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1945年8月6日、広島に投下された原子爆弾は一瞬で多くの人々の命を奪いましたが、悲劇はそれだけでは終わりませんでした。九死に一生を得たと思った人もその後、長きにわたって原爆症に悩まされることとなったのです。
国は被爆者援護法に基づき、原爆が投下された際に爆心地にいたり、私の父のように後になって爆心地に入り放射線を直接浴びた人などに対し、がん検診などの健康診断を無料で実施するほか各種手当の交付などの援護をしています。父は施しを受けませんでした。
その人数は戦後、今もまだ1万人以上を数えるなど、いかに原爆の威力が大きく恐ろしいものだったのかがわかります。そんな中、被爆者の子供、いわゆる広島原爆被爆2世の2人が「被爆2世が親の遺伝的影響を受けることは否定できない」のに被爆2世を被爆者と区別して援護対象としていないのです。
これは、平等権を保障する憲法14条に違反するとし、国に原告1人あたり10万円の支払いを求めて起こした裁判に対し、広島地裁が国の賠償責任を認めず原告側の請求を棄却したというニュースが、2023年2月にありました。
放射線被曝が悪性腫瘍や白血病の発病に大きく関与することは知られています。被爆2世の中には、その病気により親(被爆者)を見送った人も多いことでしょう。そんな2世が「親の血を引いている自分もいつか発症するのでは」と不安になる気持ちは生死を彷徨った私にはわかります。身体の中に時限爆弾を抱えているのと同じなのです。
しかし、今回の判決は国側の「親の被爆による次世代への遺伝的影響は確認されていない」という主張を支持しました。では、2世の中にがんや白血病になった人はいないのでしょうか。もちろんそんなことはなく、単に「影響は確認されていない」、すなわち「因果関係が明確でない」と言っているだけです。
それで死ぬまで不安が続く被爆2世が、長崎投下分を含めてまだ全国に30万から50万人もいるのですから改めて原爆がいかに非道な兵器だったのかがわかります。「因果関係が明確でない」全国で超過死亡数が大幅に増加している最近、よく聞く言葉です。
.. 2024年05月25日 09:55 No.3021001
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