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■--大地震だけだけでなく地下水の使用でも
++ 島村英紀 (社長)…895回          

大地震だけだけでなく地下水の使用でも
 | 地球の自転は影響されるのです
 | 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その512
 └──── 島村英紀(地球物理学者)

 2004年に起きたスマトラ沖震(M9.4)のときは、北極と南極にある
地球の回転軸が約15センチずれた。

 話は変わる。北米大陸の中西部アイダホ州、ネバダ州などを飛行機で
飛ぶと丸い畑が目につく。これは地下水をくみ上げて地表の作物に水を
撒くための仕掛けで、タイヤのついた半径400メートルもの長いパイプを
回転させて水をやる道具だ。ここは米国有数の穀倉地帯で、小麦をはじ
め大豆やトウモロコシなどを生産する。
 陽は照っているから、水だけをやれば作物は育つ。この地域はほぼ全域
が降水量が少なく、河川や湖沼などの地表水が少ない。そのため、地下水
が重要な水道水源、農業用水源となっている。

 20世紀初めまで農業が行われていなかった砂漠地帯でもこのような灌漑
農業が行われるようになった。いまは米国有数の穀倉地帯である。
 米国でも、他のところには、雨が多くてこんなことをしなくても作物が
とれるところはある。
 地下水を続けてくみ上げると地下の塩分が出てきてしまうので、耕作地
を捨てて別の土地に移る。土地は米国中西部にはいくらでもある。

 地下水を使って灌漑農業をやっているところは米国だけではない。イン
ドなどアジアや中央アジアや中東でも、盛んに行われている。
 農業はこれでもいいかもしれないが、供給源・米国中西部に広がるオガ
ラカラ地下水は痩せ細る一方だ。オガララ地下水は世界最大級の地下水層
で、総面積は日本の国土の約1.2倍、45万平方キロにもなり、同国中西部・
南西部8州にまたがっている。

 地中から汲み上げている水のほとんどは、何千年も前のものだ。ある日
に雨が降って1週間で地下水層に届くというわけではない。
 こうして、いわば未来の人類から資源を奪っているわけだ。
.. 2023年10月15日 06:28   No.2876001

++ 島村英紀 (社長)…896回       
 だが、実際に全世界の地下水の利用量を確かめることは難しい。そこで
ソウル国立大学の研究チームが、地下水の地球の自転軸の傾きへの影響の
大きさと方向を知ることに成功した。
 くみ上げられた地下水の量は1993年から2010年にかけて2150ギガトンだ。
これは海の水位を6ミリ変化させるだけの量だ。
 このため地球の自転軸の傾きへの影響は年間4.3センチ。1993〜2010年
では17年間で80センチ近くも地軸が東へ傾いた。地下水のくみ上げでこれ
ほど地球の自転軸が傾いたわけだ。
 地下水がもっとも多くくみ上げられたのは米国中西部とインドだった。
 もちろん地質学的な期間で見れば、こうした人為的な要因が気候に影響
する可能性は大きい。

 地球が宇宙に浮いている球だということを覚えているのは地球物理学者
くらいのものだろうが、大地震だけはなく地下水のくみ上げでも地球の
自転軸が影響されるのだ。 

 (島村英紀さんのHP こちら
    「島村英紀が書いた『夕刊フジ』のコラム」より10月6日の記事)

.. 2023年10月15日 06:34   No.2876002
++ 島村英紀 (社長)…897回       
古代ローマの建物はなぜ長持ちするのか 最近の研究で分かり
| かけてきた「ローマン・コンクリート」長持ちの仕組み
| 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その513
 └──── 島村英紀(地球物理学者)

 近代建築に欠かせないコンクリートだが、古代ローマの壮大な建造物
は何度もの大地震に耐え、2000年も建っている。
 世界最大級の無補強のドームを持つパンテオンやコロッセオといった
巨大な建造物が残る古代ローマの人々は非常に高い建築技術を持っていた。

 一方、20世紀はじめに建てられた、例えば長崎・端島(軍艦島)の鉄
筋コンクリート住宅は著しく劣化している。大きな違いだ。

 古代ローマの建造物には「ローマン・コンクリート」という呼び名が
ついている。
 それを可能にした謎の材料はコンクリートに混ぜた火山灰だと考えら
れてきた。
 研究者たちは長年、ローマン・コンクリートがそれほど丈夫なのはナ
ポリ湾沿いのポッツオーリからの火山灰が原因だと考えていた。

 この種の火山灰は、建設に使うために広大なローマ帝国の各地に輸送
され、当時の建築家や歴史家の説明の中でもコンクリートの重要な材料
と紹介されていた。
 しかし最近の研究ではそれだけではないことが分かりかけてきている。

