそも東電は免責になどならない。 異常に巨大な天災地変とは、少なくても福島第一原発を襲った津波や地震動そのものが「異常な」ものでなければならない。地震そのものがどんなに大きかろうと、 あるいは人類史上最大の津波が発生した地震であろうと、それに直接遭遇し被災しない限りは「異常な天変地変」に遭遇したなどと言えない。しかるに、東電は単に 東北地方太平洋沖地震のエネルギーがマグニチュード9であるから、免責に当たるなどと言い出した。全くのデタラメである。 原倍法の立法段階で、免責についてどのように考えられていたか、参考となる文献がある。ジュリスト190号の加藤一郎「原子力災害補償立法上の問題点」で ある。少し長いが引用する。 (2)免責事由 「一般理論からすれば、不可抗力が一般的な免責事由になる。不可抗力としては、戦闘行為(たとえば爆撃)地震、風水害などが考えられるが、その内容は必ずしも 明確でない。地震の例をとれば、第一に、一般に起りうる程度の地震で原子炉が破壊されたとすれば、それは不可抗力ではなく、はじめからの設計や管理に瑕疵があったことになり、現行法の下でも責任が生じうるであろう。その場合に、どの程度の地震が一般に起りうるものと考えてよいかという基準の問題が起るが、原子炉では、ひとたび事故が起れば大災害の生ずるおそれがあるから、少なくともわが国でわれわれの経験した最大の地震にも堪えうるようになっていなければいけないし、さらに、それに相当の余裕を見て科学的に予想しうる最大の地震にも堪えうるようにしておくべきであろう。この ように同じく不可抗力といっても、原子炉のように危険性が大きくなれば、その範囲を狭めて考えていくのが合理的だと思われる。
.. 2011年08月06日 07:23 No.309001
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