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パレスチナのオリーブ 北丸雄二(ジャーナリスト)
1993年9月のワシントンで私は、クリントンに促された2人のぎこち ない握手を見ていました。イスラエルのラビン首相とパレスチナ解放機 構のアラファト議長によるオスロ合意調印式。 あの日、30年後の今日の攻撃や反攻を私たちの多くは想像したくな かった。 陽光のせいかアラファトの軍服は平和の象徴のオリーブ色にも見えて いてその楽観をいま恥じます ▼パレスチナはオリー ブ原産地域です。紀元前35世紀頃には栽培も始 まり、樹齢数千年の木が西岸地区で今も生きているそうです。耕作地の 半分近くがオリーブ畑で10月は年に1度の収穫月。その大半が12月まで に搾油され、消費・輸出される。 日本でも公正交易の「オルター・トレード・ジャパン」社が現地の農 家やNGOから年十数トンを輸入し「apla.jp」が販売しています ▼しかし国際法違反のイスラエル入植地の拡大でオリーブ畑も各所で 寸断・破壊・略奪され、そこに今回のガザの戦闘。西岸地区でも妨害と 弾圧の激化で農作業は滞り、8万世帯のオリーブ農家の今後も危機に瀕 しています ▼大洪水後、ノアはオリーブの枝を蛭えた鳩に平和と安住の陸地を見 ました。 その平和と安住を求めて、ともにノアの末裔のはずの両者が今も殺し 合っている。ノーベル平和賞を受賞したオスロ合意は夢のまま、オリー ブ収穫の神無月がもうすぐ終わります。 (10月27日「東京新聞」朝刊21面「本音のコラム」より)
.. 2023年10月28日 08:47 No.2887003
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