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<ふくしま作業員日誌・52歳男性>
サマータイムだから作業は早朝から始まり、昼前には終わる。それに しても今年の夏はきつい。うちの班ではまだ熱中症は出てないが、ぎり ぎりの状態。原発のある浜通りは比較的気温が低いけど、33度の日も あったな。防護服や全面マスク、かっぱを着る日は、体感温度は40度 ぐらいまで上がる。装備を着けた瞬間から汗だくになる。さらに気温や 湿度が上がったら、どうしようもない。 イチエフ(福島第一原発)からの海洋放出が連日報道されている。原発 事故後、汚染水を浄化処理してタンクにためたもの。敷地内には1000基の
タンクがあり、敷地はタンクであふれている。ある意味よく12年間ためた と思う。だけど、このままでは行き詰まる。原発で働く俺からすると、 海洋放出せざるを得ないと思うし、放出する水的にも問題ないと思うけど…。 でも、浜で育った俺らには漁師仲間がいっから複雑。福島の漁業は試験 操業が終わり、ようやく本格操業が見えてきたところ。漁獲高は事故前の 2割と戻りきってはいないが、浜には活気が戻った。事故前のように漁師 仲間から魚をもらったりして、食卓には毎日のように地元の魚が並ぶ。
浜焼きも売り始めた。地元で揚がった魚やエビ、イカだったりを串に 刺して、炭火で焼いて食べる。これがうまい。事故直後は海にいつも出 ていた漁船や舟の姿がなくて、港に活気がなくて寂しかったから、活気が 戻ったのはうれしい。 一昨年2月、昨年3月と2度にわたって福島を襲った最大震度6強の 地震で、大きな被害を受けて休業していた福島県相馬市などの旅館や ホテルが修復し、この春からようやく営業を再開し始めている。やっと 建て替え工事が始まったホテルもある。原発作業はしなくてはならない から、海洋放出はしてほしい。でも、再開したホテルや活気が戻った 漁業に、海洋放出の影響がどう出っか。それが心配。 (聞き手・片山夏子) (7月14日 東京新聞朝刊21面より)
.. 2023年07月16日 07:25 No.2805001
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