 コンクリートを混ぜ合わせるときに、近代では消石灰を混ぜるが、危
険性が高い乾燥した生石灰を使用したためだというのが最近の研究の
成果だ。
 生石灰は酸化カルシウムで非常に反応しやすく危険性も高いものだ。
 生石灰に水を加えると激しく発熱した後、消石灰になる。
 従来、消石灰の白色を生かして運動場の白線引きに使われてきたが、
触ったり吸い込んだりしたときの刺激が強いために、あまり使用されな
くなった。

 生石灰はコンクリートの中で「ライムクラスト(石灰の塊)」として
閉じ込められる。
 コンクリートに含まれるライムクラストの白い塊が、時間の経過とと
もに生じる亀裂を修復する能力を与えるのだ。
 ライムクラストは水に触れると溶ける。そして亀裂に流れ込み、再結
晶して風化によって生じた亀裂が広がる前に修復することになる。ライ
ムクラストの自己修復能力の結果は、のちのコンクリートよりも長持ち
する。

.. 2023年10月25日 06:53   No.2876003
++ 島村英紀 (社長)…898回       
 海中にあってさえ同じように修復されて、普通は弱くなる海水の腐食
によって、逆に強度を上げるという仕組みだった。
 コンクリートは火山岩の中にある結晶と同じような形をしているので
結晶は母岩を固く結びつける力を持っている。
 その構造とコンクリートの隙間を海水が通り抜けることで、結合を
強める。

 石灰と火山灰はローマン・コンクリートにどちらも重要な成分だが、
石灰はこれまで見過ごされていたのだ。
 ではなぜ、このローマン・コンクリートが現代のコンクリートの代わ
りに使われないのか。
 ひとつはローマン・コンクリートが現在使われているコンクリートよ
りも圧縮強度が低いこと、正確な製造方法がまだ研究中で分かっていな
いことだ。

 (島村英紀さんのHP こちら
 「島村英紀が書いた『夕刊フジ』のコラム」より 10月13日の記事)

.. 2023年10月25日 06:59   No.2876004
++ 島村英紀 (社長)…899回       
日本では考えられないM6.3で死者1000人超
| アフガン地震はなぜ甚大被害もたらしたのか
| 背景に「日干しれんが」建築
| 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その514
 └──── 島村英紀(地球物理学者)

 アフガニスタンで大きな地震被害が生まれた。死者1000人以上が出た
とされ、犠牲者の数はさらに増える恐れがある。昼間の地震だったので、
家にいた女性と子供、老人や、病人が犠牲になった。

 マグニチュード(M)6.3の地震が3回起きた。日本ではこのMでは
考えられない死者数だ。これはもっぱら「日干しれんが」のせいだ。

 木材がない中近東や中央アジアの国々や中国南部では泥をこねて太陽で
干しただけ、つまり火で焼き固めていない日干しれんがで家を造る。庶民の
家はこのように安くて入手しやすい材料で作る。

 今日、干しれんがは建築材料としては悪いものではない。手に入れる
のは容易だし、熱を吸収してゆっくり放出するから家のなかは涼しい。
外が40度近くの夏でも、中は25度ほどだ。暑くて乾いた気候には適して
いるのだ。
 砂漠の国で木材もない環境では、ほかに選択肢がないだけに、最も適
している材料だろう。

 だが地震が時折襲う地帯では話は別だ。地震にはとても弱いのである。
 しかもインド亜大陸というプレートが押してきている。

 インド亜大陸はインドを載せている大陸だ。赤道を超えてきて1000万
年あまり前に、いまの位置にくっついた。そのあとも北上を続けている。

 このため地殻がまくれ上がって、ヒマラヤの高山を作った。それだけ
ではない。アフガニスタンをはじめ中国南部、パキスタン、ネパール
などに大地震を起こしている。

 9万人の犠牲者を生んだ2008年の中国・四川大地震(M7.9)や、
多くの死者が出た2005年のパキスタン大地震(M7.6)が襲ったし、
ネパールでも2015年のネパール大地震(M7.8)で数千人が犠牲になった。

 今度のアフガニスタン地震もインド亜大陸が起こした地震の1つだ。
 震源は西部のヘラート州・ヘラート市から約40キロ西部に震源があった。
3回、M6.3の地震が来たという。ヘラートは同国で3番目の大都市だ。

.. 2023年10月29日 07:08   No.2876005
++ 島村英紀  (幼稚園生)…3回       
 日干しれんがは厚くて重い。被害が大きかったヘラート州では、ほぼ
すべての家屋が倒壊して住民が下敷きになり死者や行方不明者など
の実態が把握できない集落もある。

