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大切な過去のお話ですが、マレーシアのマハティール首相が長年思い描いてきた米・欧に対抗する「アジア勢力圏の構築」という偉大な構想がありました。米国は、メキシコ、カナダとの間で北米自由貿易体制を構築しようとし、欧州もまた欧州統合に向けて動きを加速させていた時でした。このままではアジア諸国は、この二大勢力の餌食にされてしまう。
アジアとしても日本という先進国の主導の下に、中国、韓国を含めた協力体を構築すべきでないか。欧米の意のままに従うという受身の立場に甘んじることなく、帝国主義的な欧米の圧力に抗しうるプレーヤーになるべきである―という思想がありました。アジアが生んだ偉大な合理的民族主義者、マハティール首相です。
ところが、この構想を危惧したのが米国です。異常なまでに日本に圧力をかけてきて、絶対にこの構想に協力してはならない、危険な構想だから潰すべきである、と迫ってきたのです。優柔不断な日本の態度の背景に、米国の圧力があることを即座に察知しました。
マハティール首相は、自らの米国人脈を通じて、なぜ米国がこれほどまでに東アジア経済協力構想に反対するのか調べたといいます。世界を見渡せば、北米や欧州はもとより南米を初め世界各地に地域協力組織があり、その多くは国際社会として存在しています。それなのに、なぜアジアが協力組織を作る事を米国はそれほどまでに恐れているのであろうか。
やがてマハティール首相は、「東アジアが結束すること自体にはなんの異論もない。しかし、日本がリーダーになって米国に抗する組織を作ることだけは、どうしても許されない」という、米国の剥き出しの対日警戒心を知ったのです。
マハティール首相は、改めて米国の日本に対する不信感を感じ、まるで人種差別に由来する感情としか思えないと、マハティール首相は親しい隣人に漏らしたというのです。だが、日本政府は東アジア経済協力構想を失敗させるべく必死に走り回ったのです。
マハティール首相は、欧米主導の国際政治に反発し、非同盟諸国会議、イスラム諸国会議、国際連合といった、第三世界の勢力拡大を訴えてきた政治家でした。例えば、米国が環境保全の観点からマレーシアの熱帯林伐採政策を非難するとすかさず反論しました。
.. 2024年08月12日 08:04 No.3079001
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