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「核ごみ誘致」は結果として地域の経済に大損害をもたらす | 観光客が半減したとして、試算したら、 | 30年間の評価で約2,000億円のGDPの喪失になる。(対馬市) └──── 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕
報道されるように長崎県対馬市議会は、2023年8月16日に高レベル放射 性廃棄物の最終処分場選定について、建設業団体が提出した「調査受け 入れ」の請願を採択した。市長は慎重姿勢と伝えられているが今後の 動向が注目される。地元の建設業団体は経済効果を期待しているのかも しれないが、「核ごみ誘致」は結果として地域の経済に大損害をもたら す可能性が高い。
対馬市は観光も大きな産業であり、コロナ前は日帰りと宿泊を合わせ て年間約40万人の観光客が訪れた。対馬市は「豊かな自然、歴史、文化」 をアピールして観光客を誘致しているが、それがもし「核ごみの町」と なったら、観光のイメージが大きく損なわれて観光客が激減する可能性 がある。 もし最終処分場を受け入れたら、みずから風評被害を起こしている ようなものである。
かりに建設するとして、工事期間中は経済効果があるかもしれないが、 最終処分場は原発と違って基本的に放射性物質を置いておくだけだから 工事が終わったら経済効果はない。その一方で観光客が半減したとして どのくらいの経済損失があるか、長崎県が提供している経済波及効果 分析ツール(※1)と観光統計データ(※2)を使って試算すると、 30年間の評価で約2,000億円のGDPの喪失になる。
ただし長崎大学の鈴木達治郎氏が指摘しているように、賛成・反対に かかわらず既に出てしまった核ごみの議論は避けられない。(※3) しかし政府が原子力回帰を推し進め今後もさらに核ごみを増やし続ける という前提では、全国どこでも理解が得られるはずがない。「これから 原発は一切やめるから、これまでの分について考えてくれないか」と いう姿勢が最低限かつ必須の条件である。
(※1)経済波及効果分析ツール https://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/kenseijoho/toukeijoho/renkan/27io/542041.html
.. 2023年08月20日 06:40 No.2832002
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