 アフガニスタンでは、去年6月にもマグニチュード5.9の地震が起き、
1000人以上が犠牲となった。それだけではない。同国では過去に何度も
大きな地震に襲われた。

 2021年にタリバンが実権を握って混乱状態の中で米軍が撤退して以来、
国際援助団体も多くが同国から撤収してしまった。
 世界銀行は地震前の先月、アフガニスタンの世帯の3分の2が現在、
家計を支えるうえで大きな困難に直面しているとの見方を示した。

 経済危機や飢えの危機が続く。何万人もの人々が死亡したり住む場所を
失った。地震の被害からの復興はさらに難しくなっている。弱り目に
たたり目である。

 (島村英紀さんのHP こちら
 「島村英紀が書いた『夕刊フジ』のコラム」より 10月20日の記事)

.. 2023年10月29日 07:18   No.2876006
++ 海渡雄一 (小学校低学年)…7回       
東海第二原発は赤城山の噴火で降り積もる
 | 厚さ50センチの火山灰には到底耐えられない
 | 次回口頭弁論は、来年2月20日午後3時30分から、東京高裁101号法廷
 └──── 海渡雄一(弁護士)

 10月29日、東海第二原発差し止め訴訟原告・弁護団の火山班で、赤城山
の調査に行きました。
 日本原電は、予測される赤城山の爆発によって、偏西風によって火山灰
が拡散された場合、東海第二原発の敷地には厚さ50センチの火山灰が降り
積もるけれども、非常用ディーゼル発電機のフィルターを高速交換するの
で、炉の停止後の炉心の冷却は可能だと主張しています。しかし、50セン
チの火山灰が降り積もる中では、社会的な活動は難しく、とても継続的な
作業は無理だと思います。
 高崎の嶋田弁護士の案内で、車で山を登り、大沼と覚満淵を見てくるこ
とができました。赤城山は、とても立派なカルデラ火山で、大沼は外輪山
に囲まれたカルデラ湖でした。
 大沼にある神社で、東海第二原発裁判の必勝を祈願し、お守りも買い求
めてきました。東海第二原発の差し止め訴訟は水戸地裁で、避難計画の
策定が困難とされ、原告勝訴判決が出されていますが、この勝訴を確実
なものとするため、高裁では地震や火山についても、追加の立証を積み
上げています。
 次回口頭弁論は、来年2月20日午後3時30分から、東京高裁101号法廷
で開かれます。ぜひ、ご参加ください。
 この写真は前橋の県庁の32階の展望台からみた赤城山です。

 ※海渡弁護士のフェイスブックより(写真も投稿されました。)
 ※海渡弁護士のFBリンク 
 https://www.facebook.com/profile.php?id=100012434656292

.. 2023年11月05日 07:30   No.2876007
++ 島村英紀 (社長)…900回       
南海トラフ地震は連続して2度起きる説 
| 一度は無視された研究結果
 | 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その515
 └──── 島村英紀(地球物理学者)

南海トラフ地震が連続して起きるかもしれないという学説が発表された。
東北大の研究だ。
 マグニチュード(M)8以上の巨大地震が発生すると、1 週間以内に
同じくらいの巨大地震が再び起きる確率が2〜77%に高まるという研究
結果である。

 確かに一回前にも、南海トラフ地震が半分ずつ起きた大地震が起きた。
 昭和東南海地震(1944年)と昭和南海地震(1946年)である。ただし
時間差は2年あった。

 昭和東南海地震は熊野灘から東が震源だった。地震による家屋の倒壊
や津波で三重県、愛知県、静岡県を中心に、推定1223名の死者行方不明者
が出たものとされている。このときは戦時中だったこともあり、戸籍など
が津波で消失したために正確な被害者数を把握できず、行政機能がマヒし
たために死亡届を出さなかった例もあちこちに多い。
 一方、昭和南海地震は高知沖から紀伊半島が震源だった。被害は中部
以西の高知県、徳島県、和歌山県を中心に死者行方不明者は1330名に上っ
た。津波が静岡県から九州までの海岸を襲い、高知県、三重県、徳島県の
沿岸で5メートル近かった。

 1940年代半ばの日本では、このほかにも1943年の鳥取地震、1945年の
三河地震といった、いずれも死者千人以上を出した地震が相次いだ。
これらの地震は終戦前後の「四大地震」とされる。

次の震域が西だと指摘したのは東北大が初めてではない。当時の地震
学者・今村明恒は昭和東南海地震が起きるのは「宝永地震(1707年)や
安政東海・南海地震(1854年)は東海・南海の両道にまたがって発生した
もので、今回の地震は東海道方面の活動断裂だけに止まっていて、今後、
南海道方面の活動にも注視するべきである」と指摘していたが、この
指摘は無視された。

