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いよいよ地球と太陽に戻る旅に転じる「ハレー彗星」の神秘 | 「日本書紀」にも観測記録、出現で世界史的に多くの事件 | 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その521 └──── 島村英紀(地球物理学者)
ハレー彗星(すいせい)は最も有名な彗星である。 約70年ごとに現れ、尻尾が肉眼で見えることからハレー彗星が紀元前 から出現したという説もあるほどだ。 尻尾中のガス分子の一部は太陽風による紫外線放射によりイオン化し て、そのイオンが長い尻尾を作り、1億kmに及ぶこともあるのでよく 見える。夜空の明るい星と同じくらいの輝きで、「ほうき星」とも呼ばれる。
紀元前468年から記録が見られ、タイミングや期間などからもハレー 彗星であると考えられている. 『日本書紀』にも観測記録があり、684年に出現した。日本最古の彗星 の記録である。 人々はハレー彗星が戦争、火災、疫病、王朝の交代のような惨事を 引き起こすと信じていた。 218年には、漢の空に彗星が出現し、彗星の尾が太微垣の五帝座(デネ ボラ)の方向を指していたことから、帝位に異変が起こる前兆ととらえ られた。なお、2年後に漢は廃位され、後漢は滅亡している。 1222年のハレー彗星の出現はチンギス・カンがヨーロッパへ侵攻する 誘因になったのではないかという説がある。
このように目立つ彗星彗星の出現は歴史的に多くの事件を生んできた。 彗星の中には一遍きりのものもある。放物線や双曲線を描いて太陽や 地球に一度だけ近づくものである。 いままでに記録された周期が70-76年とまちまちなことから、英国の 天文学者エドモンド・ハレー(1656〜1742年)が同一のハレー彗星の 回帰であることを発見したので、以後ハレー彗星と呼ばれるようになった。
.. 2023年12月24日 08:40 No.2928001
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