.. 2023年11月19日 07:40   No.2876008
++ 島村英紀 (社長)…901回       
 南海トラフ地震のひとつ先代は約150年前には最初に南海トラフの
東側、静岡から紀伊半島沖を震源域とする大地震が起き、次に西側を
震源域とする大地震が起きた。前の地震を安政東海地震、後の地震を
安政南海地震と呼んでいる。時間差は32時間しかなかった。
 2年と32時間。東西の地震の時間差はあまりに違う。

しかもその前の宝永(ほうえい)地震では、南海トラフ地震のほぼ
全域が同時に起きた。この地震は大きく、次の南海トラフ地震はこれが
再来するのではと恐れられている地震だ。

その前は二つが分離して起きたかどうかは分からない。いずれにしても
南海トラフ地震の先代は10回は起きてきたことが日本史上と考古学史上で
知られている。
 しかし少なくとも数万年も続いている繰り返しの、日本人はごく一部
を知っているにすぎない。
私たちには、近年の例から求めた確率の数字だけを信じるわけにも
いくまい。
 (島村英紀さんのHP こちら
 「島村英紀が書いた『夕刊フジ』のコラム」より10月26日の記事)

.. 2023年11月19日 07:58   No.2876009
++ 島村英紀 (社長)…904回       
「海底噴火で新島が誕生、鳥島近海で軽石採取
 | 気象庁を振り回した不思議な地震、津波注意報の意外な原因」
| 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その517
 └──── 島村英紀(地球物理学者)

 気象庁が津波注意報に振り回された。
11月9日午前5時すぎの地震のマグニチュードは不明で、震源はごく
浅く、気象庁で震度1以上を観測した場所はなかった。
午前5時25分ごろ、東京・伊豆諸島の鳥島近海を震源とする不思議な
地震があった。午前4時以降、現場では地震が多発していた。
 津波は東京都・八丈島、千葉と高知、宮崎、鹿児島の各県などで観測
したほか、八丈島で小型漁船が転覆するなどの被害があった。

 気象庁は「震源が決められず、珍しい事例。原因が分からない」とし
ている。
 このため民報各社のニュースショーなどで火山学者、地震学者たちが
海底火山のマグマ説や地震説など各種の説が乱れとんだ。
 津波注意報は普通は震源が決まってマグニチュードを決めてから出す。
 しかし今回は震源が決められなかったので異例だった。

 詳細が分からないため予測が難しく、気象庁は、伊豆諸島と小笠原諸
島、千葉、高知、宮崎、鹿児島の各県に津波注意報を発表した。
 津波の予想高さは1メートルで、八丈島では午前7時17分、60センチ
の津波を観測したほか、太平洋側の小笠原から鹿児島まで広範囲に津波
が到達した。
 気象庁の津波注意報は正午に全て解除された。

 ところが意外なところから決着がつきそうだ。
 気象庁は1日、東京・伊豆諸島の鳥島から南西約100キロの海面に軽石
が点在しているのを確認した。観測船の帰京後、軽石の精密な分析を
行うという。
 新島誕生である。新島は硫黄島から目と鼻の先に新島が誕生して大量
のマグマと軽石を噴き出したのだ。

 海上保安庁が10月20日、鳥島の西約50キロの海上で軽石とみられる浮
遊物が南北約80キロにわたって点在しているのを上空から確認し、気象
庁が観測船で現場観測を行っていたものだ。
 採取した軽石は数ミリから、大きいもので長辺が約12センチあった。
 海底噴火が起きてマグマが大量に噴出したのであろう。そのうち軽石
が海氷面を漂っていたわけである。

.. 2023年11月22日 07:31   No.2876010
++ 島村英紀 (社長)…905回       
鳥島から硫黄島までは100キロ以上も離れている。
 気象庁の地震計の配置は有人の観測点だけだ。震源誤差から見れば、
まばらなのを見るとやむを得ないところだろう。
 私も関西テレビ「ミヤネ屋」からコメントを求められた。「同地域は
海底地震計がまったくないので震源が決められないのが最大の弱点」と
答えておいた。地震説にせよ、火山説にせよ、震源が海底地震観測で決
まるはずだからである。
 今回の津波は気象庁の地震計配置の「穴」を図らずもクローズアップ
された地震であった。
 (島村英紀さんのHP こちら
 「島村英紀が書いた『夕刊フジ』のコラム」より 11月10日の記事)

.. 2023年11月22日 07:39   No.2876